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『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする

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閑話『脅威-あらたなてき-』

 
前書き
どうもこんにちは、クソ作者です。
前回は久し振りにはっちゃけた気がしますが、ここからまた真面目な話が続きます。
胸糞な事もあるかもしれません。 

 
「わしらが…クビじゃと…?」


葛城財団本部、ビル最上階。
そこでふんぞり返っている代表に、岡田以蔵とそのマスターは予想だにしないことを突き付けられていた。

「なんでじゃ!!わしらの何がいけん!!」
「分かってんだろ。てめぇら仕事2つヘマしただろ?」
「たかが2つだけじゃろ!!」

財団代表お抱えの傭兵は今、クビの二文字を突きつけられていた。
確かに岡田以蔵の仕事の成果は目を見張るものがある。
狙った標的は絶対に斬る。
それがなんであれ斬ってきた。
ただ、2件の依頼を除いては。

「今となっては危険因子の宮本武蔵。てめぇがあそこで始末しときゃここまで驚異にはならなかったはずだ。」
「ぐっ…!」

痛いところを突かれ、押し黙る以蔵。

「そして先日の紫式部もそうだ。なんでも舐めてかかったら返り討ちにされたそうだな?慢心はよくねぇな。低学歴の雑魚サーバントがよ。」

ついこの前のことだ。
武蔵の始末の汚名返上をするため、これまた財団の邪魔をする紫式部とそのマスターを始末することになった。
たかがキャスター。
そう舐めてかかった以蔵は返り討ち。完膚なきまでにやられた彼はボロボロになって帰ってきたのだ。

「消えろよ、お前ら。2回も仕事失敗しといてそうやって生きてられる分だけありがたいと思え。」
「待てぇ!!そんならわしらは…!!わしとマスターはこれからどうすればいいがじゃ!!」
「知らねぇ。地べた這いずり回ってウンコでも食いながら生きてろよ。」
「うぅ…ぐぅ!!」

屈辱的な言葉をあびせられ、以蔵は今にも刀を抜きそうな勢いだった。
鯉口に手をかけたその腕をもう片方で抑え、歯を食いしばって耐える。
できることなら斬りかかりたい。
しかし相手は代表。
見えてはいないが常に数騎のサーヴァントを連れており、何かあればすぐに代表を守る厄介なボディーガードがいる。
こちらは単騎。
勝てる見込みはないに等しいし、何より…。

「マスター…!マスターは何も思わんのか!!」

隣にいるマスターは、ただただそれを耐え頭を下げ続けているからだ。

「低学歴のクソマンコでも分かるよな?使えねぇやつは消えろ。殺さないだけマシだと思え。なぁ?俺様って優しいだろ?」

それに対し以蔵のマスターは

「仰る…通りで御座います。」

そう、絞り出すように言うだけだった。

「マ、マスター!?おまんも何とか言い…」
「以蔵!!」
「…っ!」

雇ってくれた側に、何も言うことは出来なかった。

「仕方がないんだ…。以蔵の実力は確かにすごい。けど私たちは、運が悪かった…!」
「マスター!!」

「おやおや、今日は嬌声ではなく叫び声が聞こえますが…代表、何かあったんですか?」

そんな時だ。
緊迫した空気の中、いかにもなタイミングでとある男が割って入ってきた。

「おまん…誰じゃ?」
「口を慎めよ田舎侍ごときが。私こそあなたがた産廃に代わる代表お抱えの傭兵。置鮎 啓(おきあゆ けい)だ。」
「い、田舎じゃと…っ!!」

汚れのない真っ白な純白のスーツに身を包み、髪をオールバックにした男はそう言って以蔵達を見下した。

彼は本人の言った通り、新しく雇われた傭兵である。
無論、依頼の成功率は100パーセント。財団に雇われる以前に、傭兵業を始めて失敗したことなど1度もない。

「おまん…さっきわしだけでなくマスターも馬鹿にしたか?」
「ああ、言いましたね…"あなたがた産廃"と。貴方もそのマスターも、使えない時点で皆"産廃"です。それが何か?」
「…!!!」

もう我慢ができなかった。
以蔵は刀を抜き、マスターの静止も振り切ってその男に斬り掛かる。
しかし、

「な…!」

その刃が、純白のスーツを赤く汚すことは無かった。

「い、いつから…!」
「マスター。この場で剣を抜く無礼、お許しを。」

間に割って入ってきたのはサーヴァント。
甲冑を纏い、西洋の剣で以蔵の剣を涼しい顔で受け止めていた。
速い。
そもそもまるで気配がしなかったし、一体どこからどうやってこの間に入った?
以蔵にはそれらが一切見えなかった。

「かまいませんよ。さぁセイバー。身の程をわきまえない産廃に、現実を見せてやりなさい。」
「…かしこまりました。」

その直後。以蔵は刀を弾かれる。

「んのっ!」

そこから間髪入れず襲いかかってくる傭兵のサーヴァント。
セイバーと呼ばれた甲冑のサーヴァントは表情1つ変えぬまま、高速の連撃を次々と以蔵に叩き込む。
防戦一方。
セイバーの攻撃を防ぎ、受け流すことで精一杯だった。
しかしそれもここまで。

「調子に乗るのもええ加減にせえ!おまんの剣…覚えたぜよ!!」

以蔵に剣で勝負を挑む。
それがどれほど愚かなことか相手は分かっていなかったようだ。
剣の天才。
彼は相手の太刀筋を見ただけでそれを理解し、自分のものとすることができる。
だが…

(なんじゃ…コイツ!?太刀筋がまるで読めん…!!)

避けられない。
そして、真似ができない。
あまりにも早すぎる、重すぎる。
剣の天才の自分でも到底真似することが出来ない。
これはなんだ?こいつは誰だ?

「岡田以蔵…剣の天才を自称しており、相手の剣を見ただけで完全に真似することが出来る…らしいですが、真似が出来なくて戸惑っていると言ったところですか?」
「…っ!」
「おや、図星でしたか。」

真似ができないことを傭兵に見抜かれ、動揺する以蔵。

「当然でしょう?産廃ごときが円卓最強の剣技を真似できると思ってるんですか?」
「何を言う!!わしは!わしは剣の天才じゃ!」
「そうやって、いつまでも妄想に耽っているといい。」

次の瞬間、以蔵から鮮血が迸った。

「な…なにが…!」
「以蔵!!」

斬られたことが分からず、自分の身に何が起きたのか分からないまま膝を着いた以蔵。
駆け寄るマスター。胸に手を当てると、そこには血がベッタリと着いていることに気付く以蔵。
そこで理解した。
剣の天才、幕末の人斬り岡田以蔵は負けたのだと

「さぁ、代表の気が変わらぬうちに出ていきなさい。ここに産廃がいること自体、間違いなのですよ。」
「…。」

悔しい。
悔しいが、事実だ。
マスターは以蔵の肩をかつぎ、何も言わずに出ていった。

「わしらは…わしらは…っ!」
「汚名返上をしたいと言うのであれば、代表が1番お望みのものでも連れてくればいいじゃないですか。代表の弟とそのサーヴァント、葛飾北斎。まぁ産廃のあなた方には到底無理な話でしょうけどね。」

追い打ちにそう言ってやるが、これ以上反抗はしなかった。
そうして、静かになる代表の部屋。

「申し訳ありません代表。あなたの神聖な部屋を産廃の血で汚してしまうなど…。」
「いや、いい。後で掃除させる。それよりちょうどいいところに来たな。置鮎。」

置鮎と呼ばれた傭兵は代表にそう言われ、片膝を着いた。
後ろにいた彼のセイバーもまた、同じような姿勢を取り、彼の話を聞く。

「宮本武蔵、そのマスターの竜胆って知ってるか?」
「ええ、勿論。部下達から噂は耳にしております。なんでも支部を潰して回ってる危険因子だと。」
「ああ、なら話が早ぇ。」

傭兵、置鮎が財団に雇われ、任された仕事は大きく分けてふたつある。
一つは実働部隊と同じように日本全国にいるサーヴァントを探し、それを捕え連れてくること。

そしてもう一つは、この崩壊世界、葛城財団の活動をよく思わないモノが支部を潰して回ったり、活動の妨害をすることがよくある。
そういった財団に仇なす者を粛清することだ。

今回の仕事は、後者だ。

「この白髪のマスターが連れてる宮本武蔵だ。」

そういい、代表が一枚の写真を置鮎に手渡す。
そこに写っているのは宮本武蔵、そして竜胆大和だ。

「他にも厄介なクソマンコ共はごまんといるが、今はそいつの始末を最優先しろ。今請け負ってる仕事を放棄してもかまわない。」
「御意。」

そう言い、立ち上がる置鮎。
そのときだ。

「代表!!その始末、俺にもやらせて貰えませんかねぇ!」
「…あ?」

自動ドアが開き、大きな声が響く。
やってきたのはガタイのいい中年男性。
ハキハキとして元気な雰囲気の男はそういい、ズカズカと代表の前にやってきた。

「なんだ?てめぇらはさっさとマンコ連れてこいよ。」
「いえいえ!実は私、そいつとは因縁というかそういったものがありましてなぁ!!」


ガハハと豪快に笑いながら、その男は頭を掻きながら言った。

「因縁?こいつにか?」
「ええ!竜胆大和、彼の名前をそう言いましたな?実はコイツ私の知り合いでありましてなぁ!いやぁ世界というのは実に狭い!!狭いものですなぁ!!」

彼のやや声量の大きな喋り方に隣にいる置鮎は露骨に嫌そうな顔をするも、彼はそれに気付いていないのか気にしていないのか、オーバーな身振り手振りで代表に説明をしていく。

「何を調子に乗っているのか髪を染めておりますが、こいつは間違いなく私の親愛なる元部下、竜胆大和ですな!元とはいえこうなってしまった部下を叱りつけるのは上司の役目ということで!ここはどうか!」

代表は少し考えたあと、少し面倒くさそうに答える。

「…わかった。実績No.1のてめぇがそうしたいのならそうしろ。竜胆大和に関することはてめぇと置鮎の合同作戦にしといてやる。」
「さすが代表!!太っ腹でありますなぁ!がはははは!!!!」

唾を飛ばすほど豪快に笑う男。
ムカつくほどに体育会系なノリのこの中年男性に代表もイライラしたりはしているが、そう簡単に殺したりはしない。
彼の名は山本。
元はサラリーマンだったがこうして世界崩壊後、紆余曲折あり葛城財団へと入団。
彼にとってこれは天職だったらしく、入団後すぐに合計30人以上のサーヴァントの生け捕りに成功。
そこから様々な功績を残し、財団に最も貢献した男として今では実働部隊の総隊長を任されている。
信頼はされている。だが、代表はあまり彼のことを好いてはいないようだ。

「なぁ置鮎!気に入られた者同士!頑張ろうな!!」
「…。」
「それでは代表!!至急準備に入ります!!失礼しました!!」

去り際、痛いくらいに置鮎の背中をバン!と叩き山本は豪快に笑いながら帰って行った。
そして、一気に静かになった空間にて、代表は一言。

「…うぜぇな。」
「ええ。実力は確かですがあのような態度でいられるのは非常に困りますね。」
「まぁいい。俺様が信頼を置いてるのは置鮎、てめぇだけだ。朗報を期待してるぞ。」
「はっ。」

一礼し、置鮎もまたサーヴァントを連れて去っていく。
こうして残ったのは、代表のみ。

「…最強のサーバントに最強のハンター。竜胆大和とかいうクソガイジも、この2人にかかれば一瞬で終わりってわけだ。」

液晶に映る彼の映像を見て、代表はにやけて独り言を漏らす。
そして、

「サーバントは全て俺様のモノ。お前の宮本武蔵も、俺が奪ってたっぷりと味わい尽くしてやるからな。」

彼の隣に映るサーヴァント、宮本武蔵。
彼女を見ていずれ来るであろう自分のモノになる日を夢見、舌なめずりをするのであった。

 
 

 
後書き
はい。
今回は大和くんも武蔵ちゃんも登場せず、敵がどういった動きをするのかという話でした。
というわけでかいせつ

最強のセイバーを連れた傭兵マスター、置鮎。
そしてサーヴァント捕獲のプロであり、竜胆と何か因縁があるらしい男、山本。
と一筋縄では行かなさそうな敵が出てきましたがこれから先、大和くんと武蔵ちゃんの2人はどうなるんでしょうね?

以蔵さん?
以蔵さんとそのマスターは財団を追い出され、この後路頭をさまようよ。
一発逆転を狙って置鮎に言われた通り代表の1番望むものを狙いに行くよ。
まぁその後どうなるかは…ほかの外伝お呼び本編をお読みくださいね。

それでは次回もお楽しみにね。 
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