Fate/imMoral foreignerS
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始まりから夏休みまで
葛城舞は優しすぎる話
前書き
こんにちは、クソ作者です。
怪しい神父が出てきます。
数日前のこと、
まだ…この街を賑わせている連続殺人事件が起きる前日のことだ。
「くそ…っ!くそぉ…っ!!」
夜。
誰もいない路地裏を悪態をつきながら歩く男が1人、
そう、桐生だ。
あれから泣きながら逃げ、家には帰らずこうしてあてもなくフラフラと歩いていたらいつの間にか夜になっていた。
「キモヤシのくせに…キモヤシのくせにィイっ!!」
壁を殴ったとしても、拳が痛むだけで現状の解決にはならない。
あいつさえ、
あいつさえいなければ今頃自分は…
「なんだよあの女…僕をコケにしやがって…!!」
歯をギリギリと言わせ、傍から見てもどれだけ彼が悔しがっているかは分かった。
そんな時だ。
「随分と悔しそうだね。キミ。」
「は…?」
声をかけられる。
顔を上げると、いつの間にか目の前には真っ黒な男がいた。
「お前…は?」
真っ黒な男というのはあくまで比喩ではあるが、実際本当にそう見える。
真っ黒な服、浅黒い肌。
夜の闇に溶け込みそうな彼は本当に黒い男だった。
「なに、私はしがないただの神父さ。」
首にかけられたストール。
そして服から出して見せた十字架のネックレスが示すとおり、彼は神父なのだろう。
「そんな神父様が何の用だよ?」
「おやおや、困っている人を見かけたんだ。声をかけずスルーするというワケにもいかないだろう?」
と、笑い混じりに桐生の肩をポンポンと優しく叩いた。
何かバカにされているような気がして桐生には殴り掛かるが
「…?」
「暴力はよくない。やめた方がいい。」
その拳は空振り、振り返ると背後に奴はいた。
「なんだよ…どうせ話したって神父ごときに僕の悩みは」
「力が…欲しいんだろう?」
そう言った神父の手には、黄金に輝く謎の杯が。
「なんだよ…それ。」
桐生の本能が何か伝えようとしている。
警告のような、危険予知のような。
この神父には関わるなと、身体が伝えている。
だが彼は
「すごいものだよ。きっとキミにすごく馴染むと思う。これで復讐しよう。キミを殴った女も、見捨てた友達も、そして…調子に乗ってるあいつも…。」
誘惑には勝てなかった。
桐生は神父に手を伸ばす。
なぜ自分の身の回りのことを知っていたのかは謎だ。
だがこの神父は、自分に復讐の為の力をくれる。
そう思うとそれ以外はどうでも良くなったからだ。
「さぁ、キミだけの最高の力だ。名前を呼び、自らが主であることを示すんだ。そしてキミの行く先に…幸があらんことを。」
夜の町。
そこには狼の遠吠えがこだました。
⚫
翌日。
学校では再び臨時集会が開かれた。
なんでも、ついにウチの生徒が被害者になったのだという。
人数は十数名。
共通点として彼らは全員…
「桐生の…取り巻きだ…。」
名前が挙げられ、それらは全て桐生の取り巻きだということに気付く。
「マジでラッキーだな葛城!これでいじめっ子は全滅だぜ!」
「とはいっても死にましたからあまり喜べませんね。それに大きな声で言わない方がいいでしょ、タクヤくん。」
そうして教室に戻り、いつものメンバーと話をする僕ら。
確かに、タクヤくんの言う通り桐生含め僕らをいじめる奴らはまるっといなくなった。
でも死んだんだ。平野くんの言った通り素直に喜べるものでもないしあまり気持ちのいいものでは無い。
「現場も今までと同じように"食い散らかされた"って言う方がしっくり来る感じだったらしいぜ?」
「よく知ってるな友作。」
「まぁ、アレだ。バイト先の先輩から聞いた話だ。」
と、僕らの話題も事件の話で持ちきりだった。
そして他愛ない話を続ける中
「な、なぁ…。」
「ア"ァ"ん"?」
また彼がやってきた。
「そういや取り巻きの生き残りがまだいたなぁ…1人だけだけどなぁ…?」
やめたげなよタクヤくん…。
そう、あの暮馬くんだ。
「1人だけになって…行くとこがなくなったか?それとも群れることしか能が」
「タクヤくん!!」
流石にちょっとそろそろやめさせよう。
「なんだよ葛城。こいつお前のこと虐めてたんだろ?」
「正確には違うよ。彼は…ずっと戸惑ってた。他の奴らみたいに僕に何かしようとするのを躊躇してたんだ。」
「…。」
「だから…悪い人じゃ…ないと思う。」
席から立ち、暮馬くんの前に立つ。
「違う?」
「そ、そうだよ…いじめるなんて思ってねぇし…その…。」
「その?」
一息置いて、暮馬くんは答えた。
「話したいことが…いや、頼みたいことがあるんだ。葛城にしか頼めない…大事なことなんだ!!」
「って言って屋上行っちまったな。」
教室に取り残されたタクヤ、平野、そして俺。
葛城は突然やってきた暮馬という桐生の元・取り巻きに屋上へ連れて行かれた。
なんでも他の人には聞かせられない、葛城にしか頼めない大事な頼み事なのだという。
「まさか…葛城のことが好きとか?」
「いやそれはないでしょう。」
ふざけた回答は置いておくとしてだ。
そろそろ俺も…動き出さなきゃならない時だろう。
周辺の調査、およびあいつの監視は"彼女"に充分にしてもらった。
しかし彼女だけではあいつを倒すことは不可能。
だから俺も葛城に…いや、北斎に頼み込むとしよう。
「にしても友作。」
「あ?」
「お前、その手の怪我まだ治らねーのな。」
「あぁ、ちょっとな。」
手に巻かれた包帯を気にされる。
バイト中に怪我したとは言ったが、別に怪我なんかしちゃいない。
「労基に訴えるのも手だぜ?」
「それはやめとく。」
あるものを隠すためだ。
⚫
「で、話って?」
僕の高校の屋上は基本自由に使っていいため、いつも解放されている。
幸い屋上には誰もおらず、暮馬くんも一安心してた。
さて、僕にしか頼めないこととは…一体なんだろう。
「でもその前に…俺、葛城に謝らないといけないんだ。」
「?」
「この前のさ…北斎みたいな子とデートしてるのがバレた時…あったろ?」
「あ、うん。」
覚えてる。
誰に撮られたのかは知らないけど、それがバレて調子に乗ってるって言われて虐められたんだ。
「あれ…俺なんだ。」
「え…?」
「あの動画を撮って、桐生に売ろうとしたんだ。」
そう言い、彼は地面に座り込むと
「ごめん…本当にごめん!!」
彼は土下座した。
「く、暮馬くん!?」
「許してもらえないことは分かってる!!俺は…自分が虐められたくないから葛城を売ったんだ!!人として…最低なことをしたんだ!!」
地面に頭をこすりつけながら、彼はそう言って何度も何度も僕に謝罪する。
許してもらえないことは分かってる?
いや、分かってないのは君だ。
「暮馬くん。顔上げてよ。」
「…。」
ゆっくりと顔を上げる彼。
「うん、許すよ。」
「え…?」
「許す。いじめられたくないなら…しょうがない。きっと僕が君と同じ立場ならそうしてた。」
そう言い、手を引っ張って彼を起こす。
「ホントに…いいのかよ…。」
「うん。」
「優しすぎんだろ…葛城…もうちょっと怒れよ!!俺はひどいことをしたんだぞ!!」
逆に僕、怒られてる?
「ううん。もういいんだ。過ぎたことは気にしないから。」
「…。」
呆れたようなホッとしたような、
そんな表情を浮かべる暮馬くん。
「そっか…謝りたかったから…最近話しかけようとしてたんだね。」
「あ、それは…。」
休み時間、あれから彼は何度か僕の教室に来るようになった。
タクヤくんに脅され、いつも渋々帰って行ったがその真意はただ僕に謝りたかっただけなんだ。
「その…それだけじゃなくてさ…。」
「?」
「謝りたいってのもあった…それと…。」
「それと?」
「友達になりたいなって言うのも…あって…。」
一応彼には、桐生とその取り巻きという友達はいた。
しかしそれは名ばかり、後で聞いてみれば友達料金として毎月お金を払わされ、さらに僕とお栄ちゃんか喫茶店でお茶してる動画は取り巻きに取られ手柄は全て横取りされてしまったとのこと、
いわば、パシリだった。
「はは…生意気だよな…そんなことして…今更友達なんて」
「いいよ。」
「…は?」
けど僕は、友達になりたいと言うのなら友達になっていいと思う。
「葛城…今なんて」
「なろうよ友達。タクヤくんはあんなんだけどキチンと話せばいい人だからさ。それに…。」
「それに?」
「もしかして君もやってる?FGO。」
「…!」
どうして分かった?そんな顔をしている。
「た、確かにやってるけど…俺やってるなんてひと言も…!」
「さっき、北斎みたいな子とデートしてるって言ってたでしょ?」
他の取り巻きはお栄ちゃんを見ても可愛い子としか言わなかった。
でも彼は
「君はしっかりと"北斎"って言ってたから。」
「ああ…そっか。」
そういい、彼はポケットからスマホを取り出す。
「じゃ、じゃあさ!早速フレンドになろうぜ!俺、巴御前がめっちゃ好きでさ…!」
自分の好きなサーヴァントについて語りながら彼はアプリを起動しようとする。
だが
「え…嘘…ちょ…あれ?」
何やら様子がおかしい。
「何か変だな…つかないぞ…?」
どうやら…アプリが起動しないみたいだ。
「ごめん葛城…なんか今調子悪いみたいだ。また今度でいいか?」
「うん。」
まぁ今にしても今度にしても、僕はもう起動できないからフレンドになりようがないんだけどね。
さて、話を戻さなきゃ。
「ところで、頼み事って?」
「!!…そうだった!」
「助けてくれ葛城!!このままじゃ…俺は桐生に殺されるんだ!!」
「え…?」
土下座し、僕にそう頼み込んだ。
「助けてって?それに…桐生?」
桐生に殺される。
暮馬くんはそう言った。
でも彼は行方不明で…もう死亡説も噂されているくらいだ。
もしかして…
「桐生は…連続殺人事件と何か関係が…?」
「偶然見かけたんだ…アイツが"何か"を使って生徒達をぶっ殺すのを…きっとあの時自分を見捨てたやつらに復讐しようと…!」
だから、いずれ自分も殺される。
「お前の彼女…あの葛飾北斎みたいな彼女いただろ!?滅茶苦茶強かったし、桐生を倒して欲しいんだ!」
「…。」
つまり、連続殺人事件の犯人は…桐生?
「ふふ!助けて欲しい?そう言ったねそこのキミ。」
「っ!誰だ!!」
そんな時だ。
聞きなれない声がした。
しかし扉はきちんと閉めていたし、誰かが入ってきたような痕跡もない。
来る時には本当に誰もいなかった。
じゃあ誰が?
そう思った次の瞬間、僕と暮馬くんの前に1人の"女性"がふわりと着地した。
「やぁ。待ちかねたかい?満を持しての登場だよ。」
背中に生えた翼をはばたかせ、彼女は優雅に舞い降りた。
彼女は…人間じゃない。
彼女は…まさかお栄ちゃんと同じ
「サーヴァント…なの?」
「正解。私こそサーヴァント、キャスター。あの大魔女のキルケーさ。突然で申し訳ないけど、君達に手を貸そう!」
そういう、自称大魔女。
「…。」
「…。」
「ふふ…言葉も出ない。そういった感じだね!分かるとも!この大魔女を目の前にして美しさのあま」
「あの…誰?」
「誰ェ!?」
暮馬くんが思ったことをそのまま口にした。
「私だぞ!?大魔女だぞ!?知らないのかいキミは!?」
「いやその…知らなくて…。」
「セイレムにいただろう!?ほら!それはそれはもう大活躍したじゃないか!!」
そんなに活躍…したっけ?
「すいません…俺英霊剣豪までしか…。」
「今すぐやれ!早く!」
謝る暮馬くん。怒鳴るキルケー。
ともかく、ここで分かったことがある。
「あの…キルケーさん。」
「うん、この大魔女に何か用かな?」
「いえ…その。」
サーヴァントは、お栄ちゃんだけではないということ。
「マスターはどこですか?」
そして、サーヴァントがいるならマスターがいるのではないだろうか?
その時だ、
「ここだよ。俺がキルケーのマスターだ。」
「!?」
屋上の出入口の扉が開き、誰かがやってくる。
その人は紛うことなき
「ゆ…友作くん!?」
「おう。」
怪我をしている右手に巻かれた包帯。
それを解き、手の甲に刻まれているものを僕らに見せた。
「それって…」
「お前の家に行って北斎と会ったあの日、俺もFGOが起動できなくなってな。」
それは令呪。
つまり、友作くんは正真正銘キルケーのマスターということになる。
「帰ってみたらびっくりだ。何せ俺しかいないハズの家にコイツがいたんだからな。」
「ふふ…まぁそういうことだ。マスターはキミだけじゃない。もう一人いた訳さ!」
やってきた友作の隣に寄り添うキルケー。
暮馬くんはサーヴァントが来たという事実を改めて受け止め、指さしたまま固まっている。
「話は大体聞いただろ?俺はキルケーとあの桐生を倒そうと思ってる。」
「けど、"アレ"を倒すのはさすがの大魔女と呼ばれた私でも少々骨が折れる。だから…。」
大魔女の、キルケーの手が僕に差し伸べられる。
「キミのサーヴァント、葛飾北斎の力を是非とも貸してほしいのさ。」
後書き
いきなり現れたのはキャスターのキルケー。
自らを大魔女と豪語し、さらにマスターは彼のよく知る親友、友作であった。
キルケーの監視と調査、そして暮馬の証言により犯人はとうに割れている。
後は見つけ、倒すのみ。
これより大魔女と画狂、この街を守るべく2騎のサーヴァントによる共同戦線がはられるのであった。
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