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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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最終章『ふたりで…』
  女神創造領域 『崩壊世界』其ノ弐

 
前書き
かいせつ①

⚫ジーク
前回の話にて登場したサーヴァント。
マスターの名前は花江 渚(はなえ なぎさ)
彼女本人が言っていたように以前大和に会ったことがあるようだ。

⚫シャルルマーニュ
正義感が強く、善悪をカッコイイかかっこ悪いかで決めるサーヴァント。
残念集団シャルルマーニュ十二勇士を束ねる残念なリーダー。
マスターの名前はシャロン・U・ヴィレッジ(本名は木村 良子)
極稀に、FGOをプレイしていなくともサーヴァントを召喚できる者がいるがその秘密は他のFate関連のゲームをやり込んでいたことが関係する。
彼女の場合、シャルルマーニュの登場するFate/extellaLINKを相当やりこんでいたらしく世界崩壊直後彼の召喚に成功している。
彼女とシャルルマーニュの活躍は外伝『赤』にて書かれる予定だよ。

 

 
「わー、なにあれ気色悪ーい。」

京都。
世界崩壊直後、そこはモンスターで溢れ平安時代に戻ったようだとも言われた。
それから時が経ち今では妖殺しや鬼の頭領などが統治し、絶妙な均衡を保ちながら平和な日々を送っていた。
そして今、旧神柱を見上げているのは妖側の頭領。

「うーん…あんなものがここに生えられたら、ちょっと困っちゃうかも。」
「困るとかそんなレベルじゃないと思うんだ。」

身の丈2メートルはあるんじゃないかと思うほど長身な女性。
明らかに人間の肌の色ではなく、人外であることは伺えた。
鬼である彼女…『伊吹童子』はマスターを抱きかかえながらそう呟いた。

「んん?中々ヤリがいのありそうなマンコが1匹…気に入った。お前俺のサーバントになれよ。」

旧神柱の顔がこちらを見下ろし、伊吹童子にそう言うが…。

「嫌よ。気持ち悪いし。」
「あ?」

旧神柱、もとい葛城恋の大胆な勧誘を一蹴すると、伊吹童子は抱えていたマスターをおろし。

「じゃあマスター。お姉さんちょーっと本気出すから、ここから離れててね。」
「ああ、うん。」

その手に持つは草薙剣。
汚い笑顔をうかべる旧神柱を睨み、伊吹童子は霊基を変えた。

「おいおいどうした?マスターを置いてくなんてやっぱ俺様のチンポの方が」
「疾く、消えよ。」

その瞬間、空気が重く冷たいものとなる。
鈍感な旧神柱でもさすがにそれに気付くほどの威圧感。
さっきまでマスターを甘やかしていたサーヴァントとは、同一とは思えないほどのもの。

「今一度言う。疾く消えよ…絢爛なる京の都に醜き貴様は似合わぬ…。」
「ハ、ハハッ!いいじゃねぇか!益々気に入った!!俺様は強気な女を屈服させるのは大好きなんだ!!」

怖気つぎはしたが今の自分は無敵の旧神柱。
次第に性欲が勝ち恐怖なんぞは頭の隅にでも追いやっておくとする。
そして伊吹童子を囲むように次々と生えてくる旧神柱達
皆どれもニンマリとした笑みを浮かべ、根元からタコのような触手をうねらせていた。
しかし、

「…!!」
「二度言った、三度は言わぬ。消えぬのなら我が消してやろう…!!」

瞬時に斬り伏せられる複数の旧神柱。
伊吹童子にとって何本生えようがそれは雑魚同然。
マスターとの思い出を築く為の京都にこんなものを生やしてはいけない。
殺す。殺すのみだ。



同じく京の都の別方面でも、旧神柱は出現していた。

「ほらほらどうしたサーバント共ォ!」

触手を叩きつけ、滅茶苦茶にレーザーを雨のごとく降り注がせる旧神柱。
逃げ惑う人々。抵抗するサーヴァント。

「男のサーバントはいらねぇ!俺様が欲しいのはマンコだ!!チンポは死ね!マンコ共はヤラせろ!!」

辺りを蹂躙する旧神柱。
滅茶苦茶に放たれるレーザーや薙ぎ払われる触手は例えサーヴァントでも容易に近付けさせない。
しかし、

「あ…れ?」

ずるり、と旧神柱がズレる。
木を切られたかのように根元から斬り裂かれた旧神柱はそのまま絶命し、大きな音を立てて倒れた。

「あの化け物を…一撃で!?」
「間違いねぇ…!こんなこと出来るのはあのママしかいねぇよ…!」

名も無きモブがそう呟く。
倒れた旧神柱。
そのそばに、噂の本人が立っていた。

「何とも醜く、下品な物言い…。これは息子にはお見せできませんね。」

前述したとおり、この京の都は大きく分けて2つの地区が存在する。
茨木童子が統治する妖達の地区と、

「ここは私達の場所。あなたのようなものが居座る場所ではありません。よって母が粛清致します!!」

源頼光が統治する、妖殺しの地区だ。

「よし、行こう頼光!」
「あなたはダメです!」

隣にいるマスターらしい男が令呪をかざして指揮を取ろうとするが、咄嗟に抱きしめられてしまう。

「いや…なんで!?」
「あのような下賎で卑猥なもの…母として見せる訳にはいきません!」
「いやでも、マスターとして」

女性器を連呼する旧神柱の物言いは確かに悪影響だ。
下品極まりないその口調はもし子供が聞いてしまったとしたら…?そう思うだけで頼光は胸が締め付けられるような思いでもあった。
だから聞かせたくない。よってマスターを戦場に出す訳には行かなくなった。

「いやだって他のマスターはさぁ!!」
「いいえダメです!母は許しません!!」

と、親子喧嘩のようにも見えるそれを傍目に見ながら、1組のサーヴァントとマスターが通り過ぎて行った。

「あれも愛ゆえ…なのかな。」
「当麻もあのような愛をお望みですか?」
「いやいや!そんなことないって。」

当麻と呼ばれたマスターが連れているサーヴァントだが、全く見た事のない格好の女性であった。
FGO、果てはFateの関連作品のどれにも当てはまらない謎のサーヴァント。
刀を持っていることからセイバーかもしれないという事しか分からない。

「相手は鬼じゃないけど、やれるな…セイバー。」
「当然です。当麻が斬れと言うのなら何だろうと斬るのがサーヴァント。さぁ、あの魔神柱を見事に斬ってみせましょう。」





「きゃああああ!!!」

また別の場所ではマスターではない一般人の女性二人が何かに追いかけられていた。

「あーあうー。」
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」

赤子のような喃語を話し、泣きじゃくりながら追跡する"何か"
それはまたもや、あのラフムを模したものだった。
しかし。

「ねぇなにあれ!?」
「わかんない!わかんないよぉ!!」

ラフムらしき"何か"から逃げる女性二人は振り向く。
こちらをニヤけた面で見ているラフム。
顔は人間のもの。葛城恋の顔そのものだった。

「あう、あっあっあ!」
「危ない!!」

一人の女性が別方向からやってきてラフムに飛びかかられる。
押し倒され、組み伏せられラフムの股間からにょきりと何かが現れる。

「やめて!!いやぁ!!私もああなりたくない!!」

強引に服を破られ、生えてきた"それ"を秘部に挿入される女性。
友達らしきもう1人は、腰を抜かしてそれを見ることしかできなかった。
少し前後運動をし、ラフムらしき何かは液体を注入する。

「あっ、ああ…あうううううあ」

するとどうだろうか。
女性はブルブルと震えだし、黒く変色していく。
手足は棘のようにとがり、身体は異様に細くなり、顔立ちは急激に肥え男のような顔へと変わっていく。

「う…嘘。」
「あっああー。」

彼女は、ラフムらしき"何か"に変貌してしまった。
やがて友達だった女性と目が合うとニンマリと笑い、

「あー、えへへへへへ…。」
「いや…来ないで…!!いやぁ!!!」

産まれたばかりだからか、不安定な足取りでゆっくりと向かってくるラフム。
しかし、

「あっ、あぎゃあああああああああ!!!!!」

それは、突然燃えた。
焼かれる苦しみから逃れるべく、暴れ、のたうつラフム。
しかしその動きは段々と弱くなり、ついには動かなくなった。

「なに…?」
「だいじょーぶ?」

腰を抜かし、何が起きたのか分からない女性。
しかしそんな女性を不思議がって覗き込む者が一人。

「きゃあぁ!?」
「そんなに驚かないでよー。私、あんなキモイのじゃないんだからさー。」

おっとりとした感じの、高校生くらいの女子だった。
staynightのヒロインの一人、間桐桜をデフォルメにした人形を抱え、どこか浮世離れしたようなふわふわした印象を受ける子だった。

「あなたは?」
森川 真誉(もりかわ まほろ)。陰陽師だよ。」
「おん…みょうじ?」
「だからここは任せて。ここから少し走れば避難所があるから。」

腰が抜けた女性を立ち上がらせ、真誉と名乗った少女はもう片方の手に御札を持った。

「あぁ…本当に気持ち悪いなー。」
「ンン…拙僧もそろそろ吐き気を覚えてきました頃。いい加減消えて欲しいものですがね。」

遠くにいる旧神柱を見上げる彼女。
陰陽師を名乗った彼女しかいないはずだが、明らかに彼女のものでは無い声が呟きに返答した。

「そうだね。じゃあ消してよ。」
「ええ、仰せのままに。」

声の主は、木の上。
彼女はマスターであり、サーヴァントはアルターエゴ、あの蘆屋道満を従えていた。

「あんなのに世界を支配されたら私は悲劇のヒロインになれないよ。私の理想に、あれはいらない。」
「ンンンンンン!ではこの蘆屋道満!マスターの理想の為尽力すると致しましょう!!さぁ昭光殿!お目覚めを!!」




そしてまた別の地方では

「あれって…テレビに映ってた葛城財団のトップだよな…!」
「ええ、そうですね。確かモリアーティさんが悪の風上にも置けない男と仰ってました。」

旧神柱を見上げるマスターとサーヴァント。
彼は喫茶店、『ダークラウンズ』の店長である吉柳 飛翔(きりゅう つばさ)
そしてサーヴァントは謎のヒロインXオルタ、えっちゃんだ。

「何はともあれ明日もお店は営業します。アイドルもやります。予定はたくさんあるのにあんなキモイのに居座られてはたまったものではありません。マスター。消しましょう。」
「え、アイドル?えっちゃんアイドルやるの?」

よくわからないことを言い出すえっちゃんにマスターは聞き直すが、既に営業のメイド服からいつもの霊衣にえっちゃんは着替え、戦闘態勢に入っていた。

「ええ、詳しいことは後で。マスターは勿論私のファン一号ですから。」
「あ…ああ!!」

戸惑いながらも頷くマスター。
そしてえっちゃんは明日の日々の為、そしてヴィランとして旧神柱を刈るのであった。



そして場所は変わり、
かつて探偵と特撮ヲタクがお世話になったあの島でも…。

「なんで…おれ、さまが…こんなデブごときにぃい…!!」

バキバキと音を立て、崩れゆく旧神柱。
そこにいたのは拳を前に突き出した白島 陸であった。

「なんとか…なった…!」
「すごいわねマスター。まさか本当に魔神柱みたいな化け物を倒せるなんて思わなかったわ。」

そういい、彼のサーヴァントであるステンノはぱちぱちと拍手を送った。

「…なんか冷たくありません?」
「そう?これでも精一杯の賞賛を送っているのよ?ほら、こうして女神が応援しているのだから、"次も"頑張りなさいな。」
「次も…?」

ステンノの言ったことに陸は思わず聞き返したが、それは聞き間違いでも何でもなかったことがすぐにわかった。
なぜなら

「ぶっははははは!!!たかが一回倒したくらいじゃ俺様は死なねぇんだよ!!」

彼の目の前にまた新しく、旧神柱が生えたのだから。

「さっきはよくもやってくれたなァ!デブの分際でよぉ!!」
「そ、それは自分のこと鏡でよく見てから言え!!人のこと言えないぞ!!」

悪態をつくも陸自身、旧神柱一本を折るのは中々骨の折れる作業だ。
さっきの一回倒すのでやっとだったし、また同じ相手をするのには無理があった。

「けどステンノ様が見てるし。引くに引けないだろ…!」

拳を握る陸。
そして腰には、あの時暮馬からもらったマスタードライバーが巻かれていた。
魔力の流れをサポートする為のものだが、今の彼にとってはそれ以上の意味が込められている。

「いくぞ魔神柱!何度でも復活するなら何度でもへし折ってやる!!」

踏み込み、また一撃をくらわせてやろう。
そう思った時だった。

「?」

カカカッ、という何かが連続して突き刺さった音。
見上げれば旧神柱に、細い矢のようなものが三本刺さっている。

「あ、なんだ?」

何処かからアーチャークラスの援護だろうか?
そう思ったがどうやら威力は期待できないみたいだ。
多分旧神柱も蚊に刺されたくらいのものとしか感じていないだろう。
だがしかし。

「この気配…。」
「どうしましたステンノ様!?」

ステンノが辺りを見回す。
何事かと思い振り向く陸だが、当然辺りには何も無い。

「そう、そこにいるのね。」
「?」
「上よ。マスター。」

気配の主は空にいた。

「Set…指定(include)

白馬のペガサスに乗り、サーヴァントと共に矢を放った主がそこにいる。
既に矢を番い、次に放つ瞬間だった。

この星の縮図を(magnet)

呪文めいたものを唱え、矢は放たれる。
矢は真っ直ぐには飛ばず、不思議な軌道を描いて旧神柱めがけ飛んでいく。
そして、

「…!!」
「まぁ、とんだ離れ業。」

弓道の継ぎ矢のように、
既に刺さった矢、その矢筈の部分に今放ったものが刺さったのだ。
刺さっていた矢はそれに押されるようにして、さらに深く刺さる。
旧神柱の内部に深くめり込ませる。
それが、真の狙いだった。

「Andset、指定(include)それは岩すら砕く!(Rock)

砕ける旧神柱。
ボロボロになった身体からは赤く光るものが覗き、空からやってきた男とサーヴァントは容赦なく追い打ちをかける。

「あれがコアだ、メドゥーサ。」
「了解しました。」

メドゥーサと呼ばれたサーヴァントがマスターからの指示を受け、手綱を握りしめ、叫んだ。

「早急に消えてもらいましょう…『騎英の手綱(ベルレフォーン)』!!!」

ペガサスが翼をはためかせ、そのまま旧神柱に突っ込んでいく。
再生しつつある身体を突き抜け、コアと呼んだ赤い球体を貫くと、旧神柱は悲鳴をあげて消えていった。

「…。」

呆気に取られる陸。
その目の前に、彼は降りてきた。

「種火の島の白島 陸…だな?」
「あ、はい…そうですけど…。」

陸の目の前に降りてきた男。
どことなく冷たい印象は受けるが、特に悪そうな印象もなかった。
その前に自分を助けてくれたんだ。
悪く思えるはずがない。

「お、俺に何か用で?」
「ええ。お迎えに上がりました。」

何故ここに来て助けてくれたのか、
その理由は男のサーヴァントであるメドゥーサが説明してくれた。

「今、全国各地に魔神柱らしきものが出現。特に多いのが東京周辺、更にその中でも強大な魔力反応のものが4つとなっています。」
「はい…。」
「助けに行きましょう。彼を。」
「か、彼?彼って?」

彼と言われても誰だか分からない。
しかし説明は後だと言わんばかりに男は踵を返し、メドゥーサの宝具で生み出したであろうペガサスに乗り込んだ。

「ともかく時間が無い。俺は天王寺 零(てんのうじ れい)。こっちはサーヴァントのメドゥーサだ。」
「メドゥーサです。よろしくお願いします。」

手短に自己紹介を済まされる。
しかし、

「随分と偉くなりましたね。姉の私に挨拶すらないなんて。」
「あっ、」

そんなことはステンノが許さなかった。
主にメドゥーサに対して。

「いえ…申し訳ありません…ただ今は一分一秒と時間が惜しいのです。」
「私よりも優先すること?あんな気持ちの悪い魔神柱を倒すのが。」
「そ、それは…!」

長身のメドゥーサが幼さが残る見た目のステンノにぺこぺこと申し訳なさそうに頭を下げている。
実にシュールな光景ではある。

「と、ともかくステンノ様!お説教は後にして今は急ぎましょうよ!」
「…そうね。姉としてはまだまだ足りないのだけれど世界の危機なのだし、これくらいで勘弁しておきましょうか。」



「くそぉ!!どけぇ!!」

場所は戻り東京。
そこでまぁ俺達は頑張って旧神柱を殺しまくってる。
やべーのな、倒すと聖晶片ジャラジャラ出てくるわ。
ってそんなことはどうでもいい。

「さっき言ったことは本当なんだな!!紫式部!!」

走りながら大和が紫式部に何かを聞き返す。
その何かとは

「はい。旧神柱の中に強大な反応を示すものが四本。その内一本が"核"をなしていると思われます。」

無限に現れ続けている旧神柱。
しかしそれにも、全ての旧神柱に魔力を送り続けているリーダー、すなわち"核"にあたるものが存在するのが魔力探知により分かった。
ならそこにまっすぐ向かってそいつをぶっ殺せばいいだけの話だが…

「しかしそれを囲うように三本の旧神柱が守り合い、結界らしきものを展開しています。」
「もうそこまで来ると…"アレ"しかないよね。」

結界には手も足も出せない。
そして三本の強大な魔力を持った旧神柱が結界を作り出している。
となれば、おっきーの言ったアレしかない。

「それぞれのエリアにいる旧神柱を各個撃破するしかありません!」
「やっぱそうだよな!!」

ゲームのイベントよろしく、まずラスボスを倒すには周りのヤツから片付けていかなきゃならないってことだ。
そして今、俺達が向かっているのが最初の一本目だ。

「いた…!」

見ただけで分かる。
とてつもない禍々しさ、ビリビリと肌で感じる邪悪な魔力。
間違いない。こいつが結界の一角を担ってるやつだ。

『我は…化身。』
「は?」

旧神柱はこちらの気配に気付くと、ゆっくりと顔を向けた。
顔がたくさんあるのは普通のやつと変わらないが、この旧神柱は至る所に歯車がついている。

『我は…化身の一つ…王たるものの忠実なる下僕…世界を破滅へ導く機械仕掛けの男…チクタクマンである。』
「チ…チクタクマン?」

今までの旧神柱とは違う口調。
間の抜けた名前だが、明らかにこいつは違う。
こいつは…ヤバい。

『滅びるがよい人類。そして英霊は全て王へと捧げられる。消えよ人類。それもまた機械仕掛けのからくりなのだ!!』

閉じていた目がカッと開かれる。
目が光り、それと同時に起こったすさまじい爆発は簡単に俺達を飲み込んだ。

「なんだよ今の!?」
「さぁな…魔力量も強さも桁違いという事は確かだ。」

触手をくねらせ、チクタクマンと名乗った旧神柱は悠然と立っている。
さぁどうやって倒してやろうかなと思った、その時だ。

「…!!」

チクタクマンが、燃えた。

「あ、あぁぁ"!!!あづっ!!あづいいいいい!!!!なんだこれは!!なんだこの炎は!!」

青い炎に包まれ、チクタクマンはのたうつ。
触手をがむしゃらに振り回し、なんとか熱さから逃れようとするが火はなかなか消えてくれない。

「この炎!!貴様だな!?生ける炎!!どこにいる!!この炎こそあやつしかいない!!出てこい生ける炎!!!」
「やはり…あれを素体に使っているだけあって、天子様の火は特に効くようですね。」

ふわり、と俺達の前に3人の少女が着地する。
いや待て、こいつら見たことあるぞ!?

「あれは…!」
「舞のご友人の方々じゃねーか!!」

と、以前舞のイカれた結婚式に来ていたアビゲイル、楊貴妃、ゴッホ…とフォーリナーにそっくりな三人組であった。

「こんにちは皆さん。」
「アビー!ユゥユゥとゴッホも!」

ご友人に駆け寄る舞と北斎。
そっくりさん達は…いやもういいわ。これ絶対本物だろ。

「なんだい急に、勢揃いじゃないか。」
「世界がこのようになっておられるとのことで、北斎様と舞様をお助けするべく楊貴妃、こうして参りました。」
「お兄様の危機ですから…ゴッホも来ちゃいました…えへへ。」

楊貴妃もゴッホももう第三再臨だし。これ確定だわ。

「さぁ、舞さん、お栄さん。」
「…。」
「手を取って。共に行きましょう。」

と、アビゲイルが二人に手を伸ばした。

「マイ。」
「大丈夫。覚悟は出来てるよ。」
「そうかい。」

北斎と舞は一度顔を見合せ、何かを決心して頷くと迷うことなくアビゲイルを手に取った。
その瞬間、眩い光に包まれる二人。
彼女らフォーリナーと同じように第三再臨の姿へと変わる北斎。
それと、

「お、お前…なんだそれェ!!」

なんか舞の姿もやべー事になった。

「そういや言ってなかったな。この助平、俺達と同じふぉおりなぁって奴なんだよ。」
「へ?」

第三再臨となり体の主導権が北斎自身となった彼女(?)が、事情を説明してくれた。
てかなに?フォーリナーって新しいの実装されてたの?
俺知らないんだけど。

「そ。僕、フォーリナーなんだ。」
「いやサラッと言うな。説明してくれよ。」

真っ白な肌。足まで長く伸びた黒髪。
腰からは蝶のような綺麗な模様をした羽根が伸びている。

「なりたくないって考えたけど、ここまで来たらもうなるしかない。あいつがここまでするのなら、僕だって本気を出すよ。」

腕は黄色い布で何重にも縛られているが、それを補うように至る所に縛ってある黄色の布が伸び、手の役割を果たしている。
顔半分を覆っている仮面、そして右目は黄色く光っている。
じっと見てるとマジでおかしくなりそうだ。

「…知ってた?」
「いやあたしも初耳だって。」

この中では舞と仲の良い葵に聞いてはみるが、どうやら彼女も知らなかったもよう。
なんだよフォーリナーって。

「許さぬ…紛い物風情が…!我こそ王の一つにして這いよる混沌より力授かりし純粋なるフォーリナー!!」

と、ここでようやく火を消し終わったチクタクマンと名乗る旧神柱がゆっくりと起き上がる。

「紛い物?それはあなたの方でしょう?」

ギザギザの歯を覗かせながら、アビゲイルはにんまりと笑い

「あなたには微塵も興味はありません。ですが邪魔なのでこの世に塵も残さず焼き払いましょう。」

青い炎を周囲にごうごうとゆらめかせながら楊貴妃は妖しく微笑み、

「今のゴッホは…お兄様の妹。お兄様の敵は…ゴッホの敵。じゃあ殺していいんですよね?いいんですよねぇ!?ふふ、えへへへへへ!!!!」

ゴッホのは見てるこっちがどうにかなりそうな情緒不安定そうな笑みを浮かべ、

「じゃあやろうか助平。こいつにゃ俺もアゴもそりゃあ鬱憤が溜まってっからなァ!」
「うん…何度でも復活するみたいだし。何度でも殺せるよ。なんか興奮してきた。」

とまぁ、フォーリナー達は全員ロクでもねー笑みを浮かべながら自称チクタクマンを名乗る旧神柱を見上げた。

『愚かな…同じフォーリナーでありながら何故!何故私と手を組まない。』
「簡単だよ…!僕はお前が大嫌いだからだ。」

身体に巻かれた黄色い布をはためかせ、舞はこちらに振り向き、言った。

「あのチクタクマンっていうのは任せて。あいつとの因縁は今度こそここで切る!僕達…不道徳な降臨者達(インモラル・フォーリナーズ)で…!」

やりたいっていうのならやらせればいいだろう。
それにこいつらならやれるって思える。
だから、

「ああ、任せた。」

こいつらを信じ、俺達は先を急ぐことにした。 
 

 
後書き
かいせつ②

⚫伊吹童子
京都を統治しているサーヴァントの一人。
普段はマスターを甘やかしまくるお姉さんだがマスターに害をなすものが現れれば性格は一変。
全てを無慈悲に屠る鬼となる。
ちなみにこの作品はハーメルンにて連載中の崩壊世界シリーズの1つ。
邪帝さん作の『そうだ!崩壊した京都で生き抜こう』からのゲスト出演。
いわばコラボだよ。

⚫源頼光
京都エリアを統治している妖殺しの頭領。
隣のエリアの伊吹童子とは表面上では普通だが実は仲がとても悪い。
マスターを息子と呼び、常に甘やかしている。
もし息子に危害が及ぼうものなら彼女はたちまち修羅と化すだろう。
リョウタロスさん作『崩壊世界で源氏バンザイ』からのゲスト出演。

⚫桃セイバー
FGOどころかFate系列の作品どれにも存在しないサーヴァント。
刀を振るい、三つの魂を連れている黒髪長髪のナイスバディ。
真名は日本人なら誰でも知っているあの英霊。
そしてマスターはその真名からとって"桃"という愛称で呼んでいる。
千点数さん作の『Fate/search another-sky』からのゲスト出演だよ。

⚫蘆屋道満
何やら暗躍している陰陽師。
マスターの『間桐桜のような悲劇のヒロインになりたい』という願いを叶えるため頑張っているらしいが…
この2人の活躍は外伝『紫』にて見れる予定だよ。
お楽しみにね。

⚫謎のヒロインXオルタ
神戸市にてマスターと喫茶店『ダーク・ラウンズ』を営業しているサーヴァント。
糖分補給とマスターからの魔力供給は毎日欠かさない。
あと『蜘蛛の糸』のモリアーティさんとは知り合い。
この2人も崩壊世界シリーズの1つ、『崩壊した世界でえっちゃんに糖分補給する話』からのゲスト出演。
たのしみにしてますはやくこうしんしてください(血涙)

⚫メドゥーサ
ステンノ様と陸を助けにやってきた二人。
マスターの名前は天王寺 零。最近崩壊世界シリーズにて増えてきている逸般人だ。
サーヴァントのメドゥーサはその零が信頼している数少ない人物。
冷静で物静かだが、あまり感情を表に出さないマスターを気にかけている。
なお、やはり姉には頭が上がらない。
そして2人は陸とステンノ様を誘い、ある人物を助けるために東京に向かうようだが…?
ちなみにみっつーさん作『崩壊世界の不死殺し』からのゲスト出演。
あと外伝『赤』にも出演予定だよ。待っててね。

⚫フォーリナー達
舞くんを援護する為にやってきたフォーリナー達。
実はこの三騎のフォーリナー、ただのそっくりさんではなく本物だったのだ!!
そして舞くんもまたフォーリナークラスのサーヴァントだったのだ!!


次回もお楽しみに。
あと読み返して気付いたんだけど旧神柱さんサーヴァントから総じて気持ち悪いって言われてたの自分で書いたのに思わずお草生えましてよ。
 
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