Fate/imMoral foreignerS
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始まりから夏休みまで
☆話はじっくりベッドの上で聞かせてもらう話。
前書き
どうも、クソ作者です。
書き終わった後に思いました。
タイトル詐欺だこれ。
舞くん昔の話を打ち明けてるっちゃ打ち明けてるんですがベッドの上じゃないです。
あと今回話長いよ。じっくり見てってね。
それでは本編、どうぞ!
「っ、あっ、あぁっ…♡」
お昼過ぎ。
まだ日も出ているというのに僕はお栄ちゃんにいじめられ、ベッドの上で嬌声を上げながら乱れていた。
「お栄ちゃん…や、めっ…。」
「やめねぇ。」
僕の耳にしゃぶりつきながら、後ろから腕を回して乳首をくりくりと指で弄ばれる。
下半身は一切責められていないのに、僕のモノは我慢汁がつーっと細くたれ続けていた
さらに背中越しに感じるお栄ちゃんの胸が押し付けられる感覚。
やわらかくて、余計に情欲をそそられ正直者な僕のそれはまたびくびくと脈打ってしまう。
あれから、
帰ってくるなりお栄ちゃんな何を聞かれるのだろうと思っていたら待っていたのは逆レイプだった。
何を聞いても無言のまま裸に剥かれ、ベッドに投げ出されるとそれから僕はもう彼女にいじめられ続けている。
やめてといってもやめてくれない。
「はぁ、む。」
「あ、ああぁっみみだめぇっ♡♡♡」
耳をぱくりと咥えられる。
おちんちんやお尻を責められている時とはまるで違う快感がやってきて、僕をおかしくさせる。
さらに
「ホラどうした?耳舐めただけなのに可愛い声で喘ぎやがって♡我慢すんな♡もっと喘げ♡耳で感じる変態ますたあ殿♡」
「あ…あう…っ♡」
耳元で囁かれる言葉に、脳が痺れる。
思考回路が麻痺して、気持ちいいことしか考えられなくなってしまう。
「ここもさっきからかたくなりっぱなしサ…♡こりゃもう立派なメスの乳首だナ。」
「あっあっああだめ♡そこはいま」
きゅう、と両乳首がつねられ、電気が走ったみたいにびくんと反応してしまう。
「はぁあっ♡ああぁんっ♡♡♡」
身体の力が抜け、へなへなと僕はベッドに倒れ込む。
けどお栄ちゃんの後ろからの拘束は解いてくれないし、責めもまだ緩めない。
それと僕の身体のことなんだけど
「おいおい…そりゃおれでも引くヨ?」
「えっ、あ…。」
視線を下に向けると、びくびくと脈打つ僕のモノが見える。
けどそれは脈打つたび白いものを吐き出していた。
そう、絶頂してた。
「…っ!!」
「まだおちんちんは触ってねぇのに…まさか乳首つねられただけでイッちまったんじゃないだろうね?」
「ぼ、ぼく…そんな…。」
「いいや否定すんな。認めろ変態♡僕は乳首だけで射精しちゃう変態マゾです♡ってナ。」
「…うぅ。」
いつものようにいじめられている僕だけど、なんだか今日はおかしい。
いや、僕がおかしいんじゃなくてお栄ちゃんだ。
「お栄ちゃん…。」
「なんだいマゾますたあ殿。」
「なんか今日…変だよ。いつもより激しいって言うか…いじめ方がキツめって言うか…。」
「そりゃそうだろ。」
「え?」
いじめ方が、いつもより激しいし厳しい。
そう指摘するとお栄ちゃんは迷うことなく肯定した。
「忘れさせる為サ。今日あった嫌なこと全部、兄貴の思い出だって、おれで埋めつくして上書きしてやる。」
「わっ、」
仰向けにさせられ、お栄ちゃんが倒れた僕に跨る。
「マイの頭ン中、おれ一色に染めてやるんだ。そうすりゃ嫌なこと考えなくて済むし…ナ♡」
がに股になってゆっくりと腰を下ろすと、お栄ちゃんの割れ目と僕のおちんちんの先端がキスをする。
「だから…かくご…しろ…っ♡」
「んっ…んんっ♡」
さらに腰を下ろし、割れ目に強引に入り込む僕のモノ。
亀頭から暖かい感覚に包まれて、蕩けそうな快感がぞわぞわと押し寄せる。
「相っ変わらず…見た目に反して男らしいちんちんだ、ナっ♡」
「あぁうっ♡♡」
最後に思い切り腰を落とし、僕のは全部お栄ちゃんの膣内に飲み込まれる。
全部がお栄ちゃんに包まれて、中で締め付けられて絶え間なく気持ちいいのがやってくる。
「ほら動け♡今は気持ちよくなることだけ考えろ♡」
「うん…わかっ、た!」
言われるがまま突き上げると、お栄ちゃんは背中をそらす
「あぁ…来たァ…♡こいつがたまんねぇんだァ…♡」
舌を出し、蕩けてニヤけたその目は快感をあますことなく享受している事が嫌でもわかる。
僕も気持ちいい、だからもっとしよう。一緒に気持ちよくなろう。
「あぁっ♡おいぃ♡急に、動くなっ、あ、あぁあっ♡♡♡」
「お栄ちゃんに言われた通り、きもちよくなることだけ…かんがえるから…っ♡」
「こいつぅ…♡まぞのくせに…なまいきだ、なァ♡♡」
騎乗位を楽しむ中、お栄ちゃんはぐっと身を寄せて僕に顔を近づけてきた。
「弱点は分かってるヨ。マゾ犬はここがよわいもんなァ♡ほら、ふーっ♡」
不意打ちに耳に息を吹きかけられ、一気に頭の中が気持ちいいことでいっぱいになる。
「お、おえいひゃ…みみらめぇ…♡」
「蕩けた顔しやがって…そそられるんだよ…ほらァ♡」
腰をくねらせとめどなく刺激してくるお栄ちゃん。
のぼってくる射精感をぐっとこらえたいけど
「ホラ、出せ♡惨めに射精しろ♡」
耳元でそう囁かれると、僕は情けなく射精したくなる。
「出せヨ♡突き上げられるたびにおれもイキッぱなしで、頭おかしくなりそうなんだ。」
「お栄ちゃんも…そうなんだ。」
イキッぱなしなら、僕だってそうだ。
「耳元で囁かれると…なんだか脳がピリピリして…ずっとずっと気持ちいいのが止まらないんだ。脳イキって言うのかな?さっきからおかしくなりそうなくらい、止まらないの。」
「ふふ…この変態♡」
僕はマゾじゃないけど、その一言でまた脳イキしてしまう。
お栄ちゃんもイキッぱなし。なら僕もそろそろおちんちんでイクことにしよう。
「じゃあお栄ちゃん…僕、出すね…っ♡」
「ちゃんと報告するなんて偉いじゃないか…♡マゾらしさが、板に付いてきたナ♡」
そう言われ、僕はピストン運動のスピードを速める。
ドンドン出したい欲望が高まって、それがやがて頂点に達して突き抜ける。
「あっ、ああぁ♡」
「ほら出せ♡おれが、一滴残らず搾り取ってやる…っ♡」
絶頂を迎える。
彼女の目を見ながら、彼女に見下されながら、一番奥にびゅるびゅると溜まった白くにごったリビドーを吐き出していく。
「あぁ…♡分かる…。マイの熱くて濃いのが、子宮ン中にたっぷり溜まってくのが…♡」
下腹部をさすりながら、妖艶に微笑むお栄ちゃん。
それだけでまた思わず復活してしまいそうだ。
お栄ちゃんはまだやり足りなさそうだ。でも、
「ねぇ、お栄ちゃん…。」
「なんだい?」
お栄ちゃんは繋がったまま倒れ込み、僕にその身をあずける。
「お風呂、入ろっか。」
「どうしてだい?まだまだこれからサ。」
「ううん、そうじゃなくてね。」
聞きたいことはごまんとある。
そうは言ってたお栄ちゃんだけど帰ってきてみれば嫌なことを全部忘れさせてやると言って僕を強姦した。
つまり、元から聞くつもりはなくって最初から僕を慰めるつもりだったんだ。
でも、
「ちゃんと話すよ。あいつのこと、僕の絵のこと全部。だから…一緒にお風呂、入ろうよ。」
⚫
「あのね、お栄ちゃん…。」
嫌なこと全部忘れさせてやる。
そう言われ始まった僕とお栄ちゃんの交わりは僕のワガママで比較的短い段階で切り上げた
そうして今、2人して向かい合って浴槽のお湯に浸かってるわけだけど、僕はハッキリ隠さず全て言うことにした。
「昔のこと…なんだけどね。」
「全部話してもらうとは言った。けどマイが辛いのなら話さなくともいいサ。」
「ううん、話すよ。」
無理はしなくていいと言ってくれるお栄ちゃんだけど、もう覚悟は決めた。
「もう…お栄ちゃんに隠し事はしたりしない。それにお栄ちゃんには、僕のこと全部知ってもらいたいから…。」
「…そうかい。」
お栄ちゃんは場所を変え、膝を抱えて縮こまる僕の隣に寄り添った。
うん、話そう。
「僕の家はさ、お父さんが医者で、お母さんが政治家なんだ。」
「それは兄貴も言ってたナ。」
「うん。それであいつはちゃんと両親のいいとこを受け継いだよくできた子供。それで弟の僕は、両親のいい所を何も受け継がなかった出来の悪い子なんだ。」
あいつが両親の期待に応え続けたなら、僕は期待を裏切り続けた存在だろう。
女の子が生まれるかと思いきや、実は男の子で、
勉強が出来る子に育つと思えば、まったくダメ。
運動もまるでできない。人と話すことも上手くできない。
友達もあまりいなかったし、内向的な性格だったからいじめられることも多かった。
「親戚の人達からは神童だなんだって褒められてさ、それに比べて弟はなんだって。周りの人からすごく馬鹿にされたよ。」
「腹痛めて産んだ子だろ…可愛くないのかい?」
「お母さんの中では、勉強ができるかできないか、それが大事だったみたいだから。」
「くっだらね。」
何も出来ない僕、
兄より優れたところなんて何一つない僕。
でも、そんな僕にでも好きなこと、出来ることが一つだけあった。
「絵を描くのが…好きだったんだ。」
「絵?」
「そう。絵を描く時だけは嫌なこと、辛いこと全部忘れられた。自分の世界に入り込んだみたいに、キャンパスや紙に自分の感じたもの、好きなものをいくらでも描きこめる。そんな絵が大好きだったんだ。」
絵を描くこと。
それが唯一僕に出来たことだ。
賞もたくさんとったし、それで表彰台にも何回かのぼったこともある。何かすごいところに飾られたことも覚えてる。
でも、僕の目的はすごい賞をとりたいとかそういうものじゃない。
「ただ描きたくて、ずっとずっと絵が描きたいだけだった。ネットに投稿したりもしたけど、褒められたいとかそんなんじゃないんだ。」
「おれやとと様と、似たようなもんか。」
「…かもね。」
絵が描きたい。
とにかく描きたい。
中学に入り、こっそりSNSをやって絵を投稿したりすると顔も知らない大勢の誰かが見てくれる。
そう思うだけで楽しいし嬉しかった。
褒められたいのが目的じゃないけど、やっぱりコメントを残してくれたりするとそれは次の絵を描くための原動力にもなった。
「なんか会社からメールが来たりしてね、うちのゲームのキャラクターデザインをして欲しいとか頼まれたりとかもしたよ。」
「ホー、向こうはまさか学生だとは思ってもないだろうナ。聞くところ順風満帆じゃないか!」
「うん、でもね…。」
色んな絵を描き、リクエストの絵も応え、ちょっとした有名人になりつつあった頃、
とある、事件が起きる。
「兄がそれを知って、母さんに言いつけた。」
「…。」
僕の部屋に兄が勝手に入り込み、絵を見てしまったらしい。
そしたら友達がその絵をネットで見たことがあるとかで、僕のアカウントの存在がバレた。
「あいつも言ってたけど、父さん母さんも絵を描くっていうのが嫌いでさ」
「ああ、言ってた。」
「絵描きは穀潰しと一緒。絵を描いて誰かのためになるの?それはただの自己満足でしょって、昔からそう言われてきた。賞を取った時だってだから何?って感じ。」
「じゃあなんだい?おれととと様は穀潰しか?」
「少なくとも僕はそう思わないよ。母さんは…よくゴッホを例えに出してたけどね。」
それから僕がネットで絵を投稿し続けたことがバレた日の夜、家族会議が開かれた。
父は頭を抱えてため息を吐き、母からは思い切り引っばたかれ、兄は絵に関する道具は全て破壊し、絵は燃やした。
「ペンも液タブも全部目の前で壊されてさ。描いた絵も燃やされて、その時は泣いちゃった。」
「そりゃ、泣くにきまってる。」
「でもそんなのまだまだ序の口だったみたいで…」
それから、あいつは僕への嫌がらせに本腰を入れてきた。
まずは友達…とは言っても言うことを聞かなければ母さんに頼んで何がするぞ。と脅した雇ったクラスメイト達に指示させ、僕のアカウントへ総攻撃を始めた。
実際は数十人なのに何百人もいるようにアカウントをいくつも作り、徹底的な誹謗中傷をした。
当時わけのわからない僕は何とかしようとしたけど、多すぎる誹謗中傷に僕はどうすることも出来なかった。
中には擁護してくれる優しいファンもいた。
でもそういった人は逆にそいつらに目をつけられ、徹底的に潰される。
やがてファンも去り、悪意のあるコメントばかりが埋めつくし、日に日に僕は追い込まれていく。
ネットだけじゃない。リアルでもあいつは僕を追い込んでいく。
監視され、絵を描こうものなら暴力をふるう。
嘆く僕を見て大笑いする。
自称絵のプロの友達を呼び、一緒になって指摘という名の誹謗中傷を浴びせる。
こうした日が何日も続き…
「気づいたら僕ね…絵、描けなくなってたんだ。」
「描けなく…なった…?」
「そ。」
懲りずにコッソリ描こうとした際、あることに気付いた。
絵を描こうと思うと手が震え、うまく描けない。
意地でも描こうとすれば、誹謗中傷のコメント達や兄の悪意に満ちた顔がフラッシュバックして吐き気を催して耐えられなくなる。
つまり、トラウマを刻みつけられてしまった。
「…!!」
「お、お栄ちゃん?」
浴槽に縁にドン、と拳を打ち付けていた。
拳はふるふると震え、眉間に皺を寄せた表情からは怒りを感じ取れた。
「許せねぇ。自分が気に入らねぇってだけで、すとれす解消したいってだけでそこまでするか普通…!」
「こっちは必死に勉強してるのに、僕は楽しく絵を描いてる。それがいけなかったんだ。」
「いいやマイは悪かねぇ!悪いのはあのクソ兄貴だ!」
「…でもね、その時はしょうがなかったんだよ。何も出来なかった。」
自分でもわかる。
今自分が取り繕ってる作り笑顔は、きっとぎこちないものだって。
「それでね、なんとかこの状況を変えたいから、僕はあの家を出てくことにしたんだ。」
「…変えようと、したんだナ。」
このままじゃよくない。
もしここに住み続ければ、僕は永遠にあいつにこき使われ続ける。
楽しいこともないまま、あいつの為だけに人生を捧げなければならなくなる。
そんなのは嫌だ。
そう思って僕は、己の身一つで家を飛び出した。
「とは言っても一般の高校生が住めるとこなんてどこにもなかったけどね。でもホームレス生活もそれはそれであの家よりかはマシかなって思ったよ。」
「でも、こうしてマイは今住めてるじゃないか。しかもここ高いんだろ?」
「うん。それにはワケがあってね…。」
敵だらけの僕だけど、唯一味方はいた。
それが母方の祖父母。
おじいちゃんとおばあちゃんはなぜだか僕にとても優しかった。
遊びに来る度にわざわざケーキを買ってきてくれたし、絵だってとにかく褒めちぎってくれた。
「そんなおじいちゃんおばあちゃんなんだけど、僕が家を出ていったって知ったら大慌てでね。僕を探しに来てくれたんだ。」
「そんな…優しい人がマイにはいてくれたんだな。」
「うん。それで2人にもワケを話したんだ。この家にいたままじゃだめだからって。僕、変わりたいんだって。そうしたら」
まず2人がよういしてくれたもの、
それが今僕が暮らしてるアパートだ。
元々ここは2人の土地らしく、僕に格安で部屋を提供してくれた。
さらに学生としての生活を何不自由なく満喫して欲しいからという理由で、毎月とんでもない額の仕送りがやってくる。
「でもバイトしてるじゃないか。あれはどうしてだい?」
「人として変わりたいから。内気で人と話せないままじゃだめだからって理由で、接客業をしてるんだ。」
人として変わるため、僕はこの町に引っ越してきた。
でも、結果として僕は
「とはいっても、昔と比べて僕はまるで変わってないんだけどね。」
「…。」
「いざ絵を描こうと思っても、手が震えてどうにもならない。僕の中に刻まれたトラウマは、そう簡単にはいなくなってくれない。」
未だ、あれだけ描きたかった絵は1枚として描けていない。
次こそは描こう、そう思って僕は道具を買う。
でもいざ描くぞというときには怖くなって絵を描く前にやめてしまう。
でも次は必ず。いや今度こそ。
そうやって繰り返し思い続けるうちに、あの"作業部屋"には知らず知らずのうちにどんどん手付かずの道具がたまっていった。
絵が描きたいのか描きたくないのか、自分でもよくわからなくなり…。
そうして絵を描くためと用意した部屋に、鍵をかけた。
「そういうワケかい…。」
「うん。馬鹿でしょ?」
「ああ、馬鹿も馬鹿、大馬鹿者だ。変わろうとしたのに未だに昔のこと引きずって変わりゃしねぇ。」
「…。」
「けど、そんなますたあ殿に気付けなかったおれも大馬鹿者サ。」
と、それから話が途切れる。
隣合ったまま、何分か経過しこのままでは良くないと思った僕は
「でもね!」
「?」
「絵を描いてるお栄ちゃんの後ろ姿を見てたら…また描けるかもって思ったんだ。それで昨日…同じようにペンを買ってきたワケで…。」
「あぁ。」
そういうことか、と納得した顔をする。
昨日買ってきたものはお栄ちゃんへのプレゼントなんかじゃない。
正直に言うとそれは、僕のだ。
「そこまで言うと、気になってきたナ!」
「何が?」
「マイの絵。一体どんなもんか見てみたいのサ。」
肩をぴったりとくっ付けて寄り添い、お栄ちゃんはなんだか嬉しそうに言った。
「描けるようになったら、一番におれに見せとくれ!おれが最初に、マイの絵が見たいんだ。」
そう言い、お栄ちゃんは立ち上がった。
「おれはもう上がるヨ。これ以上浸かってたらのぼせちまう。」
「そっか、じゃあ僕も上がるよ。」
2人で浴槽から上がり、温まった身体をバスタオルで吹く。
「…。」
なんだか、身体が軽くなった気がする。
お栄ちゃんに全部打ち明けたからかな?
そうでなくても、僕は前の自分とは何か違う気がしてならなかった。
「じゃあお栄ちゃん。」
「うん?」
「描いてみる。僕、頑張るよ!」
⚫
「マイ…無茶しなくていいんだぞ?」
「ううん、大丈夫」
お風呂から上がり、それから僕達は作業部屋へと向かう。
机の上にあるスケッチブックを目の前にし、僕は恐る恐る鉛筆を手に取った。
「…っ。」
文字を書くのならなんの支障もない。
でも絵を描こうとするならば、刻まれたトラウマは嫌なことを思い出させてくるんだ。
「…。」
鉛筆を持った右手が震える。
真っ直ぐな線すらまともに描けないまま、僕は鉛筆の先を画用紙に付けた。
「…う、うぅ。」
後ろでお栄ちゃんが心配そうな顔をしてるのが分かる。
でも、お栄ちゃんは僕の絵を見たいって言ってくれた。
だったら見せたい。そしてまた戻りたい。
あの頃の、絵を描くことが大好きだった僕に。
「は…はぁ…はぁ…っ。」
嫌な汗が浮き出る。
呼吸が乱れる。
フラッシュバックする、あの時の光景
こっちは勉強してんのによ。お前はお絵描きごっこですか。
知ってるか?お前みたいなやつはニート予備軍って言うんだよ。
お絵描きごっこやる暇あんなら勉強くらいしろよ。ママにもそう言われたろ?
これで全部か?んじゃ今からこいつら全部叩き潰すから。目ぇ逸らすなよ。
ハイっ!これにてしゅーうりょーう。お前の絵はこの通り全部塵になりましたとさ!めでたしめでたし!
あー気分がいいなぁ!いい事すると爽やかな気分だ!ほらどうした?泣いてんじゃねぇよ。てめぇも一緒になって笑えよ障害者。
俺の友達いわくこことここ、あとこの辺りがデッサン狂ってるってよ。全体のバランスも悪いしお前みたいに欠点だらけな絵だな。ははっ!唯一の取り柄をダメ出しされまくってどんな気分だ?え?
「…っ!」
空いている左手が頭をおさえる。
ダメだ…このままじゃいつもと同じだ。
勝たなきゃ…トラウマに…勝たないと。
あいつに打ち勝たなきゃ…じゃないと僕は
「マイ。」
その時だ。
ふっ、と頭の中を支配していたあいつが消え失せた。
目の前を見てみれば、鉛筆を握る僕の手、
それを包み込むように、お栄ちゃんの手が優しく置かれていた。
「お栄ちゃん…?」
「ゆっくりやりゃあいい。急ぐ必要なんてどこにもねぇヨ。」
お栄ちゃんに導かれるように、僕の手は真っ直ぐな線をひいていく。
「それにマイは一人じゃない。おれがいるだろ。」
「ひとり…じゃない…?」
「辛いのならおれを頼れ。嫌なことあんならおれに話せ。その為のさあばんと。だろ?」
「…うん。」
描ける。
まだ絵を描くには程遠いけど、線は引ける。
「大丈夫、大丈夫だ。怖いもんは何もねぇ。」
「…。」
直線、曲線。
絵ではないにしろ、少しずつ描いていく。
あの時の楽しさを思い出すように、あの時の感覚を思い出すように。
「とりあえず、今日はここまでだ。んじゃあ飯にしよう。」
「うん。付き合わせてごめんね。」
「なぁんてことねぇサ!マイが言うならおれァいつだって付き合うからナ!」
そういってお栄ちゃんは笑い、作業部屋から出ていった。
けど、
「あ、そうそう。」
「?」
立ち止まり、振り返って僕に聞いてくる。
「もうマイは隠し事はしないって言ったよナ。」
「そう…だけど?」
「まだ隠してないかい?他の事。」
「え…?」
と、今度はニヤニヤとした顔でそう言われるけどもうこれ以上、何も隠してるものは無いし心当たりはない。
「ないよ?」
「そうかい?例えばおれの居ぬ間にでぃるど持ち出して、風呂場であんあん喘いでメスイキしまくってるとか。」
「…!!!」
心臓がドクンと跳ね上がり、顔が一気に熱くなったのが分かる。
けど、なんで、どうして?
どうしてお栄ちゃんがそれを知ってる?
「おや、図星かい?」
「そ、そんなこと…っ!僕はしてないからね!!」
「メスイキの虜になって戻れなくなってもおれは知らねぇヨォ。」
「だからしてないってばぁ!!!」
慌ててお栄ちゃんを追いかけ、本当のことだけどそれはデマだと説得する。
いい感じに終わりそうな話だったけど、結局最後はこうなってしまった。
さぁ、明日も学校だ。
きっとまた、いつも通りの日常がやってくる。
後書き
兄がやってくるという完全新規のストーリーでした。
やばいでしょ?恋の思考回路。
ちなみに性に関することはなるべく抑えつけない方がいいらしいですね。
大体そういった人は性癖が歪むと言われています。
まぁそんなわけで、幼少から厳しい両親にしつけられてきた舞くんは案の定性癖歪みまくったわけですが。
兄の恋もまた、いくらか自由になりAVやら官能小説を読み漁り順調に歪みつつあります。
さて、神父と接触した兄はこれから何を仕出かすのかという話なわけですがそれは一旦置いといて、
次からは舞くん達を狙う刺客の話となります。
しばらくまた真面目な話が続きます。でもその後思いっきりやべーの書くから楽しみにしててね!
それでは次回もお楽しみに!
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