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艶やかな天使の血族

作者:翔田美琴
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4部 淫楽に堕ちる天使
  19話 2つの蛇

「エリオットさん……どうしたのですか?」
「……」
「身体……震えていますよ……」
「……俺は……正しかったのかな……」
「……エリオットさん」
「覚悟はしていた……こうなる事は。なのに…実際に起こると、何て、苦しいのだろう?……この身を何かで埋めないと……」
「アッ!アアッ!アアッ!エリオットさん」
「真っ暗な闇に飲み込まれそうだ」

 今夜のエリオットさんは激しいくらいにキスを交わす。まるで何かを確認するように。薄い暗闇の部屋でわからないけど、エリオットさんは泣いているように感じた。 
 縋り付くように腕を絡める。私の身体に、そして胸に顔を埋めている。
 こんなに弱気なエリオットさん、初めてみた。今まで、精一杯に突っ張っていたんだ。自分自身が壊れないように。
 でも……。それも限界なんだ。
 だから……快楽を、淫楽を、求めにきた。
 その相手は愛妻ではなくて私というレム家の外の人間。何も関係ない女。
 でも、このセックスは腹いせの為のセックスじゃない。エリオットさんは例え腹いせでも相手の事を気遣ってくれた。

「大丈夫…?痛いなら…言ってくれ…。今夜はたぶん1番激しいと思う…自分でも」
「気持ちいい…気持ちいいよ…エリオットさんの…セックス」
「痛くないかい?」
「深く入ってるのに、痛くない。他の男はみんな痛いのに…」
「そう…か。俺も君のなかなら何時間でもいられる」

 そして深くキスを交わす。熟練の舌が私の舌をもてあそぶ。相変わらずこの人の口は甘い。するとエリオットさんも同じ事を考えていた様子だった。
 
「君の口は甘いね。まるで花の蜜のように甘い。ここから溢れる体液まで甘い。……昔から知っているような気がする」
「私……今まででエリオットさんが1番、相性いいみたいです。身体の相性が…」
「そうか。だいぶ、汗だらけだね……綺麗にしてあげるよ」

 深夜の風呂場に行けば、まるで絡まるように後ろから水を浴びて抱いてくれる。
 胸を丁寧に愛撫されて、弄ばれて、花びらをソフトなタッチで弄る。
 私ははしたない声を上げて快楽に身を委ねる。アソコからはドロドロに愛液が流れる。それが感度を上げる。
 私達はまるで蛇のように絡まる。2つの蛇のようにお互いを貪る。絡まったまま、離れたくないように。
 離れたくない……。
 こうしていたい……。
 私も銀髪の悪魔の魔力に囚われていく。
 シャワーの水が心地よく、私達を濡らす。
 タイルの上で私はとうとう懇願してしまった。

「エリオットさん……後ろから、入れて!突きまくって…!激しく…!」
「後ろは嫌じゃ無かった?後ろからされた時、痛くて堪らないからって話したよ…?」
「お願い…!あの時のトラウマを壊して欲しいの…!あなたに…!」
「……わかった。その前にコンドームはするからね……」

 水菜のタイルに身体を預ける仕草、エロティックだね。喘ぐ姿もいい。
 水菜とすると自分自身の限界も知らないでつながっていられる。
 その度に想う。もっと、もっと深く、魂の奥まで…つながりたい。記憶に刻むものじゃない。魂に刻むものだと想う。
 
「いくよ……水菜」
「アウッ!ウウッ!」
「力を抜いてご覧?お尻を突きだす感じで……」
「どうしたらいいのか……わからない」
「上手く力が抜けてきているね……奥までいけるよ」

 エリオットも目の前の淫楽に陶酔する。
 空っぽになりかけた身体に埋まっていく。悪魔が求める淫楽。ここだけが血の匂いなどしない。匂い立つのは花の香り。
 無意識で腰が踊る。水を浴びながら目の前の花を味わう。俺の顔はどうなっているのだろう?喜んでいるのか?楽しんでいるのか?常に水菜と口づけているようなものだから、俺の顔がどうなっているのかもうわからない。
 汗も自然と流れる。これだけでもスポーツになる。最早、俺達には言葉なんていらないのかも知れない。この身体さえあればいい。心さえあればいい。
 
「ふ、深くきてる…!すごく深くきてるよ…エリオットさん…!」
「どんな気分だい?気持ちいいのか、それとも深すぎるのか…説明してみて…」
「深すぎる…だけど…こんなの初めて…!こんなにも求めてくれる人がいたのが嬉しいの…!」
「腰…動かすよ…」
「エリオットさんはどんな気分ですか?」
「俺は…頭の中はめちゃくちゃだよ。気持ち良過ぎて依存症になりそうだよ」

 激しく腰をゆらし、背後から水菜を覗く。

「でも……逃さない。君とは離れられない。離れたくない」

 せめて仕事がないこの間はこれだけに夢中になりたい。
 酒もいい。煙草もいい。この淫楽が欲しい。何も考えないで本能的になれるこれさえあればいい。
 俺もあいつと同じなのか?
 水菜に溺れたミカエルと同じなのか?
 この子は男を狂わせる魔性の花なのか?
 この子を独占している心地よい時間はいつまで続く?
 俺はどこまでも堕ちる。
 天使という名前の悪魔に。快楽に溺れた悪魔に。欲望に溺れた悪魔になっていく。
 夜が短く感じるのは気のせいか?
 もっと、もっと、彼女が欲しいのは気のせいか?
 欲しい。欲しい…!
 俺の悪魔が言っている。

『もっとこの花の蜜を寄越せ』

 まるで花の蜜に群がる蜜蜂のように、それこそ夜が明けるまで、俺達はずっと身体をつなげ続ける。
 水菜も俺という淫楽の虜になり、俺しか見えていない。
 頭の中はもうめちゃくちゃだ。
 理性も本能も、ただこの淫楽だけが判る。
 
 今にして思えば、あの時、俺は水菜という魔性の花に魅了されていたのだろう。
 その魔性の花を手放す時が来るのは、この時はまだ判ってなかった。
 幻惑の中にいたからだ。
 
 感じるのはこの身の快楽と甘い香りと水菜の口づけと彼女の身体の感触だけだった。
 
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