IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第242話】
紙袋を覗き込む女子一同達。
無防備なのか、はたまた狙ってるのかはわからないが全員俺と顔が近く、何だか俺ばかりが彼女達を意識してる気がした。
まず、紙袋から美冬が取り出したのは――。
「定番のカードゲームって言えば、やっぱりトランプよね、お兄ちゃん♪」
そう言ってトランプの入った箱を見せる美冬。
正面の為、諸に谷間が見える上にノーブラかニップレスでも着けてるのか、結構際どく乳房が見えそうになっていた。
「た、確かに定番だが皆でポーカーでもするのか? マッチ棒使って」
「……ポーカーも悪くないけど、ババ抜きはやり易いよね? ……でも、他のも見てみるかな」
そう言ってまた覗き込む美冬――と、今度はセシリアが。
「あら、日本のゲーム以外にもありますのね。 これは……イギリス発祥のボードゲーム、チェッカーですわね」
「チェッカー? ……親父の趣味の部屋にもそんなのがあったような気がするが……やったことないな」
そう言って紙袋から出されたチェッカーを眺めると、何やらチェスや将棋の類いの物に見えるのだが――。
「……ですが、これだとお二人でしか遊べませんわね。 今度ゆっくりとお相手してくださいな、ヒルトさん?」
セシリアがそう言うや、一同から――。
「……セシリア、その時は僕も一緒に遊ぼうかな」
「ふむ、そう簡単に二人きりにはさせんぞ」
「……セシリア、何二人きりに託つけ様としてんのよ」
「……お兄ちゃんと二人きりにはさせないよ? 何てね」
「……これだけ居たら多分、なかなか二人きりにはなれないよ、学園でもね」
シャル、ラウラ、鈴音、美冬、未来と順にセシリアに言った。
流石に全員に言われるとセシリアもたじろぎ、こっそりプライベート・チャネル通信が送られてきて――。
『……いつでも貴方との予定は空けておきますので……』
それだけを通信で送ると、笑顔で俺に応えてまた紙袋を覗き込むセシリア。
――今度はシャルが何かを見つけて口を開く。
「あ、これ昔やったことあるよ。 ……材木買うゲームだよね」
中からは取り出さないが、昔を懐かしむ様な声で語るシャル。
多分、小さい頃辺りに友達と遊んでいたのだろう。
……今国に一人で帰ると、拘束されなくもないからな……偽証罪とか国家の品位を陥れたとか適当にでっち上げて。
……と、またプライベート・チャネル通信が送られてきた。
『ヒルト? ……もし、オススメの二人で遊べるようなゲームがあったら、やり方教えてね? ……ふ、二人っきりでだよ』
返答待たず、一方的にそう伝え、一度此方に視線を送るシャル。
……二人っきりだと、キスばかりしそうな気がするが……主に俺が。
そんな邪な考えを抱いてると、今度はラウラが花札を取り出し。
「ほう、これが日本の絵札遊びか。 ……中々に雅だな」
そう言って、花札の絵柄を眺めるラウラ。
「……今度、帰国するときには部隊に土産として買っていくとしよう」
そう言って花札をリビングのテーブルに置くラウラ――と同時にまたもやプライベート・チャネル通信が――。
『ヒルト。 また前みたいに二人きりで時を過ごしたいものだな。 ……あ、あの時のキス、今でも私は覚えているぞ。 ……だ、だから……また……したい……。 い、言わせるな……バカ者……』
……何も俺は答えて無いのに、一方的にそう言ったラウラの頬は桜色に染まっていて、俺を見つめていた。
「うーん……。 鈴が持ってきたゲームって、二人で遊ぶゲームが多いね? やっぱり織斑くんと?」
「……ま、まあね。 アイツと二人で遊ぶの、好きだったからね」
「……そっか。 ふふっ、最近はあんまり織斑くん、鈴に構わないよね?」
そう未来が言うと、鈴音は――。
「……もういいの。 あんた達と遊ぶ方が楽しいしね♪ ……大体、アイツは鈍感過ぎなのよ。 難聴だしさ」
……と、一夏の不満を呟き始めた鈴音。
そりゃそうだな、俺と話をしてても都合の悪いことはいつも「え、何だって?」で済ませる。
もちろん俺以外でも美冬も鈴音の事をどう思ってるのって訊いたら検討違いの【セカンド幼なじみ】って答えて、そういう意味じゃなく、女の子としてどうなのって聞き返したら「え、何だって?」だから呆れたって言ってたな。
……と、またもやプライベート・チャネルが開く。
『ヒルト。 ……ん、また学園に帰ったら部屋に行くね?』
未来からの通信で、それだけを言ったらぷつりと切れた――と、更に立て続けでまた通信が送られてきた。
『……こ、今度暇なら何処か付き合ってあげてもいいわよ。 ……へ、変な所はダメだからね? ふ、二人っきりになれる所とか何かは特にッ!』
……最後の通信は鈴音からだった。
息抜きに何処か連れていってほしいのだろうか?
……それはそうと、紙袋から出るわ出るわ多種多様なゲームの数々。
あの紙袋、四次元で出来てるんじゃって思うぐらい中から出てくる……。
「……とりあえず、全員で出来るゲームだな。 ……これは……バルバロッサだったか?」
紙袋から取り出したのはバルバロッサという名前のゲーム。
確か親父がドイツから帰って来たときに買ってきたゲームかな……内容はよくわからないが。
「ほう、我がドイツのゲームだな」
そう言ったラウラは、何処か嬉しそうな声色で言い、腕を組んで何度も頷いていた。
バルバロッサの箱にはドイツの国旗が描かれていたからそれが嬉しいのだろう。
「それで、これはどういうゲームなの?」
シャルが代表して鈴音に聞くと、嬉しそうな表情を浮かべながら簡素に説明を始める。
「ふふん。 このカラー粘土で何かを作って当てていくゲームよ。 質問とかしていいわけ」
中から取り出した多色の粘土を手に持って説明する鈴音――と、素朴な疑問を感じたのかセシリアが。
「鈴さん? それだと、作る人の技量で左右されるのではなくて?」
これに関しては皆が思った疑問だろう。
作り手の巧さに左右される――ところが。
「ううん、そんなことないわよ? 寧ろ逆ね。 上手に作りすぎると、直ぐに正解されてポイント入んないの。 だから、適度にわからないくらいがいいわけって事ね」
「……じゃあ、下手すぎるのも不利なんじゃないのか、鈴音?」
俺がそう言うと、首を横に振って――。
「そんなこと無いわよ? 要は質問次第ってわけ。 答えに当たりをつけて、質問で埋めていけば大丈夫よ。 ……だから、粘土の形よりも、どういう質問をするかがこのゲームの勝敗を決めるって訳。 ……んじゃ、最初はアタシが説明役に回ってあげるから、あんた達だけでやってみて」
そう言って各人に粘土を配る鈴音。
手慣れた手付きで渡していくその様は、まさに盛り上げ役――って言ったら怒りそうだから心の中に閉まっておく。
「……粘土かぁ。 小さい頃以来じゃない、お兄ちゃん?」
「……だな。 俺らは保育園だったから夕方まで預けられて、よく遊んだな。 なあ未来?」
「そうね。 あの頃と違うのはやっぱり私たちが成長したって所かな?」
……未来は特に、胸が絶賛成長中だがな。
そろそろ篠ノ之に追い付きそうな気がしなくもない。
この場でその発言すれば、皆から突き刺さる視線で殺されるから黙っておこう。
そう思いながら、手渡された粘土を捏ねて形を作っていった――。
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