『外伝:青』崩壊した世界に来たけど僕はここでもお栄ちゃんにいじめられる
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葛城舞という男の娘(おんな)の話
「んーっ!」
カーテンの隙間から差し込む朝日で起きて思い切り伸びをしているのはこの僕、葛城 舞。
女装が趣味なのと筋金入りのマゾという事となんだか変な神様と繋がってることを除けばどこにだっているごく普通の男の娘だ。
さて、始まって早々だけれど葛城 舞の朝は早い。
手足に残っている縄で縛ったあとを気にしながらシャワーを浴び、昨日の魔力供給のことを思い出しながら余韻に浸ってお湯に浸かってリラックス。
それからお風呂から上がって着替えるけど
「ふふん。」
今日も僕は僕らしい。
姿見に映るミニスカートとへそ出しトップスを身にまとった自分の姿を見てそう思う。
最初に言ったけど、僕はれっきとした男だ。
おちんちんだって生えてるし。
けど僕は、こうして女性の格好をする。
昔は無理矢理お栄ちゃんに着せられたりしたけど、今ではこうして自分から着ているし、タンスの中にはもうむしろ女物の服しかなかったりする。
どうして女装をするのかって?
理由は単純明快。それが僕に似合うからだ。
男の子の格好をするより女の子の方が似合っているし、それが何よりも僕らしいから。
自分らしくする。自分の思うがままに生きる。
人生なんてほんの一瞬だ。
常識なんかに縛られて生きてたらあっという間に過ぎ去っていっちゃう。
昔、ある人がそうやって教えてくれた。
だから僕は自分らしく生きることにした。
自分のありのままをさらけ出すことにした。
そのある人って言うのは実はお栄ちゃんではなくて…。
ってこの話は長くなるからまた今度にしよう。
さて
「今日は何作ろっかな…。」
冷蔵庫を開け、朝食は何にするか決める。
とりあえずお米は研いで炊飯器で炊き、後は姫路町の農園からもらった茄子を焼くことにする。
後は味噌汁も用意して、だし巻き玉子とあと昨日の野菜の煮物の残りがあったはず…。
そうやって献立を考えながらテキパキと準備をしていると、
もにゅ
「ひあぁっ!?」
お尻を優しく掴まれる感触に変な声を出してしまった。
こんなことをするのは勿論…。
「おはようマイ。」
「おはようお栄ちゃん。そういうのは料理中にはやめてねって言ったでしょ?」
「悪い悪い。いいケツがあったもんでついつい…。」
と、おじさんみたいなことをいい頭をかいて笑って誤魔化すお栄ちゃん。
「にしてもマイ…やっぱり前よりケツがもっちりしたというかデカくなったと言うか…。」
「お…大きくなってなんかないよ!!」
冗談でもない事を言い出すお栄ちゃんに少し声を荒らげる僕。
でも最近確かに…いやいやそんなことない。
きっと冗談だよね?多分からかってるんだよね?お尻…大きくなってないよね?
「益々身体がメスっぽくなっておれも嬉しいヨ。」
「そんなこと言わないで!ほら!ご飯できる前に少しくらいお仕事進めたら!?」
セクハラ紛いのことをされて少しご機嫌ななめになるけど、お栄ちゃんは笑って仕事場へと消えていく。
「まったくもう…。」
気を取り直して卵を焼き始める。
でも、嫌じゃない。
こうして何事もない日常を送って、お栄ちゃんとずっと一緒にいられる。
今が夢みたいなとっても楽しい日々。
まるで僕達、夫婦にでもなったみたいだ。
それから
「進捗はどうなの?」
「ああ、終わった。ついでにもう一作品描いてみるか。」
「やっぱり早いね。」
朝食をとりながら、お仕事の話をする。
お栄ちゃんのお仕事は絵を描くこと。
誰かに頼まれて描いたり、自分の描いた得や漫画を売ったりする。
今話しているのは即売会の話。
色んなサーヴァントや人間が集まって、自分の描いた好きな物を売りあう。
いわゆるコミケみたいなものだ。
「マイはどうなんだい?」
「ごめん…もう少しで出来る…と思う。」
それと、僕も絵を描いてる。
お栄ちゃんほどでは無いけども、一応上手いと言われるウデマエだ。
「ったく…そろそろ絵一本でやってく覚悟決めたらどうだい?」
「そうは言ってもお金が…。」
生活していく上で、お金というのはどこの世界でも必要なものだ。
ちなみにお栄ちゃんはとと様のそっくりで、お金にあまり執着がない。
依頼だって格安で請け負うし、即売会でも知り合いがいればタダであげちゃうし布教用で下さいといえば一冊分の値段で何十冊もあげちゃったりする。
気前がいいのはいいけど、やはりそこは困り物だ。
だから僕はこうして働きながら、絵を描いている。
とてもじゃないけど今の状況で絵一本で食べていく自信はない。
「そんな深刻そうな顔すんな。マイの絵はおれととと様のお墨付きサ。ナァ、とと様。」
と言い、ちゃぶ台の上にいるとと様に首を向けた。
さっきからもしゃもしゃと卵焼きを食べてるこの小さなタコのマスコット生物こそ、お栄ちゃんのとと様、葛飾北斎。
なんか邪神と色々あってこんな姿になったんだって。
で、そのとと様は
「なに?味が薄くて飯のおかずにならねぇ?今はそんなこと聞いてるんじゃねぇ!マイの絵の事だ!!」
ぷい、とそっぽを向いて味噌汁をすするとと様。
とと様の言葉は基本分からないが、娘のお栄ちゃんと僕にだけはちゃんと通じる
あ、今『味噌汁も薄い』って言われた。
「ごめんねとと様。今度少し濃いめにするから。」
と、文句は言うけど出されたものはきちんと残さず食べたとと様はふよふよと浮いて自分用の小さな座布団にちょこんと座った。
たまにひなたぼっこしたり絵を描いてたり、お栄ちゃんの絵にアドバイスという名の文句をつけて言い合いになったり、
この人もこの人でけっこう自由人だ。
「はい、ご馳走様。今日も美味かったヨ。」
「ありがと。」
お栄ちゃんもご飯を食べ終え、そうして仕事場へと戻っていく。
僕もお皿洗って、そろそろ絵に手をつけなきゃ。
⚫
夕方。
「それじゃあ行ってくるね。」
「おう、いってらっしゃい。」
「洗濯物は洗濯カゴ!使ったものは使った場所に!あと今日はすごく遅くなると思うからご飯食べてていいからね!」
「はいよー。」
僕の仕事は夜から。
出ていく前にお栄ちゃんにいつも通りのことを言い、出て行く。
口を酸っぱくして言ってるけど、1回も約束守ったことないんだけどね。
さて、僕の仕事先は姫路町という町にあるBAR、『蜘蛛の糸』
そこでお店のスタッフ、"クズシロ マキ"として働かせてもらってる。
以前は"女性"として働いていたけど、お栄ちゃんに再会してからはこうして自らの性別を明かすことにした。
のだけれど…
「マキさんが男の娘ォ!それでも一向にかまわんッッッ!!!」
「可愛い上におちんちんついてるとか超お得じゃん。」
「メカクレに男も女も関係ないさ。当然私は、今まで通りマキさんを愛するとも!」
と、人気が減るどころか大人気になってしまった。
「世の中どういうものがウケるかアラフィフにはよくわからないネ」
と、このBARの店主のモリアーティさんも困惑状態。
こうなると吉原のことを思い出すなぁ…あ、これも話が長くなっちゃうからまた別の機会に。
とは言っても、何事もイイコトづくめというわけでもなく僕が男と知ったら二度と来なくなっちゃった常連さんもいるんだけどね。
「蜘蛛の糸?あんなカマホモ野郎のいるとこ二度と行くかボケ!!女装だろーが男の娘だろーが結局のところホモだろ?俺ホモは嫌いなんだよ!!しね!!!!」
と言い捨て、来なくなった探偵さんとか。
「ねぇねぇマキさん!歌歌ってよ!」
「え、まぁうん…いいですけど…。」
「マキさんマキさん!目線こっちお願いします。」
「い、いいけど…。」
「マキさん。サーヴァントと週何回シてるの?」
「セクハラやめてください。あと正確に数えるなら週140は超えてます。」
まぁ今は今でエンジョイしてる。
ただ、この現状を見てモリアーティさんは言うのだ。
「ここ、キャバクラとかスナックとか、そういう場所じゃないんだけどなー。」
ってね。
⚫
それから僕達は、たまに遠くへでかけることもある。
主な目的は
「新刊出ましたー!おひとつどうですか〜!」
同人即売会。通称サバフェスもどき。
地方や東京、様々な場所、大小色んな規模でこうしてコミケもといサバフェスみたいなものが開催されている。
どんな小さな開催でも僕とお栄ちゃんは参加する。
参加する理由としては僕もお栄ちゃんも絵を売りたいってよりは絵を見てもらいたいし、もっと描きたいっていう感情の方が強いけどね。
「螺歩蔵町怪奇譚新刊でーす!!在庫残りわずかとなりましたー!!」
と、ところかまわずいろんなところに出展していたらいつの間にか僕とお栄ちゃんの2人だけのサークル、『肉棒むらむら』は超人気サークル。もとい壁サーとなっていた。
サークルの名前は最低だけど、相変わらず列は耐えないしたくさん印刷したものもあっというまに売り切れてしまった。
中でも人気なのはお栄ちゃんの描く漫画、『螺歩蔵町怪奇譚』
なんの取り柄もない主人公がサーヴァントと出会い、人として変わりながら螺歩蔵町という架空の町で起きる不思議な事件を仲間と一緒に解決していくお話だ。
クトゥルフ的コズミックホラーも交えたそれは大人気になり、ネットでは高値で取引されるほどらしい。
でも、
「お栄ちゃん。全部はけたよ。」
「そうかい。ってマイの分は?」
「それがその…。」
お栄ちゃんの分はあっというまに完売するけど、
僕の分はまだまだ残ってる。
「だいたいなんだい?『水着剣豪修行絵巻』ってのは。見てるこっちが恥ずかしいヨ。」
僕も絵を描くし画集を出したりする。
その中でも特に力を入れているのがストーリーものの『水着剣豪修行絵巻』だ。
仙女、そして伝説の水着剣豪に憧れる葛飾応為が風を操る仙女(男)と共に各所を旅し、名だたる水着剣豪を倒していくという話。
僕的には自信作なのだけれど…どうやらウケが悪いみたいで。
「でも…セイバーのお栄ちゃんかわいいよ?」
「だからそれをやめろってんだ!!それになんだこの風の仙女(男)ってのは!これ元になったのは絶対マイだろ!?」
「えへへ…。」
笑って誤魔化すことにする。
そうして僕は、残ってしまったそれを抱えて会場を後にすることが多いのだ。
⚫
「今回も楽しかったナァ。」
「だね。」
イベント終了後。
僕達はこうして予約していたホテルの一室にて寄り添いあってお酒を飲んでる。
僕はまだ19歳だけど…別にいいよね?
「しっかしマイは本当に酒が強いナァ。」
「うん。このおかげであそこでも働けるんだけどね。」
と、何本目か分からない日本酒の瓶を開けながらお栄ちゃんはそう言う。
お栄ちゃんもそこそこ飲むけど、僕もかなり飲める口だ。
でもこの能力のおかげで僕はこうしてここまでやってこれたわけで…いけないいけない。話がそれちゃう。この話はまた今度で。
さて、
そろそろいい感じに身体が火照ってきた。
「ねぇ、お栄ちゃん。」
着物の裾を引っ張り、お栄ちゃんの肩に身を寄せる。
「…なんだい?"マゾ犬"♡」
僕のことをそう呼ぶということは、僕の意図を理解してくれたということ。
こうやってする時は、いつもお栄ちゃんからやってくるけど、たまにはこうして僕からも誘いたくなる時はある。
「その…シたいなって。」
「シたい?何をだい?」
「その…えっち。」
お栄ちゃんは意地悪そうに聞く。
分かってるくせに。わざとそうやって聞くんだ。
さらに、
「えっち…か。マゾ犬はどうされるのが好きなんだっけか?」
こと細かく、ニヤニヤしながらどうされたいか聞いてくる。
「その…いじめられたり…。」
「いじめられる?どんな風に?」
「キ、キスしながら乳首とか…カリカリされたり…耳とか舐められながら、亀頭だけを擦られ続けたりとか…あとおしりも」
といいかけたところで、僕の唇に人差し指が当てられる。
「ふふ…よぉく言えた♡百点満点サァ♡」
そうして抱かれ、押し倒される。
着物を脱ぎ捨てられ、僕は今日もお栄ちゃんにいじめられる。
ここがどうであれ、なんであれ、この僕、葛城舞という男の娘は、
「覚悟しろよマゾ犬♡今日もたぁっぷり、俺の気が済むまでぐっちょぐちょにしてやるからナ♡」
葛飾応為…お栄ちゃんにいじめられるんだ。
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