| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

あたしと香子は、ユニットを組む

 
前書き
初手かいせつ

⚫幻想郷のキャラクターが自分の思ってる性格と違う!どうしてくれるんだ!!

「人の数だけ幻想郷」という言葉があります。
東方Projectといえば二次創作がクッソ溢れてるジャンルであり、自分の解釈と書き手の解釈が違うことはよくあることです。
私、クソ作者の中では雷鼓はクールだしこころちゃんは無表情で淡々と喋るキャラクターだと思ってます。
まぁ、アレです。
これは私の作品なので、文句は言わんといてください。
どんな性格になろうが口調が変わろうが、幻想郷は全てを受け入れるのです。
それはそれはとても残酷なことですわ…。

と、FGOの小説なのに何延々と東方のこと語ってるんだと思われそうなので長い前起きはこの辺で。
では、本編に参りましょう。
 

 
アイドル対決まで、残り五日。
あたし達は今日も幻想郷から講師を呼んで、レッスンを受けている。

「足の運びも悪くない。運動神経も良くて物覚えもいい。(ダンス)にいたっては完璧じゃないか。」
「どうも…。」

秦こころちゃん。
彼女は笑顔の練習にやって来たとは言っていたが、本来はソフィーがダンスの為に呼んだものらしい。
しかし彼女もまた笑顔が苦手とのことで、ちょうどいいと思ったそうだ。

「一番の問題も、すぐに解決しそうだな。」
「?」
「これだ。」

そういって、こころちゃんは口の端に指をつけ、くいっと上げて擬似的な笑顔を作る。
一番の問題とはそう、笑顔のことだ。

「いや…あたしはまだまだ出来てないって。」
「作り笑顔はぎこちないことこの上ない。しかし、練習中のお前はとても自然な笑顔をするじゃないか。」
「え…?」

さっきの歌のレッスンでも、香子に同じことを言われた。
練習中のあたしは、笑顔で楽しそうだったと。

「笑顔…笑った顔と書く。笑うということは楽しいこと。歌って踊っているお前は…つまり喜んでいるし楽しいということ。」
「喜んでいるし…楽しい…。」

こころちゃんがこちらに近付き、両肩に手を置く。
目の前にはまるで読めない無表情な彼女の顔。
頭につけている能面で今の感情が分かるらしいが、あたしにはさっぱりだ。

「楽しむ。それを忘れてはいけない。練習を楽しみ、ステージを楽しむ。舞というのは争い競うものではない。客を楽しませ、自分もまた楽しむものだ。」
「うん…分かったよ。」

そう言うと、彼女は無表情でグッと親指を立てた。

「お前ならやれる。アイドルというものは私にはイマイチ分からないが、やれるさ。歌も舞も完璧。そして楽しくやれば、自然と表情は和らいで笑顔になる。成功を祈ってるぞ。」

そういい、彼女は光の粒子に包まれて還って行った。

「…楽しむ、か。」

最後に言われたことを呟く。
楽しむ。
確かに、何事もそうなのかもしれない。
運動にしろ、それは楽しまなきゃ始まらない。
競うこともそれは高め合うことに繋がる大事なことかもしれないが、まず楽しむことが基本なんだ。

「ありがとうこころちゃん。やってみるよ。」

そう決心し、もう彼女のいない場所を見つめていたら、後ろからバタリと何かの倒れる音が。
振り返ってみれば…

「香子!?」
「もう…無理です。」

倒れたままそう言い、ピクリとも動かなくなった香子が。

「クレイジーバックダンサーズに色々教わってたけど…キツかったみたいだね…。」

ソフィーがしゃがんで彼女の様子を見ながらそう答えた。
香子なのだが、当初はあたしをプロデュースする紫式部Pとして名乗りを上げたのだが、エリザベート側がマスターと共にアイドルをするのならこちらもそうしなければならないとの事で、あたしと共にアイドルレッスンを受けることとなった。
作家だけでなく歌人ということもあり、ボーカルレッスンにおいてはその才を難なく発揮してはいたが、今行っていたダンスレッスン。
それこそ、彼女の苦手とするものだった。


しかし、香子のジャージ姿は中々に新鮮だ。
それと同時に未亡人にこんな格好をさせていいものかという背徳感がじわじわと込み上げてくる。
いけないいけない…
レッスンに集中しないと…!

「身体を激しく動かすのは少々…堪えますね。」
「胸もばいんばいん揺れてたしね。痛いんじゃないかな?」

ソフィーのセクハラじみた発言はさておき、どうやら香子にも課題はあるみたいだ。
しかし、サーヴァントなのに疲れるとは一体どういうことなのだろうか?
文化系だから?あんまり運動が得意じゃないとか?
まぁともかく、少し休憩してあたしは次のレッスンに行こう。



アイドル対決まで、残り四日。

レッスンはこなしていくが、ソフィーの粋な計らいによってそれ以外のことも付き合ってくれたりする。
例えば

「いいですねそれ、どこで習ったんですか?」
「独学、だよッ!」

あたしの蹴りや殴打を涼しい顔をして受け流す赤い髪の女性。
彼女もまた幻想郷の住人、名前は紅 美鈴(ほん めいりん)と言うそうだ。

「キレもあって洗練された動き。ですがまだもう少し無駄を削ぎ落としましょうか。」
「なっ…。」

目の前に、彼女の拳。
ふわっと風が吹き、そこで勝負はついた。

あたしの戦い方、もとい護身術は武器を用いない体術によるもの。
それを知ってソフィーはあたしの為になればと思い、この紅美鈴さんを呼んだのだ。
その明らかに中国みたいな名前らしく、彼女の拳法はすさまじかった。

あたしの攻撃なんかものともせず、簡単に避けられるし少ない隙をぬって今のように一撃をくわえる。
まぁ、寸止めにしておいてくれてるけど。

「どうです?葵さんが望むのであれば、まだ続けますけど。」
「勿論…っ!次は一本取る!」

ちなみにここまで20戦20敗。
あたしはまだ一本もとれちゃいない。

「あのー。」

さぁもうひと試合、
そんな時、その場にはあまり似合わない優しい声が聞こえた。

「?」

あたしと美鈴さんが同じ方向を振り向くと、そこには一人の女性…
いや、この人は見たことがある。

「何?スパイでもしてきなさいって言われたの?」
「いえ、そうじゃなくて。やっぱりうちのエリザが迷惑かけてるんじゃないかなぁって。」

そうして現れたのは、あのエリザベートのマスターだった。

「まぁ、かけまくられてる最中だけど。」
「そうだよね、うん。本当にごめんなさい。」

と、彼女は深々と頭を下げたのだ。

「あ、いやあの…ちょっと待ってよ。」

そこまで申し訳なくされるとなんだかあたしもどうしていいか分からなくなる。
なので、頭をあげるように言うと、彼女はゆっくりとその顔を上げた。

端整な顔立ちに、艶のある長い黒髪。
その佇まいに思わず見とれそうになる。

「あのー、この人は?」
「大久保です。大久保 麻美(おおくぼ あさみ)。4日後に葵さんとアイドル対決をする、張本人です。」

美鈴さんが彼女のことを尋ねると、彼女自身が申し訳なさそうに答える。
それから手に持っていた包みのようなものを差し出すとまた申し訳なさそうに答えた。

「あとこれ、良かったらどうぞ。」

なんだろう。菓子折だろうか…?

「猪の肉です…。」
「えっ」

詫びの品がとんでもなかった。
後で聞いたが、山で狩ったものだそうだ。




それから、美鈴さんは幻想郷へ帰還し、あたしは中庭にあるお茶会用のテーブルへと彼女を招いた。

「遅れて申し訳ありません…あ、あなたは…!」

図書館から遅れてやってきた香子もまた、彼女を見るなり驚いた顔をする。

「大久保 麻美です。あの時はエリザが本当にすいませんでした。」
「い、いえいえ…。」

椅子から立ち上がり、また深々と謝るがもういいよとやめさせる。
そうして3人で席につき、お詫びの品を届けに来ただけで帰らせるのもあれなので、少しお話をすることにした。

「アイドルのレッスンを…?」
「うん。あたし達、アイドルの基本のきの字すら知らないからさ。こうやって約束の日まで毎日、特別講師を呼んで練習してるわけ。」

今何をしているのか、近況はどうなのか、それらを話しながら用意したお茶菓子をつまみ、互いに話していく内に彼女がどう言った人間なのかもだいたい分かってきた。

「色々とすみません…。」
「アンタはさ、大人しいよね。まるでサーヴァントと正反対って言うかさ…。」
「えへへ…実はこれでもだいぶマシになった方で…。」

彼女、大久保麻美は身体のコンプレックスから周りから嫌われるのではないかと思い、ついこの前まで山で暮らしていた。
俗世から離れ、人と接することを避け、人馴れしていない彼女は会話もままならない状態だったと聞く。
さらに山に籠っていたため、世界がこんなふうになったことに気付くのにはだいぶ遅れたそうだ。

「私は…本当にダメだった。人と話すとなると、怖くなって、頭の中が真っ白になって、次に何を話せばいいのか分からなくなる…都会(ここ)に私の居場所なんてない。山だけが、私のいられる唯一の場所だった。」

と、彼女はアウトドアな引きこもりを始めたのだという。
しかし、コンプレックスとはなんなのだろうか?
綺麗な黒髪、ゆったりとした服装からでもわかる、出るとこは出て、山で育ったおかげかきっちりと引き締まったその身体。
おじさん臭い言い方だがまさにボンキュッボン。
正直に言おう、この子はあたしのタイプだ。
お淑やかで、綺麗な黒髪、大きな胸。
一体、彼女のどこにコンプレックスがあると言うんだろう?

聞いてはみたいけど、きっとそれはデリケートな問題だ。
必要以上に踏み込んで彼女を傷つけかねないので、それに関することはあえて聞かないことにする。

「でもね、そんな内気な私を変えてくれたのが、突然やって来たエリザだった。」
「…。」
「私に見たことの無い世界を見せてくれた。堂々と胸を張ること、自分らしさを見せつけること、コンプレックスがなんだ、それをあえて自慢しろ。そうやって、色んなことを教えてくれたんだ。」
「それが、アイドル活動なのですね。」

香子がそう聞くと、彼女は静かに頷いた。

「エリザだって、ただワガママにアイドルをやってるわけじゃない。私と一緒にアイドルをして、励ましてくれてる。貴方達にはそれを、伝えたくて今日来たの。」

…なるほど。
つまり傍若無人に見えてあのトンチキ娘、自分のマスターのことを第一に考えてたわけだ。
なんだろう、
少し良い奴だなと思えてしまった。
しかし、

「うん。分かった。」
「…?」

テーブルから立ち上がり、あたしもあたしで決意をする。

「そっちもそれなりの理由があるんなら、こっちも引けない。アイドルをしていることにそこまでの大事な理由があるのなら、あたし達も全力で相手しなきゃそれこそ失礼だ。」
「えっと…つまり…。」
「本気で戦う。アイドルとして、貴方とエリザベートにあたし達の信念を思い切りぶつける。」

彼女がエリザベートに救われたように、あたしも香子に救われている。
女性しか愛せないあたしを受け入れ、異常などではないと言ってくれた香子。
そんな大切な人と一緒に、あたしは図書館を運営している。
ここは、あたしと香子の大切な場所。これから、大事な人とたくさんの思い出を詰め込んでいく場所。
だから譲れない。
あたしを救ってくれた人…香子のためにも。

「本気で戦う…エリザにもそう伝えておきます。」
「助かるよ。んでいつぞやのまな板発言をそっくりそのままお返ししてやる。」

そう言ってやると、麻美は吹き出すように笑った。

「分かりました。あなた達がそれほどの本気なら、私達も本気でぶつかります。その信念、その心意気、今のあなた達はもう立派な”アイドル”です。」

彼女はそう言って立ち上がり、また深々と礼をすると帰って行った。

さて、あれだけのことを言ったんだ。すぐに練習といきたいが…。

「ソフィー、どこ行ったんだろ。」
「さぁ…すぐに戻りますと言い、1時間は経つのですが…。」

あたし達の講師を呼んでくれるソフィーがいない。
彼女は約一時間前、あたしに美鈴さん。香子にパチュリーさんといった幻想郷の住人を召喚した後へカーティアさんに何か言われ、少し出てくると香子にそう伝えたらしい。

「帰ってきて…ないよね。」

直ぐに戻る。
とは言ったらしいが図書館の中も、部屋にもどこにも居ない。
神社で何か急用のようなものでもあったのだろうか?

「このままでは練習が…。」

ソフィーのいない状況、香子がそう口に漏らす。
いや、そんなことない。ソフィーがいなくたって

「いや、出来るよ。」

練習が出来ないわけじゃない。

「しかし…どうやって」
「あたしさ、歌が自信ないんだよね。」
「え…。」

基礎は学んだ。地盤はしっかりしている。
あとはそれを応用し、高めていけばいい。
長所は伸ばし、短所もできるだけ改善していく。
ひとりじゃない。ここにはあたしと香子でふたりいる。
だから、できる。

「そりゃあ幻想郷の人達は優しいからさ。上手だなんだって言ってくれるけど、あたし的にはイマイチ納得いってないんだ。」
「つまり…」
「付き合ってよ。ボーカルレッスン。」

練習中に耳にしたことはあった。
歌人というだけあり香子の歌唱力はかなりのもの。
贔屓無しに思わず聞き入ってしまうほどのものだった。
だから、教えてもらう人としてはうってつけなんだ。
それに、

「あたしも教えるよ。ダンス。」

レッスン中、香子が最も苦手としていたのはダンス。
だからそこは、得意なあたしがそれを教える。
互いの欠点を、互いで補い合って高め合う。
マスターとサーヴァントだけれど、こういう関係でも全然いいんじゃないかとあたしは思うんだ。

「ステップの踏み方、リズムの取り方、きっとすぐに香子にも出来るようにする。」
「はい…。では私も、葵様が自信を持って歌えるよう頑張りますね。」
「うん。それじゃあよろしく。」

お茶会は終わり、あたし達はそれからいつも通りレッスンルームへと向かう。

「頑張る、じゃダメかな。」
「?」
「こころちゃんが言ってたんだ。練習も楽しめって。そうすれば、自然と笑顔は出るようになるってさ。」
「それもそうですね。気を張りつめすぎるのは宜しくありませんでした。」
「そ。笑顔でやろう。笑顔で、ね。」

と、口の両端を指で吊り上げ、擬似的な笑顔を作ってみせる。

「ふふ…楽しいれっすんにいたしましょう。葵様。」

それを見ると、香子も釣られて笑うのだった。 
 

 
後書き
本当はもっと東方のキャラクターを出す予定だったんすよ。
早苗さんとか咲夜さんとか、白蓮様や幽々子様。さとり様やら勇儀姐さん天子に正邪や射命丸などなど…。
でも、ふと思ってね。これを読みに来た人は東方の小説わを読みに来たんじゃない。FGOの小説を読みに来たんだと。
とはいっても、もうFGOの小説なのか怪しいんですがね。
やっぱあれっすよ。定食屋でトンカツ定食頼んだらサバの味噌煮定食出てきたらビビりますでしょ?
やっぱり、あまりキャラクターを出すのはやめておこうと考えたのです。
あくまで必要最低限に。添える程度にしました。
さて、次回こそアイドル対決になるかもしれません。
それでは次の話でまた会いましょう。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧