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黒猫現る 少しの夢を見させる 青年編

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 俺の名前は大町新一、27才、醸造醤油の製造メーカーに勤めて、5年だったが、それまでの売り上げの衰退傾向にある時、様々な新製品とか売り込み方を提案し、売り上げを伸ばして、赤松社長からも認められていた。そんな時、別会社として、うどんの専門店を立ち上げるから、そっちに移籍して、なんとか成功させて欲しいと社長から打ち明けられた。

「大町君、もう一回、頑張ってくれないか、期待しているんだよ。僕は、これを出来るのは君しか居ないと、信頼しているんだ」と
 
 新会社の重役数人には、親会社から移ってきたが、飲食関係にはみんな素人みたいなものだった。特に、中野新社長のやり方に対して、俺は以前から嫌っていた。俺は、マネージャーとか優秀な従業員の引き抜きとか、開業時にはコンサルタントとかを雇いながら、何とか初年度の黒字、翌年には10店舗の新規開店できるまでに、独りで頑張ってきた。

 しかし、新会社の経営が安定してきた時、もっと利益を上げようと、新会社の中野社長が、原料の北海道銘柄指定を一般の国産品、もしくは輸入品を混ぜて使うことを仕入担当に指示していたことを、俺は知ってしまった。銘柄指定を使っていることで、風味・味を店内のうたい文句にしているだけに偽装工作になる。そのことを俺は、直属の上司の重役に進言と言う形で忠告したが、わかったと言うだけで何も変わらなかった。役員連中も社長には逆らえないのだ。

 数日後、社長から食事に誘われ、例の件かと思い、指定されたレストランに出向いた。そこには、若い女性も同席していた。割と美人だが、派手な化粧と服装だったと思う。

「やぁ 忙しいのにすまんな、これは私の娘なんだょ。実は、前から会社で君のことを見ていて、惚れたらしいんだな。どうかな、しばらく付き合ってやってくれんだろうか」

「初めまして、中野麗子です。去年、杉沢女子短大を卒業したとこですの。よろしく、大町さんのこと、とても興味ありますのよ」

 完全に、上から目線だ。なんとなく俺のことを見下している感じがした。

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 翌日、呼ばれて、社長室に行くと

「どうかね、麗子は。一緒になってくれると、僕の息子になるわけだから、二人で会社の業績をもっと伸ばそうじゃぁないか。勿論、君の役職も上を考えているんだがね」

 僕には、1年前から付き合っている女性が居る。白瀬理恵、全店の従業員の教育係をしている。スレンダーで、冷たい感じがするが、頭の回転も良く的確な指摘をするので、指導の効果を出している。半年位前から、身体の関係も持つようになったが、その際の彼女は、まるで別人になったように女を出して甘えてくる。勿論、会社には秘密にしている。 
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