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艶やかな天使の血族

作者:翔田美琴
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2部 銀髪の悪魔
  12話 郵便配達は二度ベルを鳴らす

「アンッ…アンッ…」
「……どうかな……?まだ…理性の欠片が無くならない…?」
「ウウッ…!ウウッ…!」
「……やっぱり、一夜くらいでは無くならないか……ウウッ」
「エリオットさん……大丈夫…ですか…?」
「俺の事を…気にするな……」
「でも……エリオットさん…汗だく…で…脱水症状……でちゃう…」
「そうだね……喉は渇いたかな…」

 水菜と俺は今は繋がっている。こんなに濃厚なセックスは久しぶりだった。
 汗もかなり出て、随分と水分を失った。
 2人して全裸になり、俺が覆いかぶさるように水菜を抱いていた。俺の腰に彼女の腕が絡まる。俺は片手だけ空いている手でペットボトルを取り、水分補給をする。こうでもしないと水分不足で倒れてしまいそうで。
 やがて彼女は俺を気遣って今夜はもうやめようと申し出てくれた。

「エリオットさん。今夜はもうやめましょう?私はもう満足しましたから。……根深い悩みが一度や二度で消えるなら……悩むことなんて無かった……」
「……あまり自分自身を追い詰めない方がいい。なかなか根深い悩みとは思っていたけど、かなりのものだね…」
「アッ……」

 自らをそっと抜き去ると彼女が悲しそうな顔になるのが見えた。本当はずっと俺に居て欲しいんだ。でも。身体を重ねるパートナーが死んだら何にもならない。それに俺もまだ死ぬ訳にはいかないし、引き際が肝心だった。
 この子の性に関する欲望は相当な根深さだ。それこそ快楽を追求するものは感心するものがある。
 コンドーム1つするにしても口戯でしてくれるし、ついでにそのテクニックは熟練の技だった。何人もの男性と散々経験したものだろう。それがまた男の欲を刺激するものだった。俺だって同じだよ。何時間でも咥えて欲しい衝動に駆られる。
 それに身をやつせば恐らく空になるだろう。あっという間に。ある意味、中毒性があるセックスだった。ミカエルが他の女としないで彼女を縛り付けた意味がわかる。
 俺も雄に堕ちた。その快楽は妻を超えていた。恐ろしい快楽だった。時間が許せば確かに永遠にしたい。その前に死ぬけど。生半可な精力では足りないんだ。水菜は自分自身で告白した。余程の絶倫で無ければ相手が白けるから、私は諦めてきた…と。
 まあ…でも俺も絶倫では無い。他の人間はどうかは知らないけど、体力には自信はある。でも。根深い水菜の性欲に俺の体力が足りない。
 俺はセックスは本業では無いからな。技術屋だから、モビルスーツの開発が本業。こちらは完全に趣味の範囲だった。
 彼女の悩みは確かに根深いな。水菜曰く、自分自身が性欲を覚える時は生理が近いからだと言う。それが近いと無性に誰でもいいから火照りを冷まして欲しいのだ、と。無性に誰でもいいからセックスをしたいのだと。
 その台詞はアネットからも聞いた。アネットも俺に抱かれたい時は生理が近いからだと説明していた。で、何故なのかと聞いた。野暮だと想ったけど、説明してくれた。
 女性は生理が近くなると、妊娠しづらい体になるので自然とセックスしたいと思うとか、後は子孫を残す本能が働いてやりたくなる時もある。そんな感じ。まあ、後は俺が好きだから気持ちを確かめたいと。
 じゃあ、俺がしたくなる時はと聞かれると返答に困るのだ。1つは確かに妻の体温が恋しくて触れ合いたいという気持ちと、単純に男性としての欲望は確かにある。否定はしない。俺も男だし。性に関する欲望くらいは持っているさ。
 ジオニック社にも美女はいるし、いい女を見れは結婚していたって一度や二度はしたいなぁと思う。実際にするかは別として。
 水菜との関係も単純に男性として欲を感じたから及んだのは間違いない。だが。どうもそれだけじゃない。あのキスで吹き込まれたのは魔力だった。まさに虜になるというものだ。一体、彼女は何者なのだろう…?
 レム家の人間だからわかる何か?
 ミカエルもそれを感じたから、手放そうとしなかった。説明はつくか。
 とりあえずは要らぬ詮索は抜きにして彼女と楽しむ。それがいい。
 俺はゆっくり起き上がると、また黒いインナーと下着とスボンと薄いシャツを纏う。彼女も服を纏う。そして今夜の情事はここまでにした……。
 だいぶ汗が出ているな。シャワーを浴びた方が良さそうだ。 

「ふうっ……。今夜の情事はここまで…。だいぶ宵も更けたし、部屋に戻った方がいい。お互いにね…」
「でも……だいぶ収まりました……。しばらくは大丈夫だと思います…。エリオットさん」
「……今度はいつかって話かな…?だいぶ、こちらも欲望は埋まったからね。しばらく禁欲してもいいくらいだよ。まあ…お互いに疼いたらにしようか?」
「合図は?」
「合図ねえ。俺の書斎に入る時のノック4回。あれを合図にしよう。俺も君の個室に合図する時はノック4回。それがお互いの合図でいいかな」
「昔の映画みたいですね」 
「昔の映画」
「郵便配達は二度ベルを鳴らす。聞いた事ありませんか?」
「ああ、あれね。異様に興奮するシチュエーションには違いないかな」
「とりあえず今夜はもうおやすみ。俺も寝るよ」
「わかりました…おやすみなさい…エリオットさん」
「良い夢を」

 水菜はそうして俺の書斎から出て行った。
 シャワーを浴びて、俺も寝るかな。
 まだ、俺の頭の中は朦朧としているよ。
 余りの快楽を味わって……。
 ふと時計を見たらもう午前2時だった。
 
「……夜ふかししたな……」 

 深いため息をして、壁に寄りかかる。
 
「郵便配達は二度ベルを鳴らす……か」 
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