異世界から戦女神の神殺しがやって来たようですよ?
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カフェでの出来ごとですよ?
耀
私は今、飛鳥と共にカフェでお茶をしている。
「それで、そっちはどうなのよ。うまくいってるの?」
「うん。概ね関係は良好だよ。セリカは凄くエッチでいろんなことされるけど、大事にはしてもらってるし…………離れられないくらいには調教されちゃった」
「それは大丈夫なのかしら?」
「一人ぼっちになるより全然いいよ。それにセリカが呼んでくれたから飛鳥達にも会えたし。彼氏も出来た、人間の友達も出来た。なにより、前の世界ではいなかった幻獣ともお友達になれたんだからね」
「でも、やっぱり女の子を無理矢理従わせるなんて…………」
「ギブアンドテイクだよ、飛鳥」
「ギブアンドテイク?」
「そっか、飛鳥は戦後間もない時代から来てるんだっけ。ギブアンドテイクはgive与える、take 受け取るが合わさって、お互いに利益がある、お互い様ってことだよ。この場合、私はセリカの物になって自由をセリカに上げて束縛されるかわりに、私はミケの寿命を無くして貰う事。お友達を作るのに協力してもう事。私達を守ってもらう事、私にちゃんと責任を取って一生面倒を見て捨てない事が代価になっているの」
「えっと…………耀の方が重くないかしら?」
「どこが? だって、神仏とお友達になるのにも協力してもらえるし、好きな事をしていても生活を保証されるんだよ。良い事尽くめだよ。流石に生理的に受け付けないような人ならお断りだけど、セリカはかっこいいし、強いし平気だよ」
「それは…………」
「それに、人間の友達がいなかったからか、私はどちらかというと動物と同じで強い人が好みになるから。でも、今は飛鳥達がいるからどうなるかわからないけどね」
「そうね。今は私達がいるわ。それより、眷属ってどうなの?」
「ふふん。飛鳥、凄いんだよ! 魔術が使えるの!」
「なんですって!」
「あと、セリカと深い意味肉体も精神も繋がっているから…………なんと、セリカの力も使えるんだ」
「本当?」
「うん。女神アストライアの力が使える」
「それは凄いわね。まあ、私はなりたいとは思わないけど」
「そっか。それより、飛鳥は十六夜とどんな感じ?」
「十六夜君? 十六夜君とは何もないわよ」
「そっちの事も知りたかったけど…………あ、ジン君だ。お~い」
通りを歩いていたジン君を見つけたので、声をかけてみるとこっちにやって来た。
「お二人共ここにいたんですね」
「ええ。それで、ジン君はどうしたのかしら?」
「それが、色々な人達から頼まれごとをされまして…………」
「教えて」
「手伝ってあげるわよ」
「はい。飛鳥さんと耀さんさえよければお願いします。実はフォレス・ガロについて調査して欲しいと頼まれたんです。どうやら、子供たちを人質にとっているみたいで…………」
そこから教えられたのは、2105380外門に本拠を構え、多くのコミュニティを傘下に治めているフォレス・ガロ。でも、それは多くのコミュニティから子供たちを人質にとった上でのことみたいで、さらにその人質を全員殺害しているとの事らしい。
「よく調べたわね」
「この子達のおかげですよ」
ジン君の手に小さな水流が巻き起こって、水で出来た人型を取った。
「アクアちゃん達の御蔭か」
「精霊の情報収集能力は凄まじいわね」
そんな話しをしていると、私達が座っている席に新たな人が勝手に座ってきた。
「おやぁ? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ“名無しの権兵衛”のジン君じゃないですか」
みれば、そこには二メートルを超える大柄な体を窮屈そうにタキシードで包んだ変な男がいた。
「…………ガルド」
ジンは大柄な男性を睨みつけ、呟いた。
知り合い?
「あなたの同席を認めた覚えはありませんよ。ガルド=ガスパー」
「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せてこそこそと何かしているみたいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。そう思わないかい、そこなお嬢様方?」
ガルドと呼ばれた巨体の男は私達を見下ろすあまりにも失礼な態度だから、私と飛鳥は冷ややかな態度で返す。
「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗った後に一言添えるのが礼儀ではないかしら?」
「おっと、これは失礼しました。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ666の獣の傘下であるフォレス・ガロのコミュニティのリーダーをしています」
どうやら、獲物が釣れたみたい。
「飛鳥」
「ええ、任せて。ねえ、貴方。私の質問に黙って答えなさい」
「っ!?」
「旗を賭けて戦うのは本当にどうしようもなく追い詰められた時だと私は聞いたのだけれど、貴方はどうしてそう何度も戦えたのかしら? ましてや、主催者権限を持つ魔王でもないのに。その辺、教えてくださる?」
ガルドは反射的に別の事を口にしようともがいただろうが、彼の意思に反して口は言葉を紡いでいく。何故なら、飛鳥の威光のギフトには生半可な存在じゃ逆らえないから。
「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」
「まあ、そんなところでしょうね。あなたのような小者らしい堅実な手です。けど、そんな違法で吸収した組織があなたの下で従順に動いてくれるのかしら?」
「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」
ジン君が持って来た情報と同じ内容だ。それが本人の口から出た事で、私達は眉をひそめる。
「……そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されてるの?」
「もう、殺した」
その場の空気が一瞬にして凍りついた。ウェイトレスも店内でこちらを見ていた人達がだ。私達はジン君から聞いていたから大丈夫だけど。
そんな中、ガルドひとりだけ飛鳥の命令のまま言葉を紡ぎ続けている。
「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ったが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど、身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食──」
「黙れっ!」
ガチン、とガルドの口が勢いよく閉ざされた。
「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とは早々出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら? ねえ、ジン君、私達が聞いた事では違法行為なのだけど、そのへんはどうなの?」
「い、いえ……彼のような悪党は箱庭でも早々いませんし、もちろん違法行為です」
飛鳥の冷たい言葉にジンが慌てて否定する。
「そう? それはそれで残念。ところで、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるのかしら?」
「厳しいです。吸収したコミュニティから人質を取ったり、身内の仲間を殺すのはもちろん違法ではありますが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえばそれまでです」
コミュニティのリーダーであるガルドが去れば烏合の衆でしかないフォレス・ガロが瓦解するのは目に見えているけど、どうしようかな?
「そう。それなら仕方ないわ」
しかし、飛鳥はそれで満足できないのか。苛立たしげに指をパチンと鳴らした。すると、ガルドを縛り付けていた力が一気に消え、ガルドの体が自由になった。
「こ……この小娘がああぁぁぁぁ!!」
怒りと共に咆哮を上げ、ガルドの体に変化がおとずれた。巨躯を包むタキシードが膨張する体を抑えきれずに弾け、体毛が変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。ワータイガーか…………こんな人じゃなかったら友達になりたかったんだけどな。取りあえず、飛鳥に殴rかかって来たので取り押さえる。
「テメェ、どういうつもりか知らねえが……俺の上に誰がいるかわかってんだろうなぁ!? 箱庭666外門を守る魔王が俺の後見人だぞ! 俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ! その意味が──」
「「上等よ(だよ)!!」」
「え?」
私と飛鳥の言葉にガルドだけじゃなく、全員が静まり返った。
「魔王に喧嘩を売る事になるですって?」
「私達はそもそも魔王と戦う為に修行したんだしね。むしろ、どんと来いだよ」
「ええ、そうね。魔王が自ら来てくれるなんて聞いたら、十六夜君やセリカ達も大喜びでしょうね」
「うん。間違い無く。あ、良い事思いついた。ねえ、ガルド。今すぐ魔王を連れてきてよ。ほら、早く」
「それはいいわね。ガルドさん。ここであなたには2つの選択肢があるわ。1つは魔王を呼んでここにいる全員を殺して口封じをする、もう1つは法の届かないところまで逃げ延びるか。まあ、一つ目は魔王が私達を殺すか、魔王が殺されるかになるでしょうけどね」
「ちなみに、ガルド程度の力じゃ私達にはかなわないよ」
「そこで、提案があるわ。私達とギフトゲームをしましょう。あなたのフォレス・ガロ存続とフォレス・ガロが所有する全財産を掛金にしてね。私達ノーネームの誇りと魂をかけてあげるわ」
初めてのギフトゲームになる。本当に魔王を連れてきてくれたら大喜びなんだけどね。その場合はセリカ達も全員参戦してもらうし。魔王に関しては全員で当たる事にしてるし、楽しみ。
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