IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第673話】
ビルの合間から飛び出したヒルトの一撃は、ネーナの機体のシールドエネルギーを大幅に奪う。
バリア無効化攻撃による一撃がもろに当たった証拠だ。
その一撃で体勢を崩したネーナのカバーの為、ファルケはハンドガンを構えてトリガーを引き続け、弾倉が空になるまで撃ち続けた。
乾いた発砲音が途切れること無く鳴り響く。
だがイザナギの装甲と装甲表面に纏っているプラズマがその射撃を阻んだ。
「何!? 咄嗟にシールドバリアーを解除するなんて、正気なの!?」
「肌を晒した部分は絶対防御がある! それに今の射撃がカバーの為の射撃だってのは分かっていたからな!」
ファルケは戦慄した、たった一瞬ーーそれも刹那の瞬間に判断したのだとすればその反応速度はヴォーダン・オージュ並のーー否、もしかしたらそれすら上回る反応かもしれない。
撃ち尽くしたハンドガンの弾倉が排出され、直ぐ様リロードを始めるファルケだが弾倉のイメージ化が上手く出来ない。
慣れた一連の動作が上手く出来ないーー何故?
疑問に思うファルケに対して、ヒルトは一瞬の隙を逃さなかった。
持っていた武装を手放すや、ファルケのハンドガンを徒手空拳で弾き飛ばし、流れるような体捌きでイザナギの重量が乗った拳と蹴りの連撃で体勢を崩された。
ネーナも崩した体勢を持ち直して反撃の為にプラズマブレードを展開、形成された粒子の刃を振り抜いた。
「ヤァアアアアッ!」
横一閃に振り抜いたその刃をヒルトは仰け反って回避、シールドバリアーは解除されてる状態でダメージは無く、装甲表面のプラズマが反応してか小さく火花を散らせた。
避けられたーーその事実に目を見開くネーナ。
次の瞬間には仰け反り体勢から繰り出されたサマーソルトの一撃に、プラズマブレードを弾き飛ばされる。
一連の動き全てを受けて二人は同じ判断を下したーー二対一の戦いに慣れているのだと。
そこから数分、何とかポイントαに誘き寄せようとするのだがそれには乗らなかったヒルト。
徐々に減らされるシールドエネルギーに焦りを見せ始めた矢先だった。
「ネーナ、ファルケ、一旦退くんだ!」
「!?」
予期せぬ方向からの牽制射撃がヒルトとネーナ、ファルケの足場に着弾と同時に本命の銃撃がヒルトを襲う。
弾丸を装甲が弾く音が鳴り響き、新手として現れたイヨが持っていたアサルトライフルとサブマシンガンの一斉射をヒルトにお見舞いした。
シールドバリアーを再度展開すると、弾丸はシールドバリアーに当たり、イザナギのシールドエネルギーを確実に削っていった。
本来なら実弾に対しては無敵とも云えるイザナギの防御結界のレーザー迎撃も、稼働すればエネルギー消耗率が著しく悪化する。
ヒルト自身もそれは分かっている上に、頼りすぎては油断を生むのも理解している。
だからこそ、ここぞという時以外は装甲だけで受け止めるのだが……。
『マスター、迎撃機能使うのですよぉΣ(ノд<)』
『いや、今このタイミングで使うのは……!』
『しかし、このままだと主君のエネルギーが……!』
ナギ、雅の言うことも分かるーーだが……。
一瞬、脳裏に閃くとヒルトはシールドバリアーを弾丸を受けるのではなく弾く方向、傾斜角度のついたシールドバリアーを再度設定し直した。
戦闘中の設定変更は自殺行為だが、ヒルトのアイタッチによる設定の速さはこれまで培われてきた瞬間視によってカバーが出来る。
シールドバリアーの傾斜角を再設定ーー従来の球形のシールドバリアーでは弾丸を受け止め、そのエネルギー自体がダメージとなってシールドエネルギーにダイレクトに数字となって削られ、それを超過した分はそのままISの装甲、又は地肌である搭乗者の肉体へと当たることによって更なるダメージーーこの場合、搭乗者への肉体へのダメージを防ぐため絶対防御が発動され更なるエネルギー消耗に繋がる。
以前からヒルト自身は考えていたーー戦車の様にシールドバリアーに傾斜角をつければダメージを減らせるのではないのかと。
降り注ぐ弾雨がシールドバリアーに当たり、それらは爆ぜていき、着実にシールドエネルギーを削られていく。
「このまま畳み掛けるぞ、ネーナ、ファルケ!」
「了解! これも勝負だから!」
「黒ウサギ隊三人相手に良く戦ったって、褒めてあげるよ!」
形勢逆転ーー三人は確信し、ヒルトに一気に畳み掛ける様に構えたライフルによる一斉射を浴びせたその瞬間、シールドバリアーの再設定を終えたヒルトの眼差しは紅く、朱く光る。
一瞬だけ目映い閃光ーー刹那の瞬間、これまで張られていたシールドバリアーは硝子のように砕け散り、新たに形成されたシールドバリアーは様々な傾斜角がつけられたーー端から見るとカットされた宝石の様なシールドバリアーがイザナギの周囲を守る様に展開される。
ヒルトに襲うライフルの弾雨は新たに形成されたシールドバリアーによって全て弾かれ、周囲のビルや地面へと弾痕を残す。
ハイパーセンサーに表示された残りのシールドエネルギーを確認したヒルトはーー。
「……これなら、いける!」
ISの常識を打ち破るヒルトの発想力に、黒ウサギ隊だけではなく会場に居たほぼ全ての人間が驚かされていた。
「……成る程、とてもランクEの動きとは僕には思えないね」
基地司令であるクラウゼは有坂ヒルトの資料をディスプレイに映し出し、今行ってる試合を見ながら呟く。
「それにあの紅い瞳……元々彼は赤い瞳だったけど、今は煌々とした光を灯してるように僕は見えるね。ふふ……それに、ボーデヴィッヒ隊長と同じ髪色に瞳の色……彼もあの計画の子だろうか、先輩?」
三対一をものともせず、互角以上に戦うヒルトを見てクラウゼは後ろを振り返るーーそこに居たのは有坂陽人だった。
「……ヒルトは俺の息子だ、それ以上はないさ……余計な詮索は止めとくんだぜ、クラウゼ?」
「分かっていますよ。先輩を敵に回したら少なくともここの基地職員全員貴方一人で制圧されますからね」
「分かってるじゃねぇか、わはははっ!」
いつもの高笑いを浮かべる陽人だったが、放たれているプレッシャーにクラウゼは軽く汗を拭った。
後書き
ほぼ一年ぶりの更新です(・ω・`人)
遅れて大変申し訳ないですm(_ _)m
行間隔をほぼ前と同じに戻しましたが、こちらの方が見易いでしょうか?
それとも行間隔狭い方が良いでしょうか?
言葉遣いが以前と変わってると思われるかもしれませんが、最近YouTubeでのコメントで丁寧を心掛けていたらこんな感じになってしまいました(;゚∇゚)
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