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Fate/imMoral foreignerS

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始まりから夏休みまで
  それぞれのサーヴァントの話

 
前書き
どうも、クソ作者です。
今回はお栄ちゃんと舞くん以外のサーヴァントのお話となります。
それではどうぞ。 

 
鉢庭 友作のサーヴァント、キルケーの場合。

私のマスターは忙しい。
学校から帰るとすぐに荷物をまとめバイトへと急ぐ。
帰ってくるのは夜遅くだし、正直働きすぎなんじゃないかと言ったことがあるが自分は貧乏だから、これくらい頑張らないといけないんだと言われた。

だから、私に出来ることはそんなマスターを笑顔で迎えてあげることだ。

「おかえりマスター。今日はどうだった?」
「あぁ、ただいまキルケー。」

マスターが帰ると玄関まで迎えに行き、荷物を預かる。
ふふ…これじゃまるで本物の夫婦みたいじゃないか!

「お腹すいたろう?ほら、たーんと食べておくれ!マスターを思いながら作った渾身のキュケオーンだ!」

仕事で疲れたであろうマスターを癒すのには食事が1番だ。
大魔女の私だが実は料理にも自信あるからね。ほら、とっておきのキュケオーンだ!
しかし、マスターはそんなご馳走を目の前にして項垂れてしまった。
どうしたんだろう。

「なぁ、キルケー。」
「ん?」
「たまには…違うものが食べたいんだが…。」

机に置かれたキュケオーンを前にしてマスターはそう不満を漏らす。
おかしいな…。飽きがこないように毎日味付けは変えているのに…。

「だめかい?ミートドリア風の味にしてみたんだけど。」
「じゃあミートドリアにしてくれよ…!」

…。

「味付けの問題じゃないんだ。それは正直うまいからいい。でもな、こうして毎日毎日キュケオーンばかり出されちゃさすがに飽きるんだ。」
「でも、マスターは私の作るキュケオーンは好きって」
「いやいくらなんでも好きだからって毎日食うのは限度があるぞ。」

なんてことだ。
マスターがキュケオーンに飽きてしまった。
そういえば昨日もなんか怒られた気もする。
やはり…ここは少し食感を変えてみようか…!
ふふ!私のキュケオーンのレパートリーは無限大!
大魔女のレシピにネタ切れは無いぞ!

「分かったよ…マスター。」
「…?」
「次こそはキミを飽きさせないキュケオーンを作るよ!待っててね!!」
「な ん も わ か っ て ね ぇ ん だ よ ! !」




私のマスターは忙しい。
学校の後はバイトに行く。土日とかの休みの日も稼ぎ時だと言って一日中働きに行くこともよくある。

でも、今日は違う。

「わざわざついてこなくてもいいんだぞ。退屈なだけだし。」
「そんなことないさ。私もキッチリおばさんに挨拶しておかないとね。」

今日は特別な日。
朝食を済ませると準備をし、どこかへと出かける。
私とマスターが向かうのはこの町でも一際大きな病院。
別にマスターが病を抱えてるわけじゃない。
病院に入り、やたらと入り組んだ通路を歩いてエレベーターを上る。
ある病室に入ると、そこにおばさんはいた。

「母さん、起きてる?」
「ああ、友作。それにキルケーちゃんも。」

何故病院に来たのか。
それはマスターの母のお見舞いだ。
マスターはたまにこうしてバイトを休み、定期的に母に会いに来る。
そしてサーヴァントである私の事だが、留学生でマスターの家にホームステイさせてもらっているという設定で通している。

「調子はどう?」
「だいぶ良くなってるってお医者さんも言ってたわ。退院できる日もきっと来るって。」
「…そっか。」
「友作はどうなの?学校は楽しい?」
「楽しいよ。」
「そう言ってまたバイト漬けの日々とか送ってない?ちゃんと高校生らしい生活をするのよ。お母さん、夜遅くまで遊んでましたっていうことよりそっちの方が怒るからね!」

それから友達はいるのか、勉強は上手く言ってるのか、悪いことはしてないか、喧嘩したりしてないか、また無茶してないかとマスターの母はあれこれ根掘り葉掘り聞いてくる。

きっと、マスターの事が心配で仕方がないんだろう。

「キルケーちゃんどう?友作、嘘ついてないかしら。」
「大丈夫だよお母様。私の目から見ても、ちゃんとした学生生活を送ってるよ。」
「ああ…なら良かったわ。」

母親は無理をしすぎて過労で入院したとマスターから聞いた。
幼い頃に父親は離婚し、女手一つでマスターを育てた友作。
彼に苦しい思いはさせたくない。不自由ない生活を送って欲しい。
そうして息子のために無理して朝も夜も働いた結果がこれだ。
一応、マスターとの約束で母親にはバイトばかりしている事は黙っているようにと言われている。
とはいっても、マスターは本当に充実した学生生活を送れてるみたいだし今言ったことに対して嘘は言ってないからこれはこれでいいだろう。

「キルケーちゃん、これからもよろしくね。うちの息子は隙あらばすぐ無茶するから。」
「うん、分かったよ。」

うん。そうやってあれやこれや無茶するのは、親に似てしまったわけだけどね。



結局、マスターの母とだいぶ話し込んでしまい気付けばお昼を過ぎていた。
母は定期検診の為医者に連れられどこかへ。
ということで私達も帰ることにした。

「…キルケー。」
「うん?」
「どうだ?」

病院を出て、少し歩くとマスターが私に尋ねる。
勿論、あの事だろう。

「大丈夫。退院の可能性があるとは言ってたけど、そうはさせないさ。魔術で誤魔化したから問題ないよ。」
「そうか。いつもありがとな。」

母親が入院している。
なら、薬学に精通している大魔女の私ならすぐに退院させてあげられるよ。
過去に、そう言ったことがある。
しかしマスターからの返事はNO。
だけど私に真逆のおねがいをしてきた。

「とんだ親不孝者だろうな。こうしてサーヴァントに頼んで、母親の具合を悪いように魔術で誤魔化してくれって言う息子は。」

具合を悪いように見せかけるため、魔術をもって医療機器に細工し、母親の入院期間を延ばすように頼んできたんだ。

「でもそれは、マスターの親への愛情ゆえだろう。」
「…どうだか。」

マスターの母親は、よく無茶をする人だとマスターから聞いている。
もしここで全快して退院し、マスターの現状を知ったらどうなるだろうか。
学校にはキチンと行ってるものの、帰れば夜遅くまで働き詰めの毎日。
休日なんか一日中だ。
友達はいるが一般的な高校生ほど彼は遊んじゃいない。
それを今母親が退院して目の当たりにすればさっきも言った通り怒るだろう。
そうして母親はマスターにちゃんとした学生生活を送って貰うため、また無茶をする。
マスターは、母親には休んでもらいたいんだ。
あれだけ苦労したのだから、今だけは…せめて自分が高校を出るまではゆっくりしていて欲しい。
そう思い、彼は私に頼んだ。

「1人であんまり抱え込むなよ。その為の私じゃないか。な、"友作"。」
「…外ではマスターって呼べって言ったろ。」

時々マスターは、弱さを見せる時がある。
いつも普段は気丈に振舞ってるが、やはり彼は人間なんだ。
誰とでも話せて、なんでも出来る。
けど完璧なんかじゃない。完璧な人間なんていない。
弱さを見せたっていい。私はその、弱さが好きなんだ。
私はその弱さごとマスターを優しさで包み込んであげよう。

「にしても昼か…。はどうする?」
「どこか食べ行こっか。」
「だな。ついでに夕飯の買い出しも。」
「だね!今日こそはキミの舌を唸らせる最高のキュケオ」
「それはもういい!!!!」




狩井 暮馬のサーヴァント、巴御前の場合

「巴ちゃん、本当にありがとうね。」
「いえ、居候させてもらっている以上、せめてこれくらいは手伝わねばと…。」

母さんと妹の紗良、そして巴さんが買い物から帰ってきた。
巴さんは両肩にいくつもの米袋をかつぎ、涼しそうな顔で歩いている。
サーヴァントだからというものもあるけど、伝承によれば巴さんは相当力持ちだったそうだ。
FGOでもその馬鹿力は遺憾なく発揮されてるしね。

「おかえり巴さん。」
「ええ、ただいま帰りました。」

玄関に大量の米袋を下ろし、巴さんは息ひとつあげることなく笑顔だ。

「いやー巴さんほんと頼りになるわ。非力なお兄とは大違いでさ。」
「うっせーな。俺は俺でちゃんと得意分野があるからいいんだよ。」

妹の紗良はこうしていつも俺をおちょくる。
巴さんの前では出来ればかっこいいとこ見せたいが、こいつのせいでなんかもううまくいかないんだよな。

「そうだ巴さん。明日ショッピング行かない?」
「しょっぴんぐ…ですか?」
「うん。巴さん現代のファッションに疎いでしょ?それにいつまでも部屋着がお兄のクソだっさいジャージってのも嫌だと思ってさ。ね?色々買いに行こうよ!」

だっさいってなんだだっさいって。
にしてもこうして巴さんが家に来てから、紗良ははしゃぎっぱなしだ。
なんて言うんだろうな。お姉ちゃんが出来たみたいな感じというか、まぁでも巴さんさんもこうして家族に溶け込めて安心した。

「というわけで母さん!お金貸して!」
「しょうがないわね。巴ちゃんの為だし今回は特別に貸してあげるわ。」
「ありがと!高校入ったらめっちゃバイトして全部返すからさ!!」

そういい、紗良は巴さんをひっぱり自分の部屋へと言ってしまった。
多分部屋にあるおびただしい数のファッションカタログを見せるんだろう。

「はぁ。」

半ば呆れながら、俺も部屋に戻ることにする。
ゲームでもやるか、と思ってたら

「で、どうなのよ?」
「わぁ!?」

母さんが耳打ちしてきた。

「ど、どうって何が!?」
「巴ちゃんと、上手くいってるの?」
「上手くって別に…どうだっていいだろ。」

実は俺の家族、何を勘違いしているのか巴さんと俺をくっつけようとしている。
確かに巴さんは好きだが、正体はサーヴァント。
彼女なんかになれるわけないしそもそも俺みたいな軟弱男、巴さんのタイプではないだろう。
てかその前に巴さんには義仲様いるし。

「にしてもホントにびっくりしたのよ。まさかアンタが女の子連れてくるなんてね。」
「別にいいだろ。困ってたから助けてあげただけだし…。」
「そう、実はお母さんも都会に出て困ってたところをお父さんに助けられてね。」
「その昔話はもう聞いたって。」

もう何十回と聞いた話をテキトーに聞き流し、俺は自室に戻る。
紗良の部屋からは「巴さん、これとかめっちゃ似合うと思うの!」とか「これ良くない!?あ、これ私も買っちゃおうかな!お揃いにしない!?」とかテンション上がりっぱなしの声が聞こえる。
時々「なるほど…」とか「奥深いのですね。現代のふぁっしょんというのは…」という巴さんの感心した声が聞こえた。



「なぁ、どうなんだ?」
「何が!?」

夕飯の後、ボーッとテレビを見ていたらいきなり父さんが隣に座り込んで何か聞いてくる。

「何がって、巴ちゃんに決まってるだろ。」
「あのさ、父さんも母さんも気にすることじゃないだろ!」

巴さんが家に来てからいつもこうだ。
進展を気にしまくる両親。
だからそういう関係じゃないって何度も説明するが両親は全く聞いてくれない。

「お父さん、応援してるからな。何か助けが欲しかったら言ってくれ。」
「いらねぇから!!」

どこにいても母さん、もしくは父さんがどうなのかと聞いてくる。
もうたまったものじゃない。

「おいどこ行くんだ?」
「風呂!もう入って寝る!」
「え、おいちょっと待て暮馬!」

呼び止めようとする父さんだが無視。
口を開けば巴さんとはどうだとか巴さんとはどこまでいったんだとか巴さんの事ばっかりだ。
もう嫌だ。こういうイライラは風呂に入って汗と一緒に流してサッパリしてしまおう

脱衣カゴに服を投げ入れ、何も隠さぬ生まれたままの姿で風呂の扉を開けたわけだが…。

「…。」
「…。」

先客がいた。
母さん?違う。勿論紗良でもない。

「あ、あ、あの…」
「暮馬…さん?」

巴さんだった。

「あああああの、あのホントゴメン!!」

慌てて閉める。
なんだ…脱衣カゴをよく見れば巴さんの服があるじゃないか…。
それにどうして電気ついてるの疑わなかったんだ。
もっとよく周りを見ろって昔から怒られてるだろ俺…。
それにあれだ。父さんが呼び止めたのは進展の話じゃなく、ただ単に今巴さんがお風呂に入ってるから止めようとしただけだったんだ。
人の話をあまり聞かないのはお前の悪いクセだぞって、それも昔から怒られてたっけ…。


「…やっべぇ…どうしよ…。」

それから慌てて服を着直し、逃げるように自室へと飛び込む。
なんだこれ…なんだよこれ…俺何ラブコメ主人公みたいなえっちなトラブル起こしちゃってんの…?

「見ちゃったな…。」

湯気で視界は悪かったけど、その時見た光景は脳裏にしっかりと焼き付いて離れなかった。
シャワーを浴びていた巴さん。すべすべとしていて、シミ一つない綺麗な肌。
色気のある背中に丸みのあるお尻、それに…。

「ピンクのやつ…見えちゃった、よな…。」

横からちらりと見えた胸のてっぺん…
ああだめだ…忘れられない。
必死に忘れようとしても脳がそうさせてくれない。

ここはその…もう…あえて一回抜くしか

「暮馬さん…?」
「うわあああああああああ!!!!!!」

箱ティッシュに手を伸ばそうとしたその瞬間、ドアが開き巴さんがお邪魔してきた。

「と、と…巴さん!?」
「その…よろしいでしょうか?」

そう言い、お風呂上がりの巴さんは俺の部屋に入ってくる。

「え、え、あの…さっきはホントにごめん!!」
「いえ…巴は気にしておりませんので…。」

俺の前に正座する巴さん。
風呂上がり後特有の上気した肌が、なんとも色っぽく見えた。
ともかく、今の俺には毒過ぎる。

「その…暮馬さん。」
「あ、はい…。」
「その…お願いがあるのです。」
「お願い?」

突然部屋に押しかけ、何をするのかと思えばお願いを聞いて欲しいとのこと。
裸見ちゃったんだ。なんだって聞いてあげなきゃ償いにはならない。

「うん、俺に出来ることなら…なんでも。」
「ええ…それでは遠慮なく…。」
「最初から遠慮しなくていいよ。なんだって言って。」

ドンと胸を張るが、巴さんの顔は見ることは出来ない。
あんなことがあったんだ。
正面から堂々と目と目を合わせられるもんかよ。

「その…したいのです。」
「え、し、シたい!?」
「…はい。お恥ずかしながら…巴は、したいのです。」

シたいとは…何を?
いいやここで聞いてはならない。
男というのは女の気持ちを言わずともくみとってあげるものだ。
うん。わかった。
裸を見た責任だからきっとそうだ…。

「今まで我慢に我慢を重ねて来ましたがもう限界で…それに、暮馬さんは大変詳しい方だと妹様からお聞きしました。」
「うん。分かったよ巴さん。俺もまだしたことないけど…よろしくお願いします…。」

心臓が高鳴る。
まさかこんなところで、しかもこんな人と初めてを経験することになろうとは少し前の俺なら夢にも思わなかっただろう。
しかし、俺は巴さんを満足させてあげられるだろうか?
え、あと俺詳しいの?そういうの知らないんだけど?
あれか、紗良がなんか吹き込んだのか?
いや、そんなことは後で考えろ!今は当たって砕けろだ!!



「やはりれとろなものでも最新機器でも"げえむ"はとても楽しいものですね!!」
「あ、うん…。」

簡潔に言おう。
俺の勘違いだった。
俺とシたいのはえっちなことではない。ゲームだ。

どういうわけか知らないがサーヴァントの巴御前はゲームが好きだ。
そんな設定忘れてたよ俺。
で、今までみんなの前ではおしとやかな振る舞いとかして我慢しながらやってきたけど、俺がゲーマーなのを知ってからいてもたっても居られなかったそうだ。
にしても

「強い…。」
「どうです暮馬さん!巴七連勝です!」

なんのゲームにしても巴さんに圧倒的差をつけられ負ける。
レースだろうが格ゲーだろうが落ち物パズルだろうが全部そうだ。
強過ぎる。

「ふふふ…明日は休みです。さぁ暮馬さん!巴はまだまだいけますよ!」

正直まぁ、魔力供給だとかそんなんじゃなくてちょっとガッカリしたなぁよりも安心したりしてる。
だって俺自信ないし。
それに、
こんなに楽しそうな笑顔が見れたんだ。それでヨシってことでいいじゃないか。





????のサーヴァント、■■■■■■の場合。

せっかくのお休み、だけどマスターは忙しいからって言ってどこかに行っちゃった。
お金ならいくらでもありますからねと言ってお札を沢山渡されたけど、1人だと町のお散歩も楽しくないしなぁ。
退屈だし洋服屋にでも行こっか。
またあの子に会えるかもしれないし。

「…!」

なーんて思っていたら、いた。
洋服屋で会ったあの子が。

不安げな表情で、辺りをキョロキョロ見回しながら不審者めいた動きでその子は大きめの文房具屋から出てきたところだった。
噂をすれば何とやら!
ここで会ったが100年目!早速声をかけてみよう!

「やっほー。」
「!!!!????」

ベンチから立ち上がり、彼の元まで駆け寄って肩に手を置くと、びくりとして驚いた様子で振り返ってきた。
ボクの顔を見て、彼は「誰?」とでも言いたそうな顔だ。
あんなに運命的な出会いしたのにね。どうやらボクのこと、覚えてないみたいだ。

「ほら、ボクだよ!あの時洋服屋さんで会ったでしょ?」
「あの…時の?」
「そう!」

少し考え、「あっ、」という声を上げた。
彼は思い出してくれたみたいだ。

「股間触った人…。」
「ねぇキミ!その覚え方は変じゃない!?」

変な覚えられ方をされてた。
触ったことは確かだけどキミもボクの触ったしそれはお互い様だ。

「ここで会ったのも何かの縁だよ。ねぇキミ、名前は?ちなみにボクは…えーとね、アーちゃん!アーくんでもいいよ!」
「それってニックネームとかじゃ…」
「いいのいいの!細かい事は気にしなーい。」

ここで本名知られちゃったら怪しまれちゃうしね。
まぁそれはそれでと言うことで、彼の名前には純粋に興味があるから聞きたいんだ。

「か、葛城…。」
「それは苗字でしょ?」
「…舞。」

彼の苗字は以前"会長"から聞いてたよ。
でも一瞬自分の耳を疑っちゃった。

「え、舞?舞って言うの!?すごーい!かわいい名前!ホントに女の子みたいだ!」
「そ、そうです…。」
「敬語なんて必要ないよ!ほら!ボクとキミの仲じゃないか!」

恥ずかしそうに自分の名前を言った彼。
傍から見れば完全に女の子だ。

「そこまで仲良くなった覚え…ないんですけど。」
「別にいいだろ舞くん!じゃあこれからどんどん仲良くなろう!なんかボク達、すっごく仲良くなれると思うんだよね!うん!」

ずいずいと近寄れば怯えた様子でその分舞くんは離れていく。
つれないなぁ…。
彼は彼で話さないし、このままじゃ一向に距離は縮まらない。
何か仲良くなれそうな話のネタはないかな?
あっ、これだ。

「舞くん何買ったの?」
「えっ、あ、見、見ないでください!!」

手に持ったその買い物袋。
文房具屋から出てきたから買ったものはある程度わかるけれど、何を買ったのか話のネタにすることにした。

「…ペン?」
「そう…ですけど。」

見ようと思ったら隠されてしまった。
チラッとは見えたけど、なんかペンとかそういうやつ。
色んな色のマジックみたいなのとかいっぱい種類があったけど、もしかして舞くん

「絵、描くんだ?」
「…!」

特に驚くようなこともしていないのに、びくっと怯える舞くん。

「舞くん、絵描くの好きなの?」
「す、好きというか…好きだったというか…その…また、絵を描こうかなって。」

そのとき舞くんが漏らした好き"だった"。"また"絵を描こうかなというワード。
それが妙に、ボクの中に残った。

「だった?じゃあ今は描いてないの?」
「な、なんでもないです!!」

絡むボクをやや乱暴に突き飛ばし、舞くんは逃げてしまった。

あれ…?
もしかしてボク、聞いちゃいけないこと聞いちゃった。

「…仲良くしたいのはホントの気持ちなんだけどなぁ。」

逃げていく舞くんの背中を見ながら、ボクはそう呟く。
うん。"会長"の命令に従ってボクは時々フォーリナーのマスターを監視してくれと頼まれてる。
セイバーやルーラー、バーサーカーとかと違ってボクは弱いし、それくらいしか出来ることないから。
だから仲良くしておけばあれこれやりやすいけど、それは命令のためじゃなく本当に仲良くしたいから。
絶対仲良くなれると思うんだよね、ボクと舞くん。共通点多そうだし。

でも、気になるなぁ。
絵を描いてたって言ったってことは、今は描いてないってことでしょ?
なんでやめたんだろう。好きなら続ければいいのに。
それに、本気で怯えてた表情してたけど…あれはもしかして絵に関して心の底から何か嫌なことでもあったのかもしれない。

とはいっても、いくら考えたところで基本的にはボクの憶測だ。
彼とはいっぱい話がしたい。
それに、きっとまた会えるだろう。


 
 

 
後書き
最後に舞くんに話しかけた謎の男の娘、一体何トルフォなんだ…。
それはさておき、前回から舞くん関係の気になるワードがちらほら出てきたと思います。
何故か神父が知っていた舞くんのお兄さん。
そして舞くんの絵に関すること。
次からは彼の過去の話を掘り下げていこうかと思います。
それではまた次回で。 
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