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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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最終章『ふたりで…』
  女神創造領域 『崩壊世界』其ノ捌

「…。」
「…。」

硝煙が立ち上る銃口。
動きを止めた使役獣達、
一瞬、時が止まったんじゃないかという錯覚すら覚える。
しかし、

『おっ、おおおおお!?おぎゃあああああああああああああ!!!!!


それは旧神柱、もとい王になろうとした愚か者の叫びによって破られた。
彼の目の前に浮いていた歪な聖杯はビキビキをヒビを走らせ、そこから黒いヘドロのようなものが漏れたかと思えば、粉々に砕け散った。
それと同時に、やつの身体がボコボコと膨らみ始める。
至る所に苦悶の表情が浮かび上がり、何かを叫んでは消え、また新しい顔が浮かび上がる。
文字通り苦しみを全身で現している葛城恋だが、使役獣も例外ではない。
魔力の供給源を失い、ゴキブリのようにのたうち回り、やがて動かなくなると炭化し風に乗って塵に帰る。
使役獣が埋めつくしていた辺りは、あっという間に何も無くなった。

そして…

『うそだ…おれ、さま、が…。』

全身の血管を浮き上がらせ、身体中を掻きむしっていた葛城恋はついに力尽きる。
腕をだらんと垂らし、花のように開いた旧神柱の真ん中に俯いて動かなくなった。

「魔力反応…消失…。」

スマホを確認すると、さっきまであった強大な魔力反応は消えている。
そして、ここを守っていた三本の旧神柱の反応も、全国に出現した反応も、どんどん消えていく。
そうして俺達は…確信する。

「まーちゃん…!」
「勝った…俺達…勝ったんだあああ!!!!」

ライフルを投げ捨て、嬉しさのあまりおっきーと向き合い人目もはばからず思わず抱き合ってしまう

「勝ったよ!!ホントに勝ったんだ!!」
「ああそうだよ!俺達が!俺達の手で倒したんだよ!!」

この崩壊世界に君臨していた巨悪を、ついに倒した。
他の誰でもない、この俺がだ。
思わず頬が緩み、そしてトドメに奴の遺骸に中指を立てる。

「ざまーみろクソデブ!!まさかこんなクソザコマスターとサーヴァントにやられるなんて思わなかっただろ!!」
「そうだそうだ!散々バカにして!」

そうやって調子に乗りまくる俺達を見ているのは、助けてくれた仲間達。
駆け出しの頃依頼を解決したマスターとサーヴァント達、

「相変わらずというかなんというか…まぁ、あれが1番あの2人らしいのよね。」
「だな。」

マルタさんはうんうんと頷き、踵を返して帰ろうとする。
しかしその振り返った先には、多くの人影が。

「あれ、全員探偵さんの知り合いかしらね。」
「友達は増えた。それだけは昔とは違うと思いますけどね。」

マルタさんの問いに過去の俺を知る森永が答えた。
やって来たのは三本の旧神柱達を倒し続けてくれていた仲間達、
葵と大和。舞とその愉快な仲間達がやって来た。

「誠!」
「よう、見事にやってやったぜ。」

走ってきた大和に、余裕そうに答える。
まぁもう精一杯で疲れてんだけどな。

「ついに…倒したんだね。」
「おうよ。お前の分もとっときゃ良かったか。」

そびえ立つやつの遺骸を見て、舞は清々しい表情をしている。

「にしても不気味だね、てかこれどうすんの?残す?」
「残すわけねーだろ。即刻爆破処理だわこんなん。」

昔サーヴァントを独り占めしようとした愚か者の末路です、と戒めとして残すのはいいかもしれないけどこれはダメだ。消そう。
どんな奴だったか、どれ程非道な男だったか、それを記して後の人々に伝え戒めるのはこの葵と紫式部の得意分野だろーしな。

『…だ…だ』
「?」

さぁ、帰って祝杯でもあげようかなーなんて考えていた中、なにか聞こえた。

「おっきーなんか言った?」
「なんにも?」
『まだ…だ。』
「!!」

確かに、今度はハッキリと聞こえた。
1番早く気付いたのは大和。
刀を抜き、遺骸をにらみつける。

「大和…?」
「こいつ…まだ生きている!」
「えっ?」

その直後、
地面から何かが突き出てくる。
それは真新しい旧神柱。
さらに真っ黒だった遺骸はブルブルと震え、焦げた表面を払い落とした
そう、
大和の言った通り、

『ぶっはははははははははははははははァ!!!!まだ俺様が死ぬかと思ったかよ!!』
「マジかよ…!」

奴はまだ、生きていた。
その場にいた全員が即座に臨戦態勢に入る。

『聖杯は消えた!だがまだもらった魔力が身体の中に残ってんだよ!!てめぇらを軽くひねり潰せるくらいにはなァ!!』
「往生際が悪過ぎる…さっさと死ねばいいのに!!」
『死ねばいい?ぶはっ!最低でもてめぇがゲロマンコ渡して苦しみながら死ぬのを見るまでは死ねねぇなァ!!』

そうしている間にも周囲に旧神柱はどんどん増えていく。
使役獣がいないのは救いだがいくらなんでも増えすぎだろ!こいつどんだけ魔力持ってんだよ!!

「いくらでもやってやるよ…嬉しいね!採集決戦のおかわりまで再現してくれるなんてさ!」

葵のチェーンソーが唸りをあげる。
そう、ここにいる全員はまだまだヤる気だ。
誰も諦めちゃいない。こいつにはたっぷり恨み憎しみがある。
俺もまだ返しきれなくて何処にぶつけようかなと悩んでたくらいだ。

「やってやるよ!!今度こそてめぇをぶっ殺してやる!!」

全員が走り出し、やつめがけ攻撃をくわえようとしたその時だ。

「いえ、その必要はありません。」
「えっ。」

直接脳に響くような声。
その川澄綾子みてーなボイスが聞こえた次の瞬間、

「!」

葛城恋が、光の柱に呑まれた。

「何あれ…!あれもグレイちゃん!?」
「いえ…拙は何もしてないです…!」
「じゃあアレは…!?」

柱、とも見間違う極太の光の奔流。
葛城恋を辺り一帯の旧神柱ごと飲み込むまさに神の雷とも言えるようなその攻撃。
規模も威力も段違いではあるもののそれは確かにグレイの放った最果てにて輝ける槍に酷似していた。
しかし彼女は宝具を撃ってなんかいない。ずっと俺達の後ろにいる。
じゃあこれは…なんだ?

「あ…が…。」

光が止んだ。
その中心にいたのは、最早ただの人間となった葛城恋。
裸の彼の身体にはもう令呪もなく、傍に聖杯もない。
代表でも、王でも、神でもない。
そこで全裸でくたばって轢かれたカエルみてーな間抜けな姿晒してるのは正真正銘人間だ。

「おれ…さまは…。」
「よくもこの世界で好きにしてくれましたね。」
「…!」

葛城恋がゆっくりと起き上がる。
そして後ろから聞こえた謎の声、
さっき俺達が聞いた、脳に響いたものと全く同じ声。
そこにいたのは

「お前…なんだ…!?」

心地の良い蹄の音が聞こえ、白馬に乗ったそのサーヴァントが現れる。
やってきたのはそう、ランサーとしての騎士王だ。
しかし、何かが違う。

「よく…諸悪の根源を倒してくださいました。じきにマスターが目覚めるので、このままではいけないと思っていたんですが…。」

と、ランサーアルトリアは馬から降り、俺達の元へと歩いてくる。
そして近づいてくると同時にびりびりと感じる謎のプレッシャー。
思わず唾を飲み込み、みがまえてしまう。

「かしこまらずとも結構です。私はあなた方に、こうしてお礼を言いに来たのですから。」
「お礼…?」

そしてランサーアルトリアは己の胸に手を当て、軽く礼をすると言った。

「申し遅れましたね。私はランサー、アルトリア。この世界を創造した女神です。」
「めっ、女神!?」


その場にいた全員が驚愕した。
当たり前だ。この女性、もといランサーアルトリアこそがこの世界、俗に言う崩壊世界を創ったと言ったのだから。

「ええ、女神です。この世界を神秘と魔力で満たし、サーヴァント達がこうしてこちら側に来やすく出来るようにした張本人です。」

そう言われると、この威圧感、そして彼女が来てから漂う神聖な雰囲気、測定不能な魔力反応。
私は女神です、とそう言われても信じてしまう証拠はたくさんある。

「アンタが…女神?」
「ええ。確かあなたは…竜胆大和でしたね。私が溢れさせた魔力と神秘に死ぬ間際適応し、生まれ変わった非常に稀有な例。サーヴァントの武蔵とは幸せに過ごせていますか?」
「どうしてそれを…!」

大和は刀に手をかける。
相手が女神だからとはいえ恐れてはいなさそうだが、しかし。

「無理はしない方がいいでしょう。でないと副作用で子供に戻るのでは?」
「…っ!」

直後、膝をつく大和。
確かリミッター解除した後は副作用で身体が縮むとか言ってたがこの女神、それすらも知ってんのか。

「お前…どこまで知って」
「全て。少なくともここにいるあなた方とあなた方のサーヴァント、全ての存在、経緯は知っています。あなたも、あなたも、そしてそこのあなたがイレギュラーな存在であり、外の世界から来たことも。」
「…!」

今度は舞のことすら言い当てる。

「さて、無駄話はおしまいにするとして、」

そうして女神は最後に礼をして踵を返すと、倒れたままの葛城恋に向き直った。

「起きろ。」
「げぼぉ!?」

そして容赦なく腹に蹴りが叩き込まれる。
肺から空気を無理矢理吐き出され、妙な声を上げ奴は軽く吹き飛ばされた。

「ぐ…げほっ!げほ…っ!!」
「立て。これからマスターが目覚める中、貴様はこの世界を蹂躙し、穢した。その罪は万死に値する。」
「どうして…おれさまは…おれさまは…!!」

よたよたも立ち上がる恋。
もうなんの力もない。
彼は文字通りなにもなく、そして女神の前に立たされた。

「この槍で貴様を一思いに葬るのは簡単だ。だが、それでは割に合わない。貴様を恨みながら死んでいった者、呪いながらこの世を去ったものの魂が報われないのだから。」
「いきなり現れて偉そうなこと言ってんじゃねぇぞクソマンコ野郎!俺様は」
「何度その妄想にすがりつく?貴様はもう…王ではない。」

女神の冷たい言葉に、恋は凍りつく。

「現実を見ろ、後ろを振り返れ。貴様の辿った道には何がある?何を生み、何を育んだ?お前の通った後にあるのは死。草木の生えぬ荒地だ。」
「…。」
「貴様ごときが魔術王(ソロモン)を易々と名乗るな。知っているか?圧政を敷き、邪智暴虐の限りを尽くした王はどのような末路を辿るのか…。」

そこで葛城恋は、自分がこの後どうなるのかやっと気付いた。

「貴様には苦しんでもらう。少なくともこの世界で、貴様の手によって死んでいった魂が報われるまで。死ぬことは許さん。何百、何千、何万、その霊の罪を償うまで貴様に死は許されない。」
「…ひいぃ!?」

どっと出てきた殺気にやられ、腰を抜かす恋。
そのまま後ずさり、逃げようとしたが

「!!」

突然、やつの下に黒いヘドロのようなものが溢れ出た。

「何?」

瓦礫の間から滲み出てきた謎の液体。
それは葛城恋の身体を包むと、なんとどんどん沈みこんでいくではないか。

「このままじゃ逃げられる!彼、世界の外側に逃亡するつもりよ!!」
「ぶっはははは!神父様はまだ俺様を見捨てちゃいなかった!!1度逃げて、また力をためて帰ってきてやる!!あばよクソマンコ共がよォ!!」

舞の友人であるアビゲイルがそう叫ぶ。
それと同時にアルトリアは槍を持ち、そのヘドロを瞬時に蒸発させようとしたが

「女神様!!」
「?」

それを止めたのは、舞だった。

「何です?」
「あの…あいつをこの世界に連れてきたのは…僕の責任です。だから、僕にやらせてください。」
「…。」

そう言われ、アルトリアは少し考えた後、

「分かりました。いいでしょう。」

その槍を下ろす。
彼女の目の前にいるのは舞だけではなく、北斎やアビゲイル、楊貴妃にゴッホと舞についてきたフォーリナー達。

「これで償いきれるかなんて分からない…けど、僕とお栄ちゃんは…あいつにトドメを刺さなきゃいけないんだ!」
「そうですか…なら。」

そう言って彼女は頷き、黒いヘドロに沈んで消えた葛城恋の追跡、もとい撃破を彼らに任せた。

「あなたもまた、幸せを求めてこの世界に来たというのに彼一人に台無しにされてしまった。非常に残念でしたね。」
「ううん…でも僕は今幸せです。この世界に来れたからこそ、こうしてたくさんの友達が出来た、たくさんのフォーリナー達とも仲良しになって、こうしてお栄ちゃんの妻にもなれた。」
「…。」
「だから、感謝してます女神様。この世界のことも、あなたの事も。それと…みんな。」

そうしていると、舞達の目の前に大きな扉が現れる。
おそらくアビゲイルが出したものであり、これは世界の外側、すなわち恋の逃げた先に繋がっているんだろう。

「ありがとう。僕、絶対あいつを倒して、必ずお栄ちゃん達と帰って来るよ。」

ギギィと重い音を立てて扉が開く。
その先は真っ暗で何も見えず、冷たい風が流れ込んでくる。
ったく大変だな。
俺たちの最終決戦は終わったってのに、こいつはこれから最終決戦ってワケだ。
まぁでも、こいつの事だ、きっと帰ってくんだろ。
だから俺は、こうやって言う。

「行ってこいよ。んでぶっ殺して帰ってこい。皆で鍋パする約束してんだからよ。」
「うん。」

そして、舞と愉快なフォーリナー達は扉へと飛び込み、消えていく。
こんなこと、任せていいのかと思ったが女神様は満足気な顔してるし、いいんだろう。

「おい。おっきー。」
「なに?」

さて、さっきから女神様のプレッシャーにやられずっと俺の後ろにいるおっきーに声をかけてやることにする。

「これで、終わったぞ。」
「うん。終わったね。」

手を繋ぎ、俺達は歩き出す。
俺も、女神様にはお礼を言わないといけないしな。
まぁこんな世界にしてくれて何様だてめぇコノヤロウって気持ちはあるが、もうこの際俺はどーでもいいや。

「なぁ、女神様。」
「なんでしょう?一 誠。」
「俺からも言っとくよ。ありがとうってな。そうじゃなきゃ、俺はおっきーに会えてないんだから。」
「確か、永遠に引きこもるのでしたね。幸せの価値は人それぞれです。私は何も言いません。」


これで、全部終わった。
葛城恋はかならずあいつらが殺すだろう。
そしてこの世界を創った女神様とやらにも会えたし。
多分…いや、きっとこの崩壊世界はこれからいい方向に進んでいく。
とはいっても、これから引きこもる俺達にはなーんの関係もない話なんだけどな!
さ、挨拶もしたし帰るとするか!













「いや、まだ終わっていないさ。」


その時だ。
声が、聞こえた。

「!!」

全員が声の主を探る、しかしそれはどこにもいない。
もう聞くことはないだろうと思っていたその声、
そして、ふと横を見てみれば

「…え?」

俺の隣にいるおっきー、
彼女の胸からは、真っ赤に染った腕が生えていた。
いや、違う。

「…助かったよ。いや、こうなるのは"主人公"としての運命だったのかもね。」

「うそ…これって、姫、どう、なっ」

理解の追いついてないおっきー。
背中から貫かれ、己の胸から飛び出したその手に彼女は呆然とすることしか出来なかった。
そして、

「もらうよ。君の悪魔の力…!!」

おっきーを貫いた男は、彼女を吸収する。

「…!!」

何も出来なかった。
動き出すことも、ホルスターにしまわれた銃を出すことも、
何もせぬまま、できぬまま、
あっというまに彼女は

「やぁ、一誠くん。その顔どうしたんだい?」

死んだはずの神代正義に吸い込まれた。
 
 

 
後書き
かいせつ

⚫女神
Key(ドS)さんの作品、『崩壊世界シリーズ ~ モテない男の元にアルトリア・ランサー(ヤンヤン)が来るというテンプレチックなドロドロイチャイチャするだけの話』からのゲスト出演。
この世界を創った、もとい世界を崩壊させた張本人であり今は眠っているマスターの元に行くために現実世界を神秘と魔力で満たした。
他のサーヴァントも便乗して現実世界に来るようにはなったがそれはあくまで副産物的なもの。
しかし面白いのでそれらは放置してたまに他のサーヴァント達はどう過ごしているのか観測()たりしている。
形こそランサーアルトリアであるもののその正体は一部六章にて登場した女神ロンゴミニアドに近い。
未知数の力を持っており、どのサーヴァントでも彼女には敵うことはまず、傷一つ付けることすら出来ない。
彼女のマスターは今現在深い眠りについており、ランサーアルトリアはマスターが目覚めた際、葛城財団が蔓延る最悪の世界を見せたくないとのことで今回旧神柱達が日本全国に現れたのを見て本気で排除しようとしたもよう。

 
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