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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
最終章『ふたりで…』
  探偵と助手O/反撃の狼煙

 
前書き
どうも、クソ作者です。
この話からついに最終章へと突入します。
それはそれとして(話題転換)
なんで更新にこんな間空いちゃったの?という疑問を持った方もいると思います。
いやあの…なんていうか…。
仕事で忙しかったとか家庭内で何かがあったとかでもなく、
あれですね。ゲームしてました。
マスターとサーヴァントの物語書くよりも
ドライバーとブレイドの物語に夢中になってました。
ごめんなさいね。
それでは本編、どうぞ。 

 
「それが…やつの正体なのか?」

即席の作戦会議室。
そこで俺や院長先生、そして真壁さんと集まり正義の中にいるサーヴァントの正体を説明していた。

「はい、もうこれに賭けるしかありません。外れたのならそれまでです。」

数々の仮説、推理、そして確かな情報を組み立て全員に順を追ってやつの正体を解説していく。
で、実際なんなのかって?
それは後でのお楽しみよ。

「それで探偵さん。奇襲のプランは?」
「ええ、作戦決行時間は今夜零時。今すぐにでも準備に取り掛かるつもりです。」
「今夜!?ちょっと待って!?」

真壁さんが異を唱える。
そりゃそうだろ。

「この東京の状況、それにあなた達の状態!それらを見て今夜決行するっていうの!?」

壊滅した東京。
ボロッボロにやられた俺達。
こんな状況でまた戦いを挑みに行くなんざ返り討ちにされに行くようなもんだろう。
けど

「落ち着けマスター。」
「でも…!」
「彼らは勝機があると見込んでこの作戦を立てたと見える。」

真壁さんのサーヴァント、孔明が説明を始めた。

「探偵。一つ聞くが戦う者が一番油断する時は"いつ"か知っているか?」
「そりゃもう、"勝者"になった時ですよ。」
「ふ…やはりそうだな。」

納得の言った顔をし、それから孔明が真壁さんに何故俺が今夜作戦を決行するのか代弁をしてくれた。

「マスター、拠点も破壊され、兵も満身創痍。敵がそうである時、マスターはどう思う?」
「それは…もう戦いには来ないだろうって……!? もしかして」
「その通りだ。」

真壁さんが作戦の真意に気付く。
そう、怒りに任せ作戦もなしにカチコミにいくのではない。

「見たところ葛城財団のトップは勝って兜の緒を緩めるタイプの人間だ。きっと今頃勝利の余韻に浸っている。」
「じゃあ…攻めるなら今…!」
「まさにそうだ。おそらくあいつらは今頃酒盛りと女遊びに精を出している頃だろうさ。」

葛城財団代表、葛城恋。
あいつはとんでもなくプライドが高く、そして自分が絶対と信じてやまない男。
自分が勝てば、もうそれでおしまいなのだ。
おそらくあいつの中ではもう、3日後に全てのサーヴァントが自分のモノになるくらいしか考えていないだろう。
そう、もしものことを考えていない。
常にいい方向のことを考え、そして自分が窮地に陥るような心配はしない。
つまりは、企業のトップだったり指揮官といったそういう役割にはとことん向いてないタイプの人間だ。
見なくても分かる。
勝ったアイツは今頃、きったねぇ笑み浮かべながらレイプしてるだろうよ。
そして俺達は、そこを突く。
勝ったと思い込んでふんぞり返ってるそいつの寝首をかくんだよ。
知ってるか?
手負いの獣が一番危ないんだぜ?

「油断しているところに奇襲をかける。そういうことね?」

真壁さんの問いに、俺はただ黙って頷く。

「そう、奇襲です。正面から突っ込んでバレては仕方がない。最初は少人数で奇襲をかけ、本部を覆っているらしい"見えない壁"を破壊します。そうしたら後はもう、こっちのもんです。」
「見えない壁のことは私が話そう。」

そう、本部の周囲は見えない壁で覆われているが、
それを知る者がこちらにはいる。

「ええ、お願いするわ子安さん。」
「原理はよく分からんが、本部を覆っているものは強固なバリアだ。生半可な宝具ではヒビひとつ入らないし、どんな魔術を通しても解除する術がない。」

外からは見えず、そして絶対防御を誇る壁。
子安さんの調べによればそれは魔術とも科学ともどちらとも言えない原理不明の何かによって出来たバリアだが、解除方法はあるらしい。

「地下深く。一部の者しか入れないがそこに制御装置がある。おそらくそこを叩けば見えない壁は解除されるハズだ。」
「それ以外に方法は?」
「宝具をブッパしてゴリ押しで壊す手もあるにはあるが、それでは破壊する前に気付かれ手痛い反撃を受けるだろう。主にあの疑似サーヴァントからな。」
「ということは、その見えない壁を突破する方法は一つと言う事ね。」

というわけで、最初に攻め込む奇襲部隊がやるべきことは、まずその見えない壁の制御装置を破壊すること。
しかし、そこでどうやっても立ちはだかる壁がある。
正義だが、とうに攻略法は見つかった。

「カンペキです。もう攻略の糸口は見つけました。後はもう作戦遂行するだけですよ。」

反撃の狼煙は今上がった。
そして作戦に加わってもらうメンバーも決まっている。
あいつらの事だ。
負けたことをいつまでも引きずってないで今ごろその牙を研いでいる事だろう。

「という訳で真壁さん、院長先生。俺"達"の準備は完了してます。」
「いや、終わってないぞ。」

自信満々に言い放ったが、そこで院長先生が待ったをかける。

「え、」
「戦の準備は整ったかもしれないが探偵さん、君には1つやり残してることがある。」
「な、なんすか…?」
「とぼけるな。これは君にしかできない事…いや、君じゃないといけない事だろう。」

椅子から立ち上がると院長先生は去り際に俺の肩にトンと手を置く。

「作戦準備は俺達がやっておく。だから行ってこい。彼女は以蔵と話をしてた所にいるぞ。」

そう言い、院長先生は去っていった。

「…。」

どうやらやるしかないみたいだ。
避けては通れない。
この作戦にいてもらわないと困るからだ。
いや、そうじゃない。

「…んじゃ、いってきます。」

やけになってあんな風に言ってしまったことを謝らないといけない。
どんな時も隣にいてくれた相棒の為に。
おっきーに、ごめんと伝えなきゃならない。



「…。」

ついさっき、俺が岡田以蔵と話をしていた防波堤。
そこに彼女はいた。
腰掛け、夜の海を眺めている。
いや、眺めてはいない。
多分こいつは待っている。

「すー、はー。」

1度深呼吸をして、落ち着いてから歩き出す。
普段はフツーに話せてたのに、どうしてこんな時は緊張すんだろな。
ただ謝ればいいだけなのに。最悪『ごめん』の三文字で済む問題なのに。
中々前に進まない足を出し、俺は彼女の横に何も言わず据わった。

「…。」
「…。」

重い沈黙。
何から話せばいいか分からない。
いや分かる。謝ればいい。
だけど口が思うように動かないし、声も発せられない。
けど、言うしかない。

「あのさ、ごめん…悪かったって。」
「…。」

彼女からの返事は、ない。
無視か?無視だろうな。
無視は一番傷つくんだぞ。
っておっきーを傷つけた俺が言えたもんじゃねーけど。

「ホントに、そう思ってるんだ。」
「…?」

土下座でもしようかなーなんて考えてたら、彼女は口を開いた。
ただ視線は海の方を向いており、俺の方は見てない。

「1時間46分。」
「え?」
「ここでケンカして、"姫のマスター"が謝りに来るまでの時間。」

姫のマスターって言うのやめろ。
なんかすごく距離感遠のいた気がするから。

「お前…もしかして…。」
「いつ謝りに来るのかなーって淡い希望をこめてヒメはこの寒空の下ずーっとこうして待ってました。なのに姫のマスターは全然来ません。」
「それは作戦会議してて…」
「へー。姫より作戦会議の方が大事なんだ。キミにとって姫はそんなちっぽけな存在なんだ。」

こいつ…めんどくせー女ムーブすんなよ…!
あとキミって言うのやめろ。距離感どんどん遠くなってくぞ。

「作戦会議したってことは、何か思いついたの?」
「…あ、当たり前だろ。お前と喧嘩別れした後、勝てるかもしれない妙案を思い出したんだよ。」
「ふーん。」

頬杖をついて、めんどくさそうに受け答えするおっきー。
表情を伺おうと顔を覗き込むが、距離を取られてしまった。

「悪かったって。ホントに。」
「…。」
「いつもの俺らしくなかったよ。でも、もう二度とああなったりしないからさ。」
「…。」
「俺だけじゃなく、2人で一緒に夢叶えたいんだ。お前と一緒に夢のような引きこもり生活をエンジョイしたい。だから俺は諦めちゃいけねーし、葛城財団は必ず倒さなきゃいけない。だからさ…。」

手を差し伸べる。

「もう一度力貸してくれ。俺はお前がいないと何も出来ない。生きていけないんだ。」
「…。」

おっきーは何も喋らない。
そして差し伸べた手は

「…!」

ぱしっと簡単にはたかれてしまった。

「おっきー…?」
「いいよ。」

はたかれた手は握り返され、指と指が絡み合う。

「まーちゃんはまーちゃんらしくして。それが姫にとって一番嬉しいから。」
「お、おう…。」
「姫もごめんね。まーちゃんがあんまりにも落ち込んでたから、ついムキになっちゃったって言うか…あそこはやっぱり慰めてあげるべきだったよね?」
「…いや、いいよ。あそこで甘やかされようもんなら俺はもっと落ち込んでたろうし…。」

いつの間にか離されていた距離は縮み、寄り添いあって座る俺ら2人。
そして距離感の遠ざかりまくった呼び方も、いつもの"まーちゃん"に戻っていた。

「夢、叶えようね。」
「…当たり前だっつの。俺達は2人で引きこもって夢のような生活を送る。でもその前に…。」

その前に、
ひきこもる前に、あんなクソみてーな極悪組織がこの世に蔓延っていてはたまったもんじゃない。

「お高く止まったあのクソ野郎を潰しに行くぞ。」
「うん。」

あいつらが許せないとか
世界の平和がどーたらとかそんな正義感に満ちたものじゃない。
ただ葛城財団は、俺達の夢に邪魔な存在だ。
だから、あいつらは消えてもらう。

「行こう。多分あいつらの事だ。準備整ってるかもだ。」

1度敗れたからってそう簡単には諦めるもんか。
そういった考えはきっと、"あいつら"も同じだろう。

「まーちゃん。」
「なんだよ。」

立ち上がり、俺の顔をじっと見ておっきーは言う。

「かっこよくなったね。」
「どういう意味だよ?昔はブサイクだったってのか。」
「ううん違うよ。元からかっこよかったよ。でも、今は最初に会った時よりずっとかっこいい。」
「…あっそ。」
「色んな事を通して、色んな人と出会って、まーちゃんは変わったんだね。」
「馬鹿言うな。俺は相変わらず性格悪いゲス野郎だよ。」



それから、皆のいる場所に戻ると

「遅かったじゃないか。誠。」

新たに刀を新調した大和と武蔵が。

「お前それ…!」
「ああ、腕の立つ知り合いがいてな。急遽治してもらった。」
「さすがはエインヘリヤルってとこね。なんか今まで以上にしっくり来るかも!」

と、武蔵は刀を軽く振って鞘に収めた。
大和も紅く光る自分の刀を見上げ、その出来に頷いている。
それと

「院長先生から聞いたよ。あたしの香子が作戦の要になるってね。」
「式部パイセン…治ってる!!」

ポケットに手を突っ込み、どこかウズウズしてる葵。
そして後ろには紫式部の姿もあった。
正義にゼロ距離で爆破させられた顔は、既に元通りになっていた。

「え、なに?なんか殺気立ってない?」
「あんな最低男に負けっぱなしでいてたまるか。こっちはあの脂ぎった顔を早く蹴っ飛ばしてやりたいんだよ。」

怖…あんま関わらんとこ…。

「葵さーーん!!」

と今や不発弾より危険極まりない葵の名前を呼ぶ声が。
門脇舞以見てーな声してんなー誰だろと思い見てみると

「例のもの、持ってきました!!」
「ああ、ごめんねわざわざ。」

葵のところへ掛けてきたのはサーヴァントのイリヤ、そして美遊だ。

「何その2人…。」
「元々他の人のサーヴァントでね。紆余曲折あってあたしのとこで仮契約結んでるんだ。この2人。」

その紆余曲折が気になんだよ。
んでそれよりも気になるのがその2人が持ってきたものだ。
長方形のアタッシュケース。
横に長く、ゴツゴツとした見た目でそう簡単には開けられないよう、御札がビッシリと貼られているいかにも怪しげなアタッシュケース。
なにそれ、特級呪物でも入っとんの?

「なにそれ…。」
「あたしと香子の大切なモノ。決戦に行くんなら"コイツ"も連れて行かなきゃなって。」

そういってアタッシュケースを肩に担ぐ葵。
え…人?
確かに小さい子なら入りそうなサイズだけどさ…。

「お、意気消沈してるかと思いきや、どうやら全員やる気みたいじゃないか。」

さて、各々が武器を調達している中、最後に意気揚々とやってきたのは北斎と舞だ。

「おれもマイもごっほ殿に修復してもらったからナ。いつも以上に身体が馴染んでる。今なら何でも描けそうだ。」

北斎の言う通り、霊基の殆どを奪われた本人は元気だしアスファルトに何度も顔を叩きつけられた舞もいつもの女と見間違うややこしい顔に戻っている。

あれ、待て?
ゴッホに修復してもらったって言ったよな?
でもあいつ確かそれはあくまでフォーリナー限定じゃなかった?
なんで当たり前にこいつの顔を治せてんの?

「あとユゥユゥお守りももらっちゃった。必勝祈願です!って。」
「うわキモ!!」

そんな難しいことを考えていたら舞があのクッソ気持ち悪いお守りを懐から取り出し、見せつけてきた。
うん、皆さんご存知イマジナリスクランブルの時のあのお守りだ。

「っつーわけで俺達は全員、リベンジに燃えてるわけだな。」
「まーちゃんだけだね。おちこんでたの。」
「それは言うな。」

誰一人として、この状況に打ちひしがれてる者はいなかった。
それどころかこいつらは次は必ず倒すという意志を宿してる。
少しの間だけど落ち込んでた自分が恥ずかしいったらないぜ。

「そういやお前ら、怪我は?」

戦う気満々の彼らだが先の戦いで全員何かしらの怪我は負っていることを思い出した。まず俺もアバラ逝ってるしね。
だが見たところ全員ピンピンしてるし、紫式部にいたっては顔に傷1つない。
そのトリックは

「魔法のキュケオーン。だそうだ。」
「は?」

麦粥であった。

「あっちでキルケーが炊き出しをやってる。サーヴァントだろうが人間だろうが食べればたちまち怪我が完治する魔法のキュケオーンをな。」
「なにそれ…」
「誠。お前も食べて来い。嘘じゃないぞ。」

確かにこの身体では戦いにはいけない。
しかしどんな怪我も治る魔法のキュケオーンか…。
胡散臭過ぎる。
ここにいる全員は食したらしいが本当に食べるだけで治るのだろうか。

「じゃあ行ってくる。」

俺はその真偽を確かめるため、大和に言われるがまま炊き出しの行われてる広場へと向かうことにした。




「マジで治った。」
「だろ?」

結論から言わせてもらおう。
ホントに治った。
キュケオーンすごい。
呼吸するたびじくじくと傷んだ場所も食ったらこの通り。
今ではどこも痛くなく、むしろ身体の調子が良いまである。

「これで、全員準備完了だな。」

一度は敗れた俺達四人と四騎。
しかしたかが一度負けただけではいそうですかと素直に相手の要求を飲むほど俺達は出来た人間じゃない。

「今更だけどよ。作戦メンバーにはお前達もキッチリ入ってる。」
「分かってる。大まかな内容は聞いてるが…勝機はあるのか?」
「ある…と言えば嘘になるかもな。あんだけ考えてもうあいつに勝てる可能性が"アレ"しかない。」

大和達は事前に大まかな作戦内容は院長先生達から聞いている。
俺達の他に加わるメンバーも、そしてあいつ…神代正義への対抗策もだ。

「あたし達の以外に連れてくるサーヴァントもだいぶ偏ってるけど?」
「それがいいんだよ。いや、そいつらじゃないと俺達は神代正義には勝てない。」

ちなみにだが、奇襲をかける俺達四人四騎だが他に連れていく作戦メンバーとして俺はあるサーヴァントを院長先生に二騎所望した。
それらを見て確かに全員が思うだろう。
本当にこのサーヴァントを連れて行って、勝てるのか?と。

「俺達がやることは奇襲による混乱。そして謎の見えない壁の解除。あわよくば神代正義の撃破だ。」

指を立てながら順を追って説明していく。
1つに侵入方法だが、これは子安さんが知っている。
財団の船に成り済まし、コッソリと入港してやろうという作戦なのだが

「でも僕達、全員顔は見られてるんだよね?」
「だな…。」

舞がそう疑問を口にする。

「聞いた話によれば俺や誠、そしてお前と葵は財団から危険人物扱いされてる。変装しようにもすぐにバレるだろう。」
「じゃあ奇襲は難しくない?」

危険人物欲張りセットが乗り込むんだからな。
どうしようにも気付かれるのはしょうがない。
ということはあれか。気付く前に見張りを殺すか。

「おい。」
「…?」

と、四人で仲良く作戦プランを立てている中、やってきた男が一人。

「お前は…!」
「考えが変わった。わしもおまんらに協力するぜよ。」

あの時喧嘩した、岡田以蔵であった。

「なんだお前…俺が気に食わねーから斬りにきたのか?」
「なわけなか。おまんにいいもん一発もらってのう…酔いが覚めた。じゃからおまんらに協力しようかと思うての。」

そう言う以蔵だが…。
まぁ、そうだよな。

「お前、マスターが囚われてるって言ってたよな。」
「ああ。」
「助けたいってことなんだな?」

静かに無言で以蔵は頷いた。
こいつは腐ってもサーヴァントだ。
余程のことがない限り、マスターなんて見捨てない。

「わしは元財団お抱えの傭兵じゃ。わしなら奴らは油断するだろうし目も欺ける。」

今は少しでも頼りになるものは頼りたい。
元財団。そして傭兵。
信用性はないが、

「分かった。院長先生に伝えとく。」

俺はこいつを許すことにした。
で、こいつなのだが、

「お前…。」
「こいつ…。」
「僕、この人知ってる。」

なんと偶然か運命か、
大和、葵、舞の3人はこの岡田以蔵を知っているのであった。

「…!!」

以蔵も以蔵でやべーものに出会ったみたいな驚きの表情をしている。

「おまんら…よう見たらあの時の…!」

震える手で指さす以蔵。
何?知り合い?

「知ってんの?」
「忘れるわけがありません。大和くんを暗殺しようとしたけど失敗したあの岡田以蔵でしょ?」
「ええ、葵様を暗殺しようと企てましたが、返り討ちにあったあの岡田以蔵様ですね?」
「おれも覚えてるヨ。夜道でマイを襲ったが逆にますたあ殿の腕持ってかれちまった腑抜けの岡田以蔵だろ?」
「ええ加減にせんかおまんら!!その悪意に満ちた言い方を!!」

うん。
なんか繋がった。
ちょっと前に岡田以蔵が話していたこと。
彼はまだ財団お抱えの傭兵だった頃、どうやら要注意人物の始末を任されていたらしい。
つまり、転落人生を歩むキッカケになったのが間違いなく

「忘れもせん…おまんらのせいで…おまんらのせいでわしのマスターは…!」
「今更被害者面されてもあたし達困んだけど。」

確かにそうだ。
あっちは仕事かもしれないがこっちも殺されないため全力で抵抗するからな。

「まぁでもよ、以蔵さんもお前達もこれまでの事は水に流すとしてさ。」

苦渋を舐めさせられた3人を前にその恨みは捨てきれないかもしれないが、ここは我慢してもらおう。
以蔵は握りこぶしを震わせ、今にも腰の刀を抜きそうな勢いだがどうやらここで抜いたって勝てるわけがないと理解しているもよう。

「…あれはあくまで仕事じゃき、葛城財団から追い出されたわしはもうおまんらを始末する理由はないきの。」
「じゃ、実は財団の味方で俺達を後ろから刺すってことはしないんだな。」

そう訪ねると、以蔵は迷うことなく頷いた。
というわけで、元財団お抱えの傭兵、岡田以蔵は作戦に加わる事になった。
後は院長先生に貸してほしいサーヴァントを頼み、作戦開始時間まで待つだけだ

決戦は、今夜始まる。
 
 

 
後書き
かいせつ

⚫この岡田以蔵は何者?
かつてマスターと共に傭兵をやっていました。
主に暗殺の仕事を請け負い、狙った獲物は必ず斬る。
そのうちその評判が財団代表の耳に入り、功績を買われ葛城財団専属の殺し屋的な役割を果たすこととなります。
最初は上手くいってました。
しかし、ある仕事にて標的を逃してしまいます。
それが竜胆大和、及び宮本武蔵です。
そこから彼とマスターの転落人生が始まり、
たかがキャスターと侮っていた紫式部に返り討ちにされるわ、
見捨てられ、汚名返上を賭けて代表が一番危険視かつ欲しがっている標的に手を出すが逆にマスターが腕を失うという重症を負うわ散々な目にあいます。
やがて代表は新しい傭兵、ランスロットと置鮎を雇い、彼らは財団から追い出されたわけです。
かわいそうだね。

ちなみにこの以蔵の活躍は外伝にて描かれるよ。
みんな待っててね!
 
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