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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
  正・義・英・霊

 
前書き
どうも、クソ作者です。
物語開始当初、ただのムカつくクラスメイトだった正義くんですがそれから新興宗教の教祖となり今では擬似サーヴァントとなりました。
ぶっちゃけただの一発屋で終わる存在だったんですがまさかこんなことになろうとは、書き始めのクソ作者は思いもしなかったでしょうね。
そんなこんなでこのお話も終盤です。
正義くんが一体何故セイヴァーを名乗ったのか、
無類の強さを誇るアルトリアオルタとは何者なのか、
色々考えながら読むのもまた楽しいかもしれないです。
それでは、本編行きます。 

 
「なんだ今のは…!?」
「宝具のぶつかり合いで起きた爆発のなのですが…!」

武蔵とオルタの宝具がぶつかり合い、大爆発が起きた中上空にいたヘリはどうなっていたかと言うと

「損傷なし…奇跡的ですがこのヘリは無傷です!」
「なんだって!?」

職員全員が驚愕する。
爆風などで何かしらの損傷はあってもいいはずが、全くの無傷なのだ。
ヘリは先程から、なんの問題もなく飛行している。

「これも…僕の中にいる"悪魔"のおかげなんですかね?」

皆が驚く中、"彼"は冷静でいられた。

「かもしれない…!いや、"アレ"の概念が組み込まれているというのなら非現実的だが有り得る!!」
「そうですか…皆さんの役に立てて良かったです。」

そういい、彼はヘリのドアを開ける。

「行くんですね、教祖様。」
「はい。本格的な戦闘は初めてですが…やってみます。」

そうして教祖様と呼ばれた少年は、空へと身を投げ出す。

(大丈夫…うまくやれる…なぜなら僕は…)

近くなる地面。
生身の人間なら叩きつけられ即死だろう。
だが、彼はそうはいかない

(この物語の…主人公だからだ!!)

拳を地面に叩きつけ、落下の衝撃を相殺して着地する。

顔を上げ、立ち上がると目の前には黒い甲冑を身に付けた悪魔。
振り返れば、赤と青の派手な服を着た二刀流の悪魔。
そして少し離れた場所にいるのは…かつての友。

「また会ったね…一誠君。支部建設以来かな?」

まだ世界が平和だった頃、彼とは話したことはないけれど同じクラスとして過ごしてきた日々は本物だ。
しかし、彼は悪魔に魂を売ってしまった。

「貴様…何者だ?」

黒い甲冑の悪魔が自分に話しかけてくる。
名前を聞くなら、そちらから名乗るのが礼儀だと知らないのだろうか?
いや、悪魔だ。礼儀など知るはずもない。
だから名乗ってやろう。
悪魔に話す舌なんて持ち合わせていないけど、喋ってやろう。

「悪魔共に名乗る名前はないが…敢えて名乗らせてもらおう。」

先程の雷雲は消え失せ、まるで自分を祝福するかのように晴れ渡る空。
降り注ぐ陽の光を体全体で受け止め、僕は高らかに名乗る。

「僕はセイヴァー『神代正義(かみしろまさよし)』。神に変わって正義を成し、そしてこの腐った世界の夜明けを告げる者だ。」

この力なら悪魔を倒せる。
この力なら世界を取り戻せる。
見ていてくれ皆。
お世話になった財団の職員さん達、自分に着いてきてくれた教徒達。
そして…

逝ってしまった…かつてのクラスメイト達。



正義が名乗る。
自らを…救世主のクラスであるセイヴァーだと。

「セイ…ヴァー?何言ってんだお前…ついに頭パーンてなったか?」
「勘違いしないでもらいたいな、一誠君。もう僕は…今までの僕ではないんだ。」

分かってる。
明らかにおかしい。
普通の人間があの高さからパラシュートもなしに落下して無傷な訳あるか。

「代表のお慈悲により僕は特別な手術を施された。」

代表…。
またここでも財団絡みか。
てかよく見たらあのヘリ、堂々と葛城財団って書いてある。

「とある悪魔の概念を埋め込まれ、僕は生まれ変わったんだ。」

悪魔とは、恐らくサーヴァントのことだろう。
人を依代にしてその身にサーヴァントを宿す。それはまさに

「君達の言い方で言えば…"擬似サーヴァント"って言うのかな?ははっ、悪魔を倒すためにその身に悪魔を宿す。皮肉なものだろ?」

冗談交じりに正義はそう笑うと、視線をオルタに移した。

「さて、君がアルトリアオルタ…という悪魔だね?」
「いかにも。悪魔かどうかは知らぬがな。」
「いや、サーヴァントは悪魔だよ。君は代表がお呼びだ。財団本部まで…来てもらおうかッ!!」

次の瞬間、正義が消えた。
いや、消えたんじゃない。超高速で動いたのだ。

「っ!」

とっさにオルタは聖剣をかまえ、目にも止まらぬ早さで打ち出された正義の拳を受け止める。
だが、

「破ッ!!」

正義がそう叫ぶ。そうすると突如として爆発が起きた。

「…!?」

1度距離をとるため、離れるオルタ。
侮っていた。たかが人間だと。
だがそうでないと分かれば、容赦はしない。

「面白い…英霊の力を手に入れたとて所詮は人の身体…!どこまでやれるか試してやろう!!」
「やれる…これなら…勝てる!」

魔力を爆発させ、迫るオルタ。
それに対して正義は不敵な笑みを浮かべ、徒手空拳で戦いを挑む。

「これは…貴様ら悪魔に殺された…僕のクラスメイト達の分だァッ!!」

突き出された拳が、再び聖剣とぶつかり合う。

「悪魔では…僕には勝てない!!破ぁあッ!!」

拳を起点として爆発が起きる。
先程よりも派手な爆発。
それによってオルタは

「…!」

聖剣を、手放してしまった。

「…。」
「さぁ、観念しろ。武器なしではどうすることも出来ないだろう?」
「…。」

聖剣は宙へと投げ出され、くるくると回転し地面に突き刺さる。
距離は遠い。
走って取りに行こうとしても、その喉元に突き立てられた手刀が動くのが先だろう。
圧倒的劣勢。
先の戦闘で僅かながら消耗していたのかもしれない。
オルタは正義に、負ける。
だがそんな状況でも

「…。」
「な…何がおかしい!!」

オルタは笑っていた。

「愚かな…私に聖剣を"手放させた"な…!!」

彼女がいつの間にか手に持っていた何かを振るう。
スレスレで正義はそれをかわし、バック転で距離をとって様子を伺う。
そして、その手に持っていたモノとは

「まーちゃん、あれって…!」
「間違いねぇ…ロンゴミニアドじゃねーか…!」

いくつもの赤い棘が突き出たような、邪悪な雰囲気を醸し出す漆黒の馬上槍。
ロンゴミニアド。
彼女はいつの間にか、それを得物としていた。

「…これは!」

さらに聖剣を手放し、聖槍へと持ち替えたことで彼女の身体に変化が起きる。

魔力は暴風として吹き荒れ、どす黒い風はオルタを包み込む。
霊衣が解け、肉体が変化し、また新たな甲冑を纏う。
そう、このオルタは

「クラスチェンジ…自分の力だけで霊基を変えた…!?」

セイバーから、ランサーへと変貌したのだ。
本来、クラスを変えるならばマスターのサポートと聖晶片による魔力が必要になる。
だが彼女はそういったものを必要とせず、自力で変えて見せたのだ。

「…。」

ただようおぞましい気配。
おっきーは俺の後ろに隠れ、さらに端末の魔力探知機はさっきから測定不能のアラームを鳴らし続けている。
まさか、ぶっちゃけこっちが本当の姿的な?

「最後の慈悲だ…消えろ。」

開かれた口から放たれる言葉は重く、冷たくのしかかるプレッシャー。
しかし目の前にいる正義は怖気付くこともなく、堂々と立ちはだかった。

「いやだね。僕は…悪魔の言うことを聞くほど落ちぶれちゃいないッ!!」
「そうか…ならば死ね。」

ロンゴミニアドが振るわれる。
たったの一振り、それだけだというのに暴風が巻き起こった。

「まずい…!!」

その魔力の嵐はすべてを飲み込み、なんであろうが微塵に切り刻む。
己のサーヴァントの危機を察知し、動かなかった大和がついに動いた。

「武蔵!!」

魔力が枯渇してしまったのだろうか、
さっきから動けず、その場で膝をつく武蔵の元へと大和は駆け寄った。

「大丈夫…まだ…」
「戦えるようには見えない。逃げるぞ。」
「え、ちょ…!?」

抱き抱えられる武蔵。
お姫様抱っこをされ、嬉しいやら恥ずかしいやら妙な表情をしていた。

「ま、待って大和くん!走れるから!ちゃんと走れますから下ろして!!」
「いやだ。それは師匠の命令でも今は聞けない。」

そうして、武蔵がロンゴミニアドの攻撃に巻き込まれる前に逃げる。

「なんだよアレ…俺達じゃ到底かなわねーじゃねーかよ…。」

たった一振り。それだけだ。
それだけで地表は抉られ、周囲のものは容赦なく塵になる。
あれが…アルトリア・オルタ。
対話なんて無理だ。あれは…人間が関わっちゃいけない危険なサーヴァントだったんだ。

「誠!刑部姫!」
「分かってる!逃げんだろ!!」

こちらに向かって走りながら俺達の名前を呼ぶ大和。
どうするべきかは分かってる。
ともかくこの場から、逃げるしかない。

「依頼は失敗だ!けど命には変えられねーからな!!」

走る。
おっきーの手を掴み、できるだけ遠くへ走る。
振り向けばあの2人は

「こんな…ものォッ!!」

震脚、というのだろうか。
ともかく正義が足を思い切りドンと地面に踏み込むと、

「ほう…。」

嵐が消えた。

「許さない…許さないぞ悪魔め!!」
「貴様に許されないことをした覚えはないのだがな…。」

真正面から突っ込んできた正義を聖槍で受け止める。
だが、このままではまた爆発が起き、さっきの二の舞だ。

「その槍をへし折ってやる!!破ァァーッ!!!」

ハイキックからの地面が揺れるほどの爆発。
さらに彼の攻撃はやまない。

「まだまだぁ!!」

キック、またキック。
それから正拳突き。
何度も何度も何度も何度も。
休みなく連続して打たれる拳はいくつもあるかのように錯覚する。
何故、彼が打撃の度に爆発を起こせたりとか百裂拳じみた技とかそういったものを起こせるのかといえば、

「信じられないけど彼…大和くんと同じで自分で魔力を生み出してるの。」

彼とオルタの戦いを間近で見ていた武蔵がそう言う。

「自分で魔力を…?」
「彼の言っていることが本当なら、もう人間じゃない。あれはれっきとしたサーヴァントよ…!」

確かに。正義は自らを擬似サーヴァントと名乗った。
サーヴァントだというならば、高所から落ちても無傷だし高速で動けるのも、魔力を生成出来るのにも説明がつく。

「特別な手術を受けた…そう言ってたよな。」

俺の耳がおかしくなければ、正義はそう言っていた。
なんだよあの葛城恋とかいうモブおじ…。
一体いくつやべー能力持ってんだ…!
というか

「なんの擬似鯖だよ…!」

ある英霊をその身体に降ろして擬似サーヴァントというものは成り立つ。
だがあいつは何だ?中に何がいる?
拳で爆発起きるとかそんな偉人いた?ダメだ、ヒントが少なすぎる。
英霊が分かれば弱点がつけるかもしれないが、まず今1番恐ろしいのは

「はぁ…はぁ…ど、どうして…!?」
「…。」

今までで最高火力の爆発と連続攻撃を受けても、ものともしないランサーと化したオルタだ。
漆黒の愛馬、ラムレイには乗っていないにしろ彼女は充分に強い。いや、強すぎる。

「ぐあぁっ!!」

聖槍を薙ぎ、正義が吹き飛ばされる。
魔力の嵐は彼の身体を簡単に切り刻み、力なく地面に落ちた。
落ちたのだが

「…?」
「この程度では…僕は…死なないッ!!」

起き上がった次の瞬間、全身の傷は完治。
なんの問題もなく立ち上がると彼は空手のようなかまえをとった。

「僕こそがこの物語の主人公…負ける訳にはいかない…負けられないんだぁーッ!!!」

次の瞬間、彼の身体から魔力が一気に放出される。
ランサーオルタの出す魔力が黒い闇ならば、彼の魔力は例えるなら真っ白な光。
2つの対称的な魔力がぶつかりあい、所々でバチバチと火花が散っていた。

「うおおおおおお!!!!」

足に魔力を集中させ、駆ける、
オルタもそれに対してロンゴミニアドを突き出し、魔力の嵐で迎え撃つが正義はそれをものともしない。
いや、真正面からくらい、ボロボロにはなるが瞬時に完治しているんだ。

「消えてしまった皆の為に…そして…恋様のためにッ!!」

今度は右腕に魔力が溜まる。
今までにない一撃で、オルタを倒すつもりなのだろう。
しかしそれはただのパンチではなかった。

「宝具…発動!!!」

次の瞬間、彼がそう唱えると身体が眩い光に包まれる。
そう、宝具だ。

「暗き世界よ…憎き悪魔よ…貴様らの蔓延る時代は終わったッ!!」

「…?」

迫る正義。
だがオルタは首を傾げるだけで何もしない。

「今こそ再び人間の時代の幕開け!!この一撃で滅べ!!悪魔共ッ!!」

振り上げられた拳は、真っ直ぐオルタを射抜く

「『神に代わって正義を成す者(ブロウクンワールド・デイブレイカー)』ァァァァーッ!!!!」

突きによって受け止められる拳。
拮抗する魔力。
しかし、

「おおおおおおおおおおおお!!!!!」
「…。」

ランサーオルタが、僅かに押されている。
そして

「はああああああーッ!!!!」

彼の拳は、ついにオルタを吹き飛ばした。
勢いはすさまじく、かなり遠くへ吹き飛びビルを二、三突き抜けてやっと制止した。

「…正義をかかげるだけじゃ…この世界は救えない。」

再生が追いつかないのだろうか、ボロボロになった拳を下ろし、正義はこちらにゆっくりと歩いてくる

「あいつ…倒したのか!?」

ならばと、大和は片手を刀に添える。
つかなんだよあれ…。
宝具ならもしかしたらサーヴァントの真名が分かるかもしれないと思ったが…なんだよブロウクンワールド・デイブレイカーって。
ブロウクンワールド…壊れた世界…さしずめこの世界って事だろ?
デイブレイカー…デイブレイクは夜明け。そこにerがついてんだから夜を明ける者…つまりは終わらせる者。
崩壊世界を…終わらせる者…
もしかしてあれか!?"自分自身"のこと言いてーだけじゃねーか!!

「君が教えてくれた事だよ…一誠君。」
「あ、なんだよ?」
「正義が勝つんじゃない…勝った者が正義なんだ。この世界では…それが常識なんだと…!!」

再生の終わった拳を握りしめ、こちらに向かう歩みを早める。

「だから僕は今ここで君に勝ち、僕の正義を証明させる!」

何言ってんだこいつ…!
マジで宗教家じみてきやがったぞ!

「ちっ…おっきー!!今頼れんのはお前だけだ!」
「わ、わかった!!」

武蔵はほぼ戦闘不能だ。
だからおっきーがやるしかねぇ!

「俺もいるぞ。サーヴァントではないが多少はやれる…!」
「じゃあお前もアテにする!!」

武蔵を瓦礫によりかからせるようにして下ろし、大和も刀を抜く。
さてどうしようかなと悩む。
真正面から挑んでは負けることくらい、先の戦闘を見てれば嫌でも分かる。

「…?」

ふと、端末に目をやる。
そうか、そういうことか。
だったら…!

「身も心も悪魔に染められて可哀想に…だが人間同盟に入信すれば…君だって必ず救われる!!」
「俺宗教嫌いなんだよ!!第一おっきーはどうする!?ぶっ殺すのか!?」
「いや違う。悪魔も浄化するのさ。」

殺すか、それとも燕青やブラダマンテのように自分の使いとするか。
答えを予測はしたがそのどちらでも無かった。

「…は?」
「どんな悪魔でも…葛城財団代表である恋様にかかれば綺麗に生まれ変わる…!あのお方と聖なる儀式を交えた悪魔は皆!そうして生まれ変わったんだ!!!」

…。
待て。

「お前…あのクソデブがサーヴァントになにしてんのか知っ」
「汚い口を慎めッ!!恋様は偉大なるお方!!そのような罵倒など万死に値するッ!!」

と、俺の言葉を遮るようにしてやつがキレる。
なんだこいつ…こんなキャラだったか?
しかも…まるであのクソデブ代表に心酔しているような言い方…。

何かが変だ。
だが、怒ってくれて大いに感謝している。

「失礼…友達であると言うのに…君に言葉を荒らげてしまうなんて。」
「気にしてねーよ。友達でもねーし。」

1度落ち着き、正義はまた歩み寄りながらあのクソデブの事を語り出す。

「恋様は素晴らしいお方だ何故それが分からない!?あのお方がいなければ僕は今頃…」
「あーうるせーよ。俺デブ嫌いだし。」
「一誠君…君という奴はッ!!」

血のにじむ程拳を握りしめ、明らかな怒りを込めてそいつは一歩一歩迫る。

「謝罪しろッ!!!!」
「やだよ。」
「謝 罪 を し ろ お ぉ ぉ ぉ ー ッ!!!!!!」

空気がビリビリと震える。
まるで俺がとんでもないことしでかしたかのような、そう思えるほどの声量と怒りの形相だった。

「よくそんな声出せるな。合唱コンクール優勝した経験あんだっけ?」
「そんなことはどうでもいい!謝罪しろ!!今すぐ!!ここで!!地面に!!頭を!!擦り付け!!恋様にむけて!!詫びろォッ!!!!」

要求が謝罪から土下座にランクアップしてるよ。

「やだよ。」
「一誠ェェェェーッ!!!」

俺が断れば断るほど、そして煽れば煽る程、正義はどんどんキレていく。
てかこいつこんなに煽り耐性低かったか?
性格もやっぱ変だし。
もしかして…頭も何かされたのか…?

「君は…君と言うやつは…ッ!!」
「まーちゃん怒らせてどうすんの!?」
「だってムカつくし。デブ崇めろって言われたらやだもん。」

端末の魔力探知機をチラ見するとそこには膨大な魔力量の反応が。
オルタほどでは無いがどうやらこいつ、感情により魔力量が変化するらしい。
まぁここまでなったら、おっきーや大和でも対処することは難しいだろう。

もう一度言おう。
おっきーや、大和では、だけどな。

「何お前…デブ好き?」
「見た目は関係ない…人間は中身で見るべきだ!僕はそうして来た!!見ろ!恋様の心を!あの清く澄んだ心を!あのような心の持ち主はそういないぞ!!」

え、あいつ身も心もきたねーんですが。
うん、まぁ別の意味ではあんな心の持ち主はそうそういねーよ。

「…ッ!」

彼の怒りの気配に思わず大和はかまえるが、俺は手で遮って制止する。

「お前…何のつもりだ…?」
「いーんだよ。アテにするっつったけどやっぱいいわ。こんなの戦う価値もねぇって。」

そう、こんなモブおじ崇拝者マジで戦う価値ねーもん。

「どうやら…何を言っても無駄みたいだね。」
「やっと気付いたかよ。俺にはおっきーと一緒に叶える夢があるんだ。」
「ああ、その薄汚い下品な悪魔か?」

なんだてめぇぶっ殺すぞ。
とキレたいが俺はこいつと違って煽り耐性高めなのでキレませーん。

「しかしその程度の悪魔じゃ僕の小指程度にも及ばない。そしてそこのもう1匹も、大分消耗しているみたいじゃないか。」
「ああ知ってるよ。おっきーじゃお前に太刀打ちできねーし、武蔵も今じゃ勝てるかどうかだからな。というかそもそも…




お前の相手…後ろにいるから。」
「ッ!?」

正義が慌てて後ろを振り向いたが時すでに遅し。
そこには聖槍をふりかざすオルタの姿が

「なぜ…お前はさっ」

さっき倒したはず
そういい切る前に彼は薙ぎ払われ、廃墟のビルに叩きつけられた。

「一誠…君…まさか…ッ!!」
「今更気付いたかよ。時間稼ぎしてんのに。」

端末の魔力探知機を見て、気づいてはいた。
ランサーオルタはまだ、生きている。
そして動き出し、こちらに向かって真っ直ぐ突き進んできている事を。
というわけで彼女が来るまで時間を稼いでやろうと思ったのだがいやー助かった。
こいつが俺達にキレまくって、周りへの注意が薄くなってくれたからな。
そう、
俺達が相手する必要はない。
何故ならコイツがまだ正義の相手をするからだ。

「さぁ今のうちだ!逃げんぞ!!」
「さすがだねまーちゃん!!チラチラスマホ見てたのはその確認の為だったんだね!」

いいぞいいぞ、もっと褒めてかまわぬぞ。
ただし帰ってからだけどな。
そして依頼は…まぁ本筋は調査だから成功っちゃ成功だろ。
アルトリアオルタは交渉以前に対話不可能。そうやって言っとけばいっか!!



それから彼らが逃走してから、ランサーオルタの反撃が始まっていた。

「身の程を知れ、人間風情が私に勝てると思ったか?」
「ぐ…うぅ…!」

瓦礫に埋もれた正義の首を掴んで持ち上げ、静かだが確かに怒りの表情が刻まれたオルタ。
その瞳に、慈悲などこれっぽっちもありはしない。

「…。」

もがく正義。
だがオルタはそんなこと一切気にもかけず空を見上げる。
先程から目障りな存在があり、気にはなっていた。

「あれは貴様の仲間か?」
「彼らは…関係な」
「いいやある。あいつらもまた私を捕獲しようとやって来たのだろう?」

ご名答だ。
彼らの目的は接触禁止と言われているオルタの捕獲。
神代正義の実践テストはあくまでついでであり、そちらがメインだ。

「…ッ!!」

苦しむ正義。
やがて彼はオルタに投げ上げられる。
そのパワーはサーヴァントだとしても凄まじいもので

「うわっ!?」

バン!とはるか上空に滞空しているヘリのガラスに叩きつけられた。

「嘘だろ…。」
「実験用サーヴァントには…負け無しだったのに…。」

ガラスにへばりついている、ボロ雑巾のようになった彼。
つい前まではんなに張り切った姿だったのに、今では見るも無惨な姿に

「う…うぅ…。」
「教祖様を回収後撤退!急げ!!」

嫌な予感がし、この職員たちの中でも隊長格の男がそう叫ぶ。
実質彼の予感は的中していた。
冷たい目で輸送ヘリを睨む真下のオルタ。
そして職員の持つ魔力探知機からは計測不能の文字。
そう…来る。

「これは…宝具です!!あのサーヴァントは宝具を撃とうとしています!!」
「んなこと分かってる!!だから全力で回避だ!!」

真下の魔力反応はどんどん強くなっている。
自分の邪魔をし、挙句の果てには人間ごときが自分を捕まえようとしていた。
彼らは…葛城財団と神代正義は触れてはいけない者の逆鱗を思い切り触れてしまったのだ。

「突き立て…喰らえ…十三の牙…!!」

赤い棘が聖槍から弾け飛び、魔力が渦巻く。
狙うは上空の輸送ヘリ。
今からどこかへ逃げようとしているが、

「『最果てにて(ロンゴ)…!!」

この槍からは逃れられない。

輝ける槍(ミニアド)』ォッ!!!」

アルトリアの持つ宝具の1つである『風王結界(インビジブルエア)』から繰り出される技、『風王鉄槌(ストライクエア)』。
彼女の宝具、『最果てにて輝く槍(ロンゴミニアド)』はそれを聖槍により極大強化し撃ち出すもの。
漆黒の風はあらゆるものを破壊する。
たかが輸送ヘリ一機ごときにくりだす宝具でもないかもしれないが、その分彼らは騎士王の怒りを買ったのだ。
くらえば当然、タダでは済まない。

「操縦不能!このままではヘリがもちません!!」
「もたせろ!貴重なデータと教祖様だけはなんとしても持ち帰るんだ!!」

今この輸送ヘリは、サーヴァントの宝具をくらっている。
機内は激しく揺さぶられ、ギシギシと今にも空中分解を起こしそうだ。
操縦を試みようとするも機体は全く言うことを聞かない。
なんとか教祖様こと正義を内部に収容し、オルタのデータや彼の実戦データを財団本部へと持ち帰りたい彼らであったが恐らく無理だろう。
強力な宝具をまともにくらい、平気なモノなど存在しないのだから。




「…。」



宝具を撃ち終え、晴れやかな空をオルタは見上げる。

「ふ…ふふ…。」

笑みがこぼれ、再び彼女はどこかへと歩き出した。
もう先程のことは記憶の彼方に追いやった。
覚えていても邪魔だからだ。

「何処にいるんだマスター。こんなに私が探しているというのに…。」

地面に刺さっている聖剣を引き抜き、かつての姿に戻る。

「分からないな…どこにいる…どこにいるマスター。必ず見つけ出して…私だけのモノにしてやるからな…ふ…ふふ…ふふふ…!」

彼女の求めるマスターとはなんなのか。一体誰なのか、
それは、誰も知る由もなかった。



『そう…そんなことが…。』

あれから
俺達は無事姫路町へと帰還。
ランサーオルタが真上へと放った宝具は街の人達からも見えたようで、警備隊達からは何があったのかしつこく聞かれた。
ただ「やべーのがいるけど、こちらが手を出しさえしなければ何もしないから平気だ」とだけは伝えた。

そして今はホテル最上階の事務所へと戻り、魔力の正体はアルトリアオルタであり、どうなったかの出来事を依頼主の真壁さんにテレビ電話で報告している。

「財団とか世界のこととかは興味ないって言ってましたね。んで、交渉決裂と言いますかぶっちゃけ対話不可能です。」
『なら仕方がないわね…私が依頼したのは調査であって、あくまで勧誘はついで。生きて帰ってこれたのと正体が分かっただけでも儲けものだわ。』

ボロボロになった武蔵の様子を見て、真壁さんはその時の状況を悟る。
良かったよホント、話の分かる人で。

『それじゃあ報酬金は後で送っておくわ。それと次の依頼なんだけれど…』

へ…?

「え、あの、真壁…社長?」
『何かしら?』

首を傾げる真壁さん。
だって今この人…俺の耳がおかしくなければ

「次の依頼って?」
『そのままの意味よ?あなた達に依頼したいのは一つだけじゃないってこと。』

へ、へぇ…。

「まず一つ、武蔵と大和の2人は充分な休息をとった後、"東北"にいる玉藻の前のところを尋ねて欲しいこと。」
「分かった。」

思いっきり遠くじゃん…。
大丈夫?左遷とかじゃない?

「そして探偵さんと刑部姫はここから西にある町に同盟を申請してきて。」

西ってことは…そうだ、あいつらがいる町だ。
なーんだ。ここから20分とかからないし簡単じゃん。
ちゃっちゃと済ませてゲームでもしますかね!

「それから…」
「それからァ!?」

え、まだあんの?

「そうね…探偵さん。あなたは"種火が取れる島"を、知ってるかしら?」




一方その頃。

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

痛む身体に顔をしかめながら誰かに起こされる。
見回すと自分と同じように意識を失って倒れている職員が数人。そしてボロボロになり内部も無惨な様子となっている輸送ヘリ。
そうだ、自分達は調査と実戦データをとるために…。
そして今自分を起こしているのは…

「教祖様…!」
「良かった…無事なんですね!」

人間同盟の教祖様こと、神代正義だ。
あれだけボロボロだったのに、今はもう見る限り完治していた。

「ここは…一体?」

それから他の職員たちも起こす。
奇跡的に皆大した怪我はなく、打撲程度で済んでいた。
だがこの輸送ヘリはどこかに墜落し、これでは本部に帰ることは難しいだろう。
そう思った、時だった。

「…!」

歪み、開けられなくなったドアがこじ開けられる。
ドアが外され、数人の影がこちらを覗くが逆光で何者か分からない。
やがてその者達は輸送ヘリに入ってくると、正体はすぐに分かった。

「きゅ、救助に来てくれたのか?」

私達と同じ制服。つまりは財団職員の者達だったのだ。
これで一安心だ。そう思った我々だがさらに奇跡がまた起きる。

「ところでここは?」
「救助もなにも…この輸送ヘリがいきなり"本部"に吹っ飛んできたんだぞ?」
「…な、なんだって…?」

慌てて外に出てみれば、見覚えのある景色。
そう、ここは人工島。葛城財団の本部がある我々の拠点なのだ。
さらに

「隊長!」
「どうした!?」
「データは生きてます!!映像記録も全て!」
「なんだって!?」

あれだけのことがあり、輸送ヘリもボロボロだがパソコンの精密機器だけは奇跡的に無傷。収集した全てのデータが生きていた。

「隊長…これって…!」
「ああ、彼の擬似サーヴァントとやらの力のおかげなのかもな…。」

そうだ、
この奇跡と偶然の連続は紛れもない、
教祖様様の起こしたモノだ…!

「教祖様バンザイ!!正義様バンザイ!!」
「さすがは教祖様だ!」
「負けたからってなんだ!次こそは勝つさ!!!」

一斉に巻き起こる声援。
皆教祖様を褒め称えるている。
本部に逃げてきた人間同盟教徒だけでなく、財団職員たちも一緒になって喜んでいた。

「ありがとう教祖様!!」
「あなたがいたからこそ、私達は生き残れた!」
「教祖様バンザイ!!教祖様バンザイ!!」

褒め称えられ、満足気な笑みを浮かべる教祖様。
嗚呼…私も祝わなくては…!

「教祖様ありがとう!!教祖様バンザイ!!教祖様バンザイ!!」
「ありがとう…本当にありがとう…!!」

と、傍から見れば一種の気持ち悪さを覚えるこの光景。
こうして皆から生還を祝われ、負けたことは一切咎めたりせず励ましてくれる者さえいる。

これは彼のカリスマによるものかもしれないが…

「おいおい…教祖様々だな。」

その光景を見て、呆れながらも笑う代表葛城恋。
そう、まるで主人公のように持て囃され、奇跡を起こしたのは、
彼が正義の中に組み込んだ、そのサーヴァントからくるものなのでもあった。 
 

 
後書き
多分ここで言った台詞大体活用されない次回予告!!

「"種火が取れる島"を知ってるかしら?」

「水着が実装されたのは知ってる。その時の聖杯ごはん事件も知ってる。けどDATA LOSTってなんだ?おい、なんなんだ?教えてくれ!おい!!」

「ならば参りましょう刑部姫様!狩猟げえむならお手の物!種火はんたあとなり狩って狩って狩り尽くすのです!!」

「俺デブは嫌いなんだよ。痩せてから出直せ。」

「その脂肪は飾り?いえごめんなさい、飾りだったわね。」

「この島の運命は、俺たちが変える!!だから見ててくれ…巴さんの…転身!!」

「ええ!喜んで差し上げましたよ!!その時のサーヴァントの表情と言ったらもう…思い出す、だけで…グ…グフフ…ッ!」

「大企業でも報連相が出来てないのね…"強い女"に気をつけなさいと言われなかったの?」

「ステンノ様の大事な妹達に手を出したんだ…タダでこの島から帰れると思うなよ…!」


『戦えないDはただのD/種火のなる不思議な島 』

次回もお楽しみに。 
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