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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第576話】

「やっと私の番だな」


 風に靡く翠の髪、学園から貰った体操着を着用――抜群のスタイルを窮屈に閉じ込めているエレン・エメラルドがヒルトを待っていた。

 先の戦いではハチマキをとられ、得点は〇になったものの勝負として不満はなかった。

 ヒルトを待つ間、空を眺めるエレン。


「エレン。 待ったか?」

「……!?」


 いきなり顔を覗き込んでくるヒルト、視界いっぱいに彼の整った顔が映り込むとエレンは視線を下に逸らしながら。


「ま、待ってはいない。 君が私の所に来ることは確定していたのだ」

「まあそうだけどさ、待たせたなら悪いと思ってな」


 小さな気遣いだが、エレンにとっては凄く嬉しかった。

 互いに敵同士で知り合い、何の因果か今はクラスメイト。

 無論ヒルトが尽力した結果だ、何もしていなければ既に死んでいたかもしれない。


「あ……。 時間もあまりないことだ、此方に来てくれ」

「あぁ、わかった」


 未だに顔が赤いエレン――ドキドキ高鳴る鼓動を落ち着かせ、広げたシートまで誘導した。


「その、だな。 ……君のために作ってみたんだ。 口に合うかはわからないが、食べてほしい」


 シートの上に広げられた数々のハンバーガー。


「ハンバーガーばかりだな」

「き、嫌いだったか?」

「いや、嫌いな訳じゃないさ」


 一瞬ヒルトの嫌いなものなのかと思ったエレンだが、ホッと胸を撫で下ろす。

 ヒルトを座らせると、エレンは気恥ずかしさからか少し離れた位置に座った。


「エレン? そんな離れた所じゃ食べにくくないか?」

「あ……ぅ、うん」


 ヒルトに指摘され、エレンは何とかヒルトの向かいに座り直した。

 ブルマを穿いてるせいかヒルトの視線が気になるエレン、当の本人はエレンが作ったハンバーガーを見ているが。


「食べて構わないか?」

「も、勿論だ。 君のために用意したんだ、食べてくれないとどうしたらいいかわからなくなる」

「ハハッ、じゃあいただきます」


 手掴みでハンバーガーを食べるヒルト、ドキドキしながらそれを見ていると――。


「エレンは食べないのか?」

「そ、そうだな。 食べる、食べるぞ?」


 手近なハンバーガーをとり、小さく一口食べるエレン――取り分け軍人生活が長かったが、食べ方はそこらの女の子と変わりがなかった。

 会話もなく黙々と食事をとる二人――エレンは正直、何を話せば良いのかがわからなかった。


「エレン、学園生活はどうだ?」

「え? だ、大丈夫だ。 最初こそ皆から質問攻めにあっていたが、今は落ち着きを取り戻したし、私自身も慣れ始めている」

「そうか。 それなら良かったよ」

「ぅ、ぅむ。 ……全ては、君のお陰だ」

「……大した事はしてないさ、エレン」


 その言葉に耳まで赤くなるエレン。


『大した事はしてないさ、エレン』

『君のためなら俺は何でもするさ、エリー』

『愛する君のため、俺は何時でも全力で戦うさ、愛しのE.E』


 どんどん都合よく脳内変換されていくヒルトの言葉。


「そ、そそ、そうか。 う、うむ……そうかそうか」

「……?」


 頭を傾げるヒルトを他所に、思考回路が暴走するエレン。


「エレン?」

「ふわぁっ!?」

「ボーッとしてたが疲れたのか?」

「い、いや。 ……こほん、そういう訳じゃない。 すまないヒルト、心配させた」


 気を引き締めるエレンだが、次の言葉でまた暴走開始した。


「何言ってるんだよ。 心配するのは当たり前だろ? エレンを気にかけないなんて無理さ、俺には」

『君を愛してるんだ。 そんな君を気にかけない訳はないだろ?』

『愛するE.E、毎日君の事を気にかけている。 だから俺と一緒になってくれ!』


 ヒルトはそんなことを言ってないのだが、都合よく変換されてしまう自身の脳みそを恨んでしまうエレン。

 既に湯気が出るくらい蒸気したエレンに、ヒルトは隣へ座ると。


「ハハッ、何かエレンって可愛いな」

「……!?!?」


 可愛い――聞き間違えではなくヒルトの口から出た言葉。

 プシューッと更に湯気が噴き上げるエレン。


「てか大丈夫か? ほら、水飲むか?」

「う、うむ」


 受け取ったコップの水を一気飲みするエレン、水が体内の熱を少し冷ましていた。

 ヒルトと一緒に居るといつもの自分ではなくなってしまう、だけどエレンはそんな自分が嫌ではなく寧ろ新しい自分に気づけたのが嬉しかった。

 楽しい時間が過ぎるのも早く――。


「あ、もう時間か」

「な、何? も、もう行くのか?」

「ん、時間が来たしな」


 無論最初の取り決めでわかってはいるものの、こうして過ぎればもっと過ごしたくなる。

 不意にヒルトの手を掴んだエレン、ヒルトは振り向く。


「す、すまない……」

「……やっぱり可愛いな、エレン」

「え――んむっ……!?」


 夢だろうか――視界いっぱいに広がるヒルトの顔と唇から伝わるヒルトの唇。

 ヒルト自身、さっきの美冬に色々理性を刺激されてしまった為かエレンが可愛くみえ、ついつい唇を奪ってしまった。

 抵抗する事なく受け入れるエレン――キュッとヒルトの体操着を掴み、初めての口づけに酔いしれた。

 そして――。


「じ、じゃあなエレン」

「…………」


 走ってその場を去るヒルトを、ボーッとただただ見つめるエレン。

 しばらくした後――。


「う、うぅ……。 ど、どうしようどうしよう。 ……キス、されちゃった……」


 いつもの確りした口調ではなく、素の女の子様な口調のエレン――心に確りヒルトの想いが刻まれたエレンだった。 
 

 
後書き
エレンが可愛い( ´艸`)

 
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