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Fate/imMoral foreignerS

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始まりから夏休みまで
  近野のどかには近づくなって話

 
前書き
こんにちは、クソ作者です。
やる気が湧いてくるうちにどんどん書いていきたいと思います。
それではどうぞ。 

 
「おまえ…昨日の!?」
「この前は世話になったな。フォーリナー。」

予想外の敵の登場にそこにいた全員が身構える。
赤髪の大男。この人がまさか…

「鬼武蔵に人間無骨…間違いない…こいつは森長可(もり ながよし)だ!!」

暮馬くんがバーサーカーの真名をそう叫んだ。
森長可…聞いたことの無い名前だけれども…。

「んで?今日は何しに来たんだい?まさかここでドンパチやろうってんじゃねぇだろうナ?」

一気に緊迫した空気になり、各サーヴァントはそれぞれの武器を。お栄ちゃんも大筆を持って警戒している。
だが、

「いや、そのつもりで来たんじゃねぇんだ。」

帰ってきた答えは、あまりにもバーサーカーらしからぬものだった。

「あの後ルーラーにキッつい灸を据えられてよ。迷惑かけたんだから謝ってきなさいとのことだ。というわけでこの通りだ。悪かったな。」
「え…?」

予想外の展開に全員がかたまる。
だってそうじゃないか。バーサーカーが戦うために来たんじゃなくて謝りに来たって言い出して頭を下げたんだから。
バーサーカーっていうのはもっとこう…血に飢えた感じとかそんな感じじゃなかったっけ?

「…キルケー。」
「ああ、彼は本心から謝ってるよ。周りに仲間の気配もないし罠というわけじゃなさそうだ。」

友作くんがキルケーに探らせるも、本当にそうらしい。
そうすると友作くんは気を取り直し、せっかくやって来た情報源から色々聞き出すことに目的を変えた。

「敵意は…ないんだな?」
「おう。殺せばオレの首が飛んじまうからよ。」
「そうなんだな。じゃあ森長可。お詫びのつもりで二、三ほど質問に答えて欲しい。」
「あ?」

森長可に気圧されることなく、友作くんは話を続ける。

「お前のバックにいる奴は…誰だ?」
「…会長のことか?他にも何人かマスターとサーヴァントがいるけどよ。」
「…目的は?」

僕達が襲われたあの日、お栄ちゃんは三騎のサーヴァントを見たと言った。
ならば森長可のいるところには、少なくとも四騎いることになる。
そして気になるのは、目的。
何故そこにサーヴァントを集めているのかという目的だ。


「それは…なんつったっけなぁ…なんかわるいカミサマをぶっ殺すための準備だとか言ってたな。」
「悪い…神様?」
「おう。つってもそう多くは聞かされてねぇからよ。まぁオレそもそも頭良くねぇし、難しいことは分かんねーから説明してくんなかったんだけどな!うはははは!!」

笑い飛ばし、ギザギザの歯が覗く森長可。
これは…嘘は言ってないと思う。
多分この人は…そういう人間だったんだ。

「詳しいことは分からないか…なら、分かりやすい質問をしよう。森長可。」

けど目的は分かっただけで儲けものだ。
さらに友作くんは話を続け、新しい質問を彼になげかける。

「お前に葛城の殺害を指示したのは、誰だ?」

そう、それが1番の疑問。
あの時何故僕は殺されそうになった?
恨みを買った覚えもないのに、
ただそういった質問をすると豪快に笑い飛ばしていた森長可は真面目な顔になり、腕を組んで少し考えてから、

「俺の殿様…マスターだ。会長からの指示じゃねぇ。マスターが殺せっつった。」

と、言った。

「そいつは誰だ?どこにいる?葛城と関係する人間なのか?」

友作くんはさらに細かく質問するが、難しい顔をした森長可はそれ以上答えることはなく

「それ以上は言えねぇ。」

言えない。
どうきこうがそれの一点張りだった。

「どうしてだ?」
「言えねぇもんは言えねぇ。第一言ったところでどうすんだよ。」
「そりゃあ勿論、マイの前で土下座させて気の済むまでぶん殴」
「謝るよ。」

そう、謝る。
僕は、そう言った。

「葛城、お前何言って…?」
「謝るよ。よく分からないけど、きっと僕がその人に殺したくなるくらい嫌なことをしちゃったんだよね?」
「おいおい、キミは殺されかけたんだぞ!?謝るべきなのはバーサーカーのマスターじゃないか!」

謝るのはあちら、
でも僕は、そうじゃないと思うんだ。

「このままモヤモヤしてスッキリしないまま終わるのも良くないから。」
「おい待てよ。マスターはてめぇお顔合わせたくねぇからこうしてオレを使わせたわけでなぁ…。」
「僕に会いたくない…ってことは、やっぱり僕が悪いんだね?」
「う…。」

しまった、という顔をする森長可。
僕と…顔を合わせるのも嫌な人。
よく分からない…僕は、そこまでして恨みを買ってしまった人がいるのだろうか…。

「謝って済む問題じゃないかもしれない…けど、このまま終わらせるのも良くないと思ったんだ。お願い鬼武蔵さん。あなたのマスターのこと、教えて欲しいんだ。」
「…。」

森長可は口を固く閉じ、喋らないつもりだ。
と、そう思ったけど

「…。」
「…お願い。」
「…オレから聞いたとか…言うんじゃねぇぞ。」

彼は思ったより、優しい人だった。






翌日。

「まさか同じ高校でしかも同級生だったなんてな…。」
「うん。ちょっとビックリした。」

放課後のこと。僕と暮馬くん、友作くんの3人は森長可のマスターがいる教室へと向かっていた。
あの後、彼から聞いた情報によると自分のマスターは学生。
さらにこの高校の生徒の2年だという。
それと最後に、森長可は忠告を残してくれた。

「謝る謝らねぇはお前の自由だ。けどよ、マスターはお前を尋常じゃねぇくらい恨んでる。お前が一方的に傷つくだけになるかもしれねぇぞ。」と。

だけど、このまま現状を引っ張っていくのもスッキリしない。
だから僕は、謝りに行く。
それに、傷つくのには慣れてるし。

「2-D…ここだね。」

ホームルームを終え、人もまばらになったこの時間。
教室から聞こえるのは数人の女性との話し声。
僕は深呼吸をして、コンコンとノックしてからドアを開けると

「失礼…します。近野(こんの)のどかさん…いらっしゃいますか?」

森長可から聞いたマスターの名前を言った。

「…。」

話を辞めた数人の女子生徒。
その中の一人が、僕を睨みつけていた。
間違いない…この人が近野のどかさんだ。

「…何?」

冷たい声と冷ややかな視線。
明らかに好意的ではない態度で接してきた彼女。
そうして僕はそんな彼女に…

「その…ごめんなさい。」
「は?」

まず、頭を下げた。

「ある人から聞きました。僕、近野さんに相当恨まれてるって…。」
「…。」
「僕が知らず知らずのうちにあなたに嫌な思いをさせたのなら、謝ります。本当にごめんなさい。」
「…。」

深深と下げた頭に、冷たい視線が突き刺さるのが分かる。
その向こうからは女子生徒達の声。
「謝罪…え、何?」「近野さん何したの?」「てかあいつ葛城じゃね?ほら、虐められてたやつ。」
と様々な声が聞こえる。

そして少しの沈黙の後

「…うざ。」
「え?」
「うざいって言ったの。」

そう、冷たく突き放された。

「近野さん!!」
「そういうのやめてくんない?謝ればいいと思ってるその見え透いた誠意がムカつく。」
「お願い!待ってよ!!」

近野さんは机に置かれた自分のカバンを持ち、その場から立ち去ろうとする。
そこで僕は行く手を塞いでなんとかして話を聞いてもらおうとするも、

「邪魔。」
「ぐっ…!」

蹴り飛ばされてしまった。

「どうして…?」
「私から大切なもの奪っといて、よくそうやってしてられるよな。謝る?なんならせめて死ねよ。死んで詫びろよクソ男。」
「おい近野!いくらなんでも言い過ぎじゃないか!!」

友作くんがそう言うも、近野さんは止まらない。

「大切なもの…?僕が近野さんの何を」
「自分は何も知りませーんみたいなとぼけた返してんじゃねぇ!!!」

次に来たのは、顔面への強烈な蹴り。

「そうやって!毎日!ヘラヘラヘラヘラヘラしながら!!先輩に媚び売ってんだろ!?なぁおい!!死ねよ!!死ね!!先輩の笑顔を!私だけの宝物を!!返せ!!!死んでから!私に返せ!!!」
「やめろ近野!!!」

蹴る。蹴る。蹴る。
何度も執拗に僕は顔面を蹴られた。
そうして耐えているうちに教室に残っていた女子生徒と友作くんが止めに入る。

「もういいだろ近野…!」
「はっ、その気持ち悪い顔も蹴られていくらかはマシになってんじゃん。似合ってるよ。」

何人かの女子生徒に抑えられた近野さんはそう吐き捨てる。
気が付けば鼻血が出ていたし、片目もなんだかうまく開けられない。

「近野…。」
「何?」
「やっぱり…田所先輩絡みなのか?」
「さぁね。」

友作くんが何か話している。
田所先輩…?
どうして今、そこであの人の話題が…?

「あんた達にはもう関係ないから。それに、もし"スカウト"されたって私はそこの気色悪い男を絶対に仲間だなんて認めない。」
「…。」

田所先輩を知っているのか?
そう聞こうとしたけど、その前に彼女はスタスタと足早に消えてしまった。

「だ、大丈夫かよ葛城。」
「うん。大丈夫だよ。」

暮馬くんの肩を借りて、僕は何とか起き上がる。

「止めようとしたんだけどさ…あの近野って人、すんごい蹴りで…。」
「うん。すごかったね。」
「流石は元水泳部ってところか。鍛えた筋肉は衰えてないみたいだな。」

と、友作くんがそう言葉を漏らした。

「水泳部…?」
「ああ、そうだよ。お前は転校してきたから知らないよな。あの近野、元水泳部だよ。」

僕は去年の秋頃ここに引っ越してきたから全く知らなかったのだけど、
近野さんは水泳部だったとのこと、
そして

「近野さん、マジやばかったよね。」
「そうそう、期待のスーパールーキーなんて言われててさ。」
「でもなんでやめちゃったんだろう…勿体ない。」

残っていた女子生徒達からもその話は聞けた。
彼女は入部当初からその頭角を現し、1年にして次期エースと期待された新人。
彼女の部活生活は順風満帆だった。

しかし、辞めた。
ある日突然退部したのだ。

「"本人"から止められてたんだが…話すよ。近野のいた水泳部にはな、もっとすごい実力を持ったとんでもないエースの先輩がいたのさ。」

そのわけは、友作くんから語られる。

「葛城。今日バイトは?」
「ううん…ないけど?」
「そうか。じゃあ…。」

何を話されるのかと思えば、友作くんはバイトの話を始めた。
今日は何があるかわからないから、一応入れませんとだけは伝えた。
しかし、それが今近野さんの事とどう関係があるのか…。
それにだ。
近野さんと友作くんの会話に出てきた田所先輩…。
なんなんだ?田所先輩が近野さんに関係あるって言うのか?


「行くぞ。"先輩"のいる喫茶店にな。」

友作くんはそう言うと、それ以上は答えることなく僕のバイト先…その通り先輩のいる喫茶店に向かうと言い歩き出した。





 
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