IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第八十二話】
――1025室――
部屋へと戻ると、まだ明かりが点いていた。
「ただいまー」
「お帰り、ヒルト」
笑顔で応えるシャルル、既に寝間着用のジャージに着替えていた。
――前の事もあってか、出来るだけ別々に着替えるようにはしているものの、たまに一緒に着替えることもある。
……いつか理性が飛んで襲ってしまうかと思うと、正直ヤバい…。
――何をされても構わないとはシャルルが言っていたが、流石にあれはその場の雰囲気で言っただけだろうし――まさか、シャルルが俺を好きって事は無いだろう。
……好かれる様な要素があるようには思えないし。
少し難しい表情をしていたのか、シャルルが――。
「ヒルト…?どうしたの?何か悩み事…?」
「ん?――いや、悩みとかじゃないよ。考え事してただけだ、これが」
そう伝えると、安堵したかのようにホッと胸を撫で下ろしたシャルル。
「良かった♪――でも、悩みがあるなら僕に何でも言って?…僕に出来る事は何でもするよ」
「あぁ、その時は頼むよ――そういや、図書館で色々調べてたら自由国籍権?みたいなのを取ると、もしかするとシャルルも牢屋送りにはならないかもって書いてたな」
「うん、僕も知ってたよ?」
「う?――知ってたのか……シャルル、受けないのか?」
「う、うん……立場上今は僕、『男の子』だから…それは許されてないんだよ。――それに、自由国籍権取得するにはまだ僕も勉強が足りないし…」
「…そうか、ならまた別の方法を探すよ。暫く窮屈な思いをさせるが…悪いな」
「う、ううん!?――ヒルト、僕の為に色々ありがとう…」
ぺこりと頭を下げるシャルル、鮮やかな金髪が少し崩れたように見えた。
「気にするなって、友達なんだし」
「……そぅ…だね」
――と、俺が『友達』という言葉を言うとシャルルの瞳に少し影が落ちるのに気づいた。
「ぅ…シャルル?」
「ん?何かな?」
気になり、声をかけるとシャルルは直ぐ様笑顔で応える。
少し考えすぎなのかな…俺は。
「いや、何か一瞬元気がなくなった気がしてな。――何か気に障る事を言って気分を害したなら謝ろうかと――」
「そ、そんなことないよっ?……ヒルト、たまに鋭いよね…こういう事に…」
……ぼそぼそと小声過ぎて殆ど聞き取れなかったが、鋭いよねだけは何とか聞き取れた。
――何が鋭いかはわからないが。
「じゃあそろそろ寝るか?明日は早く起きないと」
「あっ、そうだった。…じゃあヒルト、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
明かりを消し、互いのベッドに入るとそのまま眠りについた――。
――朝、寮の玄関前――
時間は朝の四時半、少し早く目が覚めた――実は朝トレする時間に目覚めた――為、軽くランニングして俺は寮の玄関前に居る。
――ISを扱うようになって…というよりもセシリアとのクラス代表決定戦後から、俺は早く起きて身体を鍛えるようにしている。
今でこそ、ある程度はましになったが、やはり精神を磨り減らし、ISを使って模擬戦で走ることが多かった為に少しでも体力をつけようと始めたが……まだランニングで精一杯だ。
時間もまだあるため、軽くダウンして身体を解していると――。
「ヒルト、おはよう。――僕より早起きだね」
「おっす、早起きなのはいつも通りさ」
やって来たのはシャルルだ、制服に着替えている――勿論男装だが。
「……いつも僕が起こしてると思ったけど?」
「うっ…あれは二度寝しただけだ」
――少しだけのつもりが二度寝して遅刻しかける事もたまにある、そんなときにシャルルは身体を揺さぶって起こしてくれるのだ。
美冬の場合はボディプレスよろしく、ベッドにダイブしてその衝撃で毎回起こされていた。
中学時代は、未来が俺の腹に跨がり、ゆさゆさと揺さぶるので無理矢理起こされていたが――たまに朝起ちしてるのが当たるのか、おもいっきり頭を叩かれた事もあった。
……だったら起こし方変えてくれよと思う。
――まあ、俺としては幼なじみの役得と思って黙ってるが。
「さて、後は美冬達とセシリアだけだな。――シャルル、ダウンの手伝いしてくれるか?」
「うん、いいよ?」
玄関前で足を広げて座ると――。
「背中、おもいっきり押して?」
「い、いいの…?」
「おぅ、俺は柔らかいから問題ないさ」
そう告げると、ゆっくり背中を押すシャルル。
「わっ…柔らかいんだね、ヒルト?」
「おぅ、たことかイカ的に柔らかいかも。前世はたこだな」
ぺたんと、地面にくっつく。
「ん…まああまりダウンし過ぎてもダメだしこの辺りでやめるかな」
「うん」
そう返事をするシャルル、押すのを止めると俺は立ち上がり、屈伸をしていると――。
「おはよー、お兄ちゃん、デュノア君」
「おはようヒルト、デュノア君」
そう言いながらやって来たのは美冬と未来だ。
「おはよう、有坂さん、飯山さん」
「デュノア君、美冬でいいよ?同じクラスなんだし」
「私も未来でいいよ?デュノア君なら構わないし」
「――それじゃあ…僕の事もシャルルでいいよ」
等と挨拶をしているとセシリアもやって来た。
「あら?わたくしが最後でしたか…おはようございます」
「「「おはようー」」」
「おはようセシリア。――んじゃ、皆揃った事だし…正門前駅に向かおうか?歩けばちょうどいい時間に着くしな」
そう俺が言うと、四人が頷き、朝日が射し込む道を談笑しながら歩いて正門駅前まで向かった――。
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