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Fate/imMoral foreignerS

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始まりから夏休みまで
  先輩と後輩の話

 
前書き
どうもこんにちは、クソ作者です。
ハーメルンで連載していた時のことを知ってる読者様ならお分かりだと思うのですが、先輩とこんちゃんの登場、だいぶ早くね?と感じてる方もいるでしょう。
はい、そうです。ジメジメした嫌なことは早めに終わらせたいなと思い、ここのところは物語を大幅に変更しております。
皆様もいやーな展開が長々と続くの嫌でしょ?
なので葛城くんやこんちゃん、そして先輩の複雑な三角関係はここで一旦綺麗にする予定です。
それではどうぞ。
 

 
「鼻血止まったか?葛城。」
「うん…大丈夫。ティッシュありがとね。」

道中。
なんとか鼻血はおさまりこのまま僕達3人は僕のバイト先、隣町の喫茶店へと向かうことになった。

「お栄ちゃん。すごく怒るだろうなぁ…。」
「俺もそう思う。桐生にいじめられてた時も、相当キレてたりしたもんな…。」

こんな顔で帰ってはお栄ちゃんに何があったか根掘り葉掘り聞かれ、おそらく近野さんをぶん殴るとか言い出すだろう。
なので彼女のことはできるだけ伏せておこう…と考えながら電車に揺られること数分…。

「降りるぞ。」

僕達は喫茶店付近の駅に着いた。

「ねぇ、友作くん。」
「どうして今ここにお前を連れてきたか?って聞きたいんだろ。」
「あ、うん…。」

僕の疑問は最初から分かっていたみたいに、友作くんはそう答える。
そして歩きながら、彼は話を始めた。

「螺歩蔵高校の水泳部にはな、とんでもないエースがいたんだ。」
「うん。それはさっき言ってたよね。近野さんよりすごい人がいたって。」
「ものすごい泳ぎだったよ。この人、陸より海の方が向いてるんじゃないかってくらいにさ。地区大会もぶっちぎりで
全国大会予選もなんなく通過。オリンピックだって夢じゃないなんて言われたすげーのがいた。」
「…!」

隣にいた暮馬くんがなにかに気付く。

「友作…それって退学になったあの…。」
「ああそうだ。でも俺は未だにそれは信じられない。あの人があんな事するはずないって。あんな馬鹿みたいに優しい人が、そんなこと出来るわけないってな。」
「た、退学?」

暮馬くんも知っているという、水泳部のエース。
でもその人は…退学になった?なんで?どうして?

「さぁ、葛城。」
「!」

そうして考えていると、喫茶店の前にまで来ていたことに気づく。
友作くんがドアを開け、カランカランとベルの音が響く。

「真実を教えてやる。近野のこと、そして先輩のこともな。」


そうして僕達は喫茶店の中に入っていく。
ウェイトレスさんのいらっしゃいませー!という明るい声。
そうすると厨房の覗き窓から先輩が覗き、お客さんが僕達だと気付くと驚いたような表情をした。

「あの、」
「なんでしょうか?」
「田所さん、今お話ししてもよろしいでしょうか?」
「えーと…ちょっと待っててください。」

友作くんがウェイトレスさんにそう話すと、彼女は厨房へと駆けていく。
やがて少しすると、田所先輩がやって来た。

「友作に少年じゃん。てかどうしたのその顔!?」
「えへへ…実はちょっと転んじゃったんです。」

と、蹴られてまだあざの残る僕の顔を見て驚くけど、とりあえず適当に誤魔化すことにした。

「それと…きみは?」
「狩井 暮馬って言います。2人の友人です。」
「そっか。ゆっくりしてってね。ところで少年はどうしたの?今日シフトは確かないし話があるって…。」
「田所さん。」

ここで元々バイトをしていた友作くん。
田所先輩に面識もあり仲も良かったと聞く。
しかしここで働いていた思い出話などは一切せず、彼はそのまま単刀直入に聞いた。

「近野のどかについて、葛城に教えてやって貰えませんか?」




「あのねぇ友作くん。できれば黙っといて欲しいなって私は言ったんだけどなぁ。」

そうして、立ち話もなんだからとテーブルについた僕達と田所先輩。
近野のどか。
その名前を聞いた時、先輩は明らかに動揺していた。
何故か、それは今これから知ることになる。

「なんでしょうかね…まぁ簡単に言いますと、もう黙っていられなくなりました。あなたの過去も、いつまでも隠してられるのも時間の問題です。」
「…。」

先輩の…過去?
一体田所先輩がなんなんだ?田所先輩のどこをどうすればあの近野さんと接点があるんだろうか。
そういえばそうだ、
僕は何度か、先輩に尋ねたことがある。
先輩の通ってる学校はどこですかと
先輩は18歳。中卒でない限り高校三年生ではあるが、先輩は高校を中退しているとだけ聞いた。
とはいっても、それ以上聞き出そうとしても適当にはぐらかされたり厨房へと逃げ込んでしまったりしたのだけれど。

「そっか。」

頬杖を着いていた先輩は、水を一口飲むとどこか諦めたような表情をし、溜息をつきながら言った。

「隠しててごめんね、少年。私は本当に君達の先輩なんだよ。」

いいや、先輩なのは知ってる。
でも待って…今、"君達"の先輩って…

「田所先輩…?」
「ご想像の通りだ。私が元々居た高校はね…
螺歩蔵第一高等学校。今君達が通ってる高校だよ。」
「え…?」

先輩が…本当に先輩…?

「でもどうして退学なんて…!」
「うーん…かっこよく言えば、追いかけたい夢があったから…かな?」
「夢…?」
「そ、夢。調理師になりたいって夢。学校辞めて、己の身一つで出てったのさそして今じゃこうして厨房を任されることになった。どうだい?よく聞くサクセスストーリーみたいでしょ?」

そう言って先輩はハハハと笑う。だが…。

「田所さん。」
「分かってる。分かってるよ。少年達が聞きたいのはこんちゃんについてのことでしょ?」
「こん…ちゃん?」
「あ、ごめんごめん。ニックネームだよ。私はいつもその愛称で呼んでたんだ。」

先輩はどこか懐かしむような感じで、そして淡々と語っていく。

「こんちゃんはね、お察しの通り私の後輩さ。素直でなんでも出来て、私を見つけるとすぐに寄ってくる。まるで人懐っこいワンちゃんみたいな子だったよ。」
「…。」

過去の話をするが、今の近野さんからはとても想像できない内容が語られた。
目付きが悪くて態度も悪い。人懐っこい犬というか誰にも頼らない一匹狼みたいな感じだったのに。
昔は…そんな素直な子だったんだ。

「変わっちゃったのは…私が退学してからかな?私がいなくなってグレちゃって、部活やめたのも友作くんから聞いたよ。」
「ええ、先輩のいない部活なんてなんの意味もないって言ってましたからね。」

それが、彼女に起きた出来事。
そして…

「先輩を…返せって。」

僕は、近野さんに先輩を返せと言われた。
先輩の笑顔を、私だけの宝物を…と。

「少年?」
「悪いのは…やっぱり僕だったんだ。」

あの子は…ここを知ってたんだ。
いや、何かでこの喫茶店に先輩がいることを知って、会いに来たんだ。
自分が何よりも慕ってて、何よりも大好きな先輩。
いざ会いに行ってみれば…
先輩の隣には…"僕"がいた。

「あんなに恨んでたのも…僕が先輩を取ったみたいに思われてたから…!」

先輩は過剰なスキンシップはする。
いつどこで見たか分からないけど…そういった場所を見られてしまえば彼女は思うだろう。
自分のいるはずの場所に居座る、あの男は誰か、と。
自分の居場所を奪ったあの男は、何様だと。

「少年…どうしたのさ?」
「合点がいったんですよ。どうしてあそこまで、葛城が近野に殴られたのかって。」
「殴る…?こんちゃんはそんなことしな」



「しますよ。大切な場所を奪われたのなら、どんな手を使ってでも奪い返そうとしますから。」
「…!?」

入口から聞こえた声に、全員が振り向く。
間違いない。これはさっき聞いた声…!

「こんちゃん…?」
「お久しぶりです先輩。あと…何してるんだよ、お前。」

先輩に一礼すると、またいつもの冷たい視線に戻って僕を睨みつける。

「ぼ、僕はただ。」
「今すぐ出てけ。お前はここにいていい人じゃないんだよ。」
「でも…!」
「ああうるさいなぁ!!」

早足で僕の所へやってくる近野さん。
それを見て友作くんはいち早く動き出し、彼女の前に立ち塞がる。

「どけよ。」
「いいや、どかない。葛城は悪い事をしたと思ってる。そんな反省したやつを必要以上に蹴飛ばす理由なんかないだろ。」
「じゃあお前は!自分の宝物とったやつを謝っただけで許すのかよ!!」
「ああ、許さないさ。ただな…。」

友作くんがどくと、そこには椅子から立ち上がった田所先輩が悲しそうな眼差しでこちらを見ていた。

「こんちゃん…この子を…少年を蹴ったの?」
「お前の言う大切な宝物は、それを望んじゃいないぞ。」

どれくらいの月日が経っていたのかは知らない。
けど、久しぶりの再会は、あまりにも悲しいものだった。

「どうしてよ?こんちゃん、あんなに優しい子だったじゃん!」
「…。」
「どうして?どうしてそうなったの?少年がウザイ?ムカつく?居場所を取られた?そんなの関係ないよ!」
「でもそいつは…!」
「居場所なら、まだずっとあるよ。」

静まり返った喫茶店。
先輩の足音だけが響き、そして近野さんの目の前に立つ。

「居場所を奪ったとか、そんなことはないよ。何も言わずに退学したのはホント悪かったよ。でもさ、こんちゃんの居場所はまだ…あるよ。なくなってなんかない。」
「…。」
「少年は居場所を奪ってない。新しく作ったんだ。だから仲良くしてても、やっかむようなマネはしないで欲しいんだよ。こんちゃん。」

とん、と両肩に先輩の手が置かれる。
一瞬、近野さんの表情が和らぎどこか安心したようにも見えた。

「でもごめんね。いなくなったりして。きっと言ったらこんちゃん、死ぬほど悲しむと思ってさ。」
「…でも、私…。」

2人がわだかまりが解け、今まさに和解しようとしている。

その時だった。

「!!」

突然、ガラスが割れた。
突き破ってきたのは石…ではなく

「なんだこれ!?ぎゃあああ!!!」

火の玉。
スピードを緩めることなく真っ直ぐ飛び、コーヒーを嗜んでいた男性客を瞬時に火だるまにした。

「な、なに!?」
「嫌な予感がする…!!伏せろみんな!!!」

友作くんが声を張り上げる。
するとその直後、いくつもの火の玉が喫茶店へと飛来してきた。

身をかがめ、机の下に隠れる。

人々の悲鳴、ガラスやものが壊れる音。
そして、

「厨房が!!」
「先輩!待って!!」

厨房からの爆発音。
火の玉がなにかに引火したのだろうか、地面を響かす程の轟音。そしてもくもくと上がる黒煙。
まだ厨房に人はいた。
それを助けるべく、先輩は走り出して行ったんだ。

「葛城!!やめろ!!」
「でも…!!」

追いかけようとしたけど火の玉の嵐はまだやまない。
けど、見えた。

外から火の玉を撃つ、何かの姿が…。

「友作くん!暮馬くん!」
「どうした!!」
「あれ見て!」

焼け焦げ、倒れたソファーや瓦礫の向こう。
外に立っている、杖をこちらに向けている人影。
あれは…サーヴァントだ。

「サーヴァント…クー・フーリン!?」
「しかもキャスター!なんでここに!?」

火の玉を放つことをやめ、サーヴァント、キャスターのクー・フーリンはこちらに近付いてくる。
割れた窓を飛び越え、辺りを見回す。
するとだ

「ひ、ひいぃ!?」

僕たちと同じように、机に隠れて難を逃れた人を見つけると、クー・フーリンはその人の頭を鷲掴みにして持ち上げる。
嫌な予感がする。
そしてそれは見事に的中してしまい…

「…。」
「あっあぎゃあああああああああああああああ!!!!」

一瞬にして人は、火だるまになった。
火を消すために水を求めているのだろうか、開放された火だるまはしばらくその辺を走り回り、やがてばたりと倒れる。
それがきっかけになったんだろう。
他に隠れていたものたちが、一斉に飛び出してきた。

「逃げろぉ!!」
「殺されるぞ!!」

それが狙いだったんだろう。
クー・フーリンはニヤリと口を歪ませ、逃げ惑う人々に火の玉を命中させていく。
焼かれ、焼かれ、人々がどんどん炭へと変わっていく。

「なんだよアイツ!?」
「静かにしろ暮馬!!ともかくよく分からないが、このまま無策に出れば二の舞だぞ。」

こんな状況でもとても冷静な友作くん。
確かにそうだ。
恐怖に駆られ、今ここから逃げ出せば僕達も火だるまの仲間入り。
かと言って、ここでずっと隠れていてもいずれは見つかってしまうのは明らかだ。

「じゃあどうすんだよ!!」
「安心しろ。あんな二流のキャスター。一流の大魔女がすぐに退治するさ。」

瞬間、クー・フーリンの周囲にいくつもの魔法陣が展開。
そこから鎖が伸び、彼を拘束した。
さらに

「痛いのは好きかい!?」

電撃。
いや、落雷と言った方が正しいのかもしれない。
凄まじい音と光にクー・フーリンは包まれ、飲み込まれた。

「あれは…友作のキルケー!?」
「何かあった時の為にな、キルケーには螺歩蔵町一帯と俺の周囲は常に見張っとくよう伝えてあるんだ。」

光がやみ、そこにいたのはブスブスと音を立てて煙をあげるクー・フーリン。
鎖の拘束が解け、力を失った彼はドサリと倒れると動かなくなった。
しかし、

「…?」

様子がおかしい。

「変だ…二流にしても髄分と呆気なさすぎるじゃないか。」


翼を羽ばたかせ、どこからともなくやってきたキルケーがフワリとその場に着地しながら言った。

大ダメージをくらったであろうクー・フーリン。
けどそこまではいい。
助けに来てくれたキルケーの言う通り、いくらなんでも呆気なさすぎる。
キャスターとはいえ、クー・フーリンと言えば粘り強さに定評があるのだけれど…。
クラスを変えただけでここまで弱くなれるのだろうか?

「いや…変だ…!」

けど、その疑問はすぐに解決する。


「マスター!!早く皆を連れて逃げるんだ!!そいつは何か"おかしい"!!」

友作くんのキルケーの叫ぶ声。
その慌てぶりから余程やばいものなのだろう。
しかし、逃げるのが遅すぎた。

"それ"はクー・フーリンという皮を破り、本当の姿を露わにする。
人の大きさに、よくそんなものが収まっていたなと思えるほどの巨体がずるりと飛び出した。

"それ"に喫茶店は狭すぎたようで、正体を現したと同時に喫茶店を内部から破壊。
10メートルは軽く超えるであろう"それ"は跡形もなく喫茶店を破壊し、僕らもまた降り注ぐ瓦礫に飲まれそうになりながらもなんとか死に物狂いで逃げた。

「キルケー!なんだあれは!!」
「わからない…!でもあれはクー・フーリンじゃない!霊基だって…ただ雑に真似ただけの偽物だったんだ!!」

偽物。
クー・フーリンはクー・フーリンではなく、外側だけを真似たまがい物。
喫茶店を破壊し、僕たちの目の前に正体を現したのは巨大な人形。
キャスターである彼の宝具にも使われる、木で編み込まれた身体をごうごうと燃やす巨大な生贄人形。

灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)

それが、僕達の前に突如として現れたんだ。

 
 

 
後書き
かいせつ

⚫近野さんって、もしかしてレズ?
はい。
部活動でどれだけお世話になったか知りませんが先輩をかなり尊敬…というより恋愛に近い感情を抱いてます。
舞くんにあたりがキツイのも要は嫉妬です。
自分と先輩の間になんの取り柄もない男が入ってきたんだから、そりゃ機嫌も悪くなりますよ。

⚫レズなのに持ってるサーヴァントは男なんだね。
うん。森くんだね
近野さんはフツーに男のサーヴァント使います。
別に女なら誰でも好きというわけじゃないし、男が物凄く嫌いってわけでもないです。
たまたま好きになったのが女の先輩だった。それだけです。
ちなみに近野さんもFGOはきちんとやっておりました。
金時とか土方さんとかオルタニキとか、バーサーカー男子が好きなようです。
あとこの物語は2018年あたりの物語となっておりますので、2019年に実装される森くんは本来存在しません。
そこで何故彼女が森くんを召喚できたのか、その理由はもう少しあとにかいせつしますね。

⚫最後に出てきたクー・フーリン、何?
クー・フーリンを真似た"何か"です。
それにサーヴァントでもないです。
今はそれしか言えません。

それでは今回のかいせつは以上。
次回もお楽しみにね!
 
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