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艶やかな天使の血族

作者:翔田美琴
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2部 銀髪の悪魔
  8話 銀髪の悪魔

 ホームステイ初夜はエリオットさんとアネットさんとジェニファーちゃんとの家族揃っての夕食からスタートした。
 アネットさんは新たなホームメイトの為にかなり凝った料理を出す。特製ビーフシチューだった。パルメザンチーズをかけてライスと一緒に食べるのがレムさん流。その他にもパセリなオレガノなどハーブ類を取り入れた料理だった。家庭的だ。
 ビーフシチューの他にサラダもある。ちょっと困った。私はサラダが苦手なのだ。しかしビーフシチューのコクはすごく出ていて美味しい。これならエリオットさんも自分の妻として迎えるのもわかる。 

「美味しいかしら?」
「アネットさんのビーフシチュー。美味しいです」
「サラダ、もしかして苦手だったかな。進んでないよ?」
「すいません。苦手なんです」
「何なら代わりの料理作ってあげるわ。すぐ出来る1品料理だから」
 
 アネットさんはキッチンに向かうと卵を溶いて、軽く塩と胡椒とオレガノ、ローズマリーで味付けして卵焼きを作った。
 仕上げにブラックペッパーを振りかければ完成だ。

「はい。どうぞ。シンプルなたまご焼きよ」
「でも香りはとても良いです」
「どうぞ、食べて?」  
「あなたもジェニファーも食べる。卵焼き」
「頼めるかな」
「任せてちょうだい」 
 
 エリオットさんの家庭は温かみを感じる。ゆったりとした空気が流れているみたい。
 エリオットさんは軍服から普通のカジュアルファッションに着替えている。 
 ジェニファーちゃんは食欲旺盛だ。ビーフシチューをおかわりする。

「おかわり。ママ」 
「元気ね。ジェニファーは」
「水菜お姉さん、すごく優しいの」 
「算数でわからない問題をわかりやすく教えてくれたんだよ」
「水菜に早速貸しを作ってしまったな」
「貸しだなんて、ホームメイトだから当然ですから。もしかしたらここにいれば私の居場所が見つかるかも知れない」
「水菜。ここは君の居場所さ。変にお客気分は捨ててくれて構わない。元居た家族と同じ態度でいいよ」
「そういうことよ」  

 賑やかな夕食を終えてエリオットさんは家の案内をしてくれた。

「まずここがキッチン兼食堂ね。それからここがダイニングルーム。こっちが客間だ。2階に上がろう。この部屋が私の個室。書斎だね。向かい側が夫婦の寝室で左側がジェニファーの部屋。ここが君の部屋となる場所だ」

 ドアを開けた。一通りの家具はある。 
 ベッド、クローゼット、タンス、テーブルに椅子が2個。テレビも。床にはカーペットが敷かれていた。

「何か入用ならアネットに頼んで街の案内を受けるといい」
「それから…私の書斎にはあまり入らないでくれないかな。たまに一人にならないとどうも疲れるんだよ。君も一人になりたい時があるだろう?それと一緒と思ってくれると助かるかな」
「わかります、その気持ち」
「今夜はもう遅いから外に出るのは止めておいた方がいい。とりあえず郊外とはいえ、危険だからね。じゃあ。おやすみ、水菜」
「おやすみなさい、エリオットさん」

 変な気分。この人におやすみなさいを言う夜がくるなんて。
 ここが私の居場所か。静かで落ち着くなあ。ここ。ゲストルームだけどきちんと生活の空気が漂っているみたい。窓から見るとまるで森の中の一軒家だ。
 ベッドに横たわる。ふかふかして気持ちいい。何だか眠くなってきた…。寝よう…。

 水菜が眠りにつく頃、レム夫妻は新しいホームメイトの話をする。夫婦揃って同じベッドに横になり、薄暗い部屋で話す。

「新しいホームメイトを連れてくるなんてどうしたの?一体?」
「ン…。彼女の事か。彼女はミカエルの所にいたんだよ。だけど、性欲のはけ口にされていたらしい。彼女が俺の前で泣いたんだ。こんなの嫌だってな。思わず連れてきたよ。いきなり女連れてきてビックリしたかな」
「多少はビックリしたけど、すぐにわかった。あの子は居場所が無いのね、たぶん。自分が落ち着ける居場所が。生活費については問題ないわ。一人養うくらいなら何とかなるし。こういう機会も経験しないとね」
「これから色々あるだろうけど、暇では無いだろう?」
「そうね。ゲストルームを離して設計して良かったわね。万が一、この音を聴かれると気が引けるし」

 アネットはそう言ってエリオットの唇にキスをした。
 
「ンッ…アネット…ホームメイトへのあてつけか?これは?」
「心配なのよ。そのホームメイトが気になって身体の関係をするのが」
「信用が無いのか?俺は。……無いよな。ジオニック社でもたまに接待があるけど、必ず、最後は決まって、それが待っていた」
「色男も大変ね。こんなキスを味わった日にはみんなあなたの虜になるわ」
「虜になられたら困るけどな」

 他愛もない会話をしながら、彼らは自然とお互いに溺れる。夫婦の営みに、夜の生活に励む。
 薄暗い部屋に銀髪がよく映えていた。
 
「ウッ…ウッ…アウッ…」
「エリオット…今夜のあなた…すごく色っぽい…刺激を受けたお陰…?」
「そ…そうかな…ウッ…だ、ダメだ…喘ぐのが…抑えられない…アウッ」

 思わず身体を起こす。
 対面で彼らはリズミカルに身体を揺らす。
 こんなシーン、確かに見られたら、恥ずかしい。けど、なんだこの気持ち…?見せつけてやりたい…他の女を虜にしてやりたい…どうなるのか知りたい…一体…俺は…何があったのか…。
 血が騒ぐ。 
 俺の中の悪魔が…悪魔の血が騒ぐ…。
  
『私には居場所なんて無かったから』
『こんなの嫌。こんなのレイプじゃない』

 あの子は俺達の一家の都合できた。そして俺に着いてきて、気持ちを明かした。
 信頼してくれたのか。
 なら、信頼に応えてあげるよ。
 俺は…悪魔にも天使にもなってやる。
 地球のレム家からはこの人物はこういう呼び名が付けられていた。銀髪の悪魔、と。
 
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