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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第594話】

 
前書き
バトル無しっす 

 
 残り三人――残っているのは飯山未来、エレン・エメラルド、織斑一夏の三人だった。

 そして――次の戦いも二対一――未来とエレンの二人が出ることを告げられた。

 告げてきたのは反対派であるスコットだった。


「私は反対だ。 彼との勝負は一対一でつけたい」

「その気持ち、よーくわかりますよお嬢さん」


 わかるものか――心のうちでそう呟くエレン。

 そして未来も――。


「私も反対です。 そもそも何故ヒルトは代表候補生選出をかけて戦ってるのに私達代表候補生が二対一で? ……ううん、それよりも、これだけ皆に勝ってきて実力を示してきた彼が何故選出されないのですか?」


 最もな疑問だった、誰の目から見ても明らかにヒルトは勝利を重ねてきている。

 それも、連戦で磨耗する中で、各国国家代表を担う候補生相手に勝利してきてるのだ。

 正論で返す未来に、ハンカチで汗を拭うスコット。


「そ、それはですね。 彼は全く実績がない以上我々も簡単には選出出来ないのであって――」

「嘘でしょ? それなら私だって選出されてないはず。 私は一度断ってますから」


 そう、未来はS適性を出して無条件にこの学園への道が拓けていた。

 ――だけど断った、其処にヒルトが居ないからだ。

 小さな頃から彼の隣に居た未来にはそれが想像出来なかったからだ。

 その結果は仇となりヒルトが世界初の男子操縦者となり、未来はヒルトと共に行く予定だった高校へ一人進学したのだ。

 一度断ってまた代表候補生にしてくださいは虫が良すぎる――だから未来はそれを日本政府に掛け合ったらあっさりと了承され、逆にポカンとしたものだ。

 未来が簡単に戻れたのにヒルトがダメな理由がわからなかった。


「き、君の場合はS適性でしたからね。 未来のブリュンヒルデ候補は貴重ですから」

「……適性」


 適性だけで簡単に戻れるなんてバカらしかった――だけどここでこの人に言っても仕方ないので未来はグッと言葉を飲み込んだ。


「こほん、それはさておき……。 二人で出てくれないのであれば我々も時間がありませんので、此処等で引き上げという形になりますな」

「「……!!」」


 卑怯だ――此処で委員会の人間が帰ったら今までのヒルトの苦労が全て水の泡となる。

 唇を噛み締める未来にエレンは――。


「……不本意だが仕方ない。 私は了承した」

「エレン……」


 表情には出さないエレンに、未来も納得はしないが小さく頷く。

(女尊男卑といえども、所詮力を持つ我々には逆らえない。 クククッ、やはり良いですな、バカな女の悔しそうな顔を見るのは)

 未来らが頷いた事に満足そうに目を細めたスコット。

 舐めるような視線で改めて彼女等の肢体を見ていた。

 イヤラシイ目付きに嫌悪感を抱く未来に対してエレンは毅然とした態度で――。


「それでは我々には準備があります。 そろそろ御自身の席に戻られては如何だろうか?」

「む? ……まあ良いでしょう。 では私はこれで、お二人の健闘を祈ってますよ」


 踵を返して去っていくスコットに、珍しく未来は怒りの表情を露にした。


「もう! 何が適性よ! 普通あれだけ連戦連勝するなんて無理だからねッ!! エロオヤジ!」


 未来の変わりように面を食らうエレン――そんなエレンを見た未来は。


「驚いた? 私だって怒る事もあるよ? ……てかあの人、話に筋が通ってないし」

「それはそうだな。 ……というよりは、何が何でもヒルトを代表候補生にしたくないといった気がしたが」

「それについては……多分だけど、織斑君一人居るからじゃない? 適性の話も出てたし、E適性のヒルトじゃなくB適性の織斑君――それも初代ブリュンヒルデの弟っていう肩書きもあるし。 IS界隈じゃ、織斑先生は神みたいなものだもん。 篠ノ之博士もそうだしね」

「……成る程、ネームバリューというやつか」


 小さく頷くエレン、髪をかきあげると緑のロングヘアーが靡く。


「……それならばヒルトは今回ので相当名をあげるだろう。 これだけの連戦に勝利を重ねてきた。 もしこれで代表候補生になれないのであれば少なくとも異論は出るだろう」

「……だけど、確かヒルトの条件って専用機持ち全員勝利でしょ? 何か、一戦でも負けたら多分……」


 そこまで口にして言葉を止めた未来、一戦でもヒルトが負けたらさっきの人等は代表候補生選出を認めない気がした。

 一方、ヒルトの方は補給を手早く終えて休んでいた。


『主君、少し良いだろうか?』


 そう言って声をかけてきた雅、ヒルトの目の前にホログラフィックで姿を現した。


「……話は構わないが、そんな機能、コアについてたか?」

『こ、これか? いや、その……母君様が付けてくれたのだ。 わ、私と話がしたいからという理由で』

「母さんが? ……まあ何と無くわかるが、その状態で出てきたら皆慌てそうだからなるべくなら誰もいない時にな」

『う、うむ。 それでな、主君。 ……また会えて、私は嬉しい』

「ん? ……ははっ、それは俺もだな。 ……またよろしくな」

『は、はいっ!』


 花開く様な笑顔を見せた雅、真っ赤な髪は情熱を感じさせた。

 スッ……と消える雅――次の戦いももしかしたら二対一かも――いや、絶対二対一になるはずだとヒルトは思った。

 戦いの流れが一夏を除いて女子ばかり――最後も未来とエレン、ラストに一夏という流れだろう。

 幾分軽くなった身体を解しつつ、俺はイザナギを纏う。


『マスター、このままパッケージ装着で良いですかぁ?('◇' )』

『勿論だ。 外す理由はないしな』

『了解なのですよ('◇')ゞ 雅ちゃん、ボクが本妻なのでよろしくなのですよぉ( ´艸`)』

『な、何をいうか。 さっきも言ったが本妻はあくまでも私だ。 私は主君と接吻を交わした仲だ、故に私が本妻だ』


 確かにキスしたが、あれはコア・ネットワーク空間から出る方法の一つの筈だが。


『ち、チューならボクだってあるのですよぉ!(*^)3<;-_-)』


 ……てか無いし、まだ俺ナギとちゃんと対面してないが……。


『む? ……フッ、だが私の方が最初にしている』

『ぼ、ボクは昨日したのですよぉ!(`ε´)』


 してないしてない――内心突っ込むが、正直二人の喧嘩を見るのもしんどかったので大半の機能をオフラインにした。

 その一方では――。


「ふむ、おかしいですな?」

「オーランドさん、どうなさいました?」

「いやなに、劉さん。 ちょっと我々の権限で調べていたのですが――先程我々が外で立ち往生してる時にあった騎馬戦で使われたISを見ていたのですよ」

「ほおほお、それでそれで」


 突然何か喋り始めた二人を怪訝そうな表情で見る千冬と真耶、会長であるレイアートは席を外していた。


「うむ、おかしいというのはですね。 機体数が合わないのですよ」

「ほおほお? ……あれ、学園保有の機体の数はあってるではありませんか?」

「そうですか? それはおかしいですな。 ここの機数が正しいのであれば……」


 二人は示し合わせたかのように真耶を見た、ぎょっと目を見開く真耶――。


「【何故先程のコスプレ生着替え走の時に山田先生がISを使えたのかが】腑に落ちないのですよ」

「成る程……それは確かに腑に落ちませんな」


 ニタニタと笑う二人に、真耶は咄嗟に千冬の後ろに隠れた。

 ため息を吐く千冬。


「申し訳ない。 山田先生の機体をカウントするのを忘れていただけです」

「ふむ? ……それは本当ですかな?」

「……何が言いたいのでしょうか?」


 千冬の睨みに物怖じせずにオーランドは呟く。


「いえいえ、我々の調べとは違っていましたのでね。 ……ですが、一応その機体の出所を知りたいものですな。 まああくまでも例えですが……仮に出所不明な機体をお使いであれば、いくら学園教員でも厳罰は免れませんぞ?」

「…………」


 この男にそれほどの権限があるとは思えない、だが不明瞭な事で学園全体を混乱させるのも良いとは思えなかった。


「……山田先生が使ってる機体は彼女が代表候補生だった頃の機体です」

「ふむ? ……それはつまり、専用機という事ですかな?」

「……えぇ」

「成る程。 ……劉さん、今のを聞きましたな?」

「勿論です! 私のこの耳! でちゃんと聞かせていただきました」


 オーバーアクション気味の劉に、オーランドは。


「では……山田先生。 この有坂ヒルト代表候補生選出の為の試合、出ていただけますかな?」

「え? そ、それは……一応、教師ですし、むやみやたらに生徒と戦うのは如何なものかと……」


 事実そうだ、授業で模擬戦や御手本を見せることはあっても生徒と戦うのは教師の本分ではない。


「ふむ。 ……出ていただけないのであれば、我々は視察の時間が迫っているのでおいとまさせていただきますかな」

「……ッ!!」


 苦虫を潰した表情になる千冬――この男にどれだけの影響力があるのか知らないが、委員会が一枚岩ではないこと、大半が有坂ヒルトの候補生選出に同意をしていない事――もし今、反対派が帰ればヒルトが全員に勝とうとも、真耶が戦わなかった事実をあげて確実に槍玉にあげる筈だ。


「……山田先生、準備をしろ」

「え? ……で、ですが織斑先生――」

「準備をしろ。 この模擬戦の勝敗の行方はわからないがな」

「……はい」


 千冬の表情とその言葉に、自分達の力の無さを痛感した二人。

 ヒルトは負ける――教師である自分達がヒルトの候補生選出に立ちはだかる壁になるのだから。


「ハッハッハッ、結構結構。 会長も仰ってましたからな。 【専用機持ち全員と戦って勝利】したら――とね?」

「左様、私もちゃんと聞きましたからな。 この耳で!」


 満足そうに笑う二人に、千冬はぐっと握り拳を作り、堪えるだけだった。 
 

 
後書き
そろそろ反対派のヘイトがmaxになりそうですな

次はバトルっす 
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