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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
最終章『ふたりで…』
  代表と探偵と裏側の狂気

 
前書き
どうも、クソ作者です。
最終章に突入しましたね、はい。
ちなみに最後にFGOプレイヤーみんなのトラウマが登場します。
おたのしみに。

 

 
「元傭兵の岡田以蔵が加わるだって?」

日が変わるほんの少し、まぁ作戦決行時間直前、岡田以蔵のことを聞き院長先生は驚いていた。

「ええ、どうやらマスターが囚われの身らしく、俺達の作戦に加わりたいとかで。」
「とはいっても、その以蔵さっき探偵さんと喧嘩した以蔵じゃないか?」

後ろから刺されたりはしないか?
実は財団のスパイなのではないか?と院長先生はアレコレ心配してくれるが

「わしがそんなに信用ならんか?」

本人がその疑いを晴らしにやってきた。

「そこまでだ幕末チンピラ。これ以上近付こうものならキャットの爪が火を吹くぞ。」
「あほう、爪から火が出るか。」

鯉口を切ろうとした以蔵にキャットは院長先生の前に出てかまえるが、以蔵にその気は無い。

「ここで無駄な殺生はせんから安心せい。わしはただこいつらに乗っかって、財団を潰してマスターを助けたい。それだけじゃ。」
「本当に、そうなのだな?」
「男に二言はないぜよ。」

キャットはご主人である院長先生に危害を加えないことを悟り、爪をしまう。
以蔵もまた、刀にかけた手は離れていた。

「それでだ探偵さん。言われたサーヴァントは連れてきたが…本当に彼らだけで良いんだな?」
「ええ、もちろん。」

確認の為か俺が三笠から貸して欲しいサーヴァントをもう一度尋ねる院長先生。
間違いない。今先生の後ろにいる二騎のサーヴァントであっている

「俺なんぞを前線に出してどうするつもりだ探偵?生憎だが俺は物語を書く事しか出来ないぞ?」
「それでいいんだよ。いや、それだからいい。」

1人はアンデルセン。
そして本部の構造をよく知る子安さんもセットだ。
確かにアンデルセンは戦闘向きのサーヴァントではないが、彼には大きく活躍してもらわなければならない場面が来る。
そしてもう1人は

「頑張ってくださいシェヘラザードさん!ほら!三笠の皆も応援してますよ!」
「無理です…応援とはいえ私を死地へ送り出すのでしょう…?無理です…死んでしまいます…!」
「シェヘラザード様、どうかお願いします。あなたの力が必要なのです…!約束します!私達が決してあなたを死なせません!」
「無理です…!あのような激戦区に向かうというだけで…恐ろしさのあまり死んでしまいます…!」

三笠にてアタランテと共に子供達の面倒を見、時にお話を聞かせてくれる優しいお姉さんと子供受けのいいシェヘラザードさんだ。
今葵と紫式部が全力で励ましてくれている。

「本当に、いいのか?」

再三確認しちゃうのも無理もないだろう。
奇襲とはいえキャスター二騎だけを追加で連れていくんだから。

「大丈夫です。この2人がいれば、あの擬似サーヴァントは完封できますよ。」

とはいっても、推測の域は出てないんだけどな。
奴の中に入ってるサーヴァントは予想はついたが、それはまだ確証には至ってない。
大した証拠もなく、憶測や推測のみでものを言う。
うん、探偵としちゃ失格だな。

「じゃあ行こうぜ。みんな。」

さて、時計の針は長短二つとも12を指そうとしている。
行こう。決戦へ。

「探偵さん。」
「?」

船着き場にある以蔵の船に向かおうとした際、誰かに声をかけられる。
振り向けばそこには

「広海さん、それと弟くんじゃん。」

院長先生、そして広海さんに弟くんと、
かつて依頼を通して助け合ったマスター達がいた。

「向かうんだな。財団本部に。」
「まぁそうっすね。軽くあの代表を捻ってくるんで。」
「一筋縄じゃいかないかもしれない。でも、探偵さんならうまくやれるって信じてるさ。」

手を差し伸べられる。
迷うことなく俺はそれを掴んで、かたい握手を交わした。

「必ず…帰って来い。マリーもそう望んでる。」
「ええ!」
「行ってこい探偵さん。それで俺やマリーの分まで、代表をぶん殴ってこい。」

何かを託されたような気もする。

「ええ。知らないんすかニノマエ探偵事務所のキャッチフレーズ。」
「"多少高くつくが、依頼は必ず成功させる"だろ?」
「ええ。そう頼まれれば、俺達は必ずやり遂げますよ。」

そう誓い、握手を交わした広海さんは踵を返しどこかへと去っていく。
そして

「お姉ちゃんは、どうした?」
「うん、これから慰めに行くつもりだよ。」

見送りに来てくれた弟くん。
先にやるべき事があるんじゃねーの?ちょっと前の俺みたいにさ、と言いたいがここは言わないでおく。
弟くんはやるべき事を分かってるようだからな。

「会場が潰されてもやめたりしない。あんな奴の言いなりになんかはなるつもりもないし、ジャンヌは絶対に渡さない。」
「大事なお姉ちゃんだもんな。」
「…まぁ、そうだけど。」

恥ずかしながらもそう肯定する弟くん。
ここに本人いたらどうなると思う?ビーム撃つぞきっと。

「安心しろ。会場潰した分。お前のお姉ちゃんがやられた分、子ギルの恨み分きっちりあいつに返してくるからさ。」
「うん、頼むよ。特に子ギルは滅茶苦茶キレてたから。」

弟くんいわく、
ほば水浸しの荒地となった会場を見て子ギルはそれはそれはもうキレていたとのこと。
ただし笑顔のままで、とんでもない威圧感とオーラを放っていたとか何とか。

「それにまたやりたいしな。ヒロインショー。」
「そうだね。ジャンヌも乗り気だったし。この戦いが終わったら急いで復興させるよ。」

最後に握手を交わし、彼らに一時の別れを告げると俺は船へと向かう。
俺以外のメンバーは既に乗っており、後は俺を待つだけとなっていた。

「なんか最終決戦みたいだね。」
「みたいじゃねーよ。そうなんだよ。」

飛び乗り、隣におっきーがやって来る。

「ねぇまーちゃん。」
「あ?」
「絶対、勝とうね。」

当たり前だっつの。

「夢半ばで倒れたりすることはしねーよ。だからお前も死ぬなよ。」
「大丈夫大丈夫。姫自己防衛は完璧なサーヴァントだから。」

うん。確かにその辺は問題なさそうだな。

「それじゃあ出航だ。行くぞ!」

船のエンジンがかかり、子安さんが運転する。
離れていく港。そこには俺達をずっと見守る人達。
ああ、やるんだな。
色んなもん託されて、俺達はこれから戦うんだな。

「どしたのしみじみした表情して。」
「うっせ。感傷に浸ってんだよ」







そして、
俺達が出航した港では

「…さて。」

院長先生が踵を返し、海に背を向ける。

「彼らも頑張ってる。俺達も俺達の戦いを頑張らなきゃな。」
「そう、ですね…。」

院長先生に頷く弟くん。
そして院長先生が見据える先は
遠く、そのずっと遠く。

各地から集まった人達が押し寄せているその場所であった。

「東京を不当に占拠する悪魔共め!!」
「どうして葛城財団に従わないんだ!!」

原理は分からないが、擬似サーヴァント神代正義の活躍を見た一般人達は皆こうして彼に賛同している。
そうして今、東京にいるサーヴァントやマスター達を拘束するべくデモ隊やら警察が動き出していたのだ。
そしてそれを説得しようとしているのが

「やめてみんな!どうしてそんなことをするの!?」

人々を魅了した、マリーアントワネットだ。
そして遅れてやって来た広海さんもまた、大声で説得を始める。

「どうしたんだ!?つい昨日までサーヴァントにあんなに友好的だったのに!!」
「黙れ!!契約者風情が!!」
「俺達は悪魔に騙されていた!それを正義様が証明してくれたんだ!!」
「そうだ!正義様万歳!!正義様万歳!!」
「こっちは国がついてんだよ!悪魔は捕らえろ!契約者は殺せ!!」

こういったデモが起きているのはここだけではない。
全国各地至る所にて、サーヴァントのいる場所にはこうして人々が押し寄せている。

「正義様は私達を正しい世界へ導いてくれる救世主なのよ!?」
「お前は悪魔に魂を売った!この外道が!」
「被害者ぶってるけどな!お前達が悪者なんだよ!!」
「このままじゃ…!」

ヒートアップするデモ隊達。
そしてついに彼らは地面に転がる石を手に取り

「マリー!危ない!!」

彼らの言う悪魔めがけ投げつけ始めた。

「あなた!!」

マリーに投げられた石。
広海さんは咄嗟に前に出、全身で受ける。

「ダメよあなた!私、あなたにそこまでして欲しくなんてないわ…!!」
「いいんだ…!それよりも早く…!みんなの目を覚まさせないと…!」

押し寄せるデモ隊。
皆合言葉のように、それがさも当然かのように口々に言う「神代正義万歳」という言葉。
突然そうなった事を見て広海さんは、彼らが何か操られているのではないかと推測した。

「やるんだ…!俺達の戦いを。探偵さんや刑部姫が頑張ってる今、俺達も頑張るんだ…!」

投げつけられる石はやまない。
マリーは心配そうな顔でマスターを見るが、やがて何かを決心し強く頷いた。

「うん。分かったわ!」

そうしてここでも、大事な戦いが始まった。




「岡田。」
「今更畏まって何のつもりじゃ。以蔵でええ。」

場面は船の中。
小型のクルーザーは本部に向かっているらしいが、見えない壁とやらでまるで実態が掴めないのでどうにも実感は湧かない。
海の風を感じながら、俺は以蔵からいくつか聞くことにした。

「じゃあ以蔵。お前のマスターって、どんなん?」
「どんなん…か。まぁどこにでもおるような普通の女じゃ。歳だってまだ20歳にもなっとらんしの。」
「じゃあ…学生か。」

その問いに対して以蔵は頷いた。

「今思えば、マスターには相当無理させたかもしれん。わしにはこれしかなか。やきマスターを無理矢理その道へ進めてしもうた。」

自分の刀を指し、これしかないと言う以蔵。
つまりは、殺ししか出来ないということ。
自分にはそれしかない。そしてこの世界でやっていくにはその殺しの腕を生かせる仕事をするしか他なかった。

「やれナイフの扱いがようなった、銃の扱いがようなった。心の底から嬉しそうな顔してわしに報告しに来るが、少しばかり心も痛んだ。」
「ついこの前まで普通の学生だった子を、殺し屋にしちまった。って事にか?」
「…。」

以蔵は頷くのみだ。

「だから、こんなことに巻き込んでしまった。マスターがこうなったのも、全てわしの責任じゃ。償っても償いきれん。」
「いいえ、そういうことはないんじゃない?」

落ち込み始める以蔵だが、ここで武蔵が割って入ってきた。

「なんじゃおまんは。」
「"刀"だって、使い方は殺し以外にもある。誰かを守る為だったり、今こうして悪を倒す為だったり。まぁ人を斬るのには変わりないんですケド。」
「…守る為、か。」

刀っていうのは確かに凶器だ。
しかも持つ人によってそれは鉄をも切り裂くチート兵装にもなりえる(主にサーヴァント、稀に人間含む)
でもだ、
武蔵や大和のように、守る為に使えるのもその刀だ。
現に大和は武蔵と隣合って戦うため、そして彼女の背中を守るために刀を手に取る決意をしたって言うしな。

「そうだよ。殺しの技術そのものは"悪"じゃない。使う人によってそれが決まるんだからさ。」

と、葵も話に加わりフォローを始める。

「使う人によっていい殺しにもなるし、悪い殺しにもなる。それに今アンタがあたし達としようとしている事は、間違いなくいい方だよ。」
「1度はおまんを殺しかけた男だというに…何を言いゆう。」

刀を見つめる以蔵。
殺しの道具として使い続けていたそれは何も言わないし、これからどうするべきかなんてアドバイスも出さない。
だが

「わしは…わしはこの刀をマスターを助けるために使う。そしてこれからは守る為に使う。これでええ。」
「…ああ。」

始末屋からは足を洗う。そういう事でいいのだろうか。

「おい以蔵。前に来てくれ。」
「おう、そろそろか。」

そうして少しの間話していたら以蔵を呼ぶ子安さんの呼ぶ声が。
どうやら、到着間近らしい。

「私とアンデルセンはお前が捕らえたという体で話をするぞ。他の奴らは隠れてろ。」

そういい、子安さんは以蔵に後ろ手にロープを緩めに結ばせる。
引っ張ったらすぐに解けるレベルの結びだ。
敵を欺くには充分だろう。

「覚悟はいいな?私がこう言うのもアレだが院長命令だ。『絶対に生き残れ、全員で笑って帰るぞ。』」





葛城財団本部、船着き場。

「暇ですね。」
「だな。」

真夜中。
ウッキウキで帰ってきた代表を見るからにして気分がいいのは分かっていた。
そうしたら帰ってくるなり今夜は宴だとかいきなり言い出すし、どうしたんだと思えば東京を攻め落としたとのこと。
代表、宗教の教祖の若いやつと傭兵の三人でだ。
サーヴァントも連れずどこ行くんだろうなぁと思ってたらまさか東京とは。とビックリしたもんだ。
そして今、財団本部では宴という名の乱交パーティーが繰り広げられている。
嬌声は聞こえるし、俺も仕事ほっぽり出して参加してぇなぁなんて思ってたが

「ダメだ。」
「え?」
「俺達は見張り番だろう。」

先輩にダメと言われ、渋々こうして日が変わる時も休まず船着場にて見張りをしている。

「なんでですか先輩。」
「いいか?敵っていうのはこうして油断しているところを容赦なく突いてくる。見張りもいなかったら敵の侵入を許してしまうだろう?」

別にいいじゃないですか。相手は再起不能なまでにやられたらしいし。
それに代表も自信満々に3日後には大量のサーヴァントがやって来るって言ってたんだし。
この先輩はなんかこう…柔軟性がないというか…真面目すぎる。
マニュアル通りにやるのは二流ですよ、と口から零しそうになったがグーで殴られたくないのでギュッと固く閉じた。
あぁ、オカタイ上司を持つってのも疲れますわ。

「かまえろ。」
「え?」

何度目か分からないため息をつこうとしたその時、先輩が銃をかまえた。
先輩の視線の先には1隻の小型クルーザー。
ってあれは!!あちこちボロボロだが、あれは優遇された者のみが使えるの財団の船じゃないか!
どうして今ここに?

「帰ったぜよ。」

停泊すると、中から誰かが出てくる。
いや、サーヴァントだ。それにこいつは知ってる。

「おやおや?お払い箱にされた岡田以蔵サマじゃございませんかぁ?もうあなたの居場所はここにはありませんけど?」
「んなこたもう知っちょる。」

落ちぶれた奴となんて話はしたくないが、乱交パーティーに参加出来なかった腹いせだ。悪意マシマシでおはなしでもしてやろう。

「おい、やめろ。」
「え、なんでですか。そいつおちこぼれっすよ。」

と、落ちぶれた元エリートの以蔵をからかってやろうとしたが先輩に止められた。
それはお前の悪い癖だって言われたが、別にいいでしょ。

「何の用だ。岡田以蔵。」
「ああ、ちょいとな。おまんらに届けたいもんがあっての。」

そう言うと以蔵は「おい、出てこい」と言う。
そうして船から縛られた状態で出てきたのは末端の俺でも知っている、有名な人だった。

「先輩!こいつらは!!」
「主任!?」

葛城財団から逃げた女、子安とかいう科学者だ。
昔は色んな研究をして財団に貢献しまくってたらしいが、嫌気が差したのか手柄をとられることが嫌だったのか逃げ出したと聞いている。

「主任?今の私はただの子安 綾女だよ。」
「で、ですが…!」
「お前は変わらないな。相変わらずマジメ過ぎる。」

先輩はこの女を主任と呼んでいるが裏切り者の重罪人だ。
もう上司でもなんでもない。

「で、おちこぼれ元エリートの以蔵さんがこんな二人連れてなんの用だよ?」

裏切り者を連れてきてくれた事は助かるが、代表はもうそれを必要としていない。
いずれこの世界は葛城財団のものになるし、それにここには3日後日本全国から数多のサーヴァントがやってくる。
それ以外に、代表は何も欲さないのだ。

「ああ、それとな。もう1つ届けもんがある。」
「なんだ?」

先輩は以蔵に銃を向け、未だに警戒している。

「竜胆急便からじゃ。おまんら葛城財団に"死"を届けに来たと。」
「…!?」

船の影から飛び出てきた2つの影。
銃をかまえる猶予もないほどのものすごい速さで奴らは接近すると

「おまえたちは要注意人物のみやも」

刀を振り上げた。
それが自分が人生最後に見た光景だ。



「ぶっ殺して良かったんすか?なんか片方良い奴そうだったけど?」
「私の元部下だ。私が殺せと言ったら殺していいんだ。」

大和と武蔵が斬った2つの死体を片付けることも無く子安さんは拘束を解き、俺達も船から出ていく。
見渡すとそこは船着場であり、何十隻もの船が停泊していた。
どうやら、見張りはさっきの2人だけらしい。


「上がるぞ。」

子安さんが先導し、階段をのぼっていく。
その先に広がる風景はまるで都会の一部を切り取ったような街並み。
こんなせまい人工島に、様々な高さのビルが建ち、常夜灯があちこちを照らしている。
しかし、財団職員は1人として歩いていなかった。

「宴と洒落混んでるはずだ。その内に私達は見えない壁を解除しに行くぞ。」

開けっ放しのビルの窓から聞こえる声。
喘ぎ声だろうが、中には悲鳴に近い声もあった。
そして男達の笑う声。
今本部のビルの中はきっと、阿鼻叫喚の地獄絵図であることは直接目にしなくても十分理解出来た。

「確か…ここから少し先だな。地下道に通じる建物があってそこが見えない壁の装置があった気がする。」
「気がする…っていうのは?」
「あることは知ってる。だが見たことは無い。余程大事なものだからかそこに入れたのは代表とほんのひと握りの人間だけだ。」

しかし、子安さんはこの本部にてそこそこの地位についていたはず。
彼女でも入ることが許されないということは、どういうことなんだろうか。

そのときだ。

「みんな、後ろ!!」
「っ!」

最後尾を歩いていた舞が振り向き、声を上げる。
そこには

「はは、ありがたいね。自分達からやられに来てくれるなんて。」

神代正義、そして彼の後ろに一列に並ぶ数人の職員達。

「もしかして勝利に酔いしれている隙に僕らを倒そうと思ったのかな?甘いよ。一誠くん。」

ホルスターのマグナムに指をかける。
周りの皆も各々の武器を手に取り、かまえをとる。
だが、ここで違和感に気付く。

「大和くん…あれ。」
「ああ、おかしい。」

大和、そして武蔵もその違和感に気付いた。
正義が後ろに連れている職員達。
彼らは皆、丸腰だ。
さらに白衣を羽織っていることから戦闘向けの実働部隊でないことも明らか。
さらに

「ふ、ふふ…えへへ」

皆、どこかを見つめ不気味な笑みを浮かべている。

「気になるかい?彼らが。彼らは僕と同じように手術を施し、"新たなる人類"へと進化した。」
「新たなる人類…?」

その途端、彼らの様子がおかしくなる。
それと同時にだ。ビルからあんなに聞こえていた声も、ピタリと止んだ。

「悪魔共を吸収する際、どいつにも共通して"恐れていたモノ"の記憶ががあった。」

ボコボコと彼らの身体が沸騰したかのように膨らむ。
そして、サーヴァントが共通して恐れていたモノがあるというワード。
ぞくりと、悪寒が走る。

「契約者も"それ"には嫌悪していたし、かなり手強い相手だと吸収したサーヴァントの記憶にあった。だとすると、だ。」

形の歪む職員達。
笑い声が、聞き取れない未知の言語へと変化していく。

「33…gmaee…」
「2^^…5zb@-6!?」
「悪魔も、契約者も"それ"を畏怖した。ならばそれは悪に対する天敵。すなわち天使だろう!?」

いいや違う。
あれは天使じゃない。

「まーちゃん…!あれってもしかして…!!」
「ああ、なんか嫌な予感してきた…!」

外れて欲しいが、嫌な予感ほど当たるのはなんでだろうな。

「使えない兵士ならば使える兵士にしてしまえばいい!我が王もそれをお許しになった!そして誕生の瞬間を見るがいい!!」

ぶちぶちと、人体という名の殻を破って"それ"は不気味な産声を上げた。

「6g@7333」
「e7q@…byutoq@iulqhutzq…!!!」
「qr:w!q@;tqr:w!0qd=b\dw!」

それは確かにそうだった。
俺達FGOプレイヤーがおそらく最も恐れ、最も嫌悪し、最も厄介に感じた存在。
不気味な程に細い身体。人間の口を縦にしたようなおぞましい頭部。
強いてゲームと違うところをあげるとすれば、

「そう!これこそがお前達悪魔と契約者を討ち滅ぼす聖なるモノの姿!『天使ラフム』だ!!!」

聖なるモノであることを実証するように、
彼らの…ラフム達の身体は純白であった。

 
 

 
後書き
かいせつ

⚫天使ラフム
神代正義はサーヴァントを吸収する際、全てとは言わないが記憶も一緒になって流れ込んでくる。
そうしてどのサーヴァントにも恐れるもの、嫌悪するものとして刻まれていたのが7章にて登場するビーストII、ティアマトより形成されたもの、ラフムだった。
正義はこれをサーヴァントに対する天敵ととらえ、そして財団職員達をこれらに改造することを代表に提案する。
使えない兵士が手間のかからない使える兵士になる。これほど嬉しいことは無いということで代表はこれを快諾。
そして正義は本部にいる代表と仮のマスターである置鮎以外の全員に自分の霊基を埋め込み、ラフムへと無理矢理変貌させた。
そして悪魔であるサーヴァントの天敵であるならばラフムは"天使"なのではないかと推測し、彼はそれを付け足し『天使ラフム』と命名し、全身を白く塗り替えさせた。
アニメ基準の五十音二文字ずらしで喋らせようと思ったけどクソ作者はゲームの方が不気味感あっていいなと思ったのでそっちの喋り方にさせました。
その際、ラフム翻訳機にはお世話になりましたよ。 
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