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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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最終章『ふたりで…』
  Fはやっぱり大団円で/王の野望は終わらない

 
前書き
くぅ〜疲れました!
これにて終了です!
葛城財団は滅び、そして代表の葛城恋もまた死にました!
長く苦しい戦いでしたがそれもここで終わり、ハッピーエンドです!
それでは本編、どうぞ! 

 
「…。」

とっさに伏せていた俺は恐る恐る頭をあげる。
上に既に天井はなく、朝日の差し込んだ空が広がっている。

ったくふざけんなよ。広範囲の必殺技使うならせめて避けろとか事前に言えよ…。

「おっきー?生きてるか?」

さて、仲間の安否も気になるがまず一番心配なのはおっきーだ。
まさか真っ二つになって死んだんじゃねーだろうなと思っていたら、影に潜り込んでいたようす。
俺の影から頭だけをにゅっと覗かせてきた。

「だいじょぶ。生きてる。」

影から出て、俺もまた立ち上がって辺りを見回す。
武蔵と大和の合体技でこの部屋の屋根は消し飛ばされ、辺りには瓦礫とかガラスの破片とかそんなんが広がってる。

そして舞や北斎、葵と紫式部は無事だった。
あと、

「…。」

中央に立つ大和と武蔵。
その2人が見ているものは

「お、俺様の…俺様のサーバントが…。」

あの必殺技で斬られたが無傷の恋。
しかし手持ちの駒は全て失い、最早戦う術を失ったみたいだ。

「…腕を見てみろ。」
「?」

大和が冷たく言う。
恋は言われるがまま袖をめくり、腕を見る。

「…!!」

そこにはなかった。
今まであった令呪がそこには既になかったのだ。

「おい…嘘だ!嘘だろ!?」

慌てて背中も確認するべく、上も脱ぎ出す恋。
ガラスの破片を使ったりして背中を何度も確認しているが、もうそこにも333画の令呪は1画たりとも残ってはいなかった。

「ない!ない!ない!どこにも!俺様の令呪が!!」

おいやめろよズボンまで脱ぐなよ。粗末なもん見せんじゃねーよ。
とまぁ慌てふためきあれだけ身体に刻まれていた令呪を探す恋だがやはりどこにも見つからず、そして大和が現実を突きつける。

「一応説明しておこうか。お前が貰ったその令呪と霊基書換とかいう能力。俺と武蔵が"斬り離した"。」
「…は?」

かたまる恋。
言ったことが受け入れられず、ぽかんとした表情で大和を見上げた。
そして、極限まで精神的に追い詰められた彼がとった手段は

「分かりやすく言ってやろうか?令呪と霊基書換、お前はその能力を2つとも」
「同じことを二度言わなくてもわかんだよ!!この低学歴がぁぁぁぁぁ!!!!!!」

逆ギレだった。

「ふざけんじゃねぇ!!!俺様が何したって言うんだ!!俺様はただ好きに生きて!自分のやりたいことをやっただけだってのに!!そうしてよってたかっていじめて!!なにがっ、楽しいんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「おい…どの口がもの言っ」
「うるせぇだまれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!俺様は可哀想なんだ!!!!そこのクソガイジと違って俺様はなぁ!!エリートなんだよ!!!高学歴で将来も約束されてた!!勉強だって誰よりも何倍も頑張った!!!だったら俺様が何しようがいいだろ!?あぁ!?」

え…何こいつ…怖。
聞いてもねーのに昔話も始めやがったぞ…。

「もういちどやり直して!!ここで王になれるって神父に言われたんだ!!!なのにてめぇらはァ!!」
「うるさいんだよ!!!」

ギャーギャー喚く恋の後頭部に、怒りを募らせた葵の蹴りがヒットする。
思いっきり蹴られた転がっていく恋。
ぎゃああああとまたうるさく騒ぎのたうつのでなんだと思ったら、どうやら床に落ちたガラスの破片で切ったらしい。
顔にはいくつもの小さな傷がついていた。
しかし、

「…?」
「まーちゃん?」

変だ。
顔の傷が…一瞬で治ったぞ

「てめぇら全員ガイジだ!!!クソガイジの低学歴のウンコ野郎だ!!」
「それしか言えねーのかよ。エリート様のくせに悪口の語彙力ねーのな!!」
「あっがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ある疑問を抱え、俺は銃を抜いて恋の足を撃ち抜いた。

「なにしてんの!?」
「いや、変なんだよ。」

ももを抑え、痛い痛いと呻く恋。
だが、既にふらつきながらも立てるようになっている。

「痛いぃ痛いよぉ…!どうして…どうして俺ばっか…!」

そのまま不安定に歩き、どこかへと向かう恋。
撃ったはずの場所は既に血が止まっていた。

「怪我の治りが…早過ぎる。」
「気付いたか、誠。」

怪我の治りが早いことに気が付くと、どうやら大和も何か思うところがあるらしい。

「なんだよ。」
「実はさっき、能力を斬り離すと言ったが勢い余って殺すつもりで斬ってしまった。」
「は?」

まぁ確かに、こいつには並々ならぬ恨みはあるだろう。
勢い余って殺しちゃうのも無理はない。
けどそれがなんだ?

「殺してしまった"手応え"があった。しかしこいつは生きている。サーヴァントでもひとたまりのない本気の一撃を与えてしまったのに、五体満足で生きているんだ。」
「それってどう言う…!」

その時だ。
どこかへ逃げようとしていた恋が立ち止まり、

「ぅ…うぅ…お、ぉぉぉお!?」

ぶるぶると小刻みに震えだす。
様子がおかしい。何か変だ。

「お、おぉえっ!ぎ、ぎぼちわりぃ"…なんだこれぇ…!」

腹を抑え、何度もえづく、
一抹の不安を抱え、自然と銃をかまえる中、

「ごぼぉ!?」

口から、あるものを吐き出した。
高級そうなカーペットにゴトンと落ちる唾液まみれのそれ。
ころころと転がり、それは舞のつま先に当たって止まった。

「…!!」

葛城恋の吐き出したもの、
それは…

「あれって…!」
「まさか聖杯!?」

黄金の盃。Fateシリーズを知ってるなら誰でも聞いたことのある万物の願望器。
そう、"聖杯"だ。
てかどうやって吐き出したそんなもん。

「やっぱり…持ってたんだね。」
「…!」

唾液まみれのそれを拾い上げる舞。
それを見て恋は大慌てで舞の元へ走り寄ってくるが、

「触るなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!それは俺様のも」
「うるせぇ。」

北斎に足をかけられ、また無様に転んでしまった。

「あああああいだい!!!いだいよぉぉぉぉ!!!!」
「大の大人が鼻垂らして泣くか。みっともねぇナ。」

大胆なヘッドスライディングをガラスの破片まみれの床でかましてせいで再び顔中傷だらけに。
しかしさっきと違うところといえば、彼の傷はもう治ってはいなかった。
さて、もうそんなことはどうでもいい。

「お前…それ知ってんのか?」

舞にその聖杯のことを聞く。
やっぱり持っていたんだねという言葉。
それは元からそれの存在を知っていたような口ぶりだ。
知らないなんて言わせない。

「うん。"あの神父"が作り上げた…偽りの聖杯。」
「偽り?ってことは偽物なのか?」
「うん。外見だけ似せた、狂気と魔力を溜め込んである歪な聖杯。これは…あってはいけないものなんだ。」

だから破壊する。
そういい舞は懐から筆を取りだした。
というかなんだ、
あいつも言ってたが"神父"ってなんだ?
ここで王になれるって神父に言われた。
神父が作り上げた偽りの聖杯。

そいつは…誰なんだ?

「…!」

と、舞に聞こうとした時チーンというエレベーターの到着音が響く。
全員がそちらに向く。
ゆっくりと開かれるエレベーターのドア、
中から出てきたのは…

「わ…わが、おう…おたすけに、あがりまじ…だぁ”」
「こいつ…!?」

傍から見れば知らないおじいさんが助けに来たと思うだろう。
そう…変わり果てた姿の正義だ。
あの状態で這ってでもここまで来たんだろう。
その忠誠心だけは褒めてやるぜ。

「な、なんだこのクソジジイ!!」
「わがおう…わたし、ぼく、おれです。よはまさよし…きしにしておうの、えいゆうのきゅうせいしゅです…。」

と、様々なサーヴァントを取り込んだ副作用で一人称はバラバラ、騎士とか王とか完全に自分が分からなくなっていた。

「れん…さま…れいじゅを…れいじゅさえあれば、また、たたかえ」
「うるせぇ寄るなァ!キモイんだよ!!」

自分に擦り寄ろうとする正義を突き飛ばす。
その際ゴキリと言う音とともに正義の足が明らかにやばげな方向へと曲がるが、そんなことも気にせず本人はまた恋へと近付く。

「良かったじゃねーの。令呪と霊基書換を失ってもまだ繋がりのあるサーヴァントがいたじゃねーか。」
「うるせぇぇぇぇ!!!!見てねぇでたすけろ!!何とかしろ!!俺様が困ってんだぞぉぉ!!!!」

敵に助けを求める辺り自分がどういう立場が分かってないみたいだ。
でも、そこまで言われたらしょーがねーな。

「…?誠、何をするつもりだ?」
「ああ、何とかしてやんだよ。」

ポケットからある弾丸を取り出し、EDカノンへと装填。
ゆっくりと銃をあげ、狙いを定めると俺は

「…。」

迷うことなく引き金を引き、正義を撃った。

「…っ!!」

頭を撃ち抜かれた正義は、恋の目の前でばたりと倒れた。

「ぶ、ぶっ、ふふふふふ…!」

動かなくなった正義。
それを見て恋は次第に笑いをこらえきれなくなり

「ぶはっ!ぶっはははははははは!!!!良くやったなテメェ!!この鬱陶しいジジイを殺した礼に褒めてやるよ!!折角だ!褒美としててめぇのサーバントも俺様がもらってやるからよ!!」
「何言ってんだお前。」

褒美としてサーヴァントをもらってやる?
どこから目線で言ってんだこいつは。
それに俺は、正義にトドメを刺したわけじゃない。
そもそも今撃った弾丸は、殺すためのもんじゃない。

「俺、そいつ殺してねーよ。」
「は?」

そうして俺は、さっきEDカノンに装填した弾丸を見せた。

「これ、なーんだ。」
「…!!」
「見た事ねーなんて言わせねーよ。これはお前んとこで作られた奴だもんな。」

特殊な弾丸。
俺はそれを正義に撃ち込んだ。
たっぷりの怨みと、お前の慌てふためく面白いところが見たいだけの為にな!!

「まさか…まさか…!!」
「擬似サーヴァントなんだろ?だったら霊基もあるよな?じゃあこいつにこの"洗脳弾"撃ち込んだら、どうなるんだろうなぁ?」

見なくてもわかる。俺今絶対ゲスな顔してる。
そしてゆらり、と倒れた正義がゆっくりと立ち上がる。
後ずさる恋。覚束無い足取りで接近する正義。
俺の予想通り、擬似サーヴァントとなった正義は、

「ああ…わがおうれんさま…なんとおうつくしい…」
「…!」
「どうかそのたくましきもので…ぼくをつらぬいていただけないでしょうか…?」

見事洗脳弾の効果にはまった。

「ああああ!!!れんさま!!!れんさま!!!!」
「やめろ!!!!やめろ!!俺様は男に興味はねぇんだよぉぉ!!!!」

正義が恋のズボンを脱がしにかかる。
おろされかけたズボンを必死に上げ、なんとか正義を引き剥がそうとする恋。
しかし肉体はこうなってもやはり擬似サーヴァント。非力な恋では到底叶わなかった。

「やめろ!!!キモイんだよ!!!死ね!死ね!令呪を以て命ずる!!死ねぇ!!」

令呪はもうない。だから命令は聞けない。
しかし能力は失われたものの洗脳弾の効果はキチンと残っていた。
まぁ助かったわ。

「おいてめぇらクソガイジ共ォ!!!見てねぇでたすけろ!!!」
「やだよ。」
「うああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

下がれば詰め寄られ、恋はどんどん追い込まれる。
ほら、最後に残った大事なサーヴァントだぞ?
もっと優しくしてやりゃいいのに。

「洗脳弾で多くの人が不幸になった。だからてめぇも不幸になって滅びやがれ。自分自身が作ったそのクソみてーな弾丸でよ!!」
「ふざけんな!!俺様は!!俺様はお」

その時だ。

部屋のはじまで追い詰められた恋。
脱がされかけのズボンに足を取られ、彼は思い切り転んでしまう。
壁は、ない。大和が壊したからな。
彼の後ろには、青空が広がっているだけだ。

「なっ…!」

足を滑らせ恋は、そのままビルの最上階から投げ出される

助かる術?ない。着地を任せてくれるサーヴァントもいない。
いるとしても、それはもう何の役にも立たない元主人公。
つまりこいつはもう

「いやだ…こんな最後…いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ずっと下の地面に、その身体を叩きつけられる未来しかない。

「れ、れんさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

更に正義も後を追うため、そのまま落ちていく。
とまぁ、なんとも間抜けな死に様だ。

「…。」

下は、見ないことにする。
少なくとも40階はあるビルだ。
そこから落とされた者がそりゃあグロテスクな姿になるのは嫌でもわかる。
だからやめておく。
けど、

「へっ!魔術王の名前名乗るんならな!魔神柱から出直して何百回も折られてから来いってんだ!バーカ!!」

聞こえていないだろうが、中指を立ててそう言っておいた。


「終わったんだな…。」

やがて少しの沈黙が流れて、大和がそう呟いた。

「ああ、やったんだ。あたし達。」
「諸悪の根源は倒せた。これで…全部終わったんだよな。」

隣を見ればおっきー。
うんと頷き、俺の手をとった。

「じゃあ、帰ろっか。」
「だな。」

やるべきことは終わった。
本当はあいつを生け捕りにしてアレコレ聞きたいことは山ほどあったがまぁこの際どうでもいいや。
これで世界は平和になった。うん。それでいいでしょ。

「おーーーーい!!!」
「あ。」

エレベーターを使って下まで行こうと全員が踵を返した時、俺達を呼ぶ声がした。

「あ、子安さんじゃないすか。」

振り向けばそこには黄金の鹿号。
既に子安含め以蔵やアンデルセン、シェヘラザードさんも乗り込んでいた。

「お迎えですか?」
「ああ、一刻も早く離れるぞ。この島は爆破するからな。」
「えっ。」

子安さんが縄ばしごを垂らす。
それをのぼり、全員が乗り込んだことを確認すると黄金の鹿号はすぐに上昇した。

「爆破って…」
「あんな島…あってはならない。あそこで行われた実験も、残されたデータも地理すら残さず前部爆散させる。」

そういって子安さんは手に持っていたスイッチを押す。
そして島の至る所で起き始める爆発。
地面は割れ、ビルは倒壊。かつて栄華を誇ったかの葛城財団は、こうして海の藻屑へと消えることになる。

もし、恋や正義がかろうじて生きていたとしてもあの爆発で確実に死ぬだろう。
うん、本当に、本当に全部終わったんだ。



と、
思った最中だった。

『おんぎやあああああああぁぁぁあああああぁぁぁ!!!!!!!!!』
「!!」

耳をつんざくような悲鳴。
思わず耳を塞ぎ、なんの声だと辺りを見回すと

「あれは…!」
「なんだよあれ…!」

叫びが聞こえたのは崩壊を始める財団本部から。
悲鳴を発したのは

「うそだろ…!?」
「嘘じゃないだろうな。俺達は今まであの島の上にいた。そう。"生きている島"のな。」

飛沫を上げ、何やら巨大なタコの触手のようなものがのたうっている。
そしてくずれゆく瓦礫や飛沫の間から見えた"何か"
それは顔だった。
巨大な、葛城恋の顔。
つまりあの島は、代表の顔をしたわけわからん生物の上に成り立っていた。

「クラーケン、じゃなさそうだね。」
「あんなタコのお化けいてたまるもんですか。」

ドレイク船長と武蔵がそう冗談を飛ばし合うが本当になんなのか分からない。
どうしてあんなものが?
どうしてそうなった?
今更謎だらけになったがもうそれに答える人物はいない。

『おぎゃあああああぁぁぁ!!!!おぎゃあ!!!!おぎゃあああああ!!!!』
「うるせーなマジで…!」

わけわからん生物はずっと赤子のように泣いている。
しかし

「おおおおあおぎゃあああああぁぁぁ!!!!!」

ぎょろりと、宙に浮かぶ黄金の鹿号に目が向いた。

「でかいのが来る!全員何かに掴まりな!!」

ドレイク船長が慌てて舵を切る。
しかし恋の顔をした謎の生物は触手を振り上げ、

「おんぎゃああああああぁぁぁああっ!!」
「!!」

黄金の鹿号に叩きつけた。

「ぎゃあああ!!落ちちゃう!!!」

叩きつけられたと言うが船体に触れたのはほんの先端。
しかし、それだけでも威力は凄まじく、壊れなかったもののグラりと大きく傾く船体。
それによっておっきーが投げ出されそうになるが、

「掴まれ!!」

手を伸ばし、何とか引き寄せた。

「あ、ありがとまーちゃん…。」
「しっかり掴まってろ。それとお前…重くなった?」
「今はそんな事言わないでバカ!!」

多少のジョークを交えつつ巨大な生物を見下ろす。
おぎゃあおぎゃあと騒いでいるも、その目はずっとこちらを見ている。
さぁ反撃してやろうかなと思ったその時だ。

「聖杯が!!」

大きく揺られ、舞があの時恋から奪った聖杯を落としてしまった。
落ちることもかまわず身を乗り出して掴もうとするも、舞の手は空を掴み、

「ああっ!」

聖杯は、海へと消えた。

「そんな…。」

手を伸ばしたまま、かたまる舞。

「お栄ちゃん…ごめん。」
「気にすんな。あれがどっか行ったとしても、もうあいつは死んだんだ。割れるか、海の底で朽ちてくかの二択だろ。」
「でも…!」

聖杯を壊さず、落としてしまった自分の失敗を責めようとした舞だが、ぐっと北斎に引き寄せられ胸に顔をうずめさせられる。

「いいんだ。マイはもう気にしなくていい。あいつのことより、自分が幸せになること考えとくれ。ナ? 」
「…。」

最後にわしゃわしゃと頭を撫で、北斎は海を見る。
すると、あの生物は泣くことをやめ、力無く沈んで行った。

「何がしたかったんだ…あいつ。」
「さぁな。最後の悪足掻きか、俺達を道連れにしようとしたのかもな。」

大和がそう言うが、それが真実なのかは分からない。
でも、

「おれ達は勝った。あの人でなしに。今はそれで充分だろ?」

北斎の言う通りだった。






それから数分後。

「なにこれ…。」

東京へと帰還した俺達を出迎えたのは、何千人もの歓声だった。

「やっべーな。俺達有名人だよ。」
「だね。明日から普通に外歩けないかも。」

今までサーヴァントは悪魔だとかぬかしてた奴らも一緒になり、俺達の勝利を祝ってくれてる。
本当は殺してやりたいが今めっちゃ気分清々しいし、特別に許してやろう。うん。

「探偵さん。」
「あ、どうも。」

そして俺たちの元へやって来たのは院長先生。

「君達の活躍はキャスター陣営の力を借りてリアルタイムで見てたよ。」
「え、マジですか?」
「ああ。それと探偵さん。君の推理も素晴らしかった。君がいなければあの擬似サーヴァントは倒せなかった。いや、誰かが欠けていれば勝利は勝ち取れなかった。君達は…本当によくやってくれた。」

そういい、右手を差し出されたので迷わず握手する。

「言ったでしょ?『多少は高くつくが、依頼は必ず成功させる』って。」
「その評判はとっくに聞いてるよ。」

ニノマエ探偵事務所のキャッチコピーに院長先生は呆れながら笑って返した。

「さぁ、行こう。君に会いたい人がたくさんいるんだ。」
「え…俺休みたいんですけど。」

とまぁ院長先生に連れられ、どこかへと案内される。
なにこれ、もしかして優勝パレードみたいなことでもすんの?
やめてくれよ。俺今いちばん何したいって言ったら帰って寝たいわ。
有名人扱いとかそういうのはいいからさ。とにかく寝たいのよ。

「まーちゃん疲れたぁ。」
「俺もだよ。でも休めるのはしばらく後だろうぜ。」
「えー。」

ぐったりと俺の肩によりかかるおっきー。
あぁいいね。決めた。やることやったら帰ってえっちしよ。

「…?」
「あれ、どしたの?」

と、皆が歩みを進める中、紫式部だけがその場から動かずにいた。

「香子…?」
「おかしい…変です…!」
「変?」

紫式部が慌てた様子で辺りを見回す。
周りにいるのは人だが、一体何があるって言うんだろうか。

「皆さん!!付近に…いいえ!至る場所から莫大な魔力反応が!!!」
「え?」

その直後だ。

「!!」

突如地面を突き破り、巨大な何かが出現した。

塔のように見上げるほど高く、ゆらゆらとうねる何か。
やがて同じようなものが周囲の人々を蹴散らしながら続々と現れる。

「おいおいうそだろ!!」

"それ"は、俺達FGOプレイヤーなら誰もが見たことあるモノ。
物語の終盤に立ちはだかったモノ。
人類悪、ビースト1であるゲーティアそのものであり、またソロモン王が従えた72柱の悪魔の名を冠したモノ。
それは


「これは…」
「魔神柱じゃねーか!!!!」

魔神柱。
何本、何十本ものそれが東京に突如として顕現した。
 
 

 
後書き
ハッピーエンドとか言ったな?
あれは嘘だ。
ここからが本当の戦い、ある意味FGOらしい戦いであるレイドバトルみたいな最終決戦が始まります。
それでは次回もお楽しみに。


かいせつ

⚫謎の聖杯。
葛城恋が吐き出した謎の聖杯。
見た目は完全にそれだが、北斎や舞によればそれは外見だけ完全に真似た全くの偽物だという。
魔力、そして狂気を溜め込むための入れ物らしく、
恋が怪我をしてもすぐ治るのも、そしていくらでも射精可能な絶倫だったのも全てこの聖杯からの魔力によるもの。
しかしなぜそんな聖杯のまがい物を恋が持っていたのか、一体誰からもらったのか、
それは謎に包まれたままだ。

⚫財団本部の正体。
葛城財団本部。
その正体は巨大なタコのような生き物の上に建った人工島であった。
その生き物により見えない壁は作られ、そしてまた移動も可能としていた。
何故この生き物が代表と全く同じ顔なのかは一切不明。
この島自体を代表が生み出したという説もあるが、定かではない。
 
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