Fate/imMoral foreignerS
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始まりから夏休みまで
逆鱗に触れる話
前書き
どうも、クソ作者です。
お久しぶりです。他の作品に集中していたため長らくこちらに手をつけておりませんでした。
次はきっと…ちゃんとこちらもお話を更新しますのでどうか見捨てないでもらえると助かります。
それでは本編、どうぞ!
月曜日…。
金曜日はちょっとした都合で休み、土日は休日を満喫し、今日僕は3日ぶりに学校へ行くことになる。
なるのだけれど
「ナァ、学校ってのはどうしても行かなきゃならねぇのかい?」
「ダメなんだよ。じゃないと卒業できないし!」
「卒業ってなんだ、嫌なら辞めりゃいいだろ。」
学校へ行こうとする僕、そうはさせないお栄ちゃん。
行く者と阻む者、その2人の争いが朝早くから繰り広げられていた。
とはいっても、行こうとする僕の服を引っ張って行かせまいとするだけだけど。
「マイ、せっくすしよう。乳首責めとか前立腺責めとかマイの好きなことなんでもしてやる。」
「しないよ!それにどっちも好きじゃないし!」
「やろう、マイ、やろう。ナ?」
わざわざ着物に着替え、肩まで下ろして僕を誘惑してこようとするお栄ちゃん。
そんな単純な色仕掛けなんかには引っ掛からないぞ!
「ほら、ずぼんが出っ張ってちんちんが苦しそうだ。ここは一回…いや五回は抜いていった方が身のためサ。」
ひ…引っ掛からないぞ!
「やだよ…!僕は学校に行くんだ…!!」
「学校ってなんだ?何時頃帰ってくるんだ?昼餉には帰るのかい?それとも半刻かい?」
「夕方まで帰らないよ…!」
「そんなに長く…待てってのかい…!?」
絶望。
その二文字を表したかのような表情をするお栄ちゃん。
なんで半日セックスしないだけでそんな顔するのさ…。
「…しょうがない。」
「お!ついに折れてくれたナ!」
「違うよ。」
うん、しょうがない。
確かに何もしないまま待つのは苦痛だろう。
あの部屋を…解放しよう。
「なんだ…せっくすしないのかい…。」
がっかりして肩を落としたお栄ちゃんをよそに、僕は小物入れからあるものを取り出す。
「そいつは?」
「鍵。ここのだよ。」
そう言い、僕はとある部屋の鍵を開けた。
「確かにそこ、一体何なのか気にはなっていたナ。なんの部屋だい?」
「うーん…作業場…かな?」
「せっくすの?」
「違うよ!だからなんなのささっきからセックスセックスセックスセックスって!!」
やや乱暴にドアを開ける。
多少ホコリを被ってはいるが、換気して軽く掃除すればなんとかなりそうだ。
「ここは…。」
「どうかな?お栄ちゃんなら、描かずにはいられないんじゃない?」
少し狭い部屋。
机の上には所狭しと絵を描くための道具が揃えられており、様々なペンも置かれている。
全て新品同様だ。
そう、ここは絵を描くための作業部屋。
絵を描くのに必要な道具、便利な道具は全て揃っている。
「こ…こいつはすげぇ!好きに使っていいのかい!?」
ほら、絵描きの血が騒いでしょうがないみたいだ。
「うん、いいよ。なんでも使ってね。」
「ははっ、マイとせっくすもいいがちょうど絵が描きたくてうずうずしてた頃サ!」
と、色んなペンを持って物珍しそうに見たり
「こいつは…!?」
「液晶タブレット。これだけで色んな絵が描けるんだ。」
「なるほど!"でじたる"ってやつだナ!いやぁ時代の進歩ってのはすげぇ!まさか板切れ一枚で絵が描ける日が来るなんてナァ!」
今度教えてあげるね、と言うとお栄ちゃんはとても嬉しそうだった。
しかしやはりというか昔からそうしてきたというか、お栄ちゃんはひとまずアナログで描いてみる事にしたのだった。
「しっかしこれだけ絵描きの道具があるとは驚きサ。マイ、お前さんどうしてこんなに買い揃え…」
振り向くお栄ちゃん。
けど僕はもういない。
隙を見て家からそそくさと出ていき、遅くなってしまったため小走りで学校へと向かったから。
「…。」
手に取った鉛筆を見、窓を見る。
「こいつァ…何かあるナ…。」
使われた形跡のない新品の鉛筆を見て、お栄ちゃんはただそう呟いた。
⚫
それから、
ギリギリ間に合った僕は急いで教室へと向かい、無事朝のホームルームまでには着席できた。
そしてその後、授業開始前のちょっとした合間、
「よう葛城!お前FGOのデータきえたんだってなぁ!」
ドンと背中を叩き、不謹慎な事を言いながら陽気に挨拶してきたのは僕の数少ない友達の一人、タクヤくんだ。
一度手に入れたサーヴァントは宝具レベル5にしないと気が済まない。いわゆる廃課金ユーザーだ。
でもカーミラさんが1番好きなんだって。
「タクヤくん…あまりそういう事は言わない方が…。」
続いてやって来たのが友達その2。平野くん。
彼もFGOユーザーで茨木童子が大好きな人。
顔は整っていていわゆるイケメンの部類に入るものの、三次元には興味が無くこうして日々茨木童子を愛でている。
「おはよ。タクヤくん。平野くん。」
「お前…妙に清々しいな。」
「まさかデータが消えておかしくなりました?」
確かにデータが消えたのは悲しい。
でも、それよりも嬉しいことがあったんだから元気にはなっちゃうさ。
「ううん…なんでもないよ。」
「笑うなよなんかこえーよ。」
「金曜日休みましたし…余程ショックだと思ったのですがそうでもない…のですかね?」
多分顔が無意識のうちに笑ってるんだろう。
そんな僕を不思議そうに覗く2人。
「にしてももうすぐ夏イベだな!」
「だね。今年は誰が来るかな?」
と、タクヤくんが話題を変えてくる。
月日は今6月が始まったばかり。
これから7月と来て8月には待望の夏イベが待っているんだ。
「お栄ちゃん、来るかな?」
「いやいくらなんでも早すぎでしょう?私は今年茨木ちゃん来ると信じてますからね!」
「いいや!カーミラさんだね!カーミラさんの水着に平野の魂を賭ける!」
とまぁ、陰キャ特有のゲーム話をして楽しく過ごす。
傍から見れば暗い連中かもしれないけど、僕はこれで充分楽しい。
目立つ必要なんかない。ただなんの障害も不幸もなく隅っこでひっそりと暮らせていればそれでいいんだ。
そう、
なんにもなければ
「おっ!相変わらずキモオタゲーの話してるね!それしかないの君達。」
そんな平和な空気をいつも壊しに来る奴がいる。
「わざわざ他クラスから起こしいただいてご苦労様ですねぇ!」
多数の取り巻きを引き連れた、この学年のリーダー的存在。
「皮肉か?まずは桐生に挨拶しろよ、キモオタ平野。」
「は、はいぃ!!」
桐生浩二。
母親が政治家であり、いわゆるエリート。
性格に難アリで、取り巻きを引き連れこういった僕らのような弱者をいじめるのが日課だ。
勇敢にも皮肉混じりに啖呵をきった平野くんだけど取り巻きの一際筋肉のついたチャラ男にビビりすぐに引いてしまう。
そしてタクヤくんは
「な、なんだよお前ら…もう金なら持ってねぇぞ!」
完全に怯えていた。
「…。」
「おーい。キモヤシ君♪挨拶は?」
「…。」
そして僕もまた、反抗したらいじめられるのが怖いので
「おはよう…ございます…。」
従うしかない。
「いいねいいね。キモヤシ君はちゃんと身分を弁えてるね。」
「ぎゃははは!マジウケる!てかキモすぎなんですけどぉ!」
頭を下げ、取り巻きたちの笑い声がこだまする。
耐えろ。これを耐えれば平和に過ごせるんだ…!
もし嫌だなんて言ったら…もしは向かおうものなら…この学校にはいられなくなってしまう。
「ねぇキモヤシ君。ちょっとお話したいんだけどいいかなぁ?」
「え…?」
桐生が僕に詰め寄る。
キモヤシというのは僕のあだなだ。
もやしみたいに細くて長い身体で、気持ち悪いから合わせてキモヤシ。
彼らはそれで面白がっているが、なんも面白くない。
でも、一緒になって笑わなきゃひどい仕打ちが待っている。
そして、
「先週の金曜日のことなんだけどさぁ…。」
「おい、寄ってたかって何してんだ?」
低い声が響く。
その方向を見てみれば僕の友達、友作くんがいた。
「ちっ…なんだよ。僕はただコイツらと仲良く話してただけだけど?」
「そうか?こいつらは怯えっぱなしで楽しそうには見えなかったけどな?」
自分の机に鞄を置き、友作くんは桐生に近付く。
力仕事メインのバイトをしている彼はそこそこ筋肉がついており、顔も相まってそこそこの怖さがあった。
「小物だな。だからあの人と比べられんだよ。"田所くん"。」
「ッ…!!」
なんて言ったかは良く聞こえなかったけど、友作くんがそう言うと桐生は舌打ちし、取り巻きを引き連れ教室から出ていった。
そして去り際に
「キモヤシくーん。」
「…!」
「放課後、体育館裏に1人で来てくださーい。」
妙に間伸びした声で、まるで放送アナウンスのように桐生は言った。
「1人で来いよ。もしそこの奴連れてきたりすっぽかしたりしたらどうなるか…わかってるよね?」
最後に笑顔を向け、桐生は帰る。
緊迫していた空気がほぐれ、今まで黙っていた生徒達も再び談笑をする。
「葛城…あいつの言うことは別に聞かなくても…」
「ううん…ちゃんと行くよ。」
「はぁ!?」
体育館裏に来い。そう言われた。
おそらくその約束を破ろうものなら明日の僕はとても酷い目にあうだろう。
だから、行く。
被害はあるのは分かる。だからそれを最小限にするため行かなきゃ行けないんだ。
⚫
それから、
授業をこなし、昼休みも他愛ない会話で過ごし、時間はあっという間に過ぎていった。
そして放課後。
「…来たよ。」
友作くんや2人の反対を押し切り、僕はこうして体育館裏にやって来た。
体育館裏に呼び出される。
こんなのいじめのお約束だ。
「へーよく来たね。えらいよキモヤシ君。」
「マジで来るとかキモっ!」
取り巻きの女子が手を叩きながら笑う。
何がキモイんだろう…。
「さて…実は君に質問したいことがあってね?」
気がつけば僕の周りには取り巻き達が。
つまり、もうここからは逃げることはできなくなった。
「金曜日…どうして休んだのかな?」
「金曜…。」
3日前…それは一日中お栄ちゃんと交わってたあの日。
でも、正直には言えないから誤魔化そう。
「その…実は前の日から熱っぽく」
「嘘ついてんじゃねーよ。」
言葉が遮られ、背中に衝撃を受けて倒れ込む。
真後ろにいた取り巻きが僕の背中を蹴り飛ばしたんだ。
「な、なんで…僕嘘なんか…!」
「僕はね、なーんでもお見通しだよ?キモヤシの分際で一丁前に彼女なんか連れちゃってさぁ!」
「…!!」
桐生が取り巻きの1人を顎で指示する。
すると取り巻きはスマホを取り出し、ある動画を僕に見せた。
それは…
「これって…!」
「僕の友達が偶然見つけちゃったんだよねー。土曜日のだけどさ、金曜日も大方彼女といちゃついてたんだろ?」
スマホに映っているのは、喫茶店で仲良く話し合っている僕とお栄ちゃん。
ということはあの時…誰かに見られてたんだ。
「キモヤシが彼女!?チョーキモいんですけど!!」
「釣り合わねぇよなぁ?どうしててめぇみたいなオタクが彼女いて俺には出来ねぇの?おい。」
取り巻き達が次々と野次を飛ばす。
そして桐生は
「チャンス…あげるよ。」
「チャンス…?」
ずいと顔を近づけ、僕に飛び切りの笑顔を見せる。
「その彼女…僕にくれよ。」
「…!!」
「僕にくれさえしたら、もう僕は君を相手にはしない。その辺の石ころ程度くらいには思っとくよ。」
つまり、お栄ちゃんを桐生に差し出せば、桐生はもう
僕を…いじめなくなる。
破格の条件だ。ただそれだけすれば僕は平和な学校生活を送れる。
なんてこともなく、嫌がらせもいじめも無くなり、普通の学生としての生活が出来るようになる。
でも…。
「ごめん…。」
「ん?なに?」
「それは…できません…。」
僕にだって、
こんな僕にだって譲れないものは一つだけある。
「…は?」
「出来ない!!この人は!君なんかに渡せな」
突如、腹部に走る鈍痛。
「が…がほっ…っ…!!」
桐生が僕を蹴飛ばしたんだ。
勢いあまり僕は倒れ、仰向けになる。
「ごめんごめん。聞こえなかったよキモヤシくん。で、彼女を僕にどうするんだっけ?」
「君に…おまえなんかに…お栄ちゃんは…!!」
「ゴタゴタうるせぇんだよクソオタクがよぉ!!」
胸の辺りを思い切り踏みつけられる。
身体の中の空気が無理矢理吐き出され、変な声が出た。
「おい、今の口答えはなんだ?おい、もう1回言ってみろよ?え?」
「おまえに…わたす…もん、か…!」
「ちっ…おい。」
桐生が舌打ちし、取り巻きに指示を出す。
「死なない程度に殴れ。騒ぎは僕の母さんが揉み消してくれるけど、あまり派手にやるなよ。」
「おう。」
そう言い、桐生は少し離れた場所に座り高みの見物と洒落こんだ。
そして僕は
「オラァ!!」
「っ!」
無防備な脇腹に鉄パイプを叩き込まれる。
踏まれる、蹴られる、叩かれる。
取り巻き十数人の暴力が僕に襲い掛かる。
耐えろ、耐えろ…耐えるんだ…!
いつ終わりが来るか分からない。
でも、こうやって耐え続けていれば必ず終わってくれる。
「な、なぁ桐生…いくらなんでもやりすぎじゃ…。」
「ほら暮馬くん。キミもやりなよ。じゃないと明日から無視するけど。」
「…!!」
取り巻きの1人がおどおどしながら暴力を振るうことを戸惑っている。
でも、彼以外の全員はこうして遠慮なしに僕を虐げる。
どうして僕はあんなことを言っちゃったんだろう…。
あの時大人しくお栄ちゃんを渡せば…僕はこうなることもなかったのに…。
僕は…どうして…。
「何してんだい?」
その時、聞き覚えのある声が聞こえて暴力がやんだ。
「…!」
「こいつ…動画の!」
身体中が痛い。
目もうまく開けないし、ぼやけて見える。
でも、こちらに向かってやってくる人はしっかり見えた。
「夕刻に帰ってくると言ってたがあんまりにも遅いんで迎えに来たが…マイ。こいつァどういうことだい?」
その手には戦う時に使うあの大筆を握っている。
いや、怒りのあまりギリギリと音がなるほど握っている。
顔は平然としているが、彼女は怒っている。
「んで、テメェらはマイに何してんだ?」
お栄ちゃんは、怒っている。
後書き
⚫登場人物紹介
タクヤくん
舞くんの友達
フルネームは肝亭タクヤ
カーミラさんが好きな廃課金ユーザー
平野くん
舞くんの友達その2
フルネームは平野 源
茨木童子を心から愛してる残念なイケメン
友作くん
フルネームは鉢庭 友作
友達思いでなんでも出来る人。
ちなみに舞くんの初めてのお友達が彼である。
FGOを教えたのも彼。お気に入りはキルケー。
ちなみなんですがにこの物語の時代は2018年となります。
はい、サバフェスがやった年ですね。
というわけで平野くん、やったね。
タクヤくんと舞くんは来年まで…待とうね!
友作くんは…きっと次があるさ!
それでは次回も、お楽しみください!!
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