IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第246話】
時間は午後五時を過ぎた辺り。
ババ抜きは俺の敗北という結果に終わった。
……考えもせずにカードをとったのが敗因かもしれないが。
「さて、どうする皆? 夜も居るならご飯の用意もしないといけないが……」
そんな言葉に、いち早く反応したのが――。
「じゃあ、私が今日作ろうかな? 四月以来でしょ、私の手料理♪」
そんな未来の言葉に、出遅れたと思ったのか美冬を含めた他の女子達も――。
「じゃあじゃあ、私も作るよっ! へへっ、今度こそお兄ちゃんを唸らせてあげるからね♪」
「ふふん。 未来がそう言うならアタシも腕前披露してあげちゃおうかしら? 一応看板娘だからね、アタシも♪」
「ぼ、僕も今回は作る側で参加しようかな……。 上手く作れるかわからないけど、愛情込めて作れば……」
「むぅ。 ならば私も加わろう。 軍ではローテーションで食事係があったからな。 ヒルト、期待しろ」
「うふふ、ヒルトさんに教わった腕前を披露する時ですわね。 ヒルトさん、残さずに食べてくださいな♪」
――と、この様に女子一同が名乗り出る。
……鈴音も腕前披露するとは、確か中華料理屋の娘だし、期待大だな。
美冬と未来を除くと他の三人は未知数――特にセシリアは、補助無しで大丈夫なのかと思ってしまうが……。
「……とりあえず、作ってくれるのは有り難いぞ? 有り難いが、そこまでの材料が家にあるかが疑問だな」
そう言ってキッチンにある冷蔵庫を開いて見て、更に非常用の缶詰め類いも調べるが――。
「……うん。 全く足りないな。 ……スーパーに向かうしかないな……。 っても、車がないから自転車使うしか無いが……」
そう言いながら、俺はまたソファーに腰掛けると――。
「ん~、じゃあ買い出しだね? お兄ちゃん、買い出しよろしく~」
「……おいおい、俺一人で母さん含めた八人分持ち帰るのか? せめて後一人は一緒に行ってくれないと――」
そんな言葉に、瞳を輝かせて名乗りをあげる女子一同――。
「うふふ、ならわたくしが立候補致しますわ。 せっかくですもの、日本のスーパーも気になりますし♪」
「ふふん、今の時間ならタイムセールもやってるわね。 アタシがあんたのサポートしてあげても良いわよっ」
「ぼ、僕も手伝うよ。 ヒルト一人じゃ大変だし、ね?」
「ふむ。 嫁の手伝いをするのが夫の勤めだ。 悩む必要はない、私を選べ」
「買い出しなら私と一緒の方がいいよ? ほら、地元だしね♪」
皆が一様に言うや、まるで火花を散らせる様に視線を交わす一同。
美冬が参戦しなかったのは、夕方のスーパーが込み合ってるのが嫌なだけかもしれない。
「……てかここで俺が選ぶのも後で非難受けるし、じゃんけんで決めといてくれるか。 俺は母さんから食費もらってくるから」
「「「え?」」」
女子一同きょとんとした表情のまま俺を見てきた。
一斉に見られたので内心ドキッとしつつ、一度腰掛けたソファーから立ち上がると、その足でリビングを出るや、リビングから直ぐにじゃんけんをする声が聞こえてきた。
……うーん、気持ちは解らなくもないのだが……。
早く答えを出さないといけないよな、やっぱり……。
母さん達がいる寝室のドアをノックし、開けて開口一番――。
「母さん、食材の買い出しに行くから食費くれないか? 何か皆が作ってくれるらしいんだが……」
「あら? ……うふふ、ヒルトはモテモテねぇ♪ ……お母さん、皆娘として欲しいわねぇ」
そう言いながら財布からお金を取り出す母さん。
「……法の改正されて、ヒルトが多重婚認められる様な事でもないと無理じゃないか?」
「うふふ、そうねぇ~。 ……その場合、織斑一夏くんが優先される気がするわねぇ~」
親父と母さんがそう言いながら、お金を手渡してきた。
「多重婚ねぇ……。 うーん、男としては良いかもしれないが、世間は許さないだろ。 ……ありがとう、母さん」
「うふふ、八人分よろしくねぇ~」
言葉を背に受け、俺は寝室を後にする。
……これだけあれば、八人分は楽に買えるし、タイムセールしてたら色々安上がりに済むだろう。
何の食材を買うかを色々想像しながら戻ると、既に決着がついたのかリビングは静まり返り、家の電灯が明々と照らしていた。
「……誰が勝ったんだ?」
静まり返ったリビングに、俺の声が軽く反響する――と。
「んと、僕だよ? あはは、ごめんね皆?」
じゃんけんを制したのはシャルで、他の面々は負けたのが悔しいのか――。
「うぅ……ここ一番でいつも負けますわ……」
「……っ。 じゃんけん弱くないのに……っ」
「むぅ。 ……シャルロットが良いとこ取り……」
「……はぁっ、負けたのがショック……」
深い海の底に沈んだような雰囲気の皆を、美冬は困った様に見ながら――。
「し、仕方ないじゃん。 ほら、お兄ちゃんとシャルが買い物に行ってる間に色々準備しよっ? そうすれば手際よく作れるし♪」
美冬の言葉に、少しは反応するもののやはり買い物に行きたかったのか落ち込み気味な子達。
……てか鈴音まで落ち込むってどんだけだよ。
「……じゃあ俺とシャルはスーパーへ買い物に行ってくる。 材料は一通り買ってくるから」
「うん。 気をつけてね、お兄ちゃん、シャル」
「う、うん。 ……じゃあ、行ってきます」
美冬の言葉を受け、俺とシャルの二人は近くのスーパーへと買い出しに向かった――。
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