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艶やかな天使の血族

作者:翔田美琴
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4部 淫楽に堕ちる天使
  20話 スケープゴート

 テレビでは特番を組まれてジオン公国軍の活躍の様子などを放送されている。
 しかし、戦況は徐々に膠着状態に陥ってしまっていた。
 小さなゲリラ戦は行われている様子だが、それだけで、1年戦争は混沌とした中に陥る。そして、エリオット・レムはその戦況が膠着状態になるのを待って、今は空港にいた。
 1年戦争は恐らくジオン公国は負ける。
 その前に家族の安全を確保して、この国から逃げて欲しいと想った。ジオン公国にいれば、家族の生命も危うい。せめてこの家族には無事でいて欲しい。
 エリオットに出来る事は、あの時、地球への亡命を蹴った時に、それでも万が一のことがあれば逃げて欲しいと貰ったつてで、家族を逃がす事だった。
 サイド6を経由して地球へと逃げて欲しい。
 せめてもの罪滅ぼしの為に。
 だけど。
 娘ジェニファーはもちろん、妻のアネットも反対はした。

「パパと離れるなんて嫌!」
「私も貴方と離れるのはできないわ」
「俺だってそれは同じだよ。だけど、今しかチャンスは無いんだ。この国から逃げるチャンスは。このままこの国に居ても、お前達の命の保証などない。俺はお前達まで失いたくないんだ」
「貴方はどうするの?」
「この国に残る。義務は果たす。だけど、この戦争は先は見えたと思う。負けるよ、ジオンは」
「水菜お姉さんはどうするの?私、水菜お姉さんにも来て欲しいな」
「水菜お姉さんは俺達の家族とは訳が違うよ。一緒に連れていく事はできない」
「どうするつもり?」
「別のつてに頼んで逃して貰うよ」
「とにかく今しかチャンスはないんだ。ジオン公国が攻めあぐねている状態のうちに安全なサイド6へ向かうんだ。その先のルートはエージェントに頼んで確保して貰っている」
「ただ……こんな事になるとは……すまない……アネット、ジェニファー……」

 そこでエリオットは家族と抱き合った。
 アネットは別れ際に言う。

「死なないで、エリオット」
「パパともう会えないなんて嫌!」
「死なないよ、死んでたまるか。俺にはやり残した事があるんだ」

 そうして、身内を逃したエリオットだったが、もう1人の、外の世界からの訪問者は、逃げるつもりもなかった。

「アネットさんとジェニファーちゃんは無事に逃げましたか?」
「逃したよ。君も逃げるかい?今の内なら逃げられるよ」
「逃げた所で何が変わるのですか?地球には戦争が渦巻いている。日本に帰るのは難しいでしょう?なら……私はここでエリオットさんにセックスで殺された方が余程幸せです」
「極端だね。逃げるなら死んだ方がマシだ…って聞こえる」
「でしょうね。エリオットさんの自由にしてください。この命はエリオットさんに拾われたものだから…」

 エリオットのサイド3の家には、今は水菜しかいない。そして主であるエリオットしか。彼はジオン公国軍の軍服を纏い腕を組んで壁に寄りかかる。玄関先で。明かりが彼を照らす。微妙な陰影で彼が笑っているのか、怒っているのか、呆れているのか、わからない。
 ややあって、エリオットの少し自嘲的な笑い声が聴こえて、発せられた言葉はこれだった。

「ハハ……君は俺に呪われたようだね。俺の自由にしていいのなら、答えは1つだけ」
「俺のスケープゴートになってくれ。淫楽という名前のスケープゴートになってくれ」
「エリオットさん…」
「この期間しか味わえない君との関係。とことん溺れて、俺も乱れる事にしよう」

 玄関でいきなりエリオットは水菜を壁に押し付けて、軍服を纏ったまま激しくキスをした。
 銀髪の悪魔は、どんどん淫楽に堕ちる。
 そして水菜も一緒に堕ちる。
 2人は秘密の関係に溺れていく。
 そして水菜は、秘められた彼のプライベートを覗いていくのであった。
 そして、あらゆる淫楽を楽しむ。
 拘束プレイ、隠し撮影、野外プレイ、SM、コスプレ、オトナのおもちゃ、アダルトビデオ、あらゆるものを愉しむ。
 そして水菜は銀髪の悪魔の森に囚われ、出られなくなったのであった。
 深く、紅い、紅蓮の森に。 
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