『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
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京都-みやこ-
前書き
どうも、クソ作者です。
前回の話からかなり時間が飛びます。
あれから大和くんは死ぬほど辛い修行を重ね、心身共にだいぶ成長した感じです。
じゃあその過程書けよって思うかもしれませんが…最初から書くとクソ長くなるんじゃ…。
言葉遣いに多少違和感を抱く方もいるかもですが…そこもどうか大目に見て下さいませんか?
それでは本編、どうぞ。
あれから、数ヶ月の月日が経った。
血の滲むような日々だった。
いや、もう実際に刀を握るその手には血が滲んでいた。
心を非常にした。刃のように鋭く冷たく、鍛え上げられた刀のように折れない屈強な精神を無理矢理にでも身につけた。
「いたぞー!!」
「宮本武蔵と白髪のマスターだ!!殺せ!!」
あれから何人もの財団を殺した。
立ちはだかるのなら斬る。邪魔するのなら斬る。
相手のことは考えるな。生き残ること、そして守ることだけ考えろ。
敵は敵、斬り捨てればもうそれまで、
ドライになれ、冷たくなれ、自分と武蔵の事だけ考えればいい。
「見つけたぜ…お前、武蔵のマスターだな?」
「…退け。でなければ斬る。」
「そういって退くバカがいると思うか?てめぇを倒せば俺達は一生遊んで暮らせんだよぉ!!」
相手にナメられたらそこでもうだめだ。
「忠告は二度は言わない…!」
だから、話し方を変えた。
生まれ変わるという意味も込めて、今までの気弱な自分とおさらばする為に。
そして、
「へぇ…ここが支部ってワケ。」
「武蔵だ…!白髪のマスターと武蔵が来たぞ!!!」
「無理だ…勝てるわけねぇ!!」
いつしか俺達は逃げる側から、追う側へと逆転していた。
「逃げろ!ここにある戦力じゃ敵わない!!」
「だからってこの支部を捨てるのか!?」
「仕方ないだろう!!サーヴァントなしでは奴らには勝てない!」
逃げれば、追われる。
ならば、迎え撃つ。
来るのなら、こっちから出向けばいい。
殺られる前に殺ればいい。
お前達が俺達の邪魔をするのなら、俺達はお前達の邪魔をすればいい。
葛城財団あるところに、我等あり。
そうしていつしか俺達は、葛城財団から恐れられる存在へとなった。
「こんにちは。リンドウ急便です。」
燃え上がる財団支部。
それを背景に怯える財団職員に向け、刀を振り下ろす武蔵。
「あなた方に死を届けに来ました。」
⚫
「ありがとうございます…!旅の方々!!」
「いえいえ、私達はなーんにもしてません!ただアイツらがムカついたから斬っただけですし!」
人にものを届ける仕事は、なんとか続いている。
しかし最近は、こうして葛城財団を倒すことが多くなった。
実際、奴らに迷惑を被っているのはかなりいるらしくこうしてお礼を言われることはよくある。
「まぁ別に何かお礼がしたいなーと思うのであれば、受け取ってあげなくもないですが…」
「厚かましいな…。」
「何か言った?」
俺達が今潰してきたのは葛城財団の支部。
どこからやって来てるのかは知らないが、こうして人のサーヴァントを取り上げるような奴を野放しにしておく訳にはいかないしこうして奴らの拠点は見つけ次第潰して回ってる。
まぁさっき武蔵が言ったように、俺達は運び屋としてやつらに"死"をお届けしてるってわけだ。
「なんにも。」
「…。」
「どうした。そんなにやにやして。」
仕事を終え、近くの町にいた偉い人に結果を伝える。
これでどこかで休めると思ったが、何やら武蔵がほくそ笑みながら俺を見ている。
「ううん。変わったなーって。」
「変わった?どこがだ。」
「顔つきもだいぶ凛々しくなってるじゃない?あと態度。昔はそんな喋り方じゃなかったし、それに"武蔵"なんて呼び方もしなかったなーって。」
「人は変わるものだ。誰だってそうだろ。」
変わった、と言われればそうなんだろう。
昔の俺は…弱々しいというか気弱というか、とにかくこの崩壊世界では生きられないような男だった。
でも、人というのはそう簡単に変われる生き物じゃない。
主な要因としてはやはり
「お前のおかげだよ。」
「え」
「お前がいたから変わろうと思った。お前が支えてくれたから。変われた。」
「そ、そんなこと急に…昔はそんな歯が浮くようなセリフ…言わなかったくせに!!」
恥ずかしくなったのかそっぽを向く武蔵。
ちょっかいをかけてみたくもなるがこれ以上何かしたら稽古が大変なことになるので言わないことにする。
「どこに行く?」
「1人でうどん食べてきます!ついてこないでね!!あーあ!これなら昔の方がまだ可愛げがあったかも!!」
「…そうか。俺も食うよ。」
後を追いかけ、俺も昼食を頂くことにする。
人を殺した後によくもまぁ飯が食えるな、と思われるかもしれない。
慣れた、と言えば嘘になる。
俺はまだ人を殺すことに抵抗はあるものの、それはそれとして斬り捨てることにした。
昔は悩んだが、もう今は悩まない。
悩む暇があれば強くなればいいし、悩んでいたら彼女は守れない。
考え方を変えた。それだけのこと。
立ち止まっていつまでも考えこむより、まずは前に進んで見ることにしたんだ。
「武蔵。」
「だから!!ついてこないで!!」
「財布ないだろ。」
「…。」
「おごるぞ。」
「…ま、まぁ今回は特別です。それで許してあげましょう!」
⚫
「京都…か。」
さて、こうして修行を積み重ね財団支部を潰して回りながら旅をし、俺達は関西あたりまでやってきた。
そこで訪れたのが京都。
ここら辺では特に栄えた町と言うが…
「大和くんは来たことあるの?」
「修学旅行で一度だけだな。」
「ふーん。そっか…。」
現代風の建物に昔の家屋が立ち並ぶ。
まるで今と平安の時代がごちゃ混ぜになったような都。それが今の京都だ。
昔の来た時とはまるで違う景色に驚きながらも、よくここまで持ち直したなと関心もする。
で、武蔵が何か言いたそうな顔だが、
「もう一度修学旅行気分を味わってみない?とかいう話はナシだ。俺達はあくまでここに仕事で来たんだ。」
「そ、それは分かってるけど…。」
「うどんならもう食べただろ。」
「あのねぇ大和くん!?私の事食いしん坊キャラだと思ってない!?」
俺達は受け取った荷物をこの今日の都へと届けに来た。
それが終わればまた次の仕事を探す。
この世の中、思うようにモノが届けられない人で溢れかえってるんだ。
せめて少しでも救いになるため、俺達はこうして届けられない人の代わりにモノを届ける。
そうしてやって来たのが、京都の中央に位置する場所。
京都を守護するためのサーヴァントが集まる場所、守護局。
そこに俺達はやってきた。
「ようこそいらっしゃいました。話は聞いております。竜胆急便の方々ですね?」
まず門をくぐり、出迎えてくれたのはサーヴァント、源頼光。
過去に頼光四天王を率いた妖殺しのプロ。
そして現在はサーヴァント達を率い、この京都を守る『京都守護隊』の頭領だ。
「…。」
さっと辺りを見渡せば、周囲には武装した人々やサーヴァント。
ハッキリとはしてないが隠れているサーヴァントは四、五騎はいる。
目の前にいる源頼光はニコニコと笑顔ではあるが、張り詰めたこの空気はごまかせない。
どうやら、警戒されているらしい。
「注文通りの護符、魔除けの道具にそれと手紙だ。」
「まぁ、ありがとうございます。」
ここ、京の都だが実は割と危険な場所だ。
なんでも他の場所よりもモンスター…いや、妖怪の類の襲撃が多いらしい。
鬼や土蜘蛛、主に日本で生まれた妖怪達が大半を占め、かつて語られた平安時代のごとく魑魅魍魎が跋扈している。
そんな中で結成されたのがこの京都守護隊。
そして町には大きな結界が張られ、今もこうして人々は平和に暮らせているというわけだ。
「おやおや護符ですか。全く…そのようなものは必要ないと申しましたのに。」
俺と頼光が話していると、宮中から誰かが出てくる。
その風貌に武蔵は思わずかまえるが、俺は咄嗟に手を出し、刀は抜くなと振り向いてアイコンタクトをとる。
「まぁ、蘆屋様、森川様も。」
やって来たのは蘆屋道満。
武蔵が刀を抜きそうになるのも無理もない。ゲーム本編ではそれはそれはもう外道の極みだったしかなり恨まれていたしな。
「頼光殿、この方達は?」
「運び屋の者達です。」
「おぉこれはこれは。拙僧は蘆屋道満。こちらはマスターの森川 真誉殿。この京都を結界を以て守護する京都守護隊の一人にございます。」
「よろしくねー。」
と、礼をする蘆屋道満。
ゲームではあれだけ悪事を働いていたとて、あれはあくまでリンボ。
こちらは隣にいる少女が召喚したであろう、リンボとはまるで関係の無いただの蘆屋道満だ。
「そちらにおりますのは宮本武蔵殿…ですかな?」
「何?確かにそうですけど。」
「いえ、怖い顔をされておられましたので。もしや拙僧のことがお嫌い?ははは、ここに来たばかりの頃は皆にそういった目で見られておりましたから慣れっこですぞ!」
「見た目で判断するのはよくないよねー道満。」
と、マスターと仲良く笑う蘆屋道満。
怪しいし胡散臭いことこの上ないが、彼はたった一人でこの京都を守る結界を作った。
彼のおかげで人々は妖怪の驚異に晒されることなく暮らせていると過言ではないし。おそらく今は信用されているのだろう。
「すごかったよほんとに。道満がこうして結界を張ったら、みんな手のひら返して大絶賛だもん。道満は元からすごい陰陽師なのに。」
「おやめくだされ真誉殿。拙僧、そこまでほめちぎられると照れまする。」
と、ここに来た際の経緯を語ってくれたのは人形を片手に抱えた少女、彼女は蘆屋道満のマスター、森川 真誉という少女。
「えー、おほん!」
頼光の咳払い。
仲良く話していた2人は黙り、膝をついた。
「それでは運び屋の方々、この京都守護隊の皆様を代表し源頼光からお礼をいたします。」
「いえ、滅相もなく。」
とりあえず失礼にならないよう俺と武蔵も片膝をつき、礼をする。
「一通りの施設は無料で使えるよう私から言っておきます。ですのでこの京の都、心ゆくまでお楽しみください。」
「え!?ホント!?」
「武蔵…!」
武蔵は、無料という言葉にものすごく弱い。
かしこまらないといけない場なのに本能丸出しでそんなこと言うもんだから肘で小突いた。
「それでは、これにて。」
礼をし、頼光は帰っていく。
さっきから感じていたサーヴァント達の気配も薄れていき、周囲にいる武装した者達の張り詰めた空気もやわらいでいった。
「…緊張したな。」
「ええ。さすがは妖殺しのプロ。あのプレッシャーは伊達じゃなかったわね。」
タダと聞いて満面の笑みをうかべたお前がどの口聞いてるんだと言ってやりたい。
「…ところで、いつまでいるんだ?」
立ち上がり、俺達も帰ろうとするがいつまでもニコニコとしながら俺と武蔵を見ている者がいる。
「いえ、お気になさらず。客人を見送るのは下働きの勤めなれば。」
「うん。そうそう。それじゃいってらっしゃーい。」
蘆屋道満とそのマスター。
2人揃って手を振り、こうして見送られる。
「…。」
「ねぇ、怪しくない?」
門を出て少し歩くと、武蔵がそう言い出した。
「何がだ?」
「何って、あの外道法師よ。」
どうやら武蔵、あの蘆屋道満が怪しくて気になるとのこと。
「外道法師は失礼だろ。それにアイツは蘆屋道満であって、あのキャスターリンボじゃないんだぞ。」
「じゃあ大和くんはあの不審者が怪しくないっていうの?」
「怪しくはない。ただ…。」
「ただ?」
蘆屋道満はいたって普通のサーヴァントだ。
この町を守るため結界を作ったのは彼だし、そこにあるのは善良な心だろう。
しかし、
「俺がおかしいと思ったのは隣にいたマスターだ。」
「マスター?あの女の子?」
怪しい…というよりかは何かがおかしい。
森川 真誉と名乗ったあの少女だが…
「目が…おかしかった。」
「目?」
「ああ、よく分からないが…あれは未成年の少女がしていい目じゃない。」
彼女と目が合った際、俺は寒気が走ったのを覚えている。
どこまでも引き込まれる、深い闇を覗き込んだような不気味さ。
「辛い思いを経験したような…心が壊れそうな事を体験したような…そんな目だった。」
一言で言い表すならば、"虚無"
どこまでも深くて、そして何も無い。
光なんてものもない、ただの闇。
「辛い経験って、大和くんもしたでしょ。」
「ああそうだった。」
「こんな世界だもの。誰だって死ぬほど辛い経験はします。それを乗り越えてきたみたいだし、あの子を怪しいとか言うのは少し間違ってない?」
「…悪い。」
そう言われ、彼女の目のことは記憶の片隅にでも追いやっておくことにした。
後書き
おや?何やら怪しい陰陽師が出て来たぞ?
でも結界張ってくれてるみたいだしユーモア溢れる面白そうな人だからへーきへーき!
というわけで設定解説。
⚫京都守護隊
文字通り京都を守る者達の集まり。
サーヴァントだけでなく人間もおり、日々鍛錬を積んでおり小鬼程度なら一人で倒せるほどの腕前を持っている。
世界崩壊当時から何故か京都には他の地方よりも多くの妖怪が現れていた。
かつて昔、京都が数多の妖怪の驚異に晒されていたからそれに由来するものでは無いかと推測はされているが定かではない。
彼らは日夜人々の為に働き、夜も眠らずに気を緩めることなく巡回をしている。
最近は蘆屋道満の結界により滅多に妖怪は入ってこなくはなったが、それでも強力な大鬼などは壊そうとしてくるため気を抜くことはない。
頭領は源頼光。
仕事の際は冷静かつ冷酷。妖怪は容赦なく斬り捨てる妖殺しではあるがプライベートではマスターを我が子のように甘やかしまくってるとのこと。
マスター自身は京都守護隊に加わりたいらしいが頼光が危ないからと言ってどうしても許してくれないそうだ。
⚫竜胆大和(修行後のすがた)
以蔵襲撃の際、人を殺した快感に呑まれた自分を情けなく思い、強くなることを決意。
それから数ヶ月、心身共に見違えまるで別人のようになった。
細身ながら引き締まった肉体とキリッと凛々しくなった顔。
弱々しかった口調もキッパリとしたものとなり、敵に情けはかけなくなった。
精神的に余裕が出来たのか、武蔵に向かって軽口を叩いたり小馬鹿にしたような冗談を言うようにもなった。
性欲は…消えてはいない。もちろん武蔵に対する思いも消えていない。ただ表に出せず自分の中で溜め込んでいるだけだ。
たまに歯が浮くようなセリフだったり見た目からは想像できないような発言もして周り(特に武蔵ちゃん)を驚かせたりする。
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