Fate/imMoral foreignerS
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新しい敵の話
前書き
どうも、クソ作者です。
FGOにてお栄ちゃんの幕間が実装され、やる気と書く気がもりもり湧いてきたので久しぶりに更新しました。
いや本当に、本当に久しぶりですね。
しばらくは崩壊世界シリーズの方に集中していたので。
でもここから一気に書き進めていきたいと思います。
このやる気が続く限りね!!
それでは本編、どうぞ。
螺歩蔵第一高校。
螺歩蔵町にある高校であり、偏差値もそこそこで比較的自由な校訓が特徴の学校。
午後五時、夕日がグラウンドに照りつけ生徒達もまばらになったその校内。
そのとある一室にて、彼らは話していた。
「あのさぁ…私怨マシマシな勝手な行動は困るって言わなかったっけ?俺。」
そこにいるのは複数人の男女。
1人の男は椅子に腰かけ、机に足を投げていかにも偉そうに座っている。
面倒くさそうな仕草で男は、目の前にいる女生徒にそう言っていた。
「しかし、面白いから見に行ってみと促したのはあなたなわけで…。」
「マジメちゃーん、それ言うのやめて。俺なんも言えなくなっちゃう。」
偉そうな男の隣にいた、マジメちゃんと呼ばれた女生徒が口を挟むも、男はやめさせる。
「何?憧れの先輩がどこの誰かも知らない男に盗られちゃったのは見てて悔しかったかい?こーんちゃん。」
「…ッ!」
「会長、そこまでにしませんか。」
こんちゃん。
そう呼ばれた女性は拳を握りしめ、今にも殴りかかりそうな勢いだったがそれもまた別の男に止められる。
礼儀正しく、目鼻立ちも整ったハンサムな印象を受ける男子生徒だった。
「近野さん、あなたは少し短気過ぎる。あなたのその愚かさが今回の事件を招いたと言っても過言では無いんですよ?」
「けど…あいつは先輩を…!」
「それでは困りますよ。フォーリナーのマスターとはいずれ仲良くしてもらわないと困るんですから。」
「嫌だ。駒とか戦力とか関係ない。大体あんなやつ1人殺そうが平気なんじゃないですか?」
礼儀正しい男を突き放し、その女生徒は踵を返して教室から出ていく。
「おーいこんちゃーん。まだお説教は終わってないぞー。」
「関係ない!帰る!あとそのあだ名で私を気安く呼ぶな!!」
ピシャン、と勢いよくドアが閉められ近野さんという女性はいなくなった。
「会長…あなたもあなたです。そうやって煽って焚き付ける癖はどうにかした方が…。」
「えへへ、わりわり。」
頭をかきながら半笑いで、いかにも反省してなさそうな態度の会長。
「そういや尾野、アサシンの件どうなった?」
「枢くんとルーラーが交渉に行ったようですが…果たしてどうなるか…。」
「じゃああいつらは?ほら、アーチャーとキャスター、あとフォーリナー。」
「フォーリナーは私のライダーが交渉しているそうなのですが…目立った進展は聞きません。アーチャーとキャスターは…。」
「私が行くよ。」
会長の隣にいた女性が、手を上げる。
「お?行ってくれんのマジメちゃん。」
「以前頼んだのはアンタだろ。まぁ私のセイバーだったら穏便に済ませられるだろうし、最悪武力行使になったとしても二騎相手だろうが負けないよ。」
「じゃ、よろしくゥ!パパッと終わらしちゃってね。俺は俺で何かと忙しいから!」
そう言い、会長は「じゃあ今日の生徒会はお開きということで、かいさーん!」と柏手を打ち、立ち上がって教室を出て行った。
「はぁ…相変わらず自由と言うか勝手と言うか…。」
「仕方ないよ。神乃は昔からあんなやつだから。」
二人になった彼らは溜息をつきながらそう呟く。
夕日も薄暗くなりつつあり、空は既に橙と群青の交わった黄昏色をしている。
「こういった日常を過ごせるのは…あと何日でしょうか。」
「それまでに…悪戯好きな神様を何とかしないとね…。」
薄暗くなった教室にて、その2人はそう言葉を交わし、決意を固めるのであった。
⚫
「葛城ー!元気かー!」
朝。
腕の調子も良くなり、制服に着替えて朝ごはんを済ませた頃、ピンポーンというチャイムの音と暮馬くんの声が聞こえた。
「おまたせ。」
「お、もう今日から学校行けんの?」
「うん。もう腕は問題ないし…って暮馬くん?」
暮馬くんはこうして僕の家に寄り、安否確認をするようになった。
というのは建前で、折角出来た友達だからこうして学生らしく、一緒に登校したいらしい。
それといつもは暮馬くん一人なのだけれど
「おはようございます。葛城さん。」
「巴…御前。」
彼の隣にはサーヴァントである巴御前がいた。
しかもうちの高校の制服を着用してだ。
「母さんが学校くらいは行かせてやった方がいいって言ってさ。そんで手続きしてくれたわけ。それに…」
「先日の襲撃の件…やはり暮馬さんも襲われる可能性があるのでこうして巴が常についていた方がよろしいかと…!」
「って感じでさ。言って聞かないんだよ。」
別に学校くらいは大丈夫だよ、という暮馬くんだが巴御前はそうはいかないらしくやはりマスターをお守りするのはサーヴァントの役目なればと、難しい事を話していた。
「お、巴御前じゃないかい。」
玄関で話をしていたら、お栄ちゃんもやってきた。
「なっ…なんですかその格好は!?」
「ああ、昨日からぶっ通しでヤってたもんでな。着替えるのもめんどくせぇからこれだけ着てる。」
僕の大きめのTシャツだけを着て、
「や、やって…た?」
「なんだその反応。まさかお前さんヤってねぇのかい?魔力供給。」
「葛城…お前…。」
暮馬くんが呆れたような嫉妬しているような目で見てくる。
だってしょうがないじゃないか。毎晩毎晩襲われるんだから。
「分かんねぇかい?せっくすだヨ。」
「言い換えなくとも分かっております!!だ、第一!あまりそういうものはみだりにするべきでは無いと私は…!いいですか!殿方との肌の重ね合いというものは…!」
「気持ちいいぞ。特にマイのアレはとにかくデカくてナァ…。」
止める。
こんな朝っぱらから玄関の前でそんな話しないで欲しい。
お隣さんに聞かれちゃったらどうするんだ。
「行きましょう!暮馬さん!このままでは学校に遅れてしまいます!!」
「え、あーうん。じゃあ葛城、早く行こうぜ。」
準備は出来ているので鞄を持ってすぐに出かける。
ちなみにお栄ちゃんなのだが、学校に行くということはしないと言っていた。
何時間も座って訳の分からない座学を紙に写して書くんなら、絵の一枚でも描いていた方がずっと有意義だと言っていたからだ。
「そういや葛城。」
「ん、なに?」
そして登校中の最中、暮馬くんが話しかけてきた。
「お前が会ったサーヴァントって、どんなんだった?」
「えーと…鎧みたいなの着てて…槍持ってたよ。」
割と前の出来事だけれど、そいつの事は鮮明に覚えている。
けど見つかる限りの特徴といえば、それくらいだ。
「んー…それだけだとわっかんねぇなぁ。他になんかない?」
「どうして?」
「いや、それで真名とかの手がかりになんないかなーって。真名が分かれば、次の戦いとかでグッと有利になるじゃん?」
多くの場合、サーヴァントの真名が割れてしまえばそいつの弱点も判明してしまう。こちらからすればそれは倒すための足がかりとなる為、真名はそれほど大事なもの。
だから聖杯戦争ではサーヴァントを主にクラスで呼ぶのだ。
「クラスはバーサーカーってお栄ちゃんが見抜いたけど…。」
「バーサーカーで槍持ってるやつ…そんなんいたか?」
ここで、僕はあることを思い出した。
「そうだ!名前じゃないけど鬼武蔵って異名を持ってるって言ってた!」
「鬼…武蔵?」
暮馬くんの表情が変わる。
「なぁ葛城、」
「?」
「そいつの持ってる槍…名前あったか?」
「うん。なんて言ってたっけ…確か『人間無骨』って…。」
「人間無骨…でもそれ…おかしいな…。」
疑問を口にする暮馬くん。
一応僕だって、そいつの真名について少しは考えた。
本人は自分を鬼武蔵と呼んだ。それからして彼の真名は"宮本武蔵"なのではないかと考えたがそもそも宮本武蔵は槍なんて持たないし、鎧も着てない。FGOにて実装された宮本武蔵はまず"女"だ。
鎧から聞こえたあの雄叫びは、まさしく男の声だ。
「俺さ、とある仮説立ててたんだ。」
「仮説?」
「ああ、葛城の北斎、友作のキルケー。俺の巴さんに桐生の召喚したへシアン・ロボ。」
と、暮馬くんは僕らの所持するサーヴァントを挙げていく。
「うん。」
「どれもFGOに登場するサーヴァントだし。だからこれからやってくるだろう奴らも、そういうもんだと思ってた。」
「思ってた…?」
その言い方からすると、鬼武蔵は違うのだろうか?
「お前と北斎が会ったのが本当に人間無骨を持った"鬼武蔵"なら、その法則から外れることになる。」
「どうして?」
「どうしても何も、鬼武蔵ってのはだな…。」
話を続けようとする暮馬くん。
しかしここで、思わぬ邪魔が入った。
「かっ、狩井ィィィィィ!!!!!」
「!?」
もはや咆哮に誓い声で苗字を呼ばれ、ビビりながら振り向く暮馬くん。
その後ろにいたのは
「なっ、なんだその子!?なんだその隣にいる巴御前みたいなめっちゃ綺麗な人ォ!」
「タクヤくんだ…。」
暮馬くんを叫びながら指さすのは友達のタクヤくん。
後ろからは平野くんと友作くんも来ていた。
「暮馬さん…もし彼は敵…!?」
「違うよ巴さん。俺の友達だからさ!」
思わず身構える巴御前。
タクヤくんは有り得ないスピードで接近すると、暮馬くんに詰め寄った。
「お前…誰だよこの子!」
「いや…巴さんって言って」
「なにィ!?お前いつからこんな推し鯖にそっくりで名前も一緒な彼女連れ歩いとんじゃくされボケがぁえぇこのおんどりゃァ!!」
「タクヤくん…落ち着こうよ。」
どうやらタクヤくん、暮馬くんが巴御前のような人(本人)を連れていることが非常に許せない様子。
うん…彼女欲しい欲しいって前々から言ってたもんね。
「これが落ち着けるかよォ!友達になったばっかの奴が彼女連れてんだ!なんか裏切られた気分だぜ!!」
「いえ…巴は暮馬さんとはそういった関係ではなく…ただ居候させてもらっている身であり…!」
「居候…つまり同棲だとォォォオォォオ!!??」
なんとか誤解を解くべく、説明をした巴御前だけどその結果は火に油を注いでしまった。
「許さねえ!許さねぇぞ暮馬ァ!!」
「ほら落ち着いてよ!遅れちゃうから!」
結局、僕ら3人がかりで暴走するタクヤくんをおさえ、暮馬くんと巴御前には先に行ってもらう事にした。
こんなにブチギレてるんだもん。僕らも言えないよね。
実は僕と友作くんも、家に自分の推し鯖がいるんですって。
⚫
それから授業をこなし、友達を他愛ない話をしながら盛り上がったり、まぁいつもの学校生活を送って下校することになる。
暮馬くんは別のクラスなんだけど、転入生としてやってきた巴御前の対応に追われてそれはそれはもう忙しい1日だったとか。
それは当然だ。
だっていきなりクラスに銀髪の美人さんが来て、それが暮馬くんと同棲してるって言うんだから。
さて、その下校した時のことだ。
「葛城。」
駅前でタクヤくんと平野くんと別れ、僕も自宅帰ろうとした時、友作くんが声をかけてきた。
後ろには暮馬くんに巴御前、キルケーもいる。
「うん。分かった。」
何も言わなくても、そのメンバーがいるだけで分かる。
こうして集まるのは桐生の事件以来だ。
そして当然話す内容は、決まってる。
「お前を襲ったバーサーカーの件についてだ。」
場所は変わり近くのショッピングモール。
そこのフードコートで僕達は集まって臨時会議を開いていた。
「前のアヴェンジャーに関してはお前や暮馬、その他クラスメイトに対する私怨が動機であったが…。」
「分からない。あのバーサーカーも、僕を殺せって命じられたって言ってたから。」
確かにあの時バーサーカー、鬼武蔵は言った。
マスターの命令だ、ぶっ殺されてくれと。
「それじゃあ今回はキミ個人に対する私怨という訳かな?というよりなんなんだキミは、もしかしてよく面倒事に巻き込まれるタイプかい?」
「えへへ…不幸体質なのは、自覚あるんですけど…。」
キルケーの言葉に苦笑いで返す。
「ともかくだ。このままじゃ葛城の生命が危ない。アヴェンジャーの時と同じようにまたバーサーカーを倒すことが最優先で…」
「いや、その必要はねぇヨ。」
「この声…!」
テーブルを囲っていたみんなが一斉に振り返る。
そこには
「お栄ちゃん!」
「妙に帰りが遅いもんでナ。気になって探しに来てみりゃおれ抜きで何してんだい。」
そういい、お栄ちゃんは別のテーブルから椅子を持ってきて、僕の隣に座った。
ただ少し近過ぎる。
「だってキミは面倒くさがるだろう。」
「まぁそうだナ。それに、マイが殺られる心配はもうねぇって。」
と、自信満々に言い張るお栄ちゃん。
一体どこにそんな保証があるんだろうか。
「北斎、それはどういう意味だ。」
「意味も何も、そう約束した。」
「…え?」
「マイが倒れたあとばあさあかあのお仲間さんが来てナ。もう勝手なことはさせないって約束してもらったヨ。」
「えぇ!?」
全員が、驚愕した。
「あれ?言ってなかったかい?」
「言ってないよ!!さてはキミ報連相知らないな!?」
「そのような重大事項はすぐに報告してもらわないと困ります!!というより、あなたが敵の仲間と会ったことすら今知りました!!」
「そんくらいでぎゃあぎゃあ騒ぐな。」
サーヴァント二名からバッシングを受けるも、耳をほじって何処吹く風のお栄ちゃん。
友作くんと暮馬くんも唖然としてるし、何より僕が一番びっくりしてる。
「マイも、あっちのらいだあとかいうさあばんとに運んでもらったんだ。優しい女騎士だったナ。」
「どうして言ってくれなかったのぉ!?」
うん。知らないサーヴァントにおぶってもらったのも今初めて知ったよ。
「覚えていないのか北斎、他には何がいた?ライダーの他には!?」
「うーん…そうだナァ…。」
机から身を乗り出し、慌てた様子で友作くんが聞く。
対照的に落ち着き払ったお栄ちゃんは少し悩み、一つ一つ答えていく。
「"らいだあ"…"せいばあ"…後は"るうらあ"なんていたか?」
「なんだって…!?」
それが本当だとすれば、あちら側には四騎のサーヴァントがいることになる。
いちばん不安なのが、それらが何のために集まっているのか、そして僕らから見て敵なのかどうかだ。
「見た目は…覚えているか?」
「夜だったしナ…薄暗くてあんまりよく見えなかった。」
「…。」
正体、そして真名は分からない。
しかし僕ら以外にも四騎のサーヴァントがいることは分かった。
これだけでもかなり有益な情報だ。
「…!そうだ!暮馬くん!」
ここで僕は、今朝の話のことを思い出した。
「え、どうした?」
「朝の話!鬼武蔵のこと!まだ続きだったよね!?」
僕にそう言われ、ハッとする暮馬くん。
そして友作くんは「鬼武蔵…まさか。」と呟く。
「暮馬…鬼武蔵というと…」
「ああ、漫画持ってたから分かるんだけどさ…でもそいつ、まだFGOに実装されてねぇよなぁって思って。」
漫画…?
「分かっちゃったんだ、俺。あの時葛城と北斎が遭遇したバーサーカー、本来なら有り得ないハズのサーヴァント、
それは…」
「それは…?」
暮馬くんが口を開く。
そしてバーサーカー、鬼武蔵の真名が明かされようとしたその時…
「おう、ここに居やがったか。」
「…っ!!」
誰かの、声。
分かる。覚えている。
僕はこの前、こいつの声を聞いた。
あの時は鎧越しでくぐもっていて分かりずらかったけど、今聞こえたのは確かにそ!と同じもの。
僕とお栄ちゃんは反射的に椅子から立ち上がり、身構えて振り返る。
そこには
「よう。オレがお探しの鬼武蔵だ。」
「マジ…かよ…!」
赤い髪の大男が立っていた。
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