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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
最終章へと向かうその前に…
  東・京・壊・滅

 
前書き
どうも、クソ作者です。
前回があまりにもアレな最後で、マジで申し訳ありませんでした。
胸糞およびシリアス回はもうちょっとだけ続くんじゃ…。
 

 
「…。」

次に俺が目覚めたのは、空の下であった。

「なんだよ…これ…。」

起き上がって見てみれば、俺と同じように青空の下ベットに寝かされた怪我人が何十といる。
そして忙しなく動き回るナイチンゲール達。
どうして病院ではなく外なのか?
答えは簡単だ、病院はもうないからだ。
王を名乗る葛城恋により、壊されたからだ。

「目が覚めたようだな。」
「…!あんたは!」

声をかけられ、振り返るとそこにはオルタの方のアタランテが、
そう、三笠にいたあのアタランテさんだ。

「院長からの緊急呼出を受け、キャットと友に駆けつけてみればなんだこれは。一体何が起きた?」
「まぁなんと言いますか…派手にやられたと言いますか…。」

あの時のことがフラッシュバックする。
簡単にやられたみんな、
高笑いする代表。
そして、首を絞められたおっきー。
…そうだ。

「いって!?」

おっきーはどこだ?
そう思い立ち上がろうとした時、脇腹に激痛が走る。
見れば包帯が巻かれており、血が滲んでいた。

「自分のサーヴァントが心配なのは分かるが今は安静にしていた方がいい。お前、アバラが折れていたぞ。」
「やっぱり…そうでしたか…。」

にしてもマジでいてーな。
よく漫画とかで「くっ…アバラが何本かイカれた…!」なんて言いながら戦闘続行するやついるけどあれ無理だわ。
こんなクソいてーのに動けるかよ。

「そういやアタランテさん。街はどんな状況で?」
「一言で言おう。壊滅的だ。」

気絶している間、各地から駆けつけてきたサーヴァントやマスターにより急いで復旧作業はしているが何も間に合っていないとのこと。

「医療設備も道具も何もかもが足りない。我々三笠のメンバーやオーシャンビヨンドも全力を尽くしているがだめだ。」
「マジかよ…。」

絶望的な状況に、どうしていいか分からなくなる。

「どこへ行く?」
「ちょっと散歩です。」
「早めに戻れ。でないと私がナイチンゲール達に怒られるからな。」

ベッドからゆっくりと立ち上がり、俺はその惨状を目の当たりにする。

苦しむ者、そもそもベッドが足りず寝られない者
治療が間に合わず、応急処置だけ施された者など、ひどいものだった。

「探偵さん。」
「あ?」

聞き覚えのある声がした。
そこにいたのは北斎と舞だが

「なんだよ、ピンピンしてるじゃん。」

あれだけ弱っていた北斎は普通に立ってるし、顔を重点的にやられた舞も、いつも通りであった。

「ごっほ殿に霊基を修復してもらってナ。ついでにマイの顔も。」
「でも、派手にやられちゃったね。」

はははと笑い混じりに言うが、笑い事じゃねーんだよ。
まぁ最も、1番悔しい思いしてんのは間違いなくお前自身だろうけどな。

「どうやら無事…ではないみたいだな。」
「…!」

そこに大和や武蔵、葵もやって来る。

「二人は大丈夫かよ。」
「ああ、刀をへし折られた。俺も武蔵も今は武器無しだ。」
「刀がなければ何も出来ないからね。今の私達はお手上げ状態なのです。」

あの時二人は確かに、正義によって武器を破壊された。
あんなに簡単に、菓子細工のものを壊すかのように、
そしてその他にも問題はある

「紫式部なら塞ぎ込んでる。不甲斐ない自分のせいだって。今の顔を…あたしに見られたくないって。今あんたの刑部姫が必死に慰めてくれてるけどね。」

そこにいるのかお前…。
でもそうだよな…
紫式部、確か顔面爆破されてたよな…。

「完膚なきまでにやられたが、どうする誠。」
「どうするって…。」
「はいそうですかと素直にサーヴァントを渡すタチでもないだろう?俺もお前も。」
「そうだけどよ…。」

代表は言っていた。
3日後にまた来ると。
その時に東京に全国のサーヴァントを集めておけと。
もしそれに従わなかった場合、日本全国は今の東京のようになると。
しかし俺達は自分の大切なサーヴァントを渡せるほど薄情な人間でもないし、奴の言うことに従うほど物分りのいい人間でもない。
ならどうするか?反逆するまでだが…

「しかしあの神代正義とかいう男…出鱈目な強さだったな。」

一番の難問として、まずそいつが立ちはだかる。
俺達サーヴァント4人がかりでも倒せなかったあの男。
恋を王と称え、自らをこの物語の主人公だと豪語した神代正義。
まず彼をどうにかしなければ、あいつの野望は止められない。

「悪い…1人にしてもらってもいいか?」

わからない。
どう考えても詰む。
まさに八方塞がりというやつだ。
何かいい案はないかと考えるが、現時点ではどうにもならない。
という訳で俺は彼らに別れを告げ、あてもなく歩き回ることにした。




「ひっでーなおい…。」

壊滅した東京を歩けば歩くほど、奴らの爪痕がどれほどのものが分からせられる。
一番わかりやすいものと言えば

「…!? 弟くん!?」

シルク・ドゥ・ルカンだったであろう場所、
そこに立ち尽くす弟くんの姿があった。
奴らの侵攻時にやられたのだろうか、顔や体のあちこちには血の滲んだガーゼが当てられていた

「ああ、探偵さん。」
「どうしたよそれ…!?」

笑ってみせるもそれはどこか悲しげな笑顔だ。
それに何より、弟くんにずっとベッタリで離れなかったジャンヌはどこだ?
まさか…

「弟くん…ジャンヌは」
「落ち込んでる。僕に怪我もさせて、イルカもほとんど死んだから。申し訳ないけどしばらく1人にさせてくださいって。」

シルク・ドゥ・ルカンは、もう面影などなかった。
イルカショー用のプールも破壊され、至る所が水浸しだ。
さらに

「よく分からない、サーヴァントでもない人が来てさ…一方的だった。」
「間違いない…正義だ。」

うん、と頷く弟くん。
しかし結果は見ての通りで

「うん。ジャンヌは負けたよ。それに不思議なんだ。イルカやリースXPはいきなりジャンヌに牙を剥いて襲いかかってくるし、避難していた子供達も何故かその男を応援し始めて…何か、おかしいんだ。」
「…?」

ジャンヌは善戦した、らしいが正義にはギリギリかなわなかったようだ。
それに弟くんの言った不思議なこと、それが妙に引っかかる。

「ジャンヌを取られることだけは防げた。でも、あの時院長先生のサーヴァントが来るのが少しでも遅ければ、多分…。」
「嫌なこと考えんのはやめとけよ。今はお姉ちゃんが無事だったって事だけは喜ぼうぜ。」

そう言うと、弟くんはうんと頷いてまたシルク・ドゥ・ルカン跡地をボーッと見つめる。
しかし、弟くんからは不思議な情報を聞いたな。
イルカは突然ジャンヌに反抗した。
子供達はいきなり正義を応援し始めた。
妙だ。どこから見ても悪者はあっちだ。
やはり何かがおかしい。

そしてさらに、おかしいことは起こっていた。

「…?」

避難していた人達が端末に映るニュースを見ている。
そこにはニュースキャスターがおり、晴れ晴れとした笑顔でこう伝えていた。

「我々人類の英雄、神代正義!彼はまさに私達の危機を救うべく、この荒んだ世界に舞い降りた一筋の光そのものなのです!神代正義万歳!!さぁ!皆さんも祝いましょう!神代正義、万歳!!神代正義、万歳!!!」
「…。」

気味が悪かった。
その後ニュースは各地のインタビューに切り替わるがその映る人達はどれも口を揃えて言っている

「やっぱりサーヴァントっていうのは悪魔だったんですよ。それに比べてあの神代正義という英雄!まさに天使ですよね!」
「私達もサーヴァントに迷惑していたんです…でも、正義様が降臨されてからは安心です。早くサーヴァントを全て殺して欲しいですね!」
「サーヴァントは死ね!滅びろ悪魔共!!神代正義万歳!!神代正義万歳!!神代正義万歳!!」

神代正義は、英雄だと。

「さすがに…気持ち悪くないか?」
「あ、広海さん。」

ボンヤリそれを眺めていると、隣には広海さんが立っていた。
ヒロインショーが終わってすぐ広海さんとマリーはオーシャンビヨンドに帰っていたため、被害は免れていたらしい。

「あの神代正義という男がサーヴァント達と戦っている場面、あれがどうやら生中継されていたみたいなんだ。おかしいことにそれを見た連中は皆こうなってる。」
「…。」

今や日本全国、世界全てが神代正義の味方になっている。
何故だ?どうして?
クソみてーな事しかしてねぇ葛城財団の1人だぞ?なんでそこまでして肩を持つ?

「それにだ、国のお偉いさんは葛城財団を全面サポートする事を決定。じきに代表の言う通り、サーヴァントは全てこの東京に集めさせるそうだ。」
「…なんすか、ソレ。」

空いた口が塞がらない。
ここ最近の世間、サーヴァントを受け入れつつある世の中だったってのに、
まるで掌を返したようにサーヴァントを"悪魔"と決め、今度は国そのものが迫害することを決めた。
全員がなんの疑問も持たず、こうして正義の考えに賛同している。

「各地でサーヴァントが迫害され、中には殺された者だっている。オーシャンビヨンドでもそうだ。今でも悪魔を追い出せとデモ隊が押し寄せているんだ。」
「…。」

何も、言えなかった。



それからしばらく歩くと防波堤についた。
誰もおらず、先の戦闘が嘘のように静かでただ波の音だけが聞こえる。

「…。」

弱気になるつもりはなかったが、ここまで追い込まれ、詰んだとなるとさすがにこの俺もどうしようか悩む。
いきなり世間はサーヴァントの迫害を始め、葛城財団の味方をした。
じきに契約者である俺達は、殺されるだろう。
そしてサーヴァント達は、おっきーは…。

「まーちゃん!!!」
「…!」

聞きなれた声、
振り返るとそこには焦った表情で駆け寄ってきたおっきーが。
するとそのまま

「ダメだよまーちゃん!!」
「!?」

抱き着き、俺を防波堤から遠ざける。

「おいなんだよ!」
「今まーちゃん、飛び込もうとしてたよ!自殺なんてダメだよ!らしくないよ!」
「…。」

どうやら俺は無意識のうちに歩き、海へとダイブしようとしていたらしい。
おっきーは俺を探しており、それで偶然飛び込もうとする俺を見つけ全力疾走で駆けて来たとか。

「ああ、俺…。」
「確かにあの時負けたけど、次勝てばいいでしょ!?まーちゃんは名探偵なんだから、きっと逆転の手段だっていくらでも思いつくよ!」
「逆転の手段…か。」

確かに俺は名探偵かもしれない。
いつもならいいアイデアがひらめくかもしれない。
けど、

「残念だけどなおっきー、今回は無理ゲーだよ。」
「え…」

もう、俺達に勝ち目なんてものはない。

「まーちゃん…?」
「あのさ、どうしようもねーんだよ。俺達サーヴァントとマスターにもう味方なんて居ない。知ってるか?国のお偉いさんは葛城財団を全面サポートするってさ。」
「…。」

おっきーの顔がだんだん曇る。
まーちゃんらしくない、そう言いたいだろうが俺だってらしくない時くらいあるんだよ。

「でも…!」
「お前に正義を倒せる奇策とか強さでもあるか?ねーだろどっちも。誰も、もうあいつらには勝てねーの。」
「…じゃあ、まーちゃんは大人しく姫を渡すの…?」

それに対し俺は、何も言うことが出来なかった。
渡したくないのが本音だ。
けど、今更ここでどうしたって奴におっきーは奪われるだろう。
じゃあせめてもの慈悲として、ここで自害させるか?
そんなの、出来ない。
生憎俺はそこまで冷徹になれる人間にはなれなかった。

「…ごめんな。折角ゲームの世界から助けに来てくれたってのにさ。」
「…んないでよ…!」
「あ?」

何かをぼそっと呟いた。
聞き直そうとしたが、俺に返ってきたのは

「…っ。」
「謝んないでよ!まーちゃんのバカ!!!そうやってずっと一人で落ち込んでればいいよ!!」

パシッという空気を裂くような音。
それは容赦ないビンタだった。

「ああ、そーさせてもらう。」
「どんな時でも頑張ってたのに…!一緒に叶える夢があるって言ってたのに…!まーちゃんなんかもう知らない!!」

そう言い、おっきーはどこかへ走り去ってしまった。
嫌われちゃったなぁ…。
まぁでも、この方が本人も後腐れないしいいんじゃないだろうか。
どの道、この先あいつは財団のモノになるだろうし。

「…。」

空はムカつくほどに青い。
海だって綺麗だ。
じゃあもうここで、いっそのこと自ら命を絶ってやろうか。

「…。」
「おまん、派手にフラれたかのう。」

さぁ死ぬぞ、と思い歩みを進めた時誰かの声がした。
防波堤にて座り、酒を飲んでいる男。
気付かなかったがどうやら先客がいたらしい。

「なんだよお前。」
「わしか?わしは以蔵。土佐の岡田以蔵じゃ。」

着物を来ており、旅の者がよく被るような藁の帽子を被った男はサーヴァントの岡田以蔵と言った。
まぁ確かにこのご時世、和服を着るのはサーヴァントかカマホモ野郎くらいだ。

「…。」
「おまん、死ぬつもりか?」
「まーな、でも痛いのと苦しいのはやだし、あ、そうだ。お前に介錯頼もうかな。スパッと一思いにやってくんね?」
「…面白い冗談じゃき。」

そういい、以蔵はくいっと酒をあおる。

「飲むか?」
「俺未成年なんで。」
「ははっ、何を言うちょる。どうせこの世はもうまぁあいつに支配される運命じゃ、今のうちに飲め飲め。」

おちょこを渡されるが丁重にお断りしておく。
しかしこの岡田以蔵…サーヴァントだというのにマスターの姿が見当たらない。

「今日は気分がええの。どうじゃ?死ぬ前にわしの昔話でも聞いとくか?」
「…。」

だいぶ酔っているのだろうか気分を良くしているのか、
以蔵は何も答えない俺に対してそのまま昔話を始めた。

「わしにはマスターがいた。いや、まだ現界出来てるからまだマスターは生きちょる。だから"いる"方が正しいか。」
「…?」

現界出来てるから生きてる?
じゃあ今こいつはマスターと離れ離れになっているのか?

「わしとマスターは傭兵業をやっててのう。依頼があればどんな人間だろうがサーヴァントだろうが関係なく斬った。まさにわしとマスターは天才の二人じゃ。」

はははと笑いながら以蔵は酒を飲む。
気付けば俺もまた、こいつの話に耳を傾けていた。

まとめれば、
この岡田以蔵とそのマスターは世界崩壊後、傭兵として生きていくことを決意。
ついこの前まで学生であったマスターは人を殺すことに最初は苦労したが、以蔵が教えるとメキメキと頭角を現していった。

時節わしは剣の天才じゃがマスターも殺しの天才だったと褒めている辺り、こいつはマスターが好きだったんだろう。
じゃあなぜ?離れ離れになっている?
それは、次の話で明らかになった。

「ある時でっかい企業から仕事をもらっての。これで貧乏生活からおさらばじゃと二人で喜んだ。」
「その、企業ってなんだよ。」
「知らんのか?あの"葛城財団"じゃ。」

一瞬、耳を疑った。

「葛城…財団?」
「おう、気前もいいしマスターにも充分楽させてやれる。やっちょる事は人の道から外れた外道じゃが、わしらにとっては天国そのものでの。」
「…。」

じゃあこいつは…葛城財団お抱えの傭兵?

「けど、わしらの全盛期はそこまで。後は堕ちるのみじゃき。」
「え…。」
「ある依頼で標的を殺し損ねての。そこからどんどん失敗して行った…。」

以蔵いわく、葛城財団にとって目障りな人間を殺し生計を立てていたがとある依頼を境に、失敗を重ねるようになったのだと言う。
そのたびに職員からの態度は悪くなり、待遇も粗末なものとなり、やがて…

「忘れもせん…新しい傭兵に負かされ、わしらは追い出された。」
「あのさ、それって…」
「ん、なんじゃ?」
「ランスロットとかいう、奴だろ。」

俺がそう言うと、以蔵は手を叩いた。

「おお!そいつじゃ!ぶりてんのいけ好かない剣士じゃ!あいつの剣筋だけは見切れなくてのう。剣の天才のわしが手も足も出ない程、理不尽に強くてかなわんかった。」

度重なる仕事の失敗。
そして待ち受けていたのはクビの宣告と新たなお抱え傭兵からの粛清。
命からがら逃げたが以蔵とマスターは、再起を狙った。

「代表が一番狙っていた標的を仕留めて連れてくれば、またわしらを見直してくれるかもしれない、そう思ったが、簡単にはいかん。返り討ちにされたぜよ。」

代表、葛城 恋が一番危険視かつ連れてきて欲しいモノがいたそうだ。
以蔵とそのマスターはそれの暗殺もとい連行しようとしたがまさかの返り討ち。
さらにマスターはその時の戦いで腕1本を持っていかれたという。

「金もない、剣しかないわしには治療もできん。じゃからわしは藁にもすがる思いで頼み込んだ。」
「…葛城財団、か?」
「当たりじゃ。にしてもおまん鋭いのう。探偵でもしちょるんか?」

探偵…だったということにしておく。
だって俺はもう探偵じゃない。
全部を諦めたもうマスターですらない一般人だ。

「偶然調査に来てた奴らに頼み込んでな。マスターは連れていかれた。わしを置いてな。」
「で、治してもらったのかよ。」

おそらく、と以蔵は付け足す。

「去り際に、奴らが言うてた。」
「?」
「お前のマスターは治す。だが、その後のことは俺達の好きにする。たっぷり慰みものにしてやるっての。」
「…じゃあ…それって…!」

生きている。と以蔵は言った。
だがそれはあくまで生きているだけで、当たり前の生活を送れているわけではない。
最悪の場合、それは生きているではなく"生かされて"いるだけだ…。

「お前…それで…!」
「わし一人で助けられると思うがか?そげな馬鹿なことはせん。何せ相手は天下の大企業葛城財団。勝てるわけなか!」
「でもよ…!大事なマスターだろーがよ!!」

こいつは、
今マスターが無事ではないことを知りながら、こうして酒を飲んで酔っ払っている。
それを知ると、なんだか怒りみたいなものがフツフツと湧いてきた。

「なんじゃ?」
「お前…なんだよそれ?それで剣の天才自称してんのか?」
「…おまん、わしをバカにしちょるがか?」

酒瓶を置き、以蔵は鞘から刀を抜いた。

「ああバカにしてるよ。意気地無しの小心者で所詮はチャンバラごっこでしかイキれねぇ以蔵さんよ!!」
「!!」

キレる以蔵。
俺の眼前には刀。
いつ斬られてもおかしくはないが、どうせ死ぬんだ。斬るならさっさと斬ればいい。

「お前がそんなんならマスターもマスターだろうな?多分典型的なイキリ鯖太郎だったんだろ?」
「わしだけでは飽き足らず…マスターも…おまんは!おまんはァ!!!」

斬りかかろうとする以蔵。
しかし俺はそいつの胸ぐらを掴み、殴り合いへと発展する。
相手がサーヴァント?知るか。
何か無性に腹たってきたんだ。二、三十発殴らせてから死なせろ。

「どうした腑抜け!人間様にも勝てねーのかよ!?」
「調子に乗るのもそこまでじゃ!!ええ加減にせんと本気で張り回すぞ!!」

いつの間に以蔵も刀を捨て、俺に殴り掛かる。
キレて興奮しているせいか、痛みなんてものは感じない。

やがて殴り合う中、騒ぎを聞きつけたのかいつまで経っても帰らない俺を探しに来たのか、

「た、探偵さん!?」

ナイチンゲール達を引き連れた院長先生がやって来た。

「何してる!!やめろ!!」


駆け付けた院長先生に羽交い締めにされ、以蔵もナイチンゲール達に取り押さえられその場を収めさせられる。

「止めないでくださいよ院長先生…!俺はこいつぶん殴ってから死ぬんですから!」
「死ぬとか言うな!!残された刑部姫はどうなる!!」

大丈夫、後腐れなく別れは告げましたから。

「ええい離さんか!わしを誰だと思うちょる!!」
「患者です。」

複数のナイチンゲール達に取り押さえられた以蔵は

「患者は極度の興奮状態にあります。鎮静剤を。」
「はい。」

首筋に注射を打たれ、そう時間も経たずに眠りについた。

「…。」
「あまりヤケになるな。」

そう言われ、俺は院長先生から開放される。

「刑部姫が泣きながら帰ってきて、どうにも怪しいと思って駆けつけてみればコレだ。」
「…。」
「教えてくれ探偵さん。ここで刑部姫と、何を話した?」

青かった空はオレンジに染まり、夕日は太陽に沈みつつある。
いつの間にか時間が経ち、どうすることもできない俺は院長先生に打ち明けることにした。

「八方塞がり…か。それでイライラするのも仕方がないが…サーヴァントに喧嘩を売るのも考え物だぞ。」
「それは…すんません。」
「それにだ、これからどうするのかをみんなで考えよう。俺達で力を合わせて、八方塞がりなら"九方目"を探そう。あの主人公気取りのキチガイ教祖をどうするのかをな。」

そう言うが、打開策などない。
そう、まさに主人公。
物語で主人公がそうであるように、まるであいつが中心のように国も人間も運命も全部が思うままに動いている。




…待て。

「どうした探偵さん、急に立ち止まって。」
「院長先生…すんません。」

どうして、気づかなかったんだろう。

「?」
「俺…あいつの攻略法…分かっちゃったかもしれません。」
「何!?」

あいつがまるで主人公?
違う。無理矢理なろうとしている。
自分に言い聞かせるようにも聞こえた、僕こそがこの物語の主人公だという言葉。

そうだ、
あいつは…
あいつの中にいる…サーヴァントは…!

「言い換えれば、あいつにとって都合のいい展開ばかり…まるで主人公…そうか…分かった…!あいつの中にいるサーヴァントが!!」

 
 

 
後書き
かいせつ

⚫シルク・ドゥ・ルカンについて。

シルク・ドゥ・ルカンは、代表と正義によって破壊されました。
過去にスポンサーの受け入れを断ったという過去もあり、念入りに破壊されたため復旧の見込みはないです。
そして実は破壊されるまでの経緯を書こうかと思ったんですがあまりにも酷いですし、めっちゃ暗いし胸糞になるし、何よりアルテマさんキレそうなのでさすがにやめておこうと書いたんですがカットしました。
簡単にまとめますと、正義相手にジャンヌ戦うけど、周りの避難してきた人達からはいきなり罵詈雑言浴びせられイルカさん達は正義くんのしもべとなります。
それに弟くんを人質に取り、まず見せしめとして正義くんが弟くんの腕の骨を折る予定でした。
そこでキャット含む三笠のサーヴァントがギリギリの所で助けに来てくれるんですが、やはりどれだけいても正義くんにはかなわず、一蹴されてしまいます。
最初はジャンヌをレイプするつもりの代表でしたが、乱入により「興が削がれた」と言って去る予定でした。



やでしょこんなの。
コラボしてくれた方々からしたら侮辱以外の何物でもないでしょこれ。
それにこれ以上キツい展開になると読者は去っていくというのをクソ作者はハーメルンにて痛いほど理解させられたので、マジでこれだけはやめようと思いましたね。
さ、反省はこれまでにして、次回予告をしてお別れとしましょう。
それではどうぞ!


次回予告!

「まさにそうだ。おそらくあいつらは今頃酒盛りと女遊びに精を出している頃だろうさ。」

「あのさ…ごめん。悪かったって。」

「無理です…!そのような激戦区に私を向かわせるなんて…!恐ろしさのあまり死んでしまいます…!」

「これが終わったら、お前と気ままに旅がしたいな。」

「行ってこい探偵さん。それで俺やマリーの分までぶっとばしてこい。」

「どうして俺…こんな大役任されたんだろう…。」

「行くよ。あたしに力を貸して菫…!」

「お前は僕達が完全に葬る。フォーリナーとして…不道徳な降臨者達として…!!」

「祝え!!1人の男に抑えきれないほどにサーヴァントの歴史は豊潤だ!!」

「やるぞおっきー!これが俺達の…最後の仕事だ!!」

「ふざけるな…ふざけるなぁぁあ!!!僕は主人公!誰にも負けない!負けてはならない!ましてや君のような…小物風情にぃ!!!」

「これが、まーちゃんの探偵としての最後の依頼。姫からの、最初で最期の依頼。幸せに暮らしてね、まーちゃん。」

「後はお任せを。葛城恋はこの世界に不要な存在。じきに目覚めるマスターの為に跡形もなく消しておきますので。」

最終章
『探偵と助手O/反撃の狼煙』

次回もお楽しみに 
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