| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

KANON 終わらない悪夢

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

28新興宗教

 その頃の学校。
 最後の授業参観の後、放課後に香里を応援する生徒達が集まり、早速準備を始めていた。
「やっぱり、ドレスはしっかりした物にしてやりたいな、生地も良いのを使ってさ、後は靴とかヴェールにブーケもいるし」
「ええ、みんなでカンパしてもらったら、いい生地も買えるわ。ミシンもあるし、裁縫とか手芸の得意な子がこれだけいたら、装飾も沢山付けられる」
 そのリーダーは神父役の「王子」、六時間目が終わると自然に周囲に女子生徒が集まり、委員長を始め、香里の周りに駆け寄った女達が集結していた。
「結婚式の会場にする教室と、披露宴に使う体育館の使用申請は通ると思うわ、PTA会長のうちの母から出すから問題ないはずよ。申請内容は「新入生歓迎舞踏会」でいいと思う、そうしたら参列者がドレスでもおかしくないし、香里と相沢くんも正装して、着替える場所とかも確保できるわ」
 やはり事務手続きには慣れていて、さらに権力者もバックに付いている委員長。家族まで委員長体質らしいので、放送協会まで巻き込んで、悪どい手法で教師や生徒会も黙らせ、大々的に披露宴まで開催して「全校生徒の前で祝福する」おつもりらしい。
「でも指輪はどうするの? 安いステディリングでも良いとして、それも「裏切りの印」になるとイメージが悪いわ」
 栞を包囲していた不倫賛成派「歩」「香車」「桂馬」「銀」といった面々も加わり、具体的な計画が練られて行く、香里の脚本は自立歩行から自己学習、自律進化できるまでになり、ターミネーター並みに周囲の人間を大量に巻き込んで大騒動に発展して行った。
「やっぱり時計よ、「二人の時間を繋ぐ愛の腕時計」なのよ、悪いイメージなんかあるはずないもんっ」
 もしこれが許可も取らず、数日以内に内緒で教室を使い、放課後に小さな式をしておけば、誰の妨害も受けずに済んだはずだが、ドレスの製作にも力を入れ、二次会として体育館を借りきって舞踏会件パーティーを行い、盛大な物にしようとしたことが仇になった。
 生徒会、教師、倉田家、天野家、月宮家、秋子等など、様々な人物の耳に入ったため、沢山の横槍が入る事態となった。
 もちろん天使の人形からも指示があり、面白おかしい喜劇?が起こるよう手配済みなのは言うまでもない。

 さらに同時刻、学校の廊下で屯している男達。
 教室での香里の絶叫告白、さらに既成事実として公表された「奇跡の故意?シーズン2、たった一晩の奇跡の故意」を聞かされ、「香里の幼なじみで初恋の相手でもあり、当時からずっと好意を寄せていて、いつか男嫌いを治してやって告白して、これまでと同じように、これからも一生を共にするつもりでいた女なのに、一月に転校してきたばかりの男が想い人の妹を堕とし、面識もあって知り合いだった栞と結ばれて義理の弟にでもなるのかと思えば、入院後にはもう一人の幼なじみである名雪までヤられてしまい、さらに栞の命の恩人になって姉にまで好意を抱かせ、香里本人が倒れた後にはその口から告白させて、その夜のうちに結ばれ、一生の伴侶になるはずだった女を「トンビが油揚げをさらう」ように盗んで行って、さらに今朝は隣のクラスの女にまで手を出した話まで聞かされ、呪いのビスクドールになってしまった北川」、を慰めるため、北川のマブダチを始め、様々な男達が何かに呼び寄せられるように集結し、仮称「相沢祐一をボコる会」の第一回会合が非公式に行われていた。
「北川、大丈夫か? 俺らが力になれるなら何でもするぞ、言ってみろ」
 壁殴り代行業者になってしまった親友を見て、泣きながら骨折している手でコンクリート壁に正拳突き百本の苦行を続ける気の毒な男を見ていられず、男達が押さえつけて壁殴りを中止させた。
「へへっ、ほっといてくれよ、今日の俺は何をしでかすか分からねえぞ?」
「とりあえずカラオケにでも行って騒ごう、デカイ声でも出して叫んでたら気も晴れる」
 学生の身分だが、ここまで荒れた親友を見ていられず、停学覚悟で酒でも飲ませて憂さ晴らしをさせようと思う男達。
「「「「「「俺らも付き合うぜ、ご同輩よぉ」」」」」」
 泣いている男達が北川を囲み、これまでも「キッツイ性格で男嫌いだが、それも含めて好みで、美形度とスタイルの良さでは舞にも匹敵する、三年ではトップクラスの美人で成績も良かった香里が好きで、告白して全滅していた男達」。
 それに「よく寝ている所を拝見して、ムーミンか、たれパンダ系で寝顔が可愛い、陸上部で頑張っている所もオッケー、という名雪が好きだったのに、同じ家に住んでいるのを利用して、あの可愛い笑顔と寝顔を穢されてしまい、大して好きでも無いくせに乙女を踏みにじりやがった上にヤリ捨てしやがって、あのクソ野郎! あのムチムチのぶっとい太腿と、ぶっといふくらはぎ、走るのに邪魔にしかならないデッカイ胸、ブルマからもはみ出す超デカイケツは俺らの憧れだったのにっ!」と言いたい変わった趣味をお持ちの男達。
 隣のクラスや同学年からは「小柄で可愛くて貧乳で運動も苦手な?お嬢が好きだったのに、あの極上の貧乳と中学生同然の体型の価値も分からないくせに「セックスフレンド」として抱いただと? 小学校の同級生でお互い初恋の相手だっただと? 体に一生消えないような刺青?まで書きやがって、てめえもどうせ、お嬢の金目当てなんだろ? 俺らはあの貧乳と幼児体型と、チンチクリンでチンクシャで、こまっしゃくれた表情まで好きだったんだよっ、クソ野郎がっ! 絶対にテメエのケツも掘ってやるっ!」と言いたい男達。
 さらに二年からは、「小中学当時から病弱だけど大人しくて優しい栞さんが好きだったのに、花でも植木でも動物にでも優しくて、死んだり枯れただけで泣いてしまうような気が弱くて気立ての良い子をヤリチン野郎が喰いやがって! クラスのクソ女のイジメからあの子を守ってやってたのは俺達なんだよっ、栞ちゃんに頼まれたからってその姉さんもだと? 入院した後は、あの毎日手を繋いで寝ながら通学してる従姉妹の女に乗り換えた? その従姉妹もヤリ捨てて初恋の女と再会してまた乗り換えただと? 許せねえ許せねえ、テメエは人間じゃねえっ、たたっ斬ってやるっ!」と言いたい男達が、何者かに呼び寄せられるように北川と嫉妬マスクの周囲に集められ、男達の悲しい恋が破られ、その純情を踏みにじった、ただ一人のクソ野郎に対して互いに呪詛の言葉の数々を吐露していた。
「絶対にあいつのナニを、もいでやる」
 既に「もげろ」ではなく「もいでやる」と呪う男達。自分の好きな女が祐一ごときのために教室でも告白したり、自分たちの目の前で結婚式までヤられるのに耐えられず、夜間に金属バットで襲撃して、オットセイ君とタマタマの切除手術に必要な大型の剪定バサミなども用意していた。
「俺はホモの先輩に頼んで、アイツのケツを掘ってもらうんだ、そのためなら先輩に俺の処女?を差し出してもいい」
 何か本末転倒していて、自分の乙女?まで犠牲にして祐一をレイプさせようとしている隣のクラスの男。真琴をヤられた恨みを晴らす為なら、どんな犠牲も厭わないらしい。
「俺らの憧れの爆乳と、ブルマからもはみでてしまうどでかいケツ、ぶっとい太腿、膝と同じぐらい太い足首、あんまり括れてないウェスト、走ってるそばに行ったら「ドドドドドッ」て地響きが起こって地震も起きるんだぞ? あれをオカズにどれだけヌイたか、あいつは知らないんだ。それを使い捨てにしやがって、畜生っ」
 何故か名雪が祐一に別れ話を切り出されているのも学校中に知られているようで、始業式に栞が復活して、名雪の秘めた故意?が破れ、さらに香里によって祐一がレイプされたので、秋子から祐一攻略が解禁になったのを知らされた妖狐関係者(真琴一行)などが大々的に宣伝し、女子の間だけではなく、上記の女が好きだった連中に「もう中古品だけど、それでも良かったら声かけてやって、後釜にでも座れば、あはははははっ!」と笑われ、男の矜持も痛く傷つけられたらしい。
「栞ちゃんは汚れてなんかいないっ、あの子はまだ処女なんだ、「誤解?しか寝てない」からセーフなんだよっ」
 奇跡の故意?を信じない男も、色々と拡大解釈をして悲しい願望に縋って耐えていた。
 本人が「手を繋いだりキスであんだけ元気が出たんだから、ヤっちまえばどんだけ健康になれんのよ? まあこれから死ぬんだし今生の別れに一発…」などと姉と同じ思考回路で考え、わざわざ祐一の部屋に転がり込んで「カモがネギ背負って来た」状態で「一晩中生でヤリまくった」のを受け入れられない男もいた。
「現実を見ろっ、あの子もヤリチンのクソ野郎に全身舐め回されて、明るい所で隅々まで見られて撮影もされて、汚いブツをぶっ込まれて中に出されてナニもかも汚されたんだよっ、どいつもこいつも女同士の自慢話で「え~? ヒニンってなんですか~? 保険体育ニガテだから、イミワカンナ~イ」って言いやがったんだよっ、何回中出しされたとか、口でもヤッて飲んだとか飲まないとか、そのレベルの話なんだよっ!」
「ぎゃあああっ! 嘘だっ、嘘だああああっ!」
 夢を見ている野郎にも現実を突き付けて、自分の仲間に引き込んだ野郎ども。香里のセリフは妹の妊娠の心配をした時に聞かされた自慢話が元ネタらしく、初日に五、六発お済ましになられて、「前の方がヒリヒリするし血だらけで、もう入らないから口で咥えさせられたし、指でホグされて、もう少しでア○ルバージンまで卒業する所だった」などとホザいたのが、姉に対する最初の挑発と勝利宣言だったらしい。
「畜生、チクショウッ!!」
 もちろん翌日以降は、「学園一のお嬢様で、セレブな雰囲気満載でロイヤルオーラもバリバリ、それなのに気取らず驕らず誰にでも優しく接して、毎日徒歩で通学して雨の日だけ学校裏にひっそりと自動車通学、何とビニール傘で登校して取られても気にせず(政治家の演説に使う数千円するビニール傘)、特に生徒会関係者や前生徒会長の久瀬、成績優秀者や教師からも絶賛されて好かれていて、唯一「川澄舞」などと言う不良娘とだけ親しく交際していたのだけが問題で、卒業式に絶叫告白の列まで出来たが「男性とお付き合いする予定はありません」とたった一言で全滅。「ガチ」「バイ」とも噂されていたのが「ガチ」だと確信に変わり、後輩女子からも絶大な人気を誇っていた議員の娘、倉田佐祐理お嬢様まで喰われ、「一弥」などと呼ばれているのを見過ごせない男女と卒業生男子」が参加するのは間違いない。
「俺、あいつをぶん殴ったら川澄の姐さんに告白するんだ……」
 さらに「クールで無口で格好良く、美形度とスタイルと運動神経では学園トップである「舞お姉さま」まで喰われてしまい、ファンクラブの後輩女子や、卒業生の先輩やヤンキー、暴走族、武闘派の不良男女からは「君臨すれども統治せずの裏番」として崇拝され、中学時代から木刀一本だけで、まるで十六夜京也か銀さんのような火力で「無敗無敵伝説」を持ち、チョイワルでガチの格闘系の関係者からも、過去の教訓から「殺戮天使」として一目置かれ、地域でも麦畑だったこの土地、現在の高校だけは舞のナワバリで他からの侵略を許さず、治外法権として存在していて、天上天下の主人公と同じで「木刀でぶっ飛ばされてからは一目惚れよ」みたいな感じで、負けてからは舎弟気取りで、特攻服の背中に「川澄舞命」と刺繍した族や、舞の痛車が多数走っていたり、姐さんを警護する順番を争って抗争したり、「舞と同じ学校の制服を着ていればカツアゲからも抗争からも免除」という特典まであったにも関わらず、「川澄舞姐さんは男にヤられて腑抜けになって引退、卒業」などと聞けば、「姐さんをヤりやがったクソ野郎はどこのどいつだっ?」と地域全体の不良どもが学校に押しかけ、祐一が西部の掟?で「広場に連れて行かれて高い所に吊るされる」「首にロープを掛けられたまま族車に引き摺られ、遠距離ドライブに連れていかれる」のは規定事項なので、連中の耳に入り次第校内で血の雨が降るのも確定していた。
 ついでにオマケとして、「乱暴で男っぽい喋り方をしているが、気さくな奴でサバサバしていて竹を割ったような性格で男の友人も多く、ガサツでお転婆なのでよく下着まで見えてしまってドッキリ、友情から愛情に発展してしまったので告ったが、「ダチとは付き合えねえ」と断られ続けているのに、一月に来たばかりの転校生に寝取られた」と聞けば我慢出来ない男達や、「サラサラの猫っ毛とポニーテールが綺麗で、引き締まった体でスタイルも良く、食べるものに制限があって何か宗教ヤってるらしいけど、それ以上に人柄も良くて愛想も良く、結構可愛い部類に入る女の子が、ヤリチンのクソ野郎を「王子様」などと呼び始めて早速喰われた」と聞けば黙っていられない男子、「背が高くて武道もやっていて礼儀正しく、運動神経も良くてもの凄いスピードで、空手部の男子より強いはずの女が、クソ野郎にヤられてしまった」と聞けば、正拳突きを百回と足蹴りも百回、回し蹴りから脳天唐竹割りも入れてやらないと気が済まない連中がいるので、明日からの祐一くんの周囲ではバーリトゥードの反則技が炸裂し、「黄色い悪魔」に対して、草も木もないジャングルで、血を呼ぶ罠が待っているらしいので、舞ちゃんや栞ちゃんに守ってもらわないと生きていけない状況に陥った。

 また舞の家。
『さて真琴、貴方達の目的は何ですか? 正直におっしゃい』
 佐祐理によって舞の左足の魔物を詰め込まれてしまった真琴。心を穢され、体の自由を奪われ、じわじわと全身を蝕まれていく恐怖に襲われたが、痛みは無く、逆に心地良い感触が身を包んでいった。
「ヤッタネ、ミャハッ!」
 魔物に支配された真琴の第一声はこれだった。自分でも何故こんな声が出たか理解できなかったが、左足に潜む使い魔が新しい体に喜んでいるのは分かった。
「お嬢っ!」
「おい、大丈夫かっ? 何をしたんだっ、お姉、さま?」
 佐祐理を追求しようとしたが、名前を呼ぶこともできず、自分の口からは「お姉さま」としか言えないのに気付き、相手の術の強大さに恐れおののくザコ1号。
「何てことだ……」
 これでもう里に連絡することはできなくなり、「真琴お嬢様が川澄舞の夜の使い魔に取り憑かれて、災厄を起こしている連中の仲間になった」とでも言えば、頭の固い古老達から抹殺指令が出て、下手をすれば別の追手が出されて自分たちの身も危うい。
 真琴一行は佐祐理に一手先を読まれて極太の釘を射されてしまったのに気付いた。
「え? あれ? 大丈夫みたい、最初はちょっと驚いたけど、香里が言ってたみたいに相棒が一緒にいてくれる感じよ」
 特に幸せな出来事がなくても、何の後ろ盾も無くても喜びに満たされている真琴。確かに祐一と結ばれて、佐祐理お姉さまとも結ばれて幸せ一杯なのだが、それ以上にドーパミンが出続けて苦しい日常から開放されていた。
 心の中に舞の使い魔がいても、考えている内容のプライバシーはある程度守られているようで安心する。
 しかし体とか胸とか股間とかのプライバシーは守られておらず、明るく楽しい舞お姉様のテクニックで魂までペロペロされて天国にイカされたり、「信じて送り出したお姉さまに、フタナリ舞お姉さまのプレイにドハマリして、アヘ顔ピースで写メを送ってしまいそう」なのはプライバシーの問題なので他の三人には隠した。
「貴方も舞の魔物に体を強化してもらいなさい、もう寿命を気にすることも無くなって、誰にも気兼ねせず自由に生きられるんですよ。さあ、貴方は一弥に何をするように言われて来たんですか?」
「はい、お姉さま」
 佐祐理に問いつめられると、真琴は自分の鞄を漁り、一つのパンフレットを出した。それは建設中の大きな宗教施設の写真を表紙にした、悪い噂の絶えない新興宗教の物で、「月宮稲荷神社総本山」と書かれていた。
「エ? コレッテ?」
 奪い取るように受取った祐一がパラパラとめくっただけで、献金などスキャンダル塗れの地元国会議員の祝辞や、広告塔に使われているイカれたスポーツ選手や芸能人の信者が成功体験を語る、胡散臭い内容満載のパンフレットだった。
「もう私達と相沢くんの仲だし、お姉様にも教えてもいいよね」
 その中で「教主様」として紹介されている女性は「化粧や口紅さえ不浄」と言いたげに白装束に袴姿なのはまだ良かったが、何となく「年をとった真琴そっくり」なのが気になり、隣のページの「猊下」という奴がネックレスだか宝玉の付いた数珠でジャラついていて、手首や指も装飾品だらけ、背中には羽根まで背負って、如何にも金の亡者の新興宗教関係者なので気分が悪くなった。
「今から八年前、「教主」であるお母様が「天啓」を受けて実家に帰った後、「開祖」として新しい教義を唱えて開かれた宗派です。「天孫として降臨」なさった方々の末裔、相沢くんや秋子様のような「神通力」を持つ方々を「現人神として崇拝」し、病気など癒やしを求める方だけでなく「一切衆生を救済」して行こうとする、暖かい教えを求める者の集まりです」
 どんどん危ないセリフが積み重ねられ、今すぐにでも回れ右して逃げ出したくなった祐一。
 この子の両親の離婚原因は明らかにこれで、夢か妄想で「変な声」を聞いちゃって宗教にのめり込んで、さらに教祖にまでなった女と別れ、おかしな教義を信じた娘も見捨てて逃げ出した旦那の気持ちがよ~~く分かる祐一クンは、長めのうぐぅの音を漏らした。
「うぐ~~~~~~~~~~~~~ぅ」
「まあ、そうだったんですか」
 これだけ危ない単語が並んでも、恐怖を感じていない佐祐理は、いつもの笑顔で受け止めた。
「私達の実家である神社を継いでいた、「教主様の弟君」でいらっしゃる「猊下」にも大変良くして頂いています。今回教主様と猊下から与えられた指示は、相沢様のような力ある「現人神様」からお胤を頂いて、いつか一切衆生が全員力を持って色々な術も使えるようになり、皆が健康になって事故などにも遭わず、願えば何でも叶う天孫降臨の当初の時期に戻し、五十六億八千万年の彼岸から弥勒菩薩にも下生頂き、この世を極楽浄土となさんとするのが目的なのです」
 神仏習合されているのか、結構出鱈目な教義にも度肝を抜かれる祐一。悪の秘密結社の正体は、一般人から集金しまくる危ない宗教団体だったが、目の前の女はその団体の中核の一族で、教祖の母や猊下と呼ばれる叔父さんが教団を管理していて、自分と名雪と秋子や両親は「現人神」と呼ばれる神様扱いらしい。
「信者の皆さんも良い方ばかりで、この度の「相沢様」との契約の終結、婚約にも大変お喜びになられ、週末の「大躍進集会」にも是非参加して頂こうと仰っておられます」
 その信者とやらの写真も、目の前の女と同じ瞳孔が開いたような狂信者のヤバい目付きをしていて、全財産を吸い取られて献上させられた上、宿房に入って変な修行したり、タダ働きで布教活動、その上で夜の仕事でもさせられて収入も全部「天の上に積み上げる財産」として猊下とやらに喜捨させられているのを感じ、怖すぎて声も出ない祐一クン。
「私の本名は月宮真琴です。この地域でこの名前だと、すぐに関係者だと分かってしまいますから、学校では祖母の苗字を名乗っています」
「ソウダッタンダ」
 どうやら、あゆの親戚で妖狐の一族のようだが、教義や集金方法が危ない方面に行ってしまって、一族や神道、稲荷神社関連からは除名されているらしい真琴の実家。悪い噂は高校生の祐一でも知っていて、連れて行かれると洗脳されてしまう。
「土日はぜひ集会に来てくださいね、うふふ」
 とんでもない地雷女を掴んで「所有権設定」までされてしまい、まるで38度線かカンボジア辺りを徒歩で歩いて、ブラックウィドーに片足を吹き飛ばされた後、対戦車地雷でも踏み抜いて成層圏まで飛んでから、クレイモア地雷に囲まれて同時指令爆破で全方向から小さい鉄球の雨でも喰らった気がしていた。
「あの…… ダイヤクシンシュウカイって何ですか?」
 香里や佐祐理以上に感じる恐怖感を払って、どうにか声を振り絞り、今週の「終末」の自分の運勢を訪ねてみた。
「はい、駅前から直通バスが出ていまして、土日には沢山の信者の方が集まるんですけど、今週は相沢様にも是非おいで頂いて「青年部の女性達」から「沢山の花嫁候補」と歓談して頂き、宜しければ「合同結婚式」を開催して「沢山の子宝に恵まれれば良い」と思っております」
 祐一の「終末」は、ヤバイ目付きをした山のような地雷女と見合いして、「合同種付け式」が行われて輪姦された上で種を搾り取られ、見ず知らずのメンヘラ女との子作りをする種牡として召喚されることに決定した。
「まあ、一弥が喜びそうなお話、ふふっ」
(オネエチャン、ワカッテナイヨ)
 オットセイ君の性的欲求やタマタマの動議で、心の中で会議を開催したが、二秒で否決され、祐一の最優先課題は、どうやって終末?に、この女達から逃亡するかが議題となって会議が紛糾した。
「…祐一は私達だけの物」
 何故か祐一がチョップを食らい、壮大な浮気は許可されなかった。どうやら舞も「ゴージャスさゆりん」の固有結界に捕らわれていて、佐祐理が認めた相手との浮気は許すようだが、見たこともない相手との浮気は許されなかった。

「それと少し気になることがあるんですけど、今年は以前から教主様が予言されていた破滅の年で、もうすぐその時期が迫っているんです」
 新興宗教にありがちな終末思想までセットで付いていて、サンキューセットでお買い得な状態らしい。
 これはもうヘールボップ彗星に乗ってイエス様に会いに行った団体みたいに「人類最後の日」に集団自殺するのか、どこかの教団のように自分でテロを起こして終末を自作自演するのか分からないが、どの道碌なことにならないのはよ~~~く分かった祐一クンは、また長めのうぐぅの声を漏らした。
「うぐ~~~~~~~~~~~~~っ」
「今回の災厄が関係しているようにも思うんですけど、教団の地下にもシェルターを作って準備している所です。いざとなったら皆さんも来て下さい」
 ここで「危ないのはオマエラだよ!」と言いたかったが、何とか口をつぐむ祐一。「終末の日」だか「約束の日」にはシェルターに集まって、ノストラダムスだかインカ暦の終わりが来ても、解釈を間違えたとか言い訳して、年度と日付を変更して集金を続けるらしい。
「ええ、うちのお母様もお祖父様も、今年は何かがあると仰っておられました、気を付けないといけませんね」
「…うん、今年は危ない」
 何故か佐祐理と舞まで賛同してしまい、ハブられる祐一と栞。長期の未来予知ができる人たちの間では、今年中に何かが起こるのは既定路線らしい。
(チガウ、チガウ)
 真琴の隣にいる付き人は完全に汚染されているようだったが、少し離れているザコ1号、チョロインさんは、自分たちと危ない目付きをした女とは違うと言いたげに、手で境界線を引いて首を振り、小声で念話しながらアイコンタクトで言い訳をしていた。
(この二人は大丈夫なんだ)
 それでも弱みを握られているのか、金にでも困っているのか、「相沢様の子種を頂戴して妊娠する」所までは承諾しているらしい二人。信用はできないが、逃げ出すときは手を貸してもらえるよう期待した。
「ハハッ、ネエサン、ウチノ宗派ハ、ドコダッタカナ?」
「さあ? 仏教だと思いますけど、宗派までは?」
「ミンナハ?」
「…知らない」
「うちの母は神道だったと思いますけど、お父さんが仏教なので、そっちに合わせたはずです?」
 佐祐理か栞ぐらいの答えが一般的なはずだが、宗派どころか仏教なのか神道なのかも知らない祐一と舞。案外クリスチャンだったりするかもしれない。
「何だか楽しそうですね、舞も行ってみますか?」
「…行かない」
 病んでいる佐祐理には宗教的な救済が必要になりそうだが、舞は病院で言った過去のように「奇跡」だとか「超能力少女」として神扱いされ、ヒーリングに利用されて嫌な思いをするのが嫌で即座に断った。
「栞はどうですか?」
「あ、土曜は秋子さんに呼ばれていて、何かアルバイトがあるそうです。日曜は確か、お爺さんの所に行くはずです」
「そうですか」
 先日言っていた「割のいいアルバイト」に呼ばれていて、無事新興宗教の集会からは逃げられた栞。祐一も是非そちらに呼んで欲しかったので、カマをかけてみた。
「アレ、それって俺も行くんじゃなかったカナ?」
「いえ、祐一さんは来ちゃいけないそうです」
 恋人に助けを求めたのに、あっさり断られたので仕返しかと思ったが、素で答えたようなので、自分には見せられないナニかをするらしい。
(まさか秋子さんに栞が……)
 秋子お姉様に栞が食われてしまうエッチなアルバイトの怪しい妄想を開始しようとしたが、舞と佐祐理には心を読まれ、即座に知られてしまうので断念した。
「何か言いましたか? 一弥」
「いや、別に」
 舞の冷たい視線にも気付き、妄想を断念したので助かったような気もした。
(オ姉チャン、ボク、イキタクナインダ、コワイヨ)
「大丈夫ですよ、一弥にはお姉ちゃんが付いてますから」
 子供の心の声で佐祐理お姉ちゃんに助けを呼んでみたが却下され、怪しげなミステリーツアーに強制参加させられそうで、背筋が寒くなる。
「さっきも言ったけど、アタシにも病気の妹がいるんだ、土曜に呼ぶから治してやってくれ、それがアタシの処女の代金だ」
「エ? アア」
 香里の処女の代金(210円、消費税含む)より高く付きそうだが、ザコ1号の妹の治療も約束してしまった愚かな祐一クン。
 これが病気の「弟」とか「父親」「お婆ちゃん」なら即座に断ったが、手を繋いだり、キスするぐらいなら大丈夫と思って安請け合いしたのが裏目に出た。
「私のお母さんもお願いしていい? その、エッチまでしなくていいからね、手を繋いだり、キスぐらいまでで……」
「手ヲツナググライナラ」
 チョロインさんにも病気の家族がいたようで、「いくらなんでもBBAとエッチまでは無理」と言いたかったが、「秋子さんみたいに若々しくてピチピチしてれば?」と思うマヌケな祐一クンだった。
 この二人は病気の家族を人質に取られて祐一の所に来たようだが、残りの二人は教義に賛同しているのか、何か報酬でもあるのか、怖くて聞けなかった。

「さて、こんな大勢で押しかけているのが舞の叔母様に見つかるとご迷惑ですから、そろそろお暇しましょうか?」
 ヤルことをヤって満足し、録画も済ませたので帰ろうとする佐祐理。他の一同も身支度を始めて服を着たり、乱れた着衣や髪を整え始めた。
(あれ? アタシもう、お姉様に逆らえないや)
 佐祐理お姉様と舞お姉様に可愛がられて全てを奪われて所有権設定もされ、ついでに祐一に種付けされてしまったザコ1号は、正気を保っていたつもりだったが、佐祐理の命令に逆らうこともできず、次の指令を待っていた。
「舞も今日はうちに来てくれる」
「…いいの?」
「ええ、一弥も一緒に帰りますし」
(決定事項なんだ……)
「ええ」
 祐一クンには選択肢は存在しないらしく、「弟は姉と一緒に家に帰るものよ」と言われるのが決まっているので質問もできなかった。
「皆さんはどうしますか? 真琴と栞は連れて行きますけど佐祐理の家に来ますか? それとも「何か三人で話し合いたいこと」でもありますか?」
「いえ、お姉さまさえお邪魔でなければ喜んでお伺いします」
 怖い顔と声で聞かれ、お嬢まで連れて行かれるので同行を願い出る一同。めくるめく課外授業にも期待したが、夜の使い魔まで憑依させられた真琴を一人で放置する訳には行かなかった。
「あの、お泊りですか? それでしたら一度家に帰って用意したいんですけど? 10分で走って帰って来ます」
 中身が入ったままの弁当を持った栞が、「残飯は温め直してお父さんの晩ごはん」と言う悲しくもあり、食べさせられる本人だけは「昼の弁当と同じで愛娘の作った120点のご馳走」として喜んでいる哀れな日常を思い出し、一時帰宅を申し出た。
「無理はしないでいいのよ、栞。走らないでも車で家まで送ってあげるわ」
「え? はい」
 縮地で走れば一瞬、などと思っていたが、実際は赤信号でも車の間を走って抜けるので危険極まりない。先程は緊急事態だったので一時的な同盟者が転げ落ちても気にならなかったが、今は佐祐理お姉様の妹同士なので無理はしないことにした。
「急なお客様ですから、お寿司でも取ろうかと思いますけど、何か好き嫌いはありますか?」
「私達は食事の戒律があるんです。生臭物と穀類が食べられません」
 宗教色がキッツイ皆さんは、お昼のお弁当と同じく、肉類や魚、ついでに穀類もダメなのを思い出すが、「その時点でヤバイ宗教だと気付けよ、俺!」と思う哀れな祐一クンだった。
「ベジタリアンのお食事も用意できると思いますから、ぜひ一度うちに来てください」
 怪しい四人、特に魔物も入っていない三人を泳がせる訳にはいかず、せめて一晩掛けて真意を問い質し、外部に連絡できない状態で拘束しておきたい佐祐理。
「宜しければお姉さま方や皆さんを、私達のマンションにご招待しますが? 食べ物では余りおもてなしできませんけど」
 祐一としては「初恋の女の子との初体験ビデオ」を視聴したり「全裸を撮影したメモリーカード」を回収したい欲求はあったが、怪しげな宗教団体の支部に入り込むと、イニシエーションされたり、また精子サンプルを沢山搾り取られたり、信者のメンヘラ女子と交尾させられそうで、是非ご辞退したかった。
「うふっ、女の子がいっぱいのパジャマパーティーも楽しそうですね~」
 佐祐理的には楽しそうな、女の子が山盛りのお泊り会、しかしその中で一人だけの男には精神的にも肉体的にも負担が大きかった。
(ジャイアントバズーカ、残弾ゼロです)
 如何に「処女は別腹」とは言え、朝から十発も発射した祐一クンは、前日に溜め込んだ発射回数も使い果たし、特に子種は空になって泡しか出ない状態に陥っていた。
(ボクモ、秋子サンノ家ニ帰ッテイイカナ?)
 色々と秋子に聞いてみたい話もあり、できれば宗教地雷女から離れて、そのまま家に篭ってしまいたい祐一。
「嫌ですね~、一弥はお姉ちゃんと家に帰るんですよ~」
 一段と病んだ目で答えて下さったお姉ちゃん。ゴリラとクマを合わせたような両手で肩を掴んでくださったので、ホセメンドーサに肩を掴まれた矢吹ジョーみたいに、肩に手の跡が残った。
「イタイヨ、イタイヨ」
「あら、ごめんなさい」
 お詫びに頭をナデナデポンポンしてもらい、「遺体の遺体の翔んで逝け~」までしてもらえたが、字が間違っているような気がして怖くなり、故意に間違えたのだと気付いて続きは言えなくなった。
「一弥はどっちに行きたいですか?」

 選択肢
1,佐祐理お姉ちゃんに同行して、病んだ目のまま引き摺られて、家族や使用人にまで「一弥を連れて帰って来ました~」と紹介され、逆らえば混乱して錯乱して興奮して逆上して毒入りになって麻痺して石化して発狂して暴行され、「いつものように」手首を切り始めたり、とんでもない目に合わされるので、使用人達も家族も無かった事にして「一弥」と呼び始めるが、佐祐理の妹イコール祐一の愛人になり、残りのメンバーも佐祐理が落とせば幸せな未来が? とは思ったが、一歩でも踏み違えると大型地雷を踏んでしまい、後日160サイズに梱包された後ハイエースされて、ホモ軍団の皆さんや熟女軍団、893屋さんなスナッ○ビデオの制作メンバーに狙われる日々を送ったり、政治家のお嬢様を傷物にした罪を背負って、お祖父様やお母様、黒服の皆さんの推薦で、四月からはどこかのグリフィスさんみたいな地下牢で、拷問三昧なワクワクドキドキの新生活をする。
2,悪の宗教団体の学校前支部に連行され、もう子種が出ないのに怪しい四人に輪○されたり、嫉妬した栞ちゃん、佐祐理お姉ちゃん、舞お姉様にも乱暴され、香里にエナジードレインを食らった後に十二発抜かれた翌朝より酷い状態になり、オットセイ君から打ち止めの赤球が出て男としての人生を終了する。さらに大躍進集会にも参加させられ、空になった所から自己治癒能力で何とか回復したのに胤を搾り取られ、ヤンデレメンヘラ軍団の宗教女に○姦されて子供も産まれ、人生も終了する。
3,パンツ一丁のまま服とデジカメを抱えて全力ダッシュで逃亡するが、縮地を使える栞には敵わずクマみたいな腕力とクマさんスタンド、アルター能力とビッグオーダーで捕まえられ、そのまま「エイトマンに救われたヒロイン」みたいな格好で「弾よりも早く
」美坂家に連行されたり、舞にも転移技で追いかけられて「ゴージャスさゆりん」の効果範囲から出た途端、栞VS舞の「物理攻撃最強は誰か? チキチキ祐一争奪戦、春の最強ロボ決定戦、ドンドンパフパフ」が開催され、舞が放った怒りと哀しみの魔物に、氷と炎の力で襲撃されても四次元技で対抗して、風と雷槌の魔物が強化中の真琴と、いつもの三人も加速しながら参加したり、力と技の風車が回っている佐祐理お姉ちゃんまで参加して、舞とマッスルドッキングした大技を繰り出されたり、美坂家周辺を焦土と化して戦闘が行われて、プチ災厄を撒き散らし、街全体を廃墟にする。
4,予想するのも怖いが、一応近未来予知などしてみて、シュミレーション後に最悪?と思われる選択をしてみる。
5,秋子ちゃんと愛の逃避行。
 選択「4」

 ここまでの窮地に陥れば、秋子ちゃんと愛の逃避行一択のような気もしたが、「ヒトリデデキルモン」の範囲で対応してみるためにも、少し予想してみる。
 祐一プチ未来予測中…… 選択肢1の場合。
「佐祐理です、爺や? これから一弥を連れて帰りますのでお迎えをお願いします。それと急ですみませんが、お客様も連れて帰りたいのでタクシーを一台お願いします。ええ、合計で「六人」のお客様です、四人分のベジタリアンのお夕食もお願いします」
 迎えに来た先ほどの年配の運転手にも変な目で見られながら、ずっと病み切った目で「一弥」と呼ばれ、助手席から運転手に「佐祐理さんは亡くなった弟さんと俺を勘違いしているようで」などと小声で耳打ちしても、心の声で全部聞こえてしまい、両側に舞と真琴を侍らせてヘブン状態だった表情が突然鬼になり、首の向きを後ろに180度回転させられて、「お姉ちゃん、でしょ?」と笑顔のまま泣きながら般若の面のような顔で話しかけられ、バックミラーで佐祐理の表情を確認したセバスチャンも歪んだ笑顔で納得し「一弥様、お帰りなさいませ」などと話を合わされてしまい、倉田家に到着後も大急ぎで話を合わせて、「お嬢様から相沢様を取り上げたり、一弥様ではないと言うと「いつものように」発狂して暴れだして手首を切ってしまうので、全員お話を遮ったり間違いを訂正したりしないよう注意して、奥様や旦那様、ご当主様にもお話して徹底するように」手配され、舞と新しい妹達を着せ替え人形にして撮影会とファッションショーをしている間も、お嬢様と高校三年生にもなる「一弥様とのご入浴」も邪魔されず、「お姉ちゃんが洗ってあげる」などとホザいて前まで洗われ「交代よ、今度はお姉ちゃんも洗って」まで許されエロエロ、お食事中にも「ア~ン」「ホッペに付いたご飯粒やソースもペロペロ」「帰宅お祝いのシャンパンの口移し」までも許容されてしまい、倉田家の中でも「ガチ」と噂され、今後とも男との恋愛など期待できないお嬢様が、やっと連れて来た男性の友人として歓待され、帰って来た奥様やご当主様が祐一を別室に連れて行って質問することなど許さず、ノーブラのままガッチリと腕を組んで決して離さないで、家族からも「相沢さん」と呼ばれると発狂寸前、「この子は一弥なんですっ!」と叫び出し「一弥」と呼ぶように強要して、寝るのも一緒、トイレに行くときも一緒、お嬢様が妹や舞以外、祐一にまでエロエロな行為をおっぱじめても許され、舞や他の子が帰っても家に帰るのだけは許されず「アキコサンとナユキの家に遊びに行く」と言ってようやく教科書やノートも回収し、ちょっとトイレに行った隙に秋子に事情を話して、着替えを詰めてプチ引っ越し、学校に行くのも車で一緒、帰るのも一緒、事故や誘拐、風邪や病原菌を異常なまでに恐れて、まるで親猫が子猫を守るように厳重に警戒して「シャーーーーッ!」とか「ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!」と言い始め、倉田家から正式に秋子に要請して養子縁組というか婿養子に来るよう頼み込み、川澄舞も倉田舞に変更、美坂家には慰謝料の支払いと政治的、法的圧力を加えて納得させ養子に、お嬢様の妹イコール全員祐一の愛人、佐祐理の妊娠検査薬がやっと陽性を示し、「お腹の中にいるのが一弥、一緒にいるのは祐一」と認識できるようになるまで異常事態が続き、ようやく正気に戻り始めた時、「お祖父様やお父様も愛人が沢山いますが、これだけの女の子を愛人に持つには、お金と権力が必要になるんです。祐一さんは倉田家の財産が欲しく有りませんか? もうこの家の後継ぎは私だけ、私さえ手に入れてしまえば、何もかも祐一さんの物になるんですよ」などと言い始め、政治家の娘さんらしい政治的な取引をして結婚に持ち込んだ。
(あれ? もしかしてハッピーエンド?)
 香里、名雪、真琴(偽)、美汐まで妹になり、秋子も頂くとミッションコンプリートになり、全員を救って幸せにできればハッピーエンドだが?
 やがて一弥を産んで「一番大切なのは一弥と舞」なのに気付いた佐祐理。祐一の扱いもおざなりになり、亭主元気で留守が良いに変更、政治家の地盤と鞄と看板を継がせて、自分は一弥と舞だけ溺愛。金や豪華な暮らしばかり要求する、年を取った祐一の愛人たちが疎ましくなり、やがて西太后にクラスチェンジした佐祐理は、自分に逆らうような妹は手足を切って……
(らめええええええええええっ!)
 急転直下、最悪のエンディングを迎え、世界さんと言葉(コトノハ)さんの剣撃が行われて、「中に誰もいませんよ」みたいなバッドエンドを拒否して予測を打ち切った。

 選択肢2の場合。
 昼間の食事にも、祐一が飲んだペットボトルにもタップリと混ぜられていた「秘薬」のお陰で、まだまだ絶倫状態の祐一クン。真琴ほか三人と舞、佐祐理にも「二回目」を要求され、パジャマパーティーのはずが、全裸での乱交パーティーに変更され、佐祐理お姉さま、舞お姉さま、祐一、の相手をさせられる少女たち。舞はガチではなかったので、ゴージャスさゆりんの効果範囲だけではタチになって、ねこさ~んの相手をしていたが、夕食に混ぜられていた「象にでも効くようなオクスリ」で祐一が「ウケケケケケ」とか言い出しておかしくなり、魔物に強化されていた栞、佐祐理も陥落、最後の砦の舞も陥落して、「修行用ビデオ」を鑑賞させられ、ヘッドホンで洗脳用の音声を聞かされ続け、翌朝には全員信者脳に改造されて、土曜の大躍進集会にも楽しく参加。舞台の上でザコ1号の妹、チョロインさんの母親を治療し、接触ヒーリング、人工呼吸で車椅子から二人が立ち上がる奇跡を起こして絶賛。別室で青年部のメンヘラリスカ女達と歓談して、宿房や宿泊所を回って種付け放題。参加していた隣のクラスのヤンキー女、ボッチ女、うるさい系統の女まで種付けし、祐一より十歳以上年上のお姉さんやらBBAまで種付け。ずっと怪しい新興宗教の教団で種牡として飼われ、オットセイ君とタマタマだけは幸せだったが、真琴(偽)と同じ「キツネ色の髪」を持つ少年少女が沢山産まれ、全員舞ぐらいの超能力を持ち始め、「妖しのセレス」みたいな青髪では無かったが、展開や末路は似たような感じで、教団のシェルターも上の建物も吹っ飛んで「終末の日」が実現されてしまう。
「うぐ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
 これもダメだった。

 選択肢3の場合。
「ユウイチサン、ドコイクンデスカ?」
 100メートル7秒を遥かに超える、秒速340メートルで移動する栞に即座に捕まり、ついでにお姫様抱っこされて美坂家に連行される祐一くん。早速自分の部屋で祐一をペロペロしようとした栞だが、空間転移してきた舞に捕まり。
「…栞、屋上に行こうか? 久しぶりにキレちまったよ」
 と言われて、春の最強ロボ決定戦が開始された。
「オンギャアアア! ガオオオオッ!」
 集合住宅の屋上でペギラに変身して、氷のブレス、異空間に放り込まれる「アナザーディメンション」を放ち、舞に対抗する栞。
「…行けっ、魔物たちっ」
 両手から魔物を放ち、右手に剣、左手に木刀を持った舞が襲いかかるが、悪魔の羽根を生やした栞が空を飛び、地上からの攻撃が効かなくなり、右手の魔物の氷雪攻撃も効かなかったが、左手の魔物の攻撃で炎上させ撃墜に成功する。
「…降りろっ」
 魔物に騎乗し集合住宅の壁を駆け下りる舞、その頃には真琴一行も到着し、戦闘に参加しようとした。
「どうすんだよっ、あんなバケモンども、どうにもならねえよっ」
『我は雷光っ!(以下略)』
 風と雷槌の力を持つ魔物に体を改造され始めている真琴も加速し、雷のスピードで栞に襲いかかった。
「オンギャアアッ!」
 鋼鉄の肉体になった栞には火炎攻撃も効かず、一時酸素不足になって落ちただけで、大してダメージも負っていない。
『ラリックマ、ラリックマ、ダレパンダ、ゲロゲロゲロッピ、キチーチャン……』
 佐祐理お姉ちゃんも、どこかの子供先生か師匠みたいな呪文を唱え「千の雷」をマギアエレベアでコンプレクシオー?しチャッテ駆け付けた。
『おやめなさい、ご近所迷惑ですよ』
 マジギレして興奮し、ゴージャスさゆりんの効果範囲でも大人しくならない一同。既に警察の装備では収拾できず、自衛隊の治安出動を県知事の権限で要請しないと無理な現場。美坂家周辺は次第に焦土と化して行った。
『舞ーーーっ!』
『佐祐理ーーーっ!』
 舞と「エンゲージ」した佐祐理は、BGMに「絶地運命黙示録」が流れる中、髪の毛はピンクになり、男子の制服の上着に金の房まで付き、赤いスパッツに変身し、舞も武闘会?に参加した時のような赤いドレスに変身した。
『『世界をっ、革命する力をっ!』』(声:川上とも子)
 舞の胸から「ディオスの剣」を引き抜き、「世界を革命」なさった佐祐理ちゃんにより、周囲は「世界の果て」と呼ばれる異世界に変換された。
「なんじゃこりゃーーっ!」
 外から見ると、どこかの「東京ジュピター」みたいな外部から隔絶された世界になり、「永遠」を求める「デュエリスト」達が「薔薇の花婿?」を巡って決闘する舞台になった学園では、キャラ設定も結構変わり、有栖川先輩みたいな香里とか、ミッキーみたいな栞も生徒会メンバーになり、祐一も理事長か「桐生冬芽」みたいな王子様系のキャラに変更され「辛さ爆発木っ端微塵、幻の象がパオーン超辛九千億倍カレー」で世界が調律されるまで続いた。
「うぐ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
 全部ダメだった。

「テヘッ」
 選択肢が5だけになり、秋子ちゃんに電話でもしようと思った途端、舞の家に電話がかかってきて、ワンコールしないうちに留守電に切り替わり、スピーカーから秋子の声が流れだした。
『みなさん、祐一さんの叔母の水瀬秋子です。今後の相談もありますので、宜しければ皆さんをうちにご招待したいのですが、こちらに来て頂けますか?』
 舞と同じ方法で電話を掛けられる秋子ちゃんは、受話器を取るだけで電話が繋がり、朝と同じ方法で祐一を窮地から救い出そうとした。
((((((あの人、何者なんだ?))))))
 この手の電話に慣れている舞と佐祐理以外、現人神様の実力に怯えていたが、物怖じしない佐祐理が電話に出て挨拶を始めた。
「どうも~、始めまして、一弥の姉の倉田佐祐理です~」
『あら、佐祐理さんとは子供の頃にもお会いしてるんですよ、もうお体は大丈夫ですか?』
「はい~、舞の魔物に丈夫にしてもらえて、一弥にも力を分けてもらえたので長生きできそうです」
 病んでいるのか、相手が事情を全部知っていると思うのか、異次元の会話を続ける二人。電話回線なのに心の声も通じて、無駄な説明は不要らしい。
「それでは大人数で申し訳ありませんが、これからお邪魔します、はい、それでは」
 電話を切って向き直る佐祐理の決定事項で、秋子の家に行くのが決まった。
『じゃあ、秋子さんの家に行きますよ、皆さん荷物を持って、忘れ物の無いようにね。舞、お願いします』
「…分かった。祐一の家」
 舞が手をかざしても、結界の影響なのか直接屋内には道を開けず、ゲートを廊下から扉の外に押し出すと、ドアの向こうに祐一の見慣れた風景が広がり、目の前に秋子の家のドアが見えた。
「転移の術…… このヒト何も詠唱しなかったよ、それに手で押して「道」を動かした、やべえよ」
 まずジャージ姿のままの舞が靴を引っ掛けてゲートを超えた。屋内同士繋がると、靴を忘れそうだった一同も、出口で靴を履いてゲートを超え、怖がるザコ1号やチョロインさんも押し込んで移動し、先程までは一般人だった佐祐理も、魔物の知識を得て、舞と「エンゲージ」しちゃったので、恐れることもなくゲートを通り、舞の家の普通の扉は、オートロックのように戸締まりされた。


(秋子さんスゲーーー)
 祐一のプレイ内容から、どの女の中に出したか全部把握している秋子ちゃん。「祐一さん成長日誌」にヤった相手の名前と、念写で出した女のカムショット、体位、回数、処女膜の有無、避妊したかどうか、妊娠か外れか、持続時間などなどを事細かに記録し、要はストーカー以外の何者でも無い秋子を見て、素直に驚く天使の人形。
(あゆちゃんは今どこ?)
(さあ、近くまで行ったみたいだけど、またやり直しだね。真琴(偽)の体に慣れたら、縮地でも何でも使えるんだけど、まあ、あゆちゃんじゃ無理かな?)
(ふふっ、そうだね)
 あゆとも知り合いで、色々と性能が低いのもご存知の一弥の霊。「あゆちゃんのゆめのなか」で育った幼なじみで友達らしい。 
 

 
後書き
話が進まない上に、日付が超えられない…… 余分な描写大杉。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧