黒猫現る 少しの夢を見させる 娘と父親 編
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「お父さん 起きてよ 式は11時からだからね 遅れないでよ 私 着付けあるから、もう、出るわよ 絶対に遅れないでよ 30分前には来てね それから、お父さんも、これから良い人見つけてね あれだけ、愛してくれたから、もう、お母さんも怒らないと思うよ」
そうか、今日は、あかりの大切な日だ。だけど、何を言って、出て行ったんだ。私は、着替えて、郷子の仏前に向かって
「行ってくるよ 郷子 お前も見守ってやってくれ、あかりの花嫁姿 昨日は現れてくれてありがとう」
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式を終えて、私は、独りで家に帰ってきた。ビールを片手に庭に向かって、座っていた。
あの黒猫が現れて、
「おお 夢を見させてくれるって言ってたよな いい夢だったよ ちょっと待て、サバの缶詰が確かあった」
と、皿にあけて、黒猫の前に置いて、私は、着替えに行った。
寝室に入ると、白いレースのナイトウェァがハンガーに掛かっていた。確か、萌黄色のワンピースを掛けていたはずだが・・。朝は、気づかなかった。いつの間に・・。
不思議な気持ちで、黒猫のもとに戻って
「あれも、お前がやったのか」と、猫に向かって聞いた。
「そうだ お前にいい夢を見させてやった 父親思いのいい娘だ これからは、その夢を抱いて、前を向いて行けよ」と、垣根に消えて行った。
そういえば、している最中は、郷子は章一さんと呼んでいたはずが、昨日は あなた と言ってしがみついてきていた。あの若い肢体 まさか・・・
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