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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う

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かくしてウィステリアは、デビューする

 
前書き
どうも、クソ作者です。
実はアイドルをやるというネタはだいぶ前からあったりします。
どれくらい前かと言えば…そうですね、紫式部の水着が実装された辺りです。
あの人第三再臨でアイドルを意識した水着とか言ってたんでその時に「アイドル…?アリだな。」と思いその時点から温めておりました。
しかしまぁ温めすぎたというかなんと言うか、FGOでもワルツコラボとかいってアイドル活動始めちゃったし、これじゃただの二番煎じじゃない!なんて思いましたがそもそもこの作品は二次創作でしたね。
さて、アイドルに関しては本当に色々悩みました。
ユニット名、衣装、そして東方キャラに関しての色んなこと、
そんな話もいよいよ大詰めです。それでは本編どうぞ!! 

 
エリザベートとのアイドル対決まで、残すところあと二日となった。
なったのだが…

「ええ、基礎はバッチリよ。もうどこに出しても恥ずかしくないくらいのアイドルっぷり。ただね…。」

1つ…いや、いくつか忘れていたことがあった。

「ライブを1度もしたことがないのはどうかと思うのよん。」

ライブ。
アイドルにおいてそれは必ずやらなければならない、立たなければならない舞台。
歌って踊って、観客を魅了する場所。
基礎のトレーニングばかりに気を取られていたあたし達はこうして、対決が間近に迫りつつある中そんなことに気がついたのだ。

「ぶっつけ本番で出来るほど、あたしもメンタル強くはないしなぁ…。」
「私もです…。」

歌っては踊れる。しかし、観客の前で踊れるかと言われると些か自信が無い。
香子もそうだ。

「で、どうすんのヘカP」
「忘れていた私にも非はあるわね…ソフィー!何かこの状況にピッタリな子達を呼んで頂戴な!!」
「う、うんわかった!!」

困った、さぁどうしよう。
そんな時はプロデューサーに掛け合うとしようと思ったがあたし達のプロデューサーことヘカPはすぐさまソフィーに頼ったのだった。

「来て…!咲夜さん!」

そうしてソフィーが呼んだのは、アイドル慣れした人でもなく、メンタルが強い人でもなく、

「お呼びになりましたか?ソフィー。」

メイドさんだった。
いや、多分。服装からしてメイドさんだ。

「あなたが紫式部様ですね?先日はパチュリー様がお世話になりました。」
「い、いえ。とても楽しくお話させて頂きました。」

と、香子に気付くとメイドさんはまず礼をする。
そういえば以前、あたしが美鈴さんと鍛錬をしている時、同じく幻想郷にて図書館を持っている魔法使いを呼んでもらって本の話をしたことがあるって聞いた。
やはりメイドさんだし、その人の従者だろうか?

「ごめん咲夜。キミの力を借りたいんだ。いいかな?」
「十分後にお嬢様のアフタヌーンティーが控えておりますが…いいでしょう。時間的にも問題ないので。」

香子に軽く挨拶を済ませ、ソフィーにそう言われると懐から懐中時計を取り出し、時間の確認するメイド。
十分後になんたらとか言っていたけど、たった十分であたし達に何かレクチャーするってこと?
いくらなんでも時間が無さすぎなのでは?
そう思ったが、その疑問はすぐに解決される。

「…では。」

何か、空気が変わった。

「あの…メイドさん?」
十六夜 咲夜(いざよい さくや)。紅魔館のメイド長を勤めております。」

しかし何をしたのか分からない。
幻想郷の人達は皆何かしらの異能力を持っていることは知っているが、一体彼女は何をしたのか?

「どうやら何が起きたのかご理解頂けない様子。では窓をご覧になっては、如何でしょうか?」
「窓…窓って…!?」

窓を見る。
異変は窓に起きているのではなく、窓の外に起きていた。

「鳥が…”飛んだまま”…!?」

窓から見える中庭の木々。
そこから今まさに飛び立ったであろう鳥が、空中に静止していた。
ホバリングではない、まるで

「時が止まったかのようです…。」

木から落ちた葉が空中で静止し、花々も風に揺られたまま。
香子の言ったように、
時が止まっているかのようだった。

「じゃあこの咲夜さんって人はまさか…!」
「ええ、そのまさかでございます。」

懐中時計をしまい。咲夜さんといったメイド長はスカートの端を少し持ちあげ礼をした。

「私の世界。この中では時は動かない。時が進まないのであれば、練習の時間は無限にあるのと一緒。例え空いた時間が十分だとしても、これならば一日中練習するのとそう変わりないでしょう?」
「すごい…。」

彼女の能力はお察しの通り、時を止める能力。
生憎、サーヴァントにはそういった反則的能力を持つものはいない。
そう考えるともし彼女が敵に回った場合がものすごく恐ろしいが、ここは召喚してくれたソフィーに、そして咲夜さん本人にも感謝しよう。

「では、ここでなら思う存分リハーサルが出来るでしょうから。」
「うん。ありがとう…十六夜さん。」
「咲夜さんで構いませんよ。あなたは確か…葵さんでよろしかったでしょうか?」

時を止められるというとんでもない能力を持った幻想郷の住人、十六夜咲夜。
これほどの反則じみた能力を持った人達がうじゃうじゃいるのかと思うと、正直幻想郷とは魔境なのではないかと恐ろしくなる。

ソフィーはそんなところで育った。
噂に聞いた”サーヴァントすら凌駕する力を持つ”というのは、実は本当なのかもしれない。

「さ、練習しよっか!」

パンパンとソフィーが手を叩き、レッスンもといリハーサルが始まる。
彼女の後ろにはいつの間にか新しく呼ばれた二人。
こころちゃんに雷鼓さんと、かつてお世話になったあの二人だ。

「葵様。」

時が止まった世界の中、香子があたしの名前を呼んだ。

「後はもう、リハーサルあるのみです。ここまで来れば私も、行くところまで行く所存ですので。」
「そうだね。立派なアイドルになって、あいつらをギャフンと言わせてやろうか!」

あっちにもあっちの事情があるが、こっちにもこっちの事情がある。
だから負けられない、だから全力でぶつかってやるんだ。




約束の日。
アイドル対決当日。

臨時で作られたにしてはかなり手の込んだステージ。
その観客席には続々と人が集まっていた。

「すごいよへカーティア。チケットも即日完売しちゃったし、これもう用意した席に入り切らないよ!」
「ふふ。さすがはへカPってとこでしょ?地獄の女神にかかればこの程度の集客赤子の手をひねるよりも簡単なのよん。」

裏方から観客席を見渡し、2人はそう会話している。
そして…。

「あら、噂には聞いてたけど随分と地味なプロデューサーとコーチなのね。そのTシャツのセンスだけは褒めてあげるケド。」
「…!」

やってきたのは勿論、あのエリザベートとそのマスター、大久保 麻美。
そしてあたしを見るなり、彼女は勝利を確信しにんまりと笑う。

「へぇ。よくもまぁ平然と来れたわねまな板。逃げなかっただけマシと言うべきかしら?」
「そうやって言ってられんのも今のうちだ。今度その胸で洗濯してやるよ。」
「な、なんですってぇえ!?」

バサッと背中から竜の翼が現れる。
それを見ると麻美は慌てて後ろから羽交い締めにして抑え込んだ。

「やめなよエリザ!!ここで暴れたら台無しだよ!!」
「あのまな板に分からせてやるのよ!!どっちの胸が洗濯板なのかってことをね!!!!」

言ってやった。
出会って早々まな板呼ばわりしたんだ。このくらい言っても別に罰は当たらないだろう。

「まぁあたしはオトナだからさ。まな板だなんだって言われてもそこまで怒らなかったけど。」
「何よそれ!?まるでこのアタシが子供みたいな言い方じゃない!!」
「そうじゃないの?ん?」
「葵様も煽らないでください!!」

香子に止められ、渋々やめることにする。
しかしスッキリした。言いたいことを言ってやったんだから。

「落ち着こうエリザ。アイドルならそんな事じゃ怒らないでしょ?ね?」
「ふーっ、ふーっ…そ、そうだったわね。今のは少しアイドルとして浅はかだったわ。」

興奮状態だったがなんとか落ち着かせた様子。
深呼吸をし、彼女はそれからあたしを睨みつけると自分のマスターに話を振った。

「ところでマスター、昨晩のディナーは何だったかしら?」
「え?ミートパイとかレモンパイとか…ともかく今日はパイ尽くしだったね!」

そうそう、そうだったわねと頷くエリザベート。
一体この洗濯板娘は何が言いたいのか、そう思った時、彼女はにやけヅラをこちらに向けて尋ねてきた。

「ねぇまな板。アタシはこうしていろんなパイを食べてきたけど、一つだけ分からないパイがあるのぉ。」
「…何?」
「ペチャパイって、なんだと思う?」

…。
カチンときた。

「アップルパイにはリンゴ。そしてカスタードパイにはカスタードクリーム。じゃあペチャパイには何が入っているのかしらねぇえ??????」
「何 に も 入 っ て な い ん だ よ ォ !!!! 」

キレた。もうキレた。
こいつは1発ぶん殴ってやる。
サーヴァントだろうが関係あるか。その生意気な面を叩き潰してやる。
そう思って掴みかかろうとしたけど、後ろから香子に抑えられた。

「止めないで紫式部!!」
「おやめ下さい葵様!!相手の挑発に乗ってはダメです!!」
「ごめんねぇ。アタシってあなたの言う通りまだまだ子供だから、分からないことが沢山あるの。で、何?ペチャパイって何が入ってるの?シリコン?」
「そ れ は 後 か ら 入 れ る ん だ よ ォ !!!!」

ライブ開始前からバチバチに火花を散らすあたしとエリザベート。
それを傍から静観しているのは、ソフィーとへカP

「その…どう思う?」
「同じよん。どっちもぺったんこじゃない。」
「「違う!!!!」」

と、これから対決をするので対抗意識を燃やしてもらうことは大いに結構ではあるが、このままでは収拾がつかないと判断したのだろう。

「それじゃ、いいかんじに滾ってるみたいだし早速始めちゃいましょっか。」

へカPがライブ開始の宣言をする。

「先攻は葵、紫式部の2人組ことウィステリアでいいわね?」
「ええ、かまわないわ。トップバッターくらい新人に譲ってアゲル。何せトリの方が盛り上がっちゃうからね!!!」

高笑いするエリザベート。
まぁいい、そうやって余裕こいていられるのも今のうちだ。
今後に備えて洗濯物を溜め込んでおくことをオススメしよう。
その貧相な胸で洗うためにね…!!

「行くよ、紫式部。」
「はい。ここまで来たら後はもう、全てを出し切るのみですね。」

手を繋ぎ、裏方からステージへと歩いていく。
あたし達が出てくるなり、ワーワーと歓声が上がる。
ビリビリと伝わる声量。これでもかと感じる熱狂。

そう、観客の反応からして分かるだろうが、ここに来てくれた人達はエリザベートのファンではない。

「ウィステリア。藤の花はあなたの為に咲く。応援してくれるファンの為に!!」

あたし達のファンだ。
マイクを持ってそう叫ぶと彼らのテンションも爆上がりだ。

「ウソ…あの観客達は全員…。」
「そうよん。まぁ全員は大袈裟だけども、ここにいるほとんどは間違いなくウィステリアのファン。」

裏方にて、
エリザベートは集まっている観客はてっきり自分たちのために集まってくれた熱心なファンだと思っていた。
しかしそれは違う。
ここにいるのは、あたしと香子の為に集まってきてくれた人だ。

「それに何よあれ!あのこなれた雰囲気!人気もともかくこんな短期間であんな風になるなんて有り得ないわ!!」

エリザベートが観客席から目を外し、へカーティアとソフィーの方へ振り向く。

「ズルよズル!!反則!!あなた達どんな手を使ったの!!」
「それはもう、」
「ねぇ?」

二人は顔を合わせ、笑顔で頷き合う。

「持てる手段は全て使ったわ。反則にならない程度のね。それに私は敏腕プロデューサーへカP!ド素人の二人を1週間で立派なアイドルにするなんて造作もないのよん?」
(まぁほとんどはボクのおかげというか幻想郷の人達のおかげなんだけど…ここは名誉の為に黙っとこ。)

そう、持てる手段は全て使った。
あれからあたし達は咲夜さんの能力で時の止まった世界にて何度も何度もリハーサルをした。
それこそ、血のにじむほどに。
納得いくまでやった。めげそうになったことあったけどやった。
こうした方がいいんじゃないか、ここはあのままの方がいいんじゃないか?
香子と意見を出し合ったりしたし時には衝突して言い合いになったり喧嘩したりもした。でも、それを乗り越えてあたし達はより絆を深めたんだ。

それからあたし達は何週間にも感じられた特訓を経たわけだが、実際過ぎた時間はほんの数分。
そしてあたし達は、次の行動に出る。

宣伝、ミニライブ、とにかく人気を出すためにはそれをやらなきゃいけない。

宣伝はソフィーが幻想郷から天狗を呼び出し、ものすごい速さでこの街を飛んであたし達で作ったウィステリアの宣伝広告をばら撒く。
そしてライブ。
残った2日間はとにかくライブだ。
疲れたのなら時を止めてもらってその中で休めばいい。
咲夜さんには申し訳なかったけど、そのおかげてあたし達は一切の時間を無駄にすることなく使い切れた。
そうした結果が、これだ。

「待ってたぞウィステリアー!!」
「葵様ー!!こっち目線くださーい!!」
「紫式部さん手を振ったぞ!俺だ!俺に手を振ってくれたんだ。」「いや違う俺に決まってんだろ!!」

ものすごい人気ぶり、
正直、あたし達もここまで人気が出るとは思わなかった。
けど、これなら対等に戦える…!

「やぁ。」
「あなたは…雷鼓さん!」

気付けば後ろにはドラムセット、そこには雷鼓さんがいた。

「キミ達の晴れ舞台だ。最高のリズムを刻んでくれ。私達も最高の演奏で彩るよ。」

そういい、左右にいるのは雷鼓さんの仲間だろうか、また新しく二人の幻想郷の住人がいた。
あとから聞いたが九十九姉妹というそうだ。ともかくこの三人が、あたし達のライブをさらに盛り上げてくれる。

「香子。」
「…。」

目を合わせ。互いに頷く。
背中を合わせ、マイクを持ち、ここからはあたしと香子のステージが始まる。

「それでは…。」
「まず一曲目!『Sweet Nightmare』からいくよ!」

天を指さし、曲を宣言。
ミニライブでも何度か歌った馴染みの歌。
雷鼓さんがドラムを叩くと皆一斉に歓声が上がった。

こころちゃんに言われたことを思い出す。
歌も、踊りも、ライブそのものも楽しむ。
さぁ、ライブスタートだ。
 
 

 
後書き
⚫ウィステリア
突如としてサーヴァントアイドル界に、現れた期待の新星。
マスターの源葵とサーヴァントの紫式部からなる異色のユニット。
運動神経抜群でダンスにキレがある葵、
歌人であることもありその歌唱力は圧倒的な紫式部。
互いが互いの欠点を補いつつ、支え合う二人。
ウィステリア、すなわち藤の花の花言葉である『決して離れない』はまさにこの二人の為にあるものだと感じさせられる。
衣装は藤色のワイシャツにハイウエストタイプのものにまとめられ、葵は動き重視のショートパンツタイプ、紫式部は見栄え重視のロングスカートタイプをそれぞれ着用。
帽子も葵のものはオシャレなシルクハット、紫式部はヴェール付きの帽子とデザインされており、高級感の漂うゴシックな見た目で統一しつつシックな雰囲気も醸し出しながらどこかアイドルらしい可愛らしさを感じさせる、かっこいいと可愛いを両立させた2人の衣装もまた人気で、それを真似する女性ファンも多いとか何とか。
ちなみにファン層としては、葵の場合は女性人気が非常に高く、紫式部は男性…特にお父さん世代からはかなりの支持があるそうだ(へカP調べ)

なお衣装デザイン、楽曲担当は地獄の女神兼超絶敏腕プロデューサーのへカPさん。 
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