詩織の【レオタード・スクランブル】
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彼は、私に快感と羞恥と苦痛を与え続けた。
――――――
いやらしい。
私の部屋で、彼がオナニーしている。
彼は全裸。
最初は下半身だけ裸だったが、あまりにも異様だから、みんな脱いでよと言ったら、喜んで脱いでしまった。
オカズっていうの? いやらしい。
私は、レオタード姿で、オカズにされていた。
いやらしい言葉をいろいろ教えてもらった。
パイパン? 初めて聞いたわ。
◆
剃毛されて、その……パイパンになった私は、ハイレグを着るために処理したことにして、レオタードを通販で買った。本末転倒だが、ゼミの公募のヌードで剃られたなんて、絶対信じてもらえないとわかっていたから。
好きな色のピンクの、シンプルデザインなレオタードが届き、裸で試着したが、やはり、毛の処理は不可欠なアイテムだとわかった。
(スマホに保存してある自分のビキニの写真を見直したが、こっちのカットは安全そのものだ)
ただし、お尻のほうは意外なほどしっかり包んでいることがわかった。(恥ずかしいけど、鏡で見た)
◆
男のオナニーなんて、初めて見るけど、……気持ち悪い。
女である私のオナニーも、オールヌードの全身運動だし、あえいだり呻いたりしてうるさいけど、だからこそ、本能に正直で活力的な気がする。
男のは、一点だけを責めているのが、あさましい印象を与える。
ま、男性にも言い分はあるんだろうな。
◆
やがて。
見慣れた白濁液が、あらかじめ敷いておいた古新聞に飛んで、おしまい。
気持ちよかったんだろうな。
念のため書くけど、私は何もしてない。
ハイレグのレオタードを着て、楽に立っていただけ。
床に這いつくばる彼に、見上げられていただけ。
遠慮なくハイレグの股間を見られる、そのシチュエーションだけでイッてしまったのだ。
時間は計ってなかったけど、いつもの全裸セックスより早かったみたい。
見慣れちゃった裸より、着衣のほうが新鮮なんだよね。しかたないよね。
◆
新聞紙は、台所で、明日出す燃えるゴミ袋の底に沈めた。
裸の男がいる寝室に戻る。
「で、このあと、どうしたいの?」
何かの本で読んだことがある。
男性の性欲はスッと冷める。あとをひかない。
勉強に気が乗らないとき、開き直ってオナニーしてしまう男子中高生も多いとか。
ただ、男性は100%オカズを使うらしい。
ヌード写真とか、パンチラ写真とか、
……ケータイで読む体験談とか。
おぞましいけど、理解しなくちゃ。
◆
やがて、彼は、立った。
――どうするの? 脱ぐところや、裸も見る?
彼は、見ている。
私という絵画を鑑賞しているみたいだった。
「やだ、あんまり見ないで」
パイパン、ハイレグで言っても説得力ゼロかな。
彼の鑑賞は続く。
長い。長すぎる。羞恥心が起きてしまうほどに。
オカズにする=冒涜するという意識が男性にあるのだろうか?
わからないけど、贖罪(しょくざい)のような気持ちで、真剣に女性美を鑑賞しているのが、今なのかもしれない。
レオタード姿という、私の女性美を。(私、ナルシスト?)
◆
そういえば、彼は高校時代、レオタード姿のかっこいい先輩が好きだったんだよね。
一度だけ名前を聞いたことがある。たしか……祥子先輩。
写真とか持ってたのかな? それとも記憶で?……オカズにしてたのかな?
なんとなく、現実に見たレオタード姿をモチーフにして、頭の中で祥子先輩を裸にしていたとすれば、許せないと思った。
◆
こんな格好の女の子を抱くのは、初めて?
私の問いに、うなずく彼。
全裸の彼、着衣の私。どこか倒錯的だった。
いつもは、私は性急に裸にされる。
私だけ裸で、服を着たままの彼にハグされたり、押し倒されたり。
一人だけ裸にされても、だいたい私も燃えているから、恥ずかしくないし、服や下着が汚れなくて済むというメリットもあった。(あ、替えのショーツはたいてい用意してるよ)
今日は、せっかくのレオタードが白い液体で汚れるかもしれない。その時どんな気分になるか、予想できなかった。
彼の先端がまだ暴発しませんように……
◆
やはりというか、祥子先輩には彼がいた。
ある日曜日、制服デートを目撃してしまったのだ。
相手は、進学校の詰襟だった。スポーツとは無縁そうな男子なのに、それが祥子先輩のタイプだったのか。
ともかく、あきらめるしなかなかった。
男の嫉妬。
自分にとってはは、眺めることしか許されてないレオタード姿なのに。
もっと近くから見ていい男がいるという事実に、彼は胸をかきむしられる思いだったのだろう。
あの男は、先輩を思いのままの形にできるのだ。
裸では恥ずかしくてできないポーズや動きも、レオタードならできるはず。
今このときも、祥子先輩は体育館では決して見せない形にされているかもしれない。
妄想と嫉妬。どちらもすごいエネルギーになるんだな、と思った。
女の私に言わせれば、恋人の前なら、どんなヌード・ポーズでも恥ずかしくない。
かえって、パンチラするようなミニスカートだったりするほうが恥ずかしい。(テニスルックみたいにパンチラ対策してるなら別)
そのあたり、男にはわからないのかな。
◆
これほど赤裸々に彼が思い出を語ってしまった以上、
リアルなレオタードの私が何を要求されるかは明白で、私も応えないわけにはいかなかった。
パイパンにされた紆余曲折、正直に言えばよかったかな――ううん、もういい。
レオタード女子を恋人にしていたら、やりたかったこと。
考えようによっては、恋人をモノとして扱い、性欲を満たすための手段としていることだけど。
男と女、快感において平等じゃないから、しかたない。
さあ、私は祥子先輩になって、羞恥に耐えましょう。
◆
まずは、ポニーテールを指定された。束ねるゴムの色は、日によって違ったという。
「パンツと同じ色よ」と祥子先輩は笑いながら言ったことがあるというが……とにかく、今日は黒で束ねた。
立ったままで、まず、キスを受けた。つまり、ファーストキスみたいなもの。
それから、そっとそっと乳房に触れてくる、指!?。
ここは、掌にしてほしかった。
しかも、バストトップをつまむ勇気もなく、撤退した。
こりゃ、レオタード・コンプレックスかも? (そんなの、あるの?)
そのあとも、肩や背中をちょこちょこと触られて恥ずかしかった。しかも、胸はお留守。
高校生カップルだった頃から、おっぱいを露出させてたのに。
大学生になったら、針を乳首に刺すなんて犯罪チックなことまでしたのに。
レオタードに包まれたとたん、Cカップの双丘は未踏峰に戻ってしまったらしい。
――いいよ、こうなったら、じっくり責めてみて。
◆
突破口が開いたのは、ベッドに移ってからだった。
私が、無意識にうつぶせの姿勢になったのがよかった。
(そうか、顔が見えないんだ)
真っ先にお尻が犯された。レオタードの下に初めて彼の両手が入り、私のビクッという反応を確かめてから、不規則な揉みほぐしが始まった。
彼のマッサージはセミプロ級だが、ランダムに荒々しく蹂躙することで、気持ちいいマッサージではなく、一方的な凌辱であることを宣言したのだ。
「あああああっ、あっ、痛い、痛い、ああ」
私の哀願で、彼の手はいったん離れたが、それは、レオタードの上からお尻を叩くためだった。
「ひっ」
彼の顔が見えないから怖い。
彼は叩き続けながら、私を四つんばいにした。しかもレオタードの下の無毛地帯をいきなり直接触って下半身を持ち上げたのた。
「だめー、いや、いや、ああ、ああ、いや、いやぁ」
剃り跡を這い回る彼の手。
ポニーテールを振り乱す私。
祥子先輩の名を呼ぶ彼。
これが、憧れの先輩にしたかったことなの?
四つんばいではレオタードを脱がせにくいと知った彼は、生地の上から乳房を揉みしだいた。
◆
脱ぐから、ちょっと待って、と私は言った気がする。
しかし、彼は止まらず、私に快感と羞恥と苦痛を与え続けた。
「ああ、あー、あうっ、あっあっ………」
ベッドに崩れ落ちた私を剥こうとする彼。
私も夢中で助けるように動いた。
………………
「ううん、うぐっ、うん、」
潮が、潮が、いやー!
………………
「うん、うう、はあはあ、はあはぁ、はぁ」
………………
股間の生地が引っ張られ、ずらされてる?
「あーー」
………………
………………
◆
うつぶせにシーツに沈んだ私。
腰まで下ろされたレオタード。
白濁液は、レオタードのお尻から膝の裏までを汚していた。
短かったが、挿入はあった。
◆
◆
◆
数日後、彼とのデート。
駅前で待ち合わせ。
短めのワンピース。ポニーテール。
バッグにはクリーニングしたてのレオタード。(恥ずかしかった)
今夜はラブホテルで、レオタード撮影と最終行為の豪華二本立てだ。
彼が横断歩道の向こうに見えた。
――髪のゴムはパンツと同じ色だよ。
最初にそう言うつもり。
えっ、何色かって?
ナイショ。
――――――――――
(終わり)
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