崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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最終章『ふたりで…』
Sとは悪魔か、それとも…/それぞれの戦い
。」
最上階の部屋から彼らを見下ろす。
最強のサーヴァントである神代正義と戦闘中の最中、突然正義の動きが止まった。
産廃のマスターが指さし、彼に向け何かを叫んでいる。
負け惜しみだろうか、それとも虚勢だろうか。
どちらにせよ彼が最強なのは変わりない。
そしてわざわざやってきたあの4人とその付属品の産廃達は皆正義に屠られる。
東京で完膚なきまでにやられたというのに…。
どうやら産廃のマスターをやっていると、学習能力も無くなるらしいな。
「来ましたね。性懲りも無く産廃共が。」
「殺せ。その為の正義だろ。」
何人目か分からないサーヴァントに腰を打ちつけ、代表は面倒そうに答えた。
周囲には秘部から精液を垂れ流して気を失っているサーヴァント達がいる。
「こちらに向かって何か言っているようですが?」
「知るか。俺様はマンコの調教で忙しいんだ。あんな低学歴の雑魚共に構う暇はないんだよ。」
「まぁ…そうですね。」
探偵と名乗った男はこちらを指さし、何かを叫んでいる。
おそらく殺すとかそういうものだろう。
だがその殺意は代表や私にも届かないし、お前達はそもそもここには辿り着かない。
そこで、無様に死ぬだけだ。
「…!?」
そう、思った時だった。
一瞬我が目を疑った。
幻覚を見せられているのかとも思った。
「何故だ?…嘘だ…!有り得ない!!」
窓に張り付くようにして下を凝視する。
有り得ない。今彼らは何をした?
彼は最強のサーヴァントだ。負けることはおろか傷一つ付けられない。
なのに、なぜ…?
「一太刀浴びせられている…!?」
最強のサーヴァント、神代正義は今、
彼の言う産廃により傷を負わされていた。
⚫
「所詮はそのメアリーなんとかさんに頼りっきりだったってワケね。」
「そんな…バカな…!!」
奴の物語は終わった。
俺達の物語となった今、メアリー・スーの主人公補正は意味をなさなくなる。
よって彼はここで、宮本武蔵によって初めての傷を負った。
「武蔵は強いぞ。お前ごときでは足元にも及ばないだろうな。」
「"ごとき"だと?…ふざけるな!僕は…僕は悪魔なんかに…!?」
そのときだ、正義の身体がグンと重くなり思わず膝を着く。
そして、
「これでもくらえッ!前にやられた香子の分だァッ!!」
顔を上げた先には葵の脚。
強烈なカカト落としが脳天に直撃した。
「今なら呪いも効くと見ました。これなら…これなら勝機は十分にあります!!」
正義の身体が重くなったのは香子の呪術によるもの。
以前それらが効かなかったのはやはりメアリー・スーのおかげであり、それさえ封じてしまえば彼は一気に弱体化した。
正義はもう敵ではない。しかしラフムがまだいる。
そんなに強くはないが数で押され、このままではジリ貧で負けるだろう。
ということで俺は、作戦変更の指示を出す。
「子安さん!!以蔵!!」
「どうした?」
「なんじゃ!!」
ラフムを斬り捨てながら、以蔵はこちらに振り向く。
「お前は子安さんと一緒に地下室へ!建物の内部構造ならお前たちの方が知ってるだろ!?俺達はここでアンデルセンとシェヘラザードさんを守る!だからお前達は先に見えない壁の装置をぶっ壊してきてくれ!!」
ラフムをなんとかするには援軍が必要だ。
しかし見えない壁があったままでは味方はそう簡単には来れない。
だから俺は元財団職員である子安さん、そして護衛として以蔵を行かせることにした。
「わかった。死ぬなよ!」
子安さんはそう言い、地下室へ向かって走り出す。
以蔵は子安さんに群がろうとするラフムを斬り、そのまま彼も向かった。
「さぁてこっからが正念場だ。おっきー。お前もガンガン攻めるぞ!」
「おっけー!!」
さて、さりげなーくキャスター3人にバフを盛ってたおっきーだがここはポジションチェンジだ。
ベストの内ポケットから聖晶片を取り出し、握り潰す。
「ふっふっふ…デメリットのなくなった史上最強の水着おっきーの力…見せてあげる!!」
水着へのクラスチェンジを済ませ、おっきーもまた北斎や武蔵のように前に出て暴れ出す。
「ねぇまーちゃん。」
「なんだよ。」
「目的としては子安さんとアンデルセン先生が見えない壁の装置を破壊するまでここを乗り切ればいいんだよね?」
「まぁ、そうだけど。」
こちらを振り向かず、両手にはマシンガンを握りしめおっきーは待ってましたと言わんばかりにカッコつけてこう答えた。
「別に、ラフムを全部やっつけてしまってもかまわんのだろう?」
お前それが言いたかっただけだな?と思ったが
「…あぁ。そのつもりならやれ。負けられねぇ戦いだからな!!」
ただ俺は力強く頷いた。
⚫
同時刻。
今夜であるにも関わらず、崩壊した東京は市民でごった返していた。
「悪魔がいるからこうなったんだ!!」
「悪魔がいなければ!財団はこんな事をしなかったんじゃないのか!?」
「お前達契約者が大人しく悪魔を葛城財団に差し出さないのが悪いんだろう!!」
「人の気持ちが分からないのか!!悪魔も!契約者も!!」
東京にいるサーヴァント達へ罵詈雑言を浴びせる市民達。
悪魔を追放せよ、悪魔は許さない、と書かれたボードを持ってあれやこれやと騒ぐそれはまさにデモだった。
そして、それを一身に受け止めそこで引き止めている者こそ
「お願い!私達は悪い人ではないの!!」
マリーアントワネットだ。
「嘘をつくな!!」
「財団が悪?違うだろ!!正義様のいる財団こそが正しいんだ!!悪魔は消えろ!!!」
マリーがどれだけ訴えかけようとも、どれだけ優しく説明しようとも、彼らは少しも理解しようとしなかった。
いや、耳すら傾けようともしなかった。
マリーの声は、彼らの耳に届く前に彼らの言葉でかき消される。
正義の主人公補正により、彼らは完全に正義を信じきってしまっている。
主人公に異を反するものなど、それは傍から見れば悪でしかないからだ。
「正しいとか、悪いとかじゃない。皆それぞれ自分の思いを持って、自分の判断で物事を見て欲しいの!」
彼らは話を聞いてくれない。
彼らの敵意や殺意は、皆マリーに向いている。
しかしそれがどうかしましたかと言わんばかりにマリーはめげず、諦めずに説得を試みている。
そうして罵詈雑言と共に投げつけられる石。
それはマスターである広海が受け止めてくれるが、その分マリーも心が痛んだ。
そして、
「…!!」
ついにぶつけられるものは石ではなくなった。
どこで調達したのかは知らないが、デモ隊の1人が前に出、ボウガンをかまえる。
「死ね!悪魔め!!」
ボウガン程度、サーヴァントならなんてこと無いかもしれない。
「マリー!!」
「あなた…だめぇっ!!」
しかしマリーに怪我を負わせたくない、守りたいという思いが広海を前に出させた。
腕を精一杯広げ、矢から守ろうとする広海。
それではあなたの方が危ないと、肩を押さえて止めにかかるマリー。
サーヴァントとマスター、
互いを守り合う光景ではあるがデモ隊の人には何も響かなかったし届かなかった。
「なっ…!!」
しかし、そのボウガンも悪魔や契約者の胸には届かなかった。
その矢は、また別の矢に射られ弾かれたのだ。
「全く…人間というのはこうも簡単に惑わされるのだな。」
マリーと広海のずっと後ろ。
そこには既に次の矢を番えているアタランテの姿が。
「マスター、どうする?」
「どうするも何も、こうなったカラクリは分かった。後は俺達がそのまやかしから目を覚まさせればいい。」
「なるほど。ならば私は院長に危害が及ばないよう守ればいいのだな?」
「それはアタシの役目であるぞ泥棒猫め。」
そうして現れる院長先生と彼のサーヴァント二騎。
彼は今まで、真壁支配人と共に"とある映像"に目を通していた。
その映像というのが今現在彼らが戦っている財団本部の様子。
キャスター陣営が協力し、彼ら四人四騎の視覚、聴覚は液晶を通して共有されるようになっていたのだ。
というわけで、院長先生達は正義のメアリー・スーを知っている。
「皆が賛同するのも彼が主人公だから。なるほどな…探偵さんがあの2人を連れて行きたい理由がやっと分かった。」
「あのような優男が主人公とは世も末なのだナ。まぁもっとも、キャットにとってはご主人こそが真の主人公なのである。」
俺はそんな器じゃないよとやんわり否定し、院長先生は歩き出す。
民衆の目を覚まさせやらなければならない。
彼は主人公ではない。
ご都合主義によりねじ曲げられた物語に鎮座する、偽りの主人公なのだと。
そして
「だったら見せてやる!葛城財団がどんな行いをして来たか!そして今何をしているか!!」
院長先生の声と共に置かれてきたモニターに映像が映る
。
それは過去、竜胆急便からお届け物として預かった映像データの数々だ。
さらに
「国のお偉いさん方にも書類の方は提出済み。そして探偵さん達の活躍によって彼が主人公という法則は崩れつつある…!」
「ナルホド。後は崩れかかった城をご主人達で木っ端微塵にダイナマイッ。というわけだナ?」
だいたいそんな感じと頷く院長先生。
そして押し寄せたデモ隊は巨大モニターに映り込む葛城財団の所業に目を向けた。
そんなはずはない。
葛城財団は国からの許可も得た慈善団体だ。
正義様がいるんだ。悪いところなんかじゃない。
人々は皆口を揃えてそう言うが、
それにも、自然とほころびが出始めていた。
「なぁ…。」
「なんだよ。」
「もしかして悪いのって…葛城財団じゃね?」
デモ隊の中にいる若者2人がヒソヒソと話し始める。
「バカかお前。葛城財団は正義様のいるところだぞ?わるいわけが…」
「でもさ…悪魔とはいえわざわざ"あんなこと"する必要、なくね?」
液晶に映し出されているのは代表によるサーヴァントの洗脳、もとい強姦。
それだけではない。彼は特にこれといった意味もなく、サーヴァントを痛めつけ下卑た笑みを浮かべその肉を震わせている。
四肢の切断。焼きごてによる屈辱的な文字の烙印。霊基書換による強制的な身体変化。
もはやそれは性行為などではない。子供が好奇心で虫の羽をもぐような、純粋でありながら非常に幼稚かつ、目を逸らしたくなるほどの邪悪だ。
『マンコっていうのはどいつもこいつもヤリたがりのクソビッチだからな!サーバントでもそれは同じってわけだ!ぶっはははははは!!!!』
代表による洗脳の一部始終が撮られた映像には勿論音声も入っている。
サーヴァントの悲鳴。もういないマスターの名前を叫びながら、己が書き換えられていく恐怖に心折れる者。
抵抗するものだっている。しかし、代表の令呪により強制的に服従させられ、彼の思うままに屈辱的なポーズをとらされ職員達の前で羞恥心を煽られる。
そして何よりも、代表の偏見まみれの言葉。
『ほら!どうだ!?女ってのはいっつもマンコ濡らしてんだろ?そんなヤルことしか能のねぇ奴らにはとっておきをくれてやるよ!』
女性は全員ヤリたがっている。
常に性行為をしたい生き物である。
痛がってるのは気持ちいい証拠。
等、彼の激しい妄想がダダ漏れになっていた。
「やだ…なにあれ…!」
「あれが葛城財団なの…?」
正義様の為と、必死に抗議の声を張り上げていた女性達も思わずおののく。
子供もいるかもしれない中でこのような映像を流すのは非常に不適切かもしれない。
だが、葛城財団の真相を暴き、さらに神代正義を主人公の台座から降ろすのはこれがイチバンだった。
「そうだよ。俺達、今まで助けられてきたじゃんか!」
「どうして忘れてたんだ…命の恩人だってのに…!」
そして、次第に目を覚ましつつあるデモ隊達。
振り上げた拳は降ろされ、悪魔を追い出せと書かれた看板は捨てられ、彼らは主人公補正により見せられていたまやかしから解放されようとしていた。
「なんてことを…してしまったんだ。」
マリーアントワネットに向け、ボウガンを向けたこと男もまた、過去にサーヴァントによって命を救われていた者の一人であった。
自分のしでかしたこと、やってしまった罪の重さに唖然とし、力の失った右手からボウガンがするりと落ちる。
「俺は…。」
「分かってくれたのなら、もういいの。」
膝を付き、自分の犯した過ちにどうすることも出来ない男
。
だがしかし王妃にとってはその程度、なんということもなかった。
「間違いは誰にだってあるもの。だから、私はあなたを責めたりしない。」
「悪魔だと、ここから出て行けと言ったのに…?」
「ええ。」
優しく微笑みかけるマリーに男は思わず涙を流す。
ああ、こんな人が悪魔なわけないじゃないか。
だってこんなにも輝いているのだし、こんなにもお優しいのだから。
「さぁ、頑張りましょう。あの島でも私のお友達が頑張ってるんだもの!」
切り替わる映像。
次に映されたのは今現在財団本部にて起きている戦闘だ。
数多のラフムが飛び交い、それを率いて偽りの主人公である正義が彼ら四人四騎と激突していた。
⚫
別の場所。
瓦礫ばかりの転がる、あちこちが水浸しになってしまった場所。
そこはかつてイルカショーでにぎわっていたあの『シルク・ドゥ・ルカン』だ。
葛城財団からのスポンサー契約を切った。
その報復として、代表はここを念入りに破壊していったのだ。
二度とイルカショーが出来ないように。二度と自分達に刃向かえないように。
「…。」
崩れかけた観客席に座っているのは、サーヴァントとマスター。
『シルク・ドゥ・ルカン』のオーナーである弟くん。
そしてジャンヌだ。
変わり果てた会場を見て2人は、こうして何も話さずどこかを見ている。
「…ダメですね。私。」
「…。」
長い沈黙だった。
それを破ったのはサーヴァントのジャンヌ。
いつもの元気な姿はなく。その顔もどこか暗く感じられた。
無理もない
「会場はめちゃくちゃ。相手には負ける。その上弟くんに怪我をさせちゃいました。これではお姉ちゃん失格ですね。」
会場は破壊され、神代正義にはかなわず、さらには見せしめとしてオーナーの弟くんの腕は折られた。
弟を守るのが姉の義務なのだとしたら、それは既に守れていなかった。
「…失格なんかじゃないよ。」
「それは…どういう意味ですか弟くん。」
弟くんの左手がスっと動く。
やや迷っているような挙動を見せ、やがて決心したように拳を一度ぎゅっと握ると、
「…!」
姉の手の上にそっと自分の手を置いた。
「弟くん…?」
「失格じゃない。それにジャンヌが本当に失格かどうかはマスターの僕が決めることだ。」
俯いていた姉が顔を上げる。
すぐ横には何にも変えられない唯一無二の存在である彼がいて、そして真っ直ぐな瞳でこっちを見てくれている。
「ジャンヌは、ジャンヌだ。こうして現界して、勝手に姉って名乗ってそれなのに勝手に失格って言って…そんなのは許せない。」
「…。」
「失格なんて僕がさせない。ジャンヌは誰のものにもさせない。それ以前に…自分の大事な人が誰かのエゴで物同然に消費されるなんて…絶対にいやだ。」
知らない間に、自分が思っているよりも弟くんは成長していた。
彼の心は思っていたより強かったし、そして思っていたより我儘だ。
そんな彼を見て、姉は思う。
「これじゃ…ホントにダメですね。弟くんはこんな健気に頑張ってるのに、お姉ちゃんが落ち込みっぱなしでは。」
ぱしん、と両の頬を叩いてジャンヌは自分を奮い立たせる。
弟くんは折れていない。なんならイルカショーを再興するつもりだろう。
それなのに自分は何をしていたか。
弟が頑張っているのに頑張らない姉がいるものか。
そう思い、ジャンヌは立ち上がる。
「財団本部では探偵さん達が戦ってる。だから僕達も頑張ろう。」
「ですね。私達には私達の戦いがありますもんね。」
瓦礫だらけのシルク・ドゥ・ルカン跡地。
入口だった場所には、何十人もの人だかりができている。
応援?違う。
「ここにいたな悪魔め…!」
「弱っている今がチャンスよ!私達であの悪魔を捕らえましょう!」
神代正義により惑わされた、敵だ。
しかし、
「ちょっと!待ちなさい!!」
人だかりから何人かが抜け出し、こちらに向けて走ってくる。
子供だ。
子供達が親の制止を振り切り必死に走ってくるのだ。
「…?」
やがて弟くんとジャンヌの前に来ると、一人の子供がポケットからあるものを取り出し、渡す。
「これは…。」
「ごめんなさい。だからまた、イルカさんとショーをしてください。」
心からの謝罪と、手紙。
またショーをして欲しいという思いが綴られた手紙には、イルカやサメの絵が描かれていた。
正義の主人公補正のせいで、子供達すら敵になっていた。
しかし探偵によりそれが暴かれた今、この幻覚から一番に抜け出したのは純粋な子供であった。
「ジャンヌ。」
「ええ、大丈夫です。きっとまたイルカさんも戻ってきて、会場も新しくなって、必ずショーは出来ますよ!」
ジャンヌの言葉に子供達は思わず喜びの声を上げる
「ほんと?」
「ええ、ほんとです。イルカのお姉ちゃんは嘘つきません。」
「やったぁ!!」
喜ぶ子供達。
だが
「早く戻ってきなさい!!」
「ダメよ!!それは悪魔なの!!」
「食い殺されるぞ!!早く戻ってくるんだ!!」
彼らの親、もしくは正義を信じる者はそれを許さない。
聖女の名を名乗ってはいるがその本質は逆。
動物を奴隷同然に酷使し、子供達を惑わせ食らう邪悪な悪魔。
彼らは皆、正義からそう教わった。
大人の自分勝手な怒鳴り声に子供達は怯えるが、
「いやだ。」
1人の少年が、そう言った。
「いるかのおねえさんは、わるくない。」
「わるいのはあのひとだ!あんなひと!せいぎのみかたなんかじゃない!」
それを皮切りに今度は子供達の番だと言わんばかりに次々と叫び出す。
子供達の予想外の行動に親達は驚き、たじろぐ。
そしてジャンヌの味方は、子供達だけじゃない。
「そうだぞ!!」
「このままショーを無くされてたまるか!!」
「!!」
反対側から現れたのはまた別の大人達。
強いて言うならば大きなお友達。
そう、また別の意味でショーを楽しみにしている大人達だった。
「間違ってるのがどうして分からない!?少なくともジャンヌやオーナーさんは!たくさんの子供達を笑顔にしてきたんだぞ!!」
「そ…それは子供達を油断させ食べるために…」
「証拠あんのかよ馬鹿野郎!お姉ちゃんがおいしくいただく(意味深)のはかわいい弟くんだけなんだよ!!」
何故内部事情を知っているのかは分からないが、状況は一気に弟くん側へと傾いた。
「そうでしょ弟くん!こんな時こそ子供達を笑顔にしなきゃ…!!」
お客の1人にそう言われ、弟くんは呼ばれ方に半ば呆れながらもデモ隊を見る。
「うん、そうだった。毎日が不安な子供達のために…イルカショーをしようって決意したんだ。」
毎日子供達を励ましていたが、まさかこうして子供達に励まされるとは思っていなかった。
そして、子供達のリクエストは受け付けなきゃならない。
「じゃあ始めよう。僕達の戦いを。僕達のイルカショーを。」
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