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『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする

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最強-ランスロット-

 
前書き
こんにちは、クソ作者です。
ここからは少しイライラするかもしれないっす。
 

 
こうして、俺達はチェックアウトを済ませ、ホテルを後にする、
2日ぶっ続けでやり通したので厩舎にいたオロバスは大丈夫なのかという疑問なのだが、代わりにホテルの従業員がお世話をしてくれたそうだ。

あと、去り際にお決まりのセリフを言われた。

「ゆうべは…いえ、一昨日からお楽しみでしたね。」

と。





「…。」

木々が生い茂り、時々風に揺られて葉同士が擦れる心地よい音が聞こえる森の中。
蹄の音をリズミカルに響かせながら、俺と武蔵はオロバスに乗って旅を続けていた。

ちなみに武蔵だが、先日俺も素直になるからお前も素直になって欲しいといったところ、この日からちゃんと俺の後ろに乗ってくれた。
正直それは嬉しいことだ。

「で、これからどうするの?」
「決まってるだろ。届ける仕事がないのなら支部を潰す。」

ココ最近、リンドウ急便としての仕事は実の所あんまりない。
ハインド商会なるものをご存知だろうか。
フランシス・ドレイクを筆頭として今まさに勢いのある運送企業だ。

空飛ぶ船を使い、安定した供給で各地に物資を提供できる。
お届け物もお易い御用だ。
馬に乗って少量しか運べない俺なんかより、大量の物資を運べてしかも時間もかからない、ものを頼むとしたら断然後者だろう。
それにハインド商会の他にも様々な運送業者が今日も東奔西走している。
さらにそれと双璧をなす運送企業、アマゾネス・ドットコムなるものも勢力を伸ばしつつあるらしい。
きっとそのうち、この崩壊世界も欲しいものが直ぐに届く少し前の日本と変わらなくなるだろう。
サーヴァント様様というやつだ。

「でも、最近そればっかりね。」
「運送ばかりで刀を腐らせるよりかはマシさ。」
「まぁそうだけど…あっちもあっちで私達のことかなりマークしてるみたいだし。」

武蔵の言う通りだ。
こうして支部を潰して回ってるわけだが、あちらもただやられているだけじゃない。
それなりの準備をし、迎え撃つ。
しかしどれだけ備えたとしても俺と武蔵には敵わないが、例外もいる。
この前の、山本のような男だ。

「葛城財団の中にもいるだろうな。指揮能力がずば抜けて高い者、恐ろしく強い者、びっくりするほど悪知恵の回る者。まぁ…これからは少し気を引き締めていこうか。」
「そうね。私もしっかりと大和くんの背中を守っていくので、大和くんもちゃんと、私の背中守ってね。」
「言われなくともそうするさ。」

ぎゅう、と後ろから抱きしめられる。
そうなると当然、武蔵の胸が背中に押し付けられる訳だがこれはこれでいい。
長旅の疲れも吹き飛ぶというものだ。
俺に表情筋がもっとたくさんついていたのなら、思わずニヤつきを隠しきれないでいただろう。

しかし、そんな幸せな時間もいつまでも続かないのは世の常。

「…武蔵。」
「ええ、分かってる。」

人の気配。
しばらく進むと、俺達の行く末を阻むかのように横一列になって並んでいる財団の実働部隊の皆様がお出迎えなさった。
山本は…いない。
しかし彼らの真ん中には、純白のスーツを着た男が立っていた。

「止まれ。」

スーツの男が口を開く。
強行突破も考えたが、その余裕綽々な態度を見て何か罠があるかもしれないと思い、ここは言われた通りにオロバスを止めた。

「何の用だ。何をしようが俺達は捕まらないぞ。」

俺と武蔵は馬から降り、白いスーツの男へと話しかける。

「ああ、それは結構。何せ私の目的としては貴様の抹殺やそこの産廃の捕獲では無いのでね。」
「産廃…?」

今、こいつは武蔵を産廃と言ったのか?

「…。」
「待って。」

刀に手をかけた瞬間、武蔵が止める。

「気持ちは分かる、でも安い挑発に乗らないで。」
「挑発…?私は何か気に触ることでも言ってしまっただろうか?おい君、」

武蔵がそう言うと、スーツの男はそう返す。
隣の隊員に尋ねるも、彼もまた首を横に振った。

「ふむ。気に触ることは何も言っていないそうだ。少し自意識過剰なのでは無いかな?」
「…!!」

刀を抜く。
武蔵の制止など気にするものか。
並んでいた隊員達が皆銃口をこちらに向けるが、貴様らが引き金を引くより、俺はこのスーツの男の首を跳ねられる。
そうして、一切の慈悲も無くやつの首を切り裂こうとしたその時だ。

「な…!」

止められた。
間に割って入ってきたモノに、俺の刀は受け止められた。

「ご無事ですか、マスター。」
「ああ、君のおかげだセイバー。」

スーツの男にセイバーと呼ばれた彼。
同じように純白の西洋の鎧に身を包んだ彼は、間違いなくサーヴァント。
円卓の騎士の一人。そしてその中でも”最強”と言わしめた騎士。
アロンダイトを携えたそのモノの名前は

「紹介しよう。私の最強のサーヴァント、セイバーのランスロットだ。」

鍔迫り合いの最中、スーツの男はそう言った。
ランスロットは、俺がどれだけ力を込めても涼しい顔をしている。

「そして私は置鮎 啓(おきあゆ けい)。葛城財団専属の傭兵であり、最強のサーヴァントであるセイバーを従えるマスター。ここに来たのは他でもない。キミの持つ産廃を倒し、ランスロットの最強である証明を確かなものにするためだが…手始めにキミには消えてもらおう。」

言い終えると同時に、ランスロットが動く。
いとも簡単に刀を弾かれ、奴は剣を返してがら空きとなった俺の胴へと斬り込む。
しかし、

「ッ!!」

武蔵が割って入る。
俺を突き飛ばし、アロンダイトの一撃を二刀で受け止めた。

「へぇ…これは中々。さすがは円卓の騎士最強ってところね。」
「…。」
「何か言ったら?一応褒めてるのだけど。」

弾き飛ばし、双方は距離をとる。
どうやらこれは、俺の出る幕では無さそうだ。

「武蔵。」
「サーヴァントはサーヴァントで倒す。こいつは大和くんじゃ到底太刀打ちできないから。ここは私に任せて。」
「…分かった。」

突き飛ばされ、倒れた俺は跳ね起きると刀をしまって武蔵の戦う姿を見守ることにする。

対するランスロットのマスター、置鮎もそうだ。
彼は自信満々に胸を張り、ランスロットを見ている。
絶対の自信があるのだろう。
自分のサーヴァント、ランスロットが勝つという自信が。

「キミ、名前はなんと言ったかね?」
「宮本武蔵だけど。相手の名前くらい覚えて欲しいわね。」

置鮎が武蔵に話しかける。
あたかも、人を馬鹿にするかのように。

「失礼。産廃の名前は一々覚えるのが面倒でね。」

また刀に手をかけそうになるが、ここはこらえる。

「では聞こう宮本武蔵。産廃風情のキミが、最強かつ完璧である私のセイバーに勝とうなどという、無謀かつ愚かな考えをしてはいないだろうね?」
「ええ、それはもう。何十通りもしてますとも。」
「ははっ!面白い。そうだろうキミたち?」

置鮎がそう言うと周りの隊員達も顔を見合せながら、クスクスと笑い出す。
散弾銃に手をかけそうになるが、ここは武蔵の戦いだ。
マスターはマスターらしく見守らないといけない。

「竜胆大和と言ったか。」
「なんだ。」

俺の名前はハッキリと覚えている。
俺は財団からは危険人物扱いだ。財団にて知らないものなどいないだろうから知っているのは当たり前だが、それならば武蔵の名前も知っていて当然だ。
わざとだ
こいつは俺達を煽るために、武蔵をあえて産廃と呼んでいる。

「随分とユーモアに富んだサーヴァントを持っているじゃないか。」
「それはどうも。」
「しかし無駄だよ。勝てると豪語し、最強のセイバーに挑み散っていった産廃共を私は数多く見てきた。」
「つまり?」

置鮎が令呪をかざし、叫ぶ。

「貴様の産廃も、その仲間入りを果たすということだよッ!!やれェ!!セイバー!!!」

やつが叫ぶのとランスロットが動くのはほぼ同時だった。
鎧を着込んでいるとは思えない速度で走り出し、対する武蔵も駆け出す。
ぶつかり合う刀と剣、
互いに互いの首を取るため、本気でぶつかり合っている。

武蔵は二刀流。だがランスロットには刀の本数による数的有利などないに等しく見える。
彼女の二刀の連撃は、ことごとく弾かれているからだ。
顔色ひとつ変えずに。

「そうやって、今まで何騎のサーヴァントを斬ってきたの?」
「…。」

戦いながらも、武蔵はランスロットにそう問いかける。
しかし彼は言葉を返さない。

「つれないのね!」

目にも止まらぬ早さで武蔵が回り込む。
しかしそれでもランスロットは武蔵の反則的な速さに反応し、すぐさま反撃に取り掛かる。
確かに円卓最強は伊達ではない。
この前は神様と決闘を繰り広げたが、こいつはもしかしたらそれと互角。下手したらそれ以上の可能性もある。

あの置鮎とかいうスーツ男が自信満々で要られるのも納得だな。

そう思い、奴に視線を移すと、

「…何?」

そこにはありえない光景があった。

「こちらでよろしかったでしょうか?」
「ああ、ありがとう。」

奴は、置鮎 啓は、呑気に紅茶を楽しんでいた。
隊員に用意させたのだろう、いつの間にか用意されている純白の椅子とテーブル。
そこに座り、いかにも高級そうなティーポットからカップに紅茶を注ぎ、香りを楽しんでいた。

ふざけている。
サーヴァントは戦っているというのに、自分は優雅にティータイムか。
さっきの武蔵に対する産廃呼びもそうだ。
こいつは…サーヴァントを、戦いを侮辱している。

「お前…恥ずかしくないのか?」
「ん?私かい?私より、そんな産廃を堂々連れているキミが恥ずかしくは無いのか?」

サーヴァントが戦っているのなら、マスターはそれを責任をもって見届けるのが義務というもの。
こうして旅を続けてきたが、サーヴァントが戦っている最中にこんなふざけた事をするやつ、こいつが初めてだ。

「その口を閉じろ。次に産廃と言うならば、お前の首を斬る…!」
「おいおい、産廃に産廃と呼んで何が悪い?キミは役に立たないゴミにいちいち名前をつけて可愛がるのかな?おや、随分と変わり者なのだね。」

その産廃呼びもだ。
人のサーヴァントをバカにするその言い方は、もはや侮辱以上の何かだ。

「サーヴァントは数多存在する。しかしその多くが欠点を抱えた使えないモノ、いわば”産廃”だ。だがね!私のセイバーは違う!全てにおいて隙のない、最強にして唯一のサーヴァントなのだよ!!よってそれ以外は役立たず!無能!!価値のないゴミ!!!産廃なのだよ!!!分かるかい!?竜胆大和くん!!!!」
「…。」

なるほど、
彼の言いたいことはよくわかった。
周りの好きなものを貶しまくり、自分の好きなものを自慢したい、よくいる周りを考えず自分の事しか頭にないクソ野郎だ。

「キミも落ち着け。紅茶を嗜めば少しはマシになるんじゃないかな?お茶請けは…そうだ。この前山本から貰った煎餅があったなぁ…。こんなジジくさいもの、お前にくれてやるよ」

そう言い、部下が持っていた箱から煎餅を何枚か取りだし、俺の足元へ投げ捨てる。

「…ほら、食えよ。産廃のマスターはマスターらしく、惨めたらしく落ちたゴミを食えと言ってるんだ。」

自分は高級そうな小さなケーキを上品に食べ、紅茶を飲みながらそう言った。
周りの隊員は、皆クスクスと笑っている。

ああ、ハラワタが煮えくり返るというのは、こういうことを言うんだろうな。

「そこで待っていろ置鮎 啓。今すぐに貴様の首を」
「待って!」

もう我慢ならない。
しかしそこで武蔵が叫んだ。
少しの間目を離してはいたが、その僅かな間に武蔵の至る所には傷が。
なるほど、今は拮抗しつつあるがこのままではランスロットに押し負ける。

「さっきの二人の話聞いてたけど、私もかなり頭にきてる。ねぇランスロット。あんな恥知らずが貴方のマスターってワケ?」
「…。」
「さっきから…何とか言いなさい、よッ!!」

攻めるも、ランスロットは顔色ひとつ変えず止まない刀の連撃を弾く。
隙もない、そして攻撃の苛烈さも衰えることは無い。

「セイバー。無視しろ。産廃風情が私のセイバーと同等に話せる価値があると思っているのかい?やはり産廃は産廃だ。身分くらいはわきまえて欲しいね。」
「その話し方が…死ぬほど気に入らないッ!!」

武蔵も、同じだ。
あいつが気に入らない。
そのムカつく言葉のやまない口を閉じさせたい。
首を切り落として黙らせたい。

「どけぇッ!!」

渾身の力を込め、武蔵は刀を振るう。
しかし相手は刃こぼれのしたことが無いという最強の剣、アロンダイト。
いくらぶつけようがビクともせず、それの使い手もまた動じない。
しかし、

「ッ!」
「とったッ!!」

わずか、ほんの一瞬、ほんの刹那。
武蔵の力が勝った。
どれだけ少しだろうと、武蔵はその隙を逃さず食らいつく。
やつの首を落とす前に、こいつの首を落とす。


そうやって、ランスロットの首に刀が迫ろうとした時だった。

「撃て。」
「…!!」

武蔵が突然、横に跳んだ。
折角一太刀浴びせられるチャンスを自ら逃したのか、いや違う。
次の瞬間、連続した銃声。
一体どこからと思えば、置鮎の隣にいた隊員達が皆銃口から煙のたちのぼるマシンガンをかまえていた。

「お前…1対1の真剣勝負に横入りするのか!?」
「誰が1対1と言ったんだい?」

指示したのは勿論、こいつ。
紅茶のおかわりを楽しむ置鮎だ。

「自分のサーヴァントが負けるのは嫌なのでね。それにランスロットは最強だ。これは私のワガママなのだがそんな最強を覆されるのは、嫌なんだよ。」
「だからといって卑怯な真似は許されるのか!?」
「さぁ?勝負には卑怯もクソもないだろ?求められるのは結果だ。正しいのは勝者だ。」

そうして、武蔵は奴らからの弾丸を避けながら、ランスロットからの猛攻もさばいていかなければならなくなった。
このままでは危ない。そう思い俺も動こうとした時だ。

「…なんの真似だ。」
「マスターが割って入るなんて言う無粋な真似はやめてもらいたいね。そこで見ていたまえよ。」

残りの隊員達が俺に銃を向ける。
もう、いい。
手を出すなと言うのであれば、俺はもう手を出さない。

「…。」
「おや、何も言えなくなったか。それとも産廃のマスターとして身の程を弁えたかな?」
「…いや、違うね。」

刀を抜く。
それを真上にかざすと、晴れていた空は曇り、ゴロゴロと赤い稲光が見えた。

「武蔵、もう話さなくていいぞ。」
「…ええ。」
「こんなゴミに、口を開く価値などこれっぽっちも無いんだからな!!」

刀を、振り下ろす。
それと同時に轟音と共に、真っ赤な雷が武蔵に降り注いだ。
凄まじい音と光、衝撃波と共に周りの隊員も吹っ飛び、用意していた椅子とテーブル、高級そうなカップセットも全て吹き飛んで使い物にならなくなった。

「これは…!」

這いつくばり、なんとかその場で耐えた置鮎は目を凝らしながら何が起きたか見ようとする。

そこには相変わらず無傷で無表情のランスロット。
そして、

「俺も自分のサーヴァントが負けるのは嫌なんでね。」

身体から紅い電流が迸る、武蔵の姿が。
手は出さないとはいった。
しかし雷は出すがな!!

「な、なんだそれは!!」
「勝負に卑怯もクソもないんだろう?なら俺もそうさせてもらう。いや、マスターがサーヴァントをサポートするのは反則ではないな。」

思い出したんだ。
伊吹童子と戦った時、俺が何をしたか。
こうして、自分の魔力を送り込み武蔵を大幅に強化させた。
これは俺のワガママ。武蔵は負けないという思いが具現化したもの。
やり方は身体がおぼえている。
だから、遠慮なく使わせてもらう。

「武蔵!!」

俺がそう呼ぶと、武蔵は振り向かずそのまま走る。
迎え撃つランスロット。しかし今から構えてはもう遅い。

「!!」
「まずは一太刀!!」

刀と剣がぶつかった。
そう思った時、武蔵は消え、やつの後ろにいる。
次の瞬間、ランスロットの肩口から鮮血が迸った。

「次に二太刀!!」

振り向き、横に振るう。
今度はギリギリ受け止められるも、衝撃は殺しきれずよろめいた。
どうやら肩を斬られたせいで、剣を振るう腕も弱まったらしい。
なら、とことん攻める。

「まだまだァ!!」
「やめろ!!よせ!おいお前達!!あいつを撃てェ!!」

ランスロットが負ける。
そう思った置鮎は慌てて叫び、吹っ飛んでしまった隊員達を急いで呼び戻す。

「撃て!!なんでもいい!!とにかくあいつを撃ち殺せ!!!産廃に勝たせるな!!」

マシンガン、グレネード、果てはハンドガン。
あらゆる銃器を用いて武蔵を妨害しようとするが、全て無駄だ。

乱射しようが当たらない、それどころか

「…!!」
「何をしている下手くそが!!あの産廃に当てろと言ったんだ!!!」

武蔵に当たらず、狙いを誤ってランスロットに当ててしまう始末。
そうして味方から思わぬ妨害を受けたランスロットは思わずのけぞり、さらに隙を晒してしまう。

「でやああああああーッ!!!!」

切り裂く。
円卓最強を。
その程度で武蔵は負けない、止まらない。
いや、ランスロットならば宮本武蔵を止められただろう。
だが、

「残念だったな。お前ごときじゃ”俺の武蔵”は止められやしない。」

俺の武蔵以外ならの話だが。

「ぐ…かはっ!」

鎧ごと腹部を斬り裂かれ、ランスロットは吐血して膝をつく。
負けだ。
正真正銘、ランスロットの負けだ。

「…!!」

しかし隊員は諦めない。

「死ねぇ!!」

一体どこからそんなものを持ってきたんだと言わざるを得ない4連装のロケットランチャーを担いできたのだ。
しかし勝負はついた。
そんな玩具は片付けてしまおう。

「武蔵、決着はついた。あとは逃げるぞ。」

そう言い、腰から散弾銃を抜いて撃つ。
拡散した弾丸はロケットランチャーに命中。
長方形の鉄の箱を弾丸一つ一つが抉り、

「しまっ…」

大爆発を起こした。
持っていた隊員は…まぁ無事は祈ってやろう。

「オロバス!!」

離れさせておいたオロバスを呼ぶと、嘶きの後蹄の音が近づいてくる。

そうしてオロバスに二人で飛び乗り、俺はその場から退散して行った。
いわば勝ち逃げだ。

折角だ。
最後に言ってやろう。

「最強とはなんだろうな。少なくとも、産廃に負けているようではまだまだ最強だなんて呼べないと思うぞ!!置鮎!!」





「くそ…くそ…くっそおおおおおおおおおお!!!!」

敗北。
今の彼にはその2文字しかなかった。

「何故…何故だ!何故セイバーが負けなければならなかった!!!」

先程の大爆発で隊員のほとんどは死に、生きていたとしても大怪我を負っている。
しかし運がいいのか悪いのか、置鮎はそこで奇跡的に無傷だったのだ。

「ああくそ…特注のティーセットも全部ダメだ…。」

ティータイム専用のテーブルと椅子、そして紅茶をいれるのはいつもこれだと決めていたティーポットやカップも、全部割れていた。
プライドも、自信も、何もかも、
全てあの女に粉々に砕かれてしまっていた。

「覚えたぞ…覚えたぞ宮本武蔵ィ…!!」

その顔に刻まれているのは、憎悪。
舐めてかかって反則した上に負けた。
なので逆恨みに近いかもしれないが彼は紛れもなくあの二人に、特に宮本武蔵に激しい怒りを覚えていた。
最強であるランスロットに傷をつけ、あろうことか膝をつかせたのだ。
こんなこと、あってはならない。
すぐにその勝負を取り消さなければならない。

「立て、セイバー。」

虫の息だが、まだ処置をすれば助かる見込みのある重症の隊員達を無視し、彼は膝をついたランスロットにそう言い放つ。

「はっ、」
「これは、あってはならない。お前の負けは有り得てはならないことなのだ。分かっているな?」
「おっしゃる通りです。このランスロット、貴方様のサーヴァントである限り負けは許されない。いずれこの敗北の味、必ず宮本武蔵に味わってもらうまで。」
「そうだ。それでこそだセイバー。」

部下はそのまま見殺しにし、彼はそのまま離れたところに置いてあった車両に乗り込む。
自分で運転するのは癪だが仕方ない。
そして、次は勝ってみせよう。

どんな卑怯な手を使ったかは知らないが、姑息な手を使う奴に自分のランスロットは負けない。
何をどうしても、何がなんでも、この敗北は必ずあの宮本武蔵に叩き返してやる。

今まで味わったことの無い屈辱に歯をギリギリと噛み締め、彼は車両を走らせた。



 
 

 
後書き
反則した上に惨敗したとか恥ずかしくないんすか?
というわけでこれから大和くんはかつての上司に追われ、武蔵ちゃんは最強に執着する男に追われるという逃走劇となります。
え?山本倒しただろって?
嫌だなぁ。根性論で生きてる人がたったの1回きりの出番なわけないじゃないですか!

そんなわけでキャラクター紹介。


⚫置鮎 啓(おきあゆ けい)
葛城財団お抱えの傭兵。
依頼は必ず成功させ、傭兵界隈ではあの尾頭と双璧をなすとまで言われた凄腕の傭兵。
従えているサーヴァントはセイバーのランスロット。
また、自分のサーヴァントに絶対の自信を持っており、「ランスロットは完璧にして最強。その他のサーヴァントは産廃」と豪語するほど。
また前述の通り彼はランスロット以外のサーヴァントを”産廃”と呼んで見下す癖がある。
世にはびこる産廃共を駆逐するべく、そしてランスロットは最強にして完璧であることを証明するために、彼は片っ端からありとあらゆるサーヴァントを倒していった。
そこで葛城財団の目に留まり、最強の証明を手伝わせて欲しいという条件を出され、専属の傭兵となった。

他のサーヴァントをやれ無能だやれ引く価値無しだのと言ってこいつは人権、それ以外はゴミって言うやつ、ネットにたくさんいるよね。


これは完璧な私怨なのですが、
「北斎(剣)いらね。ランスロットの方がいい。」とか、
「セイバーならランスロット一強。武蔵はいらん」とか、
「大体ならランスロットで片付く。他はゴミ」とか、
「そこまで北斎(剣)つかうならランスロットでよくね?」とか
この置鮎とかいう男はクソ作者がネットの海をさまよい見てきた、上に述べたようなクソみてーなコメントに対する恨みつらみを混ぜ合わせてできたキャラクターなのです。

みんなは他のサーヴァントを貶して自分の好きなサーヴァントだけ褒めるやり方は…やめようね!
キミには大したことないサーヴァントだとしてもそれは誰かの大好きなのだからね。

 
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