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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第八十三話】

 
前書き
またまた遅れて申し訳ない

見直しながら書いてました

まだまだ至らない所はありますが、よろしくお願いします 

 
――正門駅前――


皆で談笑しながらなのか、思ったより時間がかかったようには感じなかったのだが、着いた時間は五時五八分。


「ちょうどいい時間に着いたな、これだと親父や母さんをあまり待たなくてすむな」

「だね?……お父さんとお母さん、元気かな?」

「元気だろ?じゃなかったらこっちに来るって言わないだろうし」


美冬と話をしていると、先ほどから黙ったままのセシリア、シャルルが気になり、先にセシリアに声をかけた――。


「セシリア、どうした?」

「は、はいっ?ヒルトさん、何かしら?」

「いや、何か着いた時から黙ってたから気になってな」

「だ、大丈夫ですわ。――少し、緊張してるだけですので…」

「そうか。――緊張しなくていいさ、な?」


セシリアの肩をポンポンと叩くと、セシリアの表情が少し和らいだ。

それを確認すると、俺はシャルルの元へ――。


「シャルル、大丈夫か?」

「あ……うん。――少し、緊張しちゃって…。気に入ってもらえなかったらどうしよう…」

「ん…?親父や母さんにか?――大丈夫さ、だから気にするなって」

「…でも……」


そう一言呟き、更に不安そうな表情を浮かべたシャルル。

……てかよくよく考えたら何故セシリアもシャルルも緊張するのだろうか?

うーん……そこは何かしら事情があるのか、外人さんは友達の親に会うのに緊張するのか……文化の違いからかもしれないな。

――と、考えていると未来が口を開き―。


「ヒルト、美冬ちゃん、あの電車じゃない?」

「ん?――確かに六時に着く電車だな。遅れてなければこれに乗ってる……筈だろう」


――電車というよりは、モノレールと言った方がいいのだろう。

それも確か懸垂式…だったかな?

レールから吊るされるような形のやつだな。

――正直、あの吊り下げ式は少し苦手だったのだが、今は多少慣れた。


……実にどうでもいい内容を考える余裕があるんだな、久しぶりに親に会うってのに緊張すらしてない。

――まぁ、緊張する必要はないんだがな、これが。


そうこうしている内に電車(モノレール)が到着した。

……中に入って待つべきだったか?


「うぅ…き、緊張しますわ…」

「ぼ、僕も……人っていう字を手のひらに三回書いて呑むと良いって聞いたことがあるよ、オルコットさん?」

「そ、そうなのですか?――フランス文化…なのですか?」

「ううん、日本の迷信?的な…」


等と背後に居るセシリアとシャルルがそんな風に言っていると駅の構内から人影が――。


「はぁい、ヒルト、美冬ちゃん♪」


「お母さんっ」


現れた人影は俺と美冬の産みの親である母さん――『有坂真理亜(ありさかまりあ)』だった。

淡い栗色の髪を、セミロングにおろし、つかつかと靴音を鳴らし現れた。


そして、真っ先に母さんの呼び声に反応した美冬は、駆け足で駅構内から出てきた母さんの元へ向かい、勢いそのままに抱き付いた。


「あらあら美冬ちゃん?いきなりお母さんにハグ?」

「だって…お母さんに会うの久しぶりだもん」

「うふふ、そうねぇ――ヒルトも抱き付いていいのよぅ?」


――と、手招きする母さん。


「い、いいって!もうそんな歳でもないんだし」

「そう?それはそれでお母さん寂しいなぁ…」


そう言うと、しょんぼりする母さん。

久しぶりだってのに相変わらずだなぁと思ってしまった。


「てか母さん?親父は何処だ?一緒じゃないのか?」

「あら?一緒に電車から降りた筈なんだけど…」


駅構内を覗いてみるが、それらしき人影が見えず――。


「……親父、トイレか?」

「そうかも、お父さんに荷物持たせたままだから少し気になるけど――それよりも、そろそろお母さんに後ろの子達、紹介してほしいなぁ?」


そうにこやかな笑顔で答える母さん。


「ん、そうだった。――セシリア、シャルル、来てくれるか?未来も久しぶりに会うんだし、遠慮せずに来なよ」


「は、はい!い、今参りますわ…っ」

「う、うん…。僕も今行くよ」

「うん。――おばさん、久しぶりです♪」


セシリア、シャルル、未来と続いてやって来て――。


「うふふ、未来ちゃん?出来ればお母さんって呼んでほしいかなぁ?まだ私も若いし、ね?」

「う…っ――す、すみませんっ!」


そう折り目正しく、ぺこりと頭を下げた未来を楽しそうに見る母さん。


「じゃあ母さん、紹介するよ。――左のロールがかった金髪の子がセシリア・オルコットさん。イギリスの代表候補生で俺の友達だ」

「は、初めまして『お母様』。わたくし、セシリア・オルコットですわ」


――若干緊張はしているものの、何時ものように腰に手を当て、ポーズを決めたセシリア。

……何気に『お母様』って呼んだな、まぁ意味はないと思うが。



「うふふ、ヒルトと美冬のお母さんしてます。有坂真理亜です。――いつもヒルトと美冬がお世話に――」

「い、いえ。わたくしこそヒルトさんや美冬さんにはお世話になってますので…」


――何か、今のセシリアが何だか珍しく感じる。

いつもとは違う表情だからだろうか?


「うふふ、これからもヒルトと美冬ちゃんと仲良くしてあげてね?」

「は、はい!」


頬を紅潮させながら笑顔で母さんに応えたセシリアを見、次はシャルルを紹介することに――。


「じゃあ次は――母さん、彼はシャルル・デュノア君。フランス人で三人目の男子IS操縦者でもあり、俺の部屋のルームメイトだ」

「初めまして『お母さん』――シャルル・デュノアです」


そう屈託のない笑顔で応えたシャルル。

――シャルルも『お母さん』って呼んだな。

……外人さんは皆そうなのか?

友達の親をお母さんって呼ぶのは――。



「シャルルくん…?」

「は、はい……。……?」


母さんがシャルルの名前を呼び、まじまじと見つめて――。


「シャルルくん?少し…良いかしら?」

「は、はい…」


手招きし、母さんとシャルルが俺たちから離れると声が届かない少し奥の方へと移動していった――。


「お母さん…どうしたんだろぅ?」

「……わからん…」


――と言ったが、母さんって何気無く観察力高いからなぁ…初見でシャルルの性別見破るとかしそうだし…何でも、女装してる男子も動きがどこかしら男っぽく見えて、男装した女子も、何気無い仕草とかでわかるとか何とか――。


――と、母さんとシャルル、二人とも戻ってきた。


「うふふ、お待たせぇ」

「お母さん?デュノア君に何か訊いてたの?」

「うん、ちょっとねぇ♪――……うふふ、ヒルトも隅におけないわね?」

「はあ?――シャルル、何か母さんに言われたのか?」

「ん…んと……ヒルト?耳かして…?」

「……?」


シャルルに近寄り、若干屈むとシャルルが耳打ちし始める。

吐息が耳に当たり、少しくすぐったいが我慢した。


「……ヒルトのお母さんに…バレちゃったの…僕の性別……」

「……成る程」


シャルルの耳打ちが終わると、俺は母さんの方へ顔を向けたら――。


「大丈夫よヒルト?悪いようにはしないから」


手を口元に寄せ、楽しそうに笑う母さん――。


「うふふ、セシリアちゃん、シャルルくん、ヒルトや美冬ちゃん、未来ちゃんと仲良くしてあげてねぇ?」

「も、勿論ですわお母様、美冬さんと未来さんはわたくしのお友達ですし、ヒルトさんは……」


そう言葉を濁すセシリア、だが頬が紅潮していた。

――何を照れてるのか解らないが……友達って言いにくいのか?

それとも――やっぱり俺の事が……?

……まさかな、多分俺の自意識過剰なだけだろう。


――と、シャルルも母さんに対して返事をした。


「はい。僕もヒルト君や美冬さん、未来さんにお世話になってるので」


胸に両手を当て、笑顔で応えるシャルル、その様は皆が言うように王子様に見えるだろう――さしずめ、微笑みの王子様だろうか?

――ならつばめは俺なのだろうか?

何だかんだで色々と世話して――と思ったが、俺のが世話されてるな。


駄目つばめじゃん、俺。

そんな風に考えてると、駅の奥からやっと現れたのが――。


「ヒルト、美冬!父さんが来たぞー!」


俺と美冬の名を呼びながらやって来た親父――『有坂陽人(ありさかはると)』だ。

体格は俺よりも大きく、髪は俺と似た髪型だが、その色は日本人特有の黒だ。

――この家で、俺だけが髪の色が白銀なのが気になるが…何でも先祖還りらしい。


「親父?今まで何してたんだよ?」

「わりぃわりぃ、ちょい腹がぶっ壊れてな、ワッハッハッハッ!」



腕を組み、豪快に笑う親父を見て軽く頭が痛くなってしまった…。


「ワッハッハッハッ――っと、可愛いお嬢ちゃん達が居るじゃねえか。――お嬢ちゃん達、俺がヒルトと美冬の親父の有坂陽人だ、いつもバカ息子と可愛い娘と仲良くしてくれてありがとうな?」

「……どんな自己紹介だよ親父、皆きょとんとしてるじゃないか」


あまりの迫力のせいか、美冬も未来も――セシリアやシャルルと同じようにポカンとしていた。

――と、微笑ましく見ていた母さんが口を開き――。


「あなた?一人男の子ですよ?」

「ん?何処に男の子が居るんだ?俺の目には可愛い女の子しか見えないが――」

「……悪いが親父、彼は男の子だぞ?」


俺がそう言うと、シャルルがぺこりと頭を下げた。

……一応、バレると面倒だからな…母さんなら問題ないが親父だと…。


「なん…だと…。――こんなに可愛い顔なのに男の子だとぉっ!?」



オーバーアクション気味に驚く親父に、思わず苦笑する俺と美冬と未来。

そしてセシリアに至っては、親父のリアクションに少し戸惑いつつも、軽く笑うのを堪えているようにも見えた。

一方のシャルルは、可愛いと言われたせいか、照れながらもその表情は申し訳なさそうにしていた。


「親父、馬鹿やってないで学園に入るのに必要な手続きに行くぞ?母さんは手続きに手間取らないが男がここに入るのは色々手間がかかるんだし……」



「おおっ!?そうだったなっ!いざ行かん!IS学園へ!!」


ビシッ!――と親父が指差す先にあるのは海が――。


「……親父、そっちに行ったら海に出るって」

「おぉぅっ、うっかりしてただけだ。ワッハッハッ」


笑って誤魔化そうとする親父を、苦笑しながら見て――。


「ったく――相変わらずな親父や母さん見てると安心するよ」

「うふふ、ヒルトと美冬ちゃんは色々成長したよねぇ、ヒルトは少し大きくなったかしら?」

「そりゃまあ飯食って寝たら成長もするさ、これがな」


親父が持ってきた荷物の一部を受け取ると――。


「じゃあ行こう、セシリア、シャルル、未来、朝から悪かったな、騒がしくて」

「いいえ、ヒルトさんのお父様が愉快な方で驚きましたが――」

「おぉっ!お嬢ちゃんみたいな可愛い子にお父様って呼ばれるのは悪くねぇな、わはははっ」



またまた笑っている親父、それにつられてセシリアも笑みがこぼれた。

そして未来が口を開き――。


「おじさんも相変わらずですね?」

「うむ、笑顔は人を幸せにするというからな!難しい顔してるよりも、ニカッと笑顔が一番ってやつだ」


そう言い、白い歯をキラリと光らせて屈託のない笑顔で応えた親父。


その笑顔につられて、またまた皆が笑顔になりながらも俺達皆で手続きに 向かっていった――。 
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