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KANON 終わらない悪夢

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43登校

 学校、それは舞と魔物が命を掛けて守り続けた聖地、
 この世知辛い世の中から、ほんの少しだけ切り取って、モラトリアム期間という幸せな時を生きて行ける世界。周囲の地獄からは隔絶された夢の楽園。
 統計的な数値では、夜遊びを覚えた者は薬物に汚染され、毎年数十人レイプ被害に遭い、自分から夜の街に転落して行く。
 校内でもパーティー券や違法薬物が捌かれ、売る側も買わされる側も893の上納金システムに取り込まれて大抵が破滅させられる。
 舞の学校内でそんな行いをする者達の前には、夜に見えない魔物が現れて襲撃され、聖地に手出しすると命を食われて老人のようになり、酷いものは体も食われた。
 次第に舞の学校は聖域にされ、手出しすれば妖狐の反撃に会い、命を落とす場所として闇社会からは敬遠されていた。

 第四十三話
 学校に行くことにした月宮一行は、佐祐理よりも早く出て一旦アジトに戻って準備をするために、倉田家の車で警護されながら移動した。
 運転手を入れて五人乗りの車には、栞を乗せると一人余るので、ザコ2号は水瀬家から遠隔操作で自室の漫画雑誌や伝承のコピーから、自分の複製であるザコ3~5号を作り、仲間の到着を待った。
「3号は戦闘用だから学校に行く、4号は外見がお嬢だから、アタシと外を歩き回って、撃たれるならそれも良し、じゃあ解散」
 自分との会話なので手短に話して4,5号が窓から部屋を出て行く。入った形跡が無いので疑われそうだったが、精鋭は昨日、栞が片付けてしまったので敵もザコだろうと思って三階から出た。
 月宮教団にも、他の妖狐の家にも自分やお嬢の偽物が歩き回っているので、相手が公安や自衛隊でも、ロシア兵や中国人であろうが気にせず歩いて撃たれるのを待った。

「お帰り~」
 栞を先頭にしてアジトに戻った一同を迎え、内鍵を開けた座古3号。
「お前、本当に増えたんだな、何か怖いぞ」
「何言ってんだ、お前だってもう炎の化け物だろうが、一回無詠唱で何かやってみろよ」
『燃えろ』
 どこかの「紙のように燃える女」に似た女は、着火マンに放火されて燃え上がった。
「熱っ! アタシ燃やしてどうするっ! ふざけんなっ」
「いや、ブサイクが一杯いるかと思うと怖くてな、つい減らしたくなった」
「くぁwせdrftgyふじこlp!」
 栞の暴力による仲裁が入って、何とか部屋に入って話し合いを始めた一同。
「今はブサイクなお前のコピーも、お嬢や緒路院そっくりなコピーも出回ってるんだ、逆らうんならコピーをアダルトビデオに出演させてやるぞ」
「何っ?」
「現役女子高生、18歳誕生日にAVデビュー、涙の惜別処女喪失、素人図鑑vol7、が売りだされて「これ素人のフェラじゃねーぞ!」って言われるんだ。お前と同じ顔したのが自己紹介してから電マでアンアン泣かされて潮吹きまくり、処女膜も撮影されて、CCDで膣内とか子宮まで全部撮影されて、それは女性器じゃないからモザイク無しでもオッケーなんだ、前に野郎共に見せてもらった。それから汚いオッサンに伸し掛かられてアソコ血まみれにしてブサイクな男優に輪姦されて、次から次に違う男にヤられるんだ。もちろん全員中田氏、血の混じった精子垂れ流してオイオイ泣く所も撮影、何か佐祐理お姉さまが好きそうだな? それから汁男優全員で顔面シャワーから精子シャンプーにリンス、目薬に歯磨きに手コキ足コキ、脇の下とか膝の裏まで犯されて、下の口に漏斗咥えさせられて、塊みたいな白いドロドロの汁を二十人以上に詰め込まれるんだ。表のAVに出て町中歩けないようにして欲しいか、それとも裏ビデオでネットにも流れて、モザイク無しの丸出しがいいか? 選べ」
「くぁwせdrftgyふじこlp!」
 栞の暴力による仲裁が入って、何とか話し合いを続ける一同。
「あの、私の偽物もいるの? 変なビデオとか写真撮らないでね」
 それは祐一を釣るためにやったエサなので、他でも使われると困る女達。
 栞としても「あの難病姉妹がついにAVデビュー! 病弱な妹も姉と一緒にハッスルハッスル、白いオクスリもっといっぱいちょうだい!」な~んてAVが発売されてしまうと困るので、全員肖像権を人質に取られているのと同じだった。
「いやあ、オマエラにはそんなのしないよ、こいつがブサイクブサイク言うからつい。それでな、今お嬢とアタシの偽物歩かしてるんだけど、まあ見られてる見られてる。公安とか中国人とかアジア系のロシア人が双眼鏡持って監視してるんだ。お嬢は教団の娘だから、前から公安にマークされてるのは仕方ないけど、水瀬の家に泊まって、純血の妖狐とヤりまくった女だから、ロシアのGRUだか中国公安にも名前載ってるぞ、大変だ」
「「「「エ?」」」」
 妖狐の一族だけではなく、国家公安委員会とか外国勢力にまで監視対象にされていると聞いて「聞いてないよ~、殺す気か~、ヤ~」と思う一同。
「どうして? 何で私達まで監視されてるの?」
「そりゃあ、災厄起こせる超能力者が四人もいるんだぞ? 旦那様のご両親もどこかで生きてるし、ここは二十年前の生きた伝説がいる。秋子様にちょっかい掛けた奴らがいるだけで今の有様だ。銀行、証券会社潰れまくり、殺せないなら監視して、貢物差し出してバブルの頃に戻してもらうしか無い。アタシらみたいな貢物本人も監視しなくちゃダメだろ」
「「「あ?」」」
 そこでようやく、自分達が教団から差し出された供物だと気付かされた一同。
 教団とか、倉田家と分家の美坂家、天野家には幸運が授かるが、秋子様に逆らった月宮の里は被害甚大。背後にいた者も、殺されたほうがマシな制裁を受けている。
「前の当主も夜までに自害させられる、もう学校行っても大丈夫そうだし、あっちで手出ししたら夜中に舞お姉さまの使い魔がすっ飛んできて食われるのは知ってるだろうから、日中は学校にいる方が安全だ」
「ああ…… でもお前、何か頭が良くなってないか? 前はもっとその、マヌケだった」
 他のメンバーも、後先考えずに突っ込んで自爆するのが信条の女が、異様に頭が良くなって、何もかも知り尽くしているのに気付いた。
「おお、木の精霊ってのはこうなんだ、次のテストがあるんなら、勉強せずに全部満点取ってやるぞ」
「私も木の精霊に改造して欲しかった」
「私も……」
 学業にかなり問題のあった女は、自分もそうなりたがったが、弱い力を使った未来予知でも、次のテストが開催されるとは到底思えなかった。
「心配すんな、お前らだって頭は良くなってる。じゃあ、学校行って旦那様とお姉様が来るの待ってようぜ」
「「ええ」」
「ああ」
 制服に着替え、今までの任務とは違う、「自分の旦那様、王子様、主殿、お父さん」を警護し、恋人と一緒に学園生活を送るという、嬉し恥ずかしい行動を取るため学校に向かった。
 栞も美汐に掛けられた術の「ユウクンにはもう暴力を振るえない」状態のまま学校に向かった。

 学校前。
 生徒たちが一番多く通学し、多少何かあっても遅刻しない余裕のある時間帯。そこに倉田家のリムジンが正門前に乗り付けて、先に到着していた栞達が、お姉さま方と旦那様のために周囲を警戒して警護を始め、舞も降りて暗殺団の生き残りがいないか、スナイピングポイントを探して、双眼鏡でこちらを見ている者がいないか警戒する。
 安全を確保した所で隠形の術を使った美汐も降り、祐一、佐祐理の順で出て来た。
 美汐の身代わりとして使われている真琴も助手席から降り、香里が渡した制服を着ているので、授業にも参加するらしい。
「え? あれ倉田さん?」
「どうして?」
 昨日、学校内では完全勝利した香里ではなく、ガチレズの人であるはずの佐祐理が、祐一と腕を組んで正門から入り、堂々と群衆を割って真ん中を通り過ぎる。
「何で香里じゃないの?」
 女視点からは、祐一の運命の人は香里なのに、栞公認で倉田家のお嬢様が腕を組み、反対側には美汐がくっついて離れようとしない。
「天野さん? なんであの子が?」
 クラスでも「私に話し掛けないで下さい」オーラをビンビンに発し、術なども併用して完全ボッチATフィールドを形成していた美汐が、デレデレの別人の表情で「ゆうくん」などと言いながら、鬼畜三股男に懐いて腕を組んで胸を押し付けていた。

「まあ栞、タイが曲がっていてよ」
「ああっ、お姉さま」
 警護役や、一弥を友達?として可愛がってくれたご褒美をやり、自分達の立場を校内に示すよう、栞の首に掛かったタイを整えてやる佐祐理と舞。それはマリア様の像の前ではなく、二宮金次郎の像だったが、ユリンユリンの姉妹が妹を弄って楽しむ姿を見せつけられ、エスっ気のある女達から羨望の眼差しで見られ、佐祐理お姉さまの妹になりたい女達や、舞姐さんの舎弟になりたい女達からは、栞は敵認定された。
「さあ、栞、言ってあげなさい」
 前から佐祐理に、背中からは舞にタイを直してもらい、恍惚の表情をしていた栞は、女生徒に向かって発言させられた。
「あの、お姉さま方は妹になって下さる女性を募集中です、募集要項は後で発表しますので、掲示板を見て下さい、お願いします」
 大きな声で言えたので、佐祐理からもナデナデされて喜ぶ栞。周囲の女達も、自分があの立場に立てるのなら?と思い、夢遊病者のように佐祐理一行に付いて行った。
 ここに佐祐理が提唱する「ユリクマ会」が発足された。
 実質、佐祐理が弄くり回せる獲物を見つける会で、茶話会の茶菓子は可愛い女の子、「はちみつを舐めるクマさん」になった佐祐理と舞が、後輩の女子を美味しく頂くための団体である。
 この数分後に人数を大幅に増やす、男子の有志で構成された「相沢祐一をボコる会」と並んで、ユリクマ会は校内の二大勢力として成長して行くことになる。

 登校後、祐一とは別のクラスでは、いつもはグッシャグシャの髪を整えもしないで、湯上がりにタオルで拭いたままドライヤーも使わず放置する座古苺が、髪にブラシを通して、あろうことかリボンを巻いて登校してきた。リボンを捨てた月宮真琴から譲り受けたらしい。
「お前、何してんだよ? 女装にでも目覚めたのか?」
「バカじゃないの? お前から男らしさ取ったら何が残んのよ」
 心中では秘めた恋心で可愛いと思いながら、何があったのか心配になって話しかける男達。趣味も合って話しやすかった男子からは人気があり、休み時間には周りに勝手に男どもが集まり、その状況を妬んだ女子からは総スカンを食らっていた。
「たまにはいいだろ?「旦那様」に少しでも可愛がってもらおうと思ってな」
 普段なら殴られるか蹴られるか、頭突きで気合を入れられて、好きな女とキスしそうな距離になれるので、わざとからかう男達だが、お淑やかになってしまった男女の発言を聞いて絶望する。
「おいっ、ほんとにどうしたんだよ? 旦那様って何だよっ?」
「え? 相沢…様に何もかも捧げてな、奴…嫁にして貰ったんだ」
 クラスの運動部のイケメン、ヤンキー、ヲタク、ボッチ、変人、真面目すぎる男子などなど、中学時代から座古のパンチラ、パン見せ、ブラチラ、ブルマ姿、めくれた体操服を見て、スカートめくりも覗きもしたことが無い男子から「生まれて初めて生で見た女の子のパンツ」「スラッと伸びた細い脚と、ブルマからはみ出たプニプニのケツ肉で悩殺」「夏場は机の上に座ったまま胡座をかいて「暑い」と言ってスカートをバタバタ動かしてパンチラ、生まれて初めて女の子の汗とオ*ンコの匂いを嗅がせてもらって発情」「勃起が収まらない男は即便所に駆けこんで、見せてもらったパンツと、アソコの匂いで4,5回抜きまくって、ゲッソリしてから帰還」「さらに立膝でパン見せされ「見るな」と蹴られてパンモロ、蹴りまくられてアンダーヘアや、一瞬ピンク色の割れ目も見せてもらって脳が破壊」「夏は男子一同でプールや海に誘って、別の女なら何も感じないようなダサイスク水と貧乳とケツ肉で悩殺され、勃起がバレないよう海の家のトイレでズリネタとして酷使」「夏の思い出を写真に撮って、グラビアアイドルやエロ雑誌より酷使」「機嫌が悪い生理中は、メスの経血臭をプンプンさせ、その匂いに釣られた男達が全員半立ちからフルボッキで股間を隠しながら便所に集合」、など中学時代から幾度も股間とタマタマを直撃され、初めて女を意識する体にされたり、「ガードがガバガバすぎるお転婆な男女」が一生好みの女にされてしまった一同に戦慄が走った。
「俺が告った時には断ったのに、なんでっ? 相沢様って何だよっ?」
 驚いて両肩を掴んで揺さぶる運動部のイケメン。ファンクラブ持ちの男なのに、「美人=クソ女+人間のクズ+浮気し放題+金持ちの会社員か「パパ」とも付き合っていて、デートで男が貢ぐのは当然、俺は学校用の飾りのキープクン」の公式が完成し、好みから外れた美人の告白を全部断り、座古を通じて告白に来た女の目の前でも「俺が好きなのは、お前だっ、俺と付き合ってくれ!」と絶叫告白してしまい、連れてこられたクラスの女のプライドも何もかもズタズタにして、見ていたギャラリーからも女の敵認定される事件を起こした張本人が、泣きながら詰め寄った。
「アタシは昔から、旦那様の所に嫁入りするよう言われてたんだ。片思いの許嫁みたいなもんだったけど、やっと願いが叶ったってとこだ、まあ応援してくれよ」
 中学からの思いが断たれ、トイレやゴミ箱に捨てた子種達にも申し訳が断たず、ずっとオナネタにして思い続けた少女が、ポッと出のシンデレラボーイにノックアウトされたのを知って、膝を着いて泣くイケメン。
「苺さん、どうしてあんな浮気男と? 僕達だったらみんな君一筋なのに」
「すまんな、家の決まりみたいなもんだから諦めてくれ」
「君はそれでいいのかっ? 家の決まりとか仕来りなんてっ?」
「いや、アタシはいいんだ、今が一番幸せなんだ」
「ぐうううっ」
 学業一辺倒だった男子や、三年間ボッチ確定のコミュ障も、キモいヲタクで女子からは汚物扱いだった男子も、皆気軽に話しかけられて、少年漫画やアニメのヲタク談義に花を咲かせ、生まれて初めて異性と会話して笑った日々をプレゼントされ、恋心を募らせていた一同も撃沈されて泣く。
「何であんな奴と……」
 ヲタとボッチで話し合って、週間の少年誌や青年誌を重複しないように買って回覧もして献上、さらに青年誌のエロマンガの下ネタで会話して爆笑、周囲に居るイケメンやスクールカースト最上位の男子とも仲良くなり、身奇麗にするよう教えられて長年のイジメからも開放してくれた女神を失い、絶望のズンドコに叩き落とされるヲタ男達。
「テメッ、何シてやがんだ、オメエは俺の嫁になるつってだだろうがッ」
「いつか気が向いたらって言っただろ、お前じゃなくて、あの人に気が向いたんだよ」
 ヤンキー系の男も、拳で語り合ってタイマン張って、マブダチになったはずの女が、汚いローブローで純血を汚され、自分以外の男に夢中になっているのを知って悔し泣きする。
「チクショー!」
 今まで告ってきた女にも「好きな女がいる」と言って断り、それが座古だと知られるとイジメが始まり、即座に先日告ってきた女の胸ぐらを掴んで「テメェ俺の女にナニしてくれやがんだ、アアッ?」とマジギレして睨みつけ、大声で恫喝して泣かせてしまった伝説を持つ男まで撃沈した。
 さらにストーカー系、変人からは、女神様をイジメた仕返しに壮絶な嫌がらせを返し、「ロッカーに大量のゴキブリとムカデ、腐ったネズミの死骸」「家のポストに猫の轢死死体と「次はお前だ」の血文字の手紙」「家の犬が毒殺」などで不登校から転校させた、座古をイジメた女を消した伝説を持つ男達も轟沈。
「俺だって「ダチとは付き合えねえ」って何度も断られたのに、何でっ?」
「だって、ダチはダチだろ? アタシは「お姉さま」にヤラれて、ついでにヤられただけなんだけど、好きになっちまっったんだから許してくれよ」
 簡単な説明からも裏を理解した男達は、「倉田佐祐理とか言うガチレズ女にヤられた座古が、一緒にいたヤリチン野郎に遊びでハメられてしまい、男に免疫がなかった女が愛だか恋だとか勘違いさせられている」と知って「クソーーーッ!」とか「畜生ッ、あの野郎っ!」「ぶっ殺してやるっ!」などと奇声を上げて、ヤンキー、イケメン*2、運動部一筋なのに最後の夏の大会出場辞退を掛けて、数人が祐一のクラスに殴り込んで行った。
「やめてくれっ、あの人は悪くないんだっ!」
 腕力や武力が低いヲタク、ボッチ、ストーカー、学業一筋の男達も、自分の鞄を漁って武装したり、呪術の器具や嫌がらせ用の何かの死骸を持って素手の男達に無言で続いた。
 座古も、想い人が殺されたりしないよう、まだ何かが挟まったままの感触や快感が残る股間を押さえて女走りで後を追った。

 少し向こうでは緒路院讃が女子に捕まり、朝の異常な登校と、本人の変わりよう(レイプ目など)に質問が集まっていた。
「え? うん、私も佐祐理お姉様の妹にしてもらってね、色々お仕置きされたんだ。おしりペンペンとか、言葉攻めも凄かったよ」
「「「「「ええ~~~っ?」」」」」
 クラスメイトから例のガチの人の被害者が出たと知って驚き、その筋の女からは羨ましさからから来る悲鳴が聞こえた。
「その後ね、お姉さま方の弟、王子様の相沢くんと結ばれてね、凄く嬉しかった」
「なんでそうなるの?」
 佐祐理と舞から「よし、俺の家に行って弟とファックして良し」と言われたらしく、昨日は王子様と呼んでいた男と結ばれた女を見て、恋愛体質の女から驚きの声が上がり、親友の香里と修羅場になったと知って、大好物の味に喜ぶ女達。

 さらに隣のクラスでは、昨日の続きをkwskする女達に囲まれ、月宮真琴と月人に質問が集中していた。
「一体どうしたの? 昨日、あれから何があったの?」
 倉田佐祐理お嬢様と、お嬢の恋人であるはずの祐一が同伴通学、それをお迎えまでして一緒に来た二人に詰め寄るクラス一同。
「うん、香里のお見舞いに行ったらね、お父… 相沢くんは舞お姉さまに連れて行かれた後だったの、栞さんと追いかけるとね、佐祐理お姉様がいて、私達全員、お姉様の妹にしてもらったの」
「「「「「「「はあ?」」」」」」」
 普通のクラスメイトには「相手は名門倉田家の長女で、術者としても高位だったが、名雪か誰かに術を封じられていて気付かなかった」とか「出された技が、ゴージャスさユリん、とか云う反則技の固有結界で、範囲数十ヘクス以内の女は、純血の妖狐であろうが何だろうが、全員妹にされてしまうハメ技」とも説明できず口ごもる。
「え~とね、みんな佐祐理お姉さまと舞お姉様の妹になって可愛がってもらったの、それからいつもの三人も、相沢くんの恋人にしてもらって、あれ?」
 敵の術の支配下にあり、理路整然とした説明もできず、自分でも話の不整合に気付いて疑問符を浮かべるが、「お姉さま」の妹になった喜びの方が大きくて、そんな考えの方を打ち消されてしまい、自分が勝ち取った恋人を奪われて、他の友人とも交尾しても何の疑問も感じない体にされていても気が付けない。
 それはフニャチン時の祐一にも共通だが、恋人だったはずの栞を忘れさせられて浮気。また術を掛けられて実の姉と交尾しても平気。その病んだ親友とも楽しく?交尾。追いかけて来た恋人も悪鬼羅刹に成り果てていたので諦めたが、それでも佐祐理お姉ちゃんに命令されて「よし、俺の妹とファックしてよし」と言われてザコ三匹とも避妊すらせず子作り。家に帰れば、話を聞くまで実の叔母だと思っていた女性ともハゲしく交尾。栞と二股掛けていた純血の妖狐とも叔母の許可が出て「俺の妹ry」で交尾したし、「俺の娘ともfa…」と言われて従姉妹とも交尾した。
「だからね、私達全員、相沢様のメス奴… オマ… ううん、奥さん?にしてもらったの」
 なんかの宗教の信者から、相沢教の信者に鞍替えしたらしい二人。愚かで哀れな女が、自分から進んで不幸になって闇に堕ちてしまったのを目撃したヤンキー女が、無言で席を立って祐一の教室に向かい、数人が後に続いた。

 祐一の教室。
「アイザワってやつはどいつだーーっ!!」
 ヤンキー男の気合とドスが効いた声が響き渡り、半笑いの嬉しそうな顔をした北川くんが立ち上がって、自分の目の前の男を指差した。
「こいつDeath、やっちゃって下さい」
「テメエかよっ! このヤリチンの腐れ外道はようっ?」
 駆け寄ってキツ目の蹴りを一発、挨拶代わりに股間に叩き込もうとした男が、病んだ目をしたこの学校一のヤンキー女に捕まえられて、片手で首を締められた。
『私の弟に何か用?』
 一瞬でガチギレして、ノルアドレナリン全開になった舞お姉ちゃん@左腕の怒りの魔物さんverが、片目全開、もう片方の目は釣り上がった口と頬肉で半分閉じ、教科書どおりのガン付けをして睨む。
「姐さん、離してくれっ、こいつだけは許せねえ、俺らの姫を、こいつがっ」
 気合が入ったトレードマークのリーゼントが崩れても、短ランが舞に破かれるほど掴まれても、「他人の前で泣く」などと言う失態を犯しても、怒りが収まらず祐一に向かっていこうとするヤンキー男。

「てめえっ、よくも俺らのマドンナまでヤリやがったなあっ! ぶっ殺してやるっ!」
 ケンカ慣れしていないイケメンも、スポーツで鍛えた身体能力を発揮して、大振りの右ストレートで祐一に殴りかかったが、笑顔の女にパンチを片手で止められ、病んだ目でニッコリ笑われた。
『うちの弟が何かしましたか~?』
 魔物の腕力で拳を握り潰し、三年の引退前のバスケ大会への出場を絶望的にしてやった佐祐理お姉ちゃん@風と雷槌の精霊ver。
「お前らどけっ、俺がこいつを……」
『ズレソデタヘミサコヅ、ラキグフェタクデヘニト。もうお前はゆうくんに暴力を振るえない、お前は一生相沢様の下僕だ』
 何もいない空間を通って、祐一に殴りかかったイケメンその2は、プレデターみたいな見えない何かに阻まれた上、栞クラスの化け物に使うのと同じ術(本日通算五回目)を掛けられて、泡を吹いて沈黙した。
 予想通り、自分の教室になど行く気がなかった美汐は、真琴を使い魔にして教科書や筆記用語を持たせて二年の教室に向かわせ、自分はゆうくんを警護しながら一緒に授業を受けようとしていた。

「一体何が?」
 戦闘力が高いヤンキー男も、イケメン二匹も沈黙させられ、悪鬼羅刹達とプレデターの視線が自分に向かっているのに気付き、本能的に後ずさる男だったが。
「お前の後ろだあっ!」
 マッスルボディになった栞さんに片手で摘み上げられ、自分の身長より高い位置からワンハンドバックブリーカーを食らって、三年間の成果である大会への出場を断念させられた。
『ズレソデタヘミサコヅ、ラキグフェタクデヘニト。もうお前はゆうくんに暴力を振るえない、お前は一生相沢様の下僕だ』
 後に続いて来た凶器を持つ、ヲタク、ボッチ、ストーカー、変人、学業一筋、真面目系の男も、プレデターに襲われて沈黙させられた。(本日通算六回目~十一回目)
「スンマセン、こいつらアタシのダチなんで、そのぐらいで勘弁してやって下さい」
 戦闘用のザコ三号に葉緑素色の顔をされ、刺客の背後関係を探るために男達の生爪を剥いだり、虫歯にコンパスの針を刺して拷問して、SATSUGAIしようとした女達が手を止めた。

「クソッ! 相沢いるか~っ?」
「あれ~? 隣のクラスの女の子が、何でおとうさんに近づくのカナ? カナ?」
 朝には病んだ目のまま空鍋をかき混ぜて、丸い緑色の物体をキャベツとして刻んでいた名雪さんも、ヤンキー女を捕まえ『わたしとゆういちの邪魔をしないでぇっ、帰って! 帰って下さいぃっ!!』と玄関?でやらかして、こんな時だけ純血の妖狐の力を発揮して、相手の脳に障害が残るほどの術を掛け、続いて来た女達も、月宮真琴も追い返した。

「べ、別にあんたのためにやったんじゃないんだからね、急に襲いかかって来たから、驚いて止めただけなんだからねっ((///)カァッ)」
「一弥~、どこも怪我してませんか~? お姉ちゃん心配です~」
「ゆうくん、あたしがいっしょにいるからだいじょうぶだよ、こわがらなくていいんだよ」
「祐一さんは私が守ります」
「おとうさん、もうだいじょうぶだよ、ふぁいとっ、だよ~」
 病み切った目をした女達に囲まれている敵を見て、一方的な戦闘の一部始終も目撃させられた北川は、「この船では勝てん」と言いながら去り、どこかに応援を呼びに行った。

 二年の教室。
 その頃、外見が美汐に見えるように術を施されたマコピーが、二年の教室で授業を受ける準備を始めていた。
「天野さん、今日はどうしたの? 佐祐理お姉さまと一緒にリムジンに乗って通学とか、それにあの、三叉最低鬼畜男と一緒なんて」
「ええ、あの人って、去年同じクラスだった美坂さんの恋人なんでしょ? 今は美坂さんのお姉さんとも付き合ってるって専らの噂だし、一体何が起こったの?」
 難しい質問なのでマコピーでは答えられず、会話回線は美汐に切り替わった。
 普段なら「お節介ウゼェんだよ、消えろメス豚が、クセェ口開くんじゃねえ」と追い返す所だが、ゆうくんを取り戻した美汐は機嫌が良く、相沢美汐ちゃんのデビュー日なので、夫にも恥をかかせないよう、全力で術を掛けた。
『私たちは全員、この辺りの風土病で、血が足りなくなる病気なの。それは美坂さん姉妹の噂で聞いてるでしょ? その病気を治す抗体をもっている唯一の男性、それが相沢さんなの、美坂さんも私も、香里さんも佐祐理お姉様も舞お姉様も、昨日相沢さんに『治療』して頂いてね、長生きできるようにして貰ったのよ』
 昨日まで死んだまま生きていた自分、その牢獄から解き放たれた今、生き返ったと言っても過言では無かった。
 それは佐祐理も舞も同じであり、真琴も秋子まで救われ、一部の者は不老不死や不滅まで与えられたので、その言葉はクラスの女子の心の奥にまで届いた。
「そ、そうだったの……」
「あ、最低男なんて言ってごめんなさい……」
 この際、祐一への悪評を断つためにも、自慢話しまくりのためにも、「奇跡の故意?シーズン4を放送してやる美汐だった。
『あのね……』
 朝の僅かな時間で予告編が放送され、休み時間ごとに内容が濃くなって行く奇跡の故意シーズン4。
 主君である一族の少年と少女が織りなす身分違いの淡い恋愛、許されない故意?の果てに、時代錯誤な名誉殺人が親族によって行われようとした瞬間、まるで怪盗のように自分を拐い、救い出してくれた先輩。
 仲介に入った上位の一族(秋子)の取りなしもあり、一族は和解し結ばれる二人。そこで祖母から聞かされた衝撃の事実! 運命の人である祐一とは、子供の頃に一緒に過ごし、死に別れたとばかり思っていた約束の少年。まさに運命としか言えない7年越しの悲恋、それがついに叶う時がやって来た。
 視聴率が上がって脚本家が有名作家に切り替わったのか、以前の子供のような恋愛ごっこでは満足できなくなった視聴者からのリクエストなのか、現代版ロミオとジュリエットとも言える美汐の悲恋が公開され、一部??脚色されて、昔から争っている一族、と言い換えられて放送される手はずになった。
 美汐からすると「妖狐の一族とか純血の妖狐なんて、あんまり大っぴらに言えないでしょ、ただの『表現の違いよね?』 構わないわよね? ね? ね?」ということらしい。
 話術しか使えない香里や、全てが嘘で塗り固められたような月宮真琴のストーリーと術とは違い、事実を一部だけ?脚色した恋愛スペクタクル、「奇跡の故意?シーズン4」
 難病?オフコース、使い古されたシェイクスピア展開?リアリィ? バトルシーン?アクション?スペクタクル?オフコース。
 全米が泣いた、恋愛スペクタクル、「キセキのコイ、シーズンフォー」、セイムタイム、セイムチャンネル、カミングスーン。

 祐一の教室。
 朝の刺客?を手早く処理した一同は着席して、担任が来るのを待った。クラスの女子や委員長、王子といったメンバーも、香里の不在中に現在の展開は戸惑ったが、次の休み時間に確かめることにした。
 美汐の本体は、自分の教室になど行く気は最初からなく、祐一の隣りにいる純血の妖狐に『どけ』と言い放って香里の席に移動させ、自分は特等席に着いて机を寄せ、まるで「教科書を忘れたので隣の男子に見せて貰っている」ような状況で腕を組んで胸を押し当てて着席した。
 その姿は舞、佐祐理、名雪といった関係者以外には、存在すら感知されていなかったが、美汐を直視できて術者としても上位の者からは、只人なら視線だけで即タヒするような熱い視線を受け止めた。
「起立、礼」
 担任を確認した委員長により号令が掛けられ、香里が来ていないのを確認した担任は、祐一を見た。
「何だ、相沢、美坂と一緒に居てやらないのか?」
「エ? はあ」
 クラスの女子、ほぼ全員と、担任の中では、相沢*香里だったが、そんな戯言は宇宙の彼方に放り出せるワンウーマンアーミーや、香里を体ごとアナザーディメンションに叩き込める妹とかがいたので、ごく一部の女子からは却下された。

「ゆうくん、ノート取ってあげるね?」
「は?」
 まだ「ノートなど下僕に書かせるもの」と思えない祐一は、自分で書いて覚える物と考えていたので、美汐からノートとシャーペンを取り戻そうとしたが、三年の教室にまで居座って、食事中は箸も茶碗も持たせようとしない女は、「だっていつもこうだったじゃない」と言いつつ「規定の設定」として自分の作業を進めた。
『祐一、何してるの?』
 舞の方角から、パイロキネシスと思われる火種が飛んで来て、美汐を着火しようとしたが、謎のエネルギー障壁によって遮断され、名雪が燃やされたり、不在の北川の席が燃えたりして、波乱の一時間目が過ぎて行った。
 
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