黒猫現る 少しの夢を見させる OL編
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⑴
今夜、私は、全てを投げ出すつもりで、下着もそれなりのものを着けてきていた。私は、あっちの経験がなかったし、男性とお付き合いするのも、女子高、女子短大だったせいか初めてだった。
私達は、食事しながら、式の段取とか式場のことなんかを話あって、そのあと、ホテルのバーで飲んでいた。このあとはと覚悟していたのだが、彼から前にも言われていたこと、結婚したら私が会社を辞めろと、今夜も、彼に言い出されて、もめていた。私は、ようやく、仕事にも慣れ、広報として認められ始めたとこなので、辞めたくなかった。
「結婚したら、俺が食わしていくから、君は家でPC使った内職でもすればいいじゃぁないか」
「そんなの嫌よ 今、課長から、今度の宣伝パンフも考えて、提案してみればって言われているのに」
「だけど、ふたりとも同じ会社なんて、具合悪いだろう」
「別に、いいじゃぁない 他にも、夫婦だって人達、居るよね」
「そうだけど、俺は嫌なんだ。色々と不都合なことあるだろう やりにくいし」
「不都合なことって何? 他の女の子と仲良く出来ないからでしょ」
「そんなこと無いよ そんな風に俺のこと見てるのか 信用しろよ とにかく、辞めてくれ」
「辞めたくないなぁー 私、仕事で認めて欲しいのよ」
「そんなに言うのなら じゃぁ 結婚のこと、しばらく見合わせよう しばらく、会わないで、もう一度、考え直そうよ」
と言って、あっさり席を立って出て行ってしまった。どうして、わかってくれないの。私だって、あなたみたいに仕事が出来るわ。男子社員だって、私に声を掛けてくる人が何人かいるわ。みんな、私とお付き合いをしたがっているのに・・。
その時、直ぐ隣から
「こちらの素敵な女性にルシアンを」とバーテンさんに伝えている男性の声。見ると、外人さんが微笑んでいる。
「私、今、カルーア・ミルクを・・」
「私は、マーカーと言います。日本に来て5年です。どうぞ、よろしく、あなたのような方には、ルシアンの方が似合います。口当たりが良いですよ どうぞ、プレゼントです」
いきなり、勧めてきた。ナンパなのか。背も高くて、カッコいい。薄暗い照明の下でも、ハーフぽっく、凛々しい顔立ちなのがわかった。自然と、隣に座ってきて
「私は、医学部で今、研修生です。あなたのような美人の方とこうやって、お酒を楽しめて、すばらしい夜です」
私も、出されたカクテルに口をつけて「いい香りがして、おいしい」と思った。自然と、打ち解けて行った。かれは、白人と黒人のハーフということだ。日本では、友達もあんまりいなくて、寂しいと言っていた。
「失礼ながら、近くで聞こえてしまったのですが、彼のひどいですね。一方的で、あなたのことなんか、まるで、考えていないですね。良くないです。あなたにも、プライドがあるでしょう 守らなきゃぁね」
「日本語、お上手ですね。聞こえてました?」
「日本語は勉強しました」
「彼、普段、優しいんですけど、私の仕事のことになると・・ 私どうしたら、いいか・・」
「あなたのように仕事出来る人は続けた方がいい。能力がもったいないです」
私のことを、褒めてくれていたんで、それに、相手が将来のお医者さんという安心感もあって、私は、調子にのって、お酒をおかわりしていた。それまでも、今夜のあのことを考えると、恥ずかしいだろうからと思って、いつもより飲んでいた。「お化粧を直してきます」と言って、向かう時、少し足元がふらついてきているのがわかつた。帰らなきゃと思ってドァをあけたら、マーカーがグラスを片手に立っていた。
「ダイジョブですか これを飲めばスッキリしますよ」と勧めてきた。
私は、一気に飲んでしまった。炭酸でのど越しも良かったから。
「少し歩きましょう 酔いさましになりますよ」と誘われ、一緒にお店を出た。しばらく、肩を抱かれるようにして歩いていたが、だんだん、酔いがまわってきて・・。おそらく、さっきのもお酒が入っていたのだろう。
小さな公園を抜けて、裏通りに入ると、彼は、私の腰に手を廻して来た。通りの先には、派手な電飾が並んでいる。
「嫌」と言ったが、私、もう足に力も入らなくなっていて、もう一度「嫌 こんな いゃー」と言ったけど、大きな体格で、私を抱え込むようにして、薄暗い入口の中に連れ込まれてしまった。
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