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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第244話】

――リビング――


 バルバロッサを片付けた俺達が今やってるゲームはババ抜き。

 誰もが知ってるポピュラーなやつで、最後までジョーカーを持ってた者の負けというやつだ。


「む、どうしたヒルト? 早く引け」

「…………」


 明らかに一枚だけ目立つ様に配置したカードだが……今はラウラがジョーカー持ってるのだろうか?

 ゲームは既に中盤で、既に美冬と未来の両名が早々に抜け出していた。

 とりあえず、ラウラの持つ右のカードを引き抜くと、ペアが揃って残り二枚。

 引き抜く時少し表情に変化があったから、やはりラウラが持ってる可能性が高いな。

 一旦残ったカードをシャッフルし、シャルの方へ――。


「……じゃあ、これかな?」


 左のカードを引き抜くが、揃わなかった様でシャルもカードをシャッフルさせるとセシリアに――。


「……うふふ、揃いましたわ♪ これを鈴さんが引けば上がりですわ」

「くっ。 つ、次はアタシが上がる番よ」


 そう言い、セシリアの残ったカードを引く鈴音。

 カードが揃ったのか微笑を溢すと、残り二枚に――。

 こんな感じでババ抜きを続けていくと――。


「おぉっ、偉く静かだと思ったらババ抜きしてたか」

「あっ、お父さん」


 リビングに入って開口一番に声を出す親父に、美冬が反応して直ぐに近寄る。


「お父さん、今日渡米って訊いたけど――」

「おぅ。 まああんまり持っていくものも無いが、ある程度の着替えに金にパスポートにってな。 わははははっ」


 いつもの様な高笑いがリビングに響くと、ラウラが――。


「教官、次はいつ日本に帰国なさるのですか?」

「ん? ――てか教官は止せってラウラ。 俺が教えた事なんざ、只のサバイバル技術なんだ」


 そう腰に手を当ててラウラを見る親父は、教官と呼ばれてちょっと照れてる様な気がした。


「……いえ、やはり私には貴方は教官ですから。 ……それに、ヒルトの父親でもありますし……」

「……まあラウラの呼びやすい呼び方で良いって言えば良いんだがな。 でも、もし仮にヒルトと結婚する事になっても俺は教官って呼ばれるのか?」

「ぅ……。 そ、それは……その……」


 結婚という単語に、頬を染めながら口ごもるラウラ。


「……まあいいさ。 まだラウラがヒルトの嫁――ってラウラの場合はお婿さんだな。 ヒルトの婿になるかはわかんないんだしな、わははははっ!」


 ……まあ誰しも可能性だからな。


「――っと、さっきの質問だが、期間自体は短いものだ。 任務内容については、【ある基地での重要物資の防衛】だ。 場所は言えないがな」

「……てか、俺達に言っても良かったのか?」


 そう俺が聞き返すと――。


「ふっ。 ここに居るのは皆国の代表候補生だろ? ヒルトは違うが口が固いのは知ってるしな!」

「成る程、まあむやみやたらにばらす様な子は確かに居ないな」


 そう言って皆を見ると、力強く頷いた。


「ふふん。 代表候補生は国家機密を知ってる子もいるからね。 大体は口が固いわよ」


 八重歯を見せて鈴音が言うと、軽くツインテールが揺れた。


「わははははっ! ……てかヒルト、また彼女候補増えたのか?」


 俺に聞くと直ぐ様鈴音を見る親父。


 親父の指摘に、鈴音の顔が徐々に赤く染まるが――。


「別に彼女候補じゃないって。 ……逆にそう言われたら鈴音が迷惑だろ?」

「べ、別に迷惑じゃないわよ。 多少間違われても、あ、アタシは気にしないし」


 口で言ってから視線を明後日の方へと向ける鈴音。


「……ほぅほぅ。 ……わははははっ! まあ今はそうって事にしてやるかっ!」


 そんな豪快な笑いと共に俺を見ながら――。


「……俺が居ない間は、母さんの事頼んだぞ、ヒルト」

「……あぁ。 ――っても、俺じゃ微力かもだがな」

「ははっ、かもしれないが――前にも言っただろ? 【一人の男が世界を変える】ってな、元々は財団の創設者がその息子に言った言葉だが、俺もその言葉を引き継いで、それをお前に言った。 ……要は受け売りだな!」

「……まあ受け売りだとしても、今の世でそれを外で言ったら失笑されるから気をつけなよ」

「おぅ。 ……んじゃ、帰ってきたら多分俺も学園で世話になるから、その時は諸君、よろしく頼むぞ!」


 それだけを言い残すと、親父はリビングを後にした。


「……うふふ。 相変わらずですわね、お父様は」


 楽しげな表情でセシリアは親父が出た入り口を眺めていた。


「だね。 ふふっ、一人の男が世界を変える……かぁ。 確かにヒルトが最初の男子IS起動者だからそういう意味では変えたかもね?」

「……まあ、メディアの捉え方は基本的に一夏ばかりだがな」


 まだ規制されてるとはいえ、一夏の特集の組まれ方と俺との対比等は凄い。

 俺なんかISランクが最低のEの為か、めちゃくちゃに書かれてるのに、一夏は希望の星だとか全世界注目の男子だとか色々。

 持ち上げすぎじゃね?って思うぐらいどの雑誌にも書かれていた。

 こうなると規制解除された後のニュースコーナーは男子ゴルフ界みたいに活躍しない王子が予選敗退したのを五分取り上げ、優勝した他のゴルファーが五秒ぐらいしか取り上げられない状況になりかねんが。

 ……という下らない考えをしていると――。


「ヒルト、まだゲームの最中だぞ」

「おっと、そういやそうだったなぁーっと――」


 何の気なしに引き抜いたカードが、何とジョーカー。

 表情には出さないが、ラウラが笑みを溢した為、俺がジョーカー持ちだというのが完璧にバレた結果となった。

 ……親父も気になるが、多分大丈夫だろう……わざわざ母さんや美冬を悲しませる結果にするはずないだろうし。

 カードをシャッフルさせながら、俺は少し不安に感じた思いを無理やり払拭するようにシャルにカードを見せた――。 
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