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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
  無事生き残ったから宴会でもする件

 
前書き
報告書
三笠の拠点強奪及び所属サーヴァントの回収
通称『三笠作戦』だが結果は失敗に終わった。
得られるものもなくゾンビ兵はほとんどいなくなり、さらに英霊兵も試作用として作られた全30機が修復不可能な程に大破した。
隊員もほとんどが海の藻屑と消え、陸から攻めるハズだった部隊は生存者はいるものの彼らは作戦中にてソニックブームやら超音波にやられたといい、皆鼓膜が破壊されていた。
言うなれば我々の敗北、しかも完敗である。
代表は大層ご立腹であり、帰ると腹いせに複数人の部下をサーヴァントを使って殺害。
しかし何故か今作戦の指揮官である傭兵、置鮎 啓に対してはお咎めなしと謎の待遇であった。
それだけならまだよいのだが我々葛城財団は二度と神奈川エリアへと足を踏み入れることは出来なくなった。
先日サーヴァント捕獲のため調査に赴いた隊員達が手紙と共に帰ってきたのである。
いわく、
お前達のしたことは到底許せないことであり、根絶やしにしなければ気が済まない。
だが、条件として二度とここに足を踏み入れなければよしとしてやるとのこと。
だが、もしその約束を破ることがあればこうなるぞと、手だけになって帰ってきた部下と共に送られた手紙にはそう書いてあった。
どうやらこの世界にも危険な組織というのはあるらしく、我々はその組織の逆鱗に触れてしまったらしい。
とのことで、我々葛城財団は余計な被害を出さぬよう金輪際、神奈川エリアには干渉しないことを決めた。
そうすればあちらもこちらには手出ししないとのことなので代表含め満場一致で賛成した。
と、今作戦の報告は以上である。
今後の予定としては実働部隊の補充、さらにサーヴァントを使った新しい兵器の研究。英霊兵の量産化の実現など空いてしまった穴を埋めなければならない。
代表の目的のため、そして我々の野望のため、皆誠心誠意頑張っていただきたい。

 

 
ついこの前戦場の地となった三笠。
地は荒れ果て、三笠は沈没しそうな程にボロボロになってはいたか今はそんなことが嘘だったかのように復旧している、

集まってくれた人達やサーヴァントのおかげだ。

「そっすね、んじゃそこら辺に。バベッジ先生は機械の点検お願いします。」
『了解した。』

さて、そんな中俺は作戦準備の時と変わらず、こうして指示を出している。
これからどうするのかって?
折角勝ったんだから宴会を始めんだよ。
それにわざわざ横浜からオーシャンビヨンドの偉い人が来たりハインド商会やその他もろもろ来てんだからな。
助けてくれたのにただ帰ってもらうだけじゃダメだろーがよ。


で、今院長先生は三笠の会議室にて偉い人達とお話し中だ。
今後の話。財団に対する対策。そしてより一層同盟を強く結ぶそうだ。
困ったときはお互い様。自分だけで背負い込まないようにってな。

それとあの武蔵のマスターいただろ?
白髪の、あの一人だけ違う世界から来ました?ってやつ。
院長先生になら託せるっつってあるものを渡したんだよ。
なんだと思う?
『葛城財団の研究資料、及び職員の日誌と記録』だってよ。
なんでも浜辺で漂着してる頑丈な箱を調べたら出てきたんだと。

最初は偽物なんじゃない?って全員思ったんだけど手記の筆跡、そして記録映像に映る撮影者の顔を見てこいつは本物だと子安さんが断言したそうだ。

部署は違うが交流があり、新人ながらとても真面目かつ良心的で前々から財団のやり方について疑問を唱えていた、とのこと。
自分が逃げる数日前、突然行方不明になったがまさか財団から消されたとは思わなかった。と、彼女は涙ながらに語った。
いいやつだったんだってさ。

というわけでこの揺るぎない証拠の数々を各メディアを通して報道すれば葛城財団は非道な組織だということが日本全国の全員が嫌でもわかる。
つまり、共通の敵となれば皆が一丸となって潰しに行けるのだ。
だがそうするまでの道のりは割りと険しい。
葛城財団から資金援助を受けている組織、主に宗教団体はたくさんいる。
あの人間同盟だってそうだ。
他の場所でも人神教だのFHAだのサーヴァントを嫌うふざけた組織はごまんといる。
だから、葛城財団を潰すのは思ったより簡単ではないだろう。

「まーちゃんおつかれー。 」
「おう。」
「お疲れ様、探偵さん。」
「舞さん!?どうもありがとうございます!!」

そんなこんなで宴会の準備をしているとおっきーと舞さんが昼食を持ってやってきた。

「姫だけ扱い雑じゃない?」
「いつも通りだよ。」
「分かった!照れ隠しでしょ。」
「んなわけあるかボケ。」

誰が照れ隠しだよバカ。

「どうぞ探偵さん。朝から働きっぱなしって聞いたんでお弁当作ってきました。」

そういい、舞さんはおにぎりとかおかずとかがギッシリ詰まっている重箱を差し出してきた。
なんとありがたいことだろうか…!
あの舞さんが!俺のために!!
しかしさすがの俺でもこんなに食べられないぞ。
いやここは残さず食べるべきだろう。うん。

「ありがとうございます、舞さん。このお弁当は米の一粒一粒よぉーく味わって全部食べますんで!!」
「何いってんのまーちゃん。皆で食べるんだよ。」
「…え?」

俺のためじゃなかった。



それから

「いやー悪いわね!お昼ご馳走になっちゃうなんて!!」

テキトーに呼んだらしいがなんだこの組み合わせは。

「やっぱりマイの手料理は最高サ。そら、どんどん食え食え。」

舞さんのサーヴァント、葛飾北斎は自分のマスターの料理の上手さを知ってもらうべく、集まった人にどんどん勧める。

「これ、全部舞が作ったの?」
「うん。多少タマモキャットに手伝ってもらったりしたけど、味付けは僕だよ。」
「おいしいですね。葵様は料理はからっきしなので…。」

そして図書館の館長、源 葵に紫式部、
こいつらが来るのはまぁ分かる。
以前にも知り合った仲だし、なんか北斎と舞さんとも仲いいっぽいし。
それでだ。

「誰だよお前。」
「…。」

俺の隣でもそもそ舞さんのおにぎり食ってるこいつ。
なんかこいつだけ世界観違くね?って格好してるやつ。

「戦いの時に自己紹介しただろう。竜胆だ。」

あーそうだった。

「にしても随分変わった格好してんのな。お前。」
「まぁ、そう見えるよな。」

真っ白な髪、真っ黒なコート。
腰にぶら下げてるのはやたらゴツい鞘におさめられた赤い刀と黒光りするショットガン。
お前サーヴァント?と思うような出で立ちだが彼はどうやらマスターらしい。
右手の令呪が何よりの証拠だ。

「武蔵のマスターなら、弱いままの俺じゃだめだと思って必死に強くなろうとした。その結果がこれだ。」
「とにかくがむしゃらだったけど、こうして大和くんは立派に戦えるようになったのよ。とは言っても、まだまだ半人前なんだけどね!」

と、大和とかいうやつに対してフォローを入れる武蔵。

「最初なんてすごかったんだから!ゴロツキに遭遇して何をするのかと思ったら財布を置いて土下座を決めこんだの。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!昔のことはもう…。」

なんか昔話に花を咲かせて勝手にイチャイチャし始めたぞこいつら…。

「まぁ紆余曲折あって、こうして俺は武蔵と一緒に"運び屋"をしてるんだ。」
「運び屋…どんなの運んでるんだよ。」
「モノだったり人だったり、ここでは言えないようなモノだったり、バイクに積めるものならなんでもだ。で、仕事の合間に武蔵に稽古つけてもらったりしてる。」

竜胆 大和。
彼はサーヴァントの武蔵と共に運び屋をし、全国を周りながら修行をしているそうな。
てかサーヴァントいるなら修行して強くなる必要なくね?
というかそれよりも

「みんな…自衛手段があるというかそこそこ強いマスター達なんだね。」

おっきーが俺の言いたいことを代弁してくれた。
てか俺を見ながら言うなおい。

「僕は…絵が描きたいって思ったら出来るようになっただけ。強くなんてないよ。」

と、描いたものを実体化させるというスキルを持った舞さんが照れながらいい

「あたしは別に。まともに戦えてるのは紫式部がいてこそだから。」

元から運動神経化物クラスと言われる葵さんはそう言い、

「弱いままじゃ、誰かに守ってもらってるばかりじゃ恥ずかしいからさ。互いに背中をあずけられる。そんな存在になりたいんだ。俺は。」

と、最後に大和とかいうやつは語る。
なんだよみんな…割りとしっかりしてるじゃねーか…。
俺?
ほ、ほら…俺は探偵だから…。
肉体派っていうよりかはほら…頭使って戦うタイプだからよ…。

「まーちゃんも、強くなろうね。」
「いーんだよ。俺は…お前に守ってもらうからな。」
「そこキメ顔で言われても…。」

サーヴァントがいるなら別に強くなる必要もねーでしょ。
そう、俺が普通なだけ。ここにいる三人のマスターがちょいと異常なだけだ。
サーヴァント持ってイキッて何が悪い。
特別なもん持ってんだったら自慢しなきゃ損でしょ。
はいこの話終わり。話題変えよ。

「にしても驚きましたよ。舞さんお料理上手だなんて!」
「いやぁ、趣味というかなんというか…。」

と、照れ臭そうに言う舞さん。
いいねいいね。俺もお料理上手だからね。
サーヴァント持ちな上に料理をする。
すごいよ。共通の話題が二つもある。これなら話も弾みまくりだものなぁ!

「ていっても、僕は和食しか作れなくて…。」
「じゃあ今度洋食の作り方を教えましょうか?任せてください!俺何でも知ってるんで!」

確かに、舞さんが作ったこのお弁当のおかずは煮物だったり卵焼きだったりと、和風中心の献立だ。
そうだな。ここは俺が優しく教えてやらねば。

「いいんですか?」
「ええ、それに俺も和食料理はからっきしなので舞さんにおしえてもらおうかなーと。」
「え、まーちゃんこの前肉じゃがとか天ぷらとか作ってた…」
「お前ちょっと黙ってろ(小声)」

おっきーがなんか言ってるが聞かなかったことにする。

「いいですね。じゃあ今度遊びに行っていいですか?」
「ええ!いつでも大歓迎っすよ!!」

やったね。
これで二人で仲良くお料理作ってさらに距離も縮まるぜ。
これはもうアレでしょ。新密度爆上がりでしょ。

「にっへへへへ…。」

テンションあがりまくりで嬉しい。
きっと自分がこれまでにないくらい気持ち悪い表情をひているのが分かる。
だが、

「なんだよその顔はよ。」

舞さんのサーヴァント、北斎はこちらを見ながら終始ニヤニヤ。
葵さんと大和はなんとも言えない表情をし、紫式部はうつむき、武蔵ちゃんは何か迷っているようにも見える。
なんだよこれは。
さてはアレか!?舞さんと料理できんのが羨ましいってやつかおい!

「その…言うべきかしら…。」

と、何か迷っていた武蔵ちゃんが口を開いた。

「言うべき…よね?」
「うん…俺もその方がいいと思う。今ならまだダメージも最小限で済むと思うんだ。」

マスターと相談し、武蔵ちゃんは俺の方に向く。

「あのね探偵さん…その舞さんなんだけど。」
「舞さんがなんすか?」

舞さん、もしかしてまだ隠し事でもあるのか?
言うべき?何を?今ならダメージは最小限で済む?何が?

「いや、言わない方がいいナ。このままの方がいい。」

そういえば…!
あくまで噂だが舞さんは過去に吉原で働いていたというのを聞いたことがある…!
そうか!それなんだな!!

「大丈夫。俺別に舞さんが処女でなくとも、それに誰とも知らない男にけがされた身体でも、別に気にしないですから。」
「…はい?」

おにぎり片手に首をかしげる舞さん。
ダメだこりゃと頭を抱える大和武蔵。
そして

「ぶ…くっ…くくく…そうかいそうかい…まったくマイは優しい人に愛されたモンだナァ…。」

笑いをこらえながらそういう北斎。
なんだこの妙な雰囲気は。

「北斎さん…言った方が…。」
「いや、このままの方が面白い。」

何が面白いんだよ。

「なんなんすか一体」
「うんうん。確かにマイは美人だしナ!マイの事をよぉくわかってくれてさあばんとのおれも嬉しいってもんサ。うん。」

とその場を誤魔化すかのように振る舞い北斎はどこかへと歩いていく。

「お栄ちゃんどこいくのー?」
「ちょいと描いてくる。なにせ今ここにはあらゆる英霊が揃ってるんだからナ!」
「え、待ってよ!!」

そういい、舞さんも彼女に付いていった。

「…。」
「…。」

二人がいなくなり、黙る一同。
なんだよみんな、そんなに俺が羨ましいのかよ。

「ねぇまーちゃん。」
「何だよおまえまで。」

おっきーがどこか心配そうな目で俺を見てくるではないか。
何だそのあわれみを込めた視線は。

「まーちゃんはさ…"男の娘"って、興味ある?」
「は?」

藪から棒だなおい。
男の娘?要はアレだろ?女の子みたいな男の子。
なにそれホモじゃん。異常性癖じゃん。

「興味ぃ?ねーよそんなもんに。それに俺特に女装とかそういうの大嫌いだから。」
「う、うんうん!そうだよねー!まーちゃんが好きなのは姫みたなサブカル系女子だもんねー!」
「それと舞さんな。」

前にも言ったがサーヴァントはサーヴァント。人間は人間だ。
だから俺が舞さんを好きになったっておっきーは別。
口に出しては言えないがおっきーは大好きだしずっと一緒にいてもらいたい。
舞さんもそれくらい好きだ。

「さて、午後も頑張るかなぁ!」

舞さんの愛妻弁当を食べたことで気力は全快。
手を合わせてごちそうさまをし俺は宴会の準備へと戻った。

「じゃあまた後でなおっきー!お前もちゃんと働けよ!」
「まーちゃんは頑張りすぎないでねー!」

「…。」
「…。」

と、俺がいなくなり残された人達は全員目をあわせる。

「刑部姫はさ…知ってるの?"あのこと"」

僅かな沈黙を破ったのは葵。
"あのこと"についておっきーに聞いた。

「うん、仕草とかそういうのは完璧に女性だったんだけど、なんか違和感あったんだよね。」
「すごい洞察力ね…。私も性別が分かるまで大分時間がかかったのに…。」
「えへへそりゃどうも…。」

葛城 舞の秘密について話す一同。
どうやらその秘密はここにいる全員は知っていて、彼だけは知らないようだった。

「にしてもあの探偵…かなり入れ込んでるわね。」
「うん。まーちゃんあの人のこと大好きだから。」
「あーダメね。彼、真実を知ったら確実に立ち直れなくなるわ…。」

と、探偵の彼のことを心配する武蔵。
葛城舞という女性に何があるのか、真実を知ったら何故立ち直れなくなるのか、
その真実は今夜、明らかとなるのだった。



夜も更けてきた頃。

暗くなっていく空とは対照的に三笠付近はライトアップされ、明るくなっていた。

「あーあー、テステス…。」

甲板の上では院長先生が立ち、マイクを手に取る。

「えーとじゃあ…何て言えばいいんだ?」
「ご主人、ともかく労いの言葉と乾杯だ。」

皆の前に立ち、何を言えばいいかわからない彼にキャットが小声でアドバイスをするも、

「じゃあお疲れ様!!みんなありがとう!!かんぱーい!!!」
「えぇ…。」

極めてシンプルな挨拶となり、こうして三笠防衛戦の勝利の宴会が始まった。

外で行われるこの宴会にはわざわざ来てくれた人達を労うべく、色々なものがある。

まずは料理だ。

「お腹空いたでしょう?どんどん食べてくださいね!」

姫路町からわざわざ呼び寄せたホテルの料理人達が作る数々の料理。
最初は寄せ集めの五人、趣味で料理をしているものや見習いばかりの彼らだったが今ではシェフにとひけをとらない程の腕前なのだ。

探偵さんにみっちり仕込まれましたからね。今の私達に作れないものなんてありませんよ!

と、彼らは語る。

「あまりこのような騒がしい場所は好かないのだがネ…。」
「いいじゃないのモリアーティさん。こうやってみんなが飲みに来てくれるんだから。」

そして姫路町から呼ばれたのは料理人だけではない。
その町で有名なbar、『蜘蛛の糸』を営業しているモリアーティとそのマスターも呼ばれていた。

「まぁいいサ。勝利の美酒に勝る味かは分からないが、彼らには是非とも、気持ちよく酔っていってもらいたいものだね。」

宴会で騒ぐ中、やはりどこかで静かに酒を嗜みたい人もいる。
そういった需要も考え、彼らは探偵に呼ばれたのだ。
あと、呼ばれてないけど姫路町から来たのはもう一人、いやもう一騎いる。

「キュケストックアイアイエー出張店にようこそ!ほぅら!どれもこれも自慢のキュケオーンだ!たぁんとお食べ!ほら!そこの君!寄っていきなよ!ほらほら君も!あ待って行かないで!お願い(上目遣い)…行かないでよ!!おい!!行くなよ!なんだよ!!!どいつとこいつもスルーして!!キュケオーン嫌いか!?大魔女の!!作った!!キュケオーンだぞ!?食えよ!!幸せになれるよ!?恋人だってできる!!え?なんだいメディア?おばさまが作るとむしろ恋人に逃げられそう?うるさいなキミは!!誰が負けヒロインだ!!誰が敗北拳だ!!ちくしょうふざけるなよ!!意地でも食べさせてやるからな!!ほらキュケオーンだ!!そこの中々マスターに思いを告げられてなさそうなサーヴァント!!!うどんよりキュケオーンだ!!食え!素直になれるぞ~?恋愛成就だぞ~?おい!!!無視するな!戻ってこい!!!お願い!!お願いします!!!

三笠にいたメディアリリィを連れ(本人の合意なし)、こうして出店を開いたのだが一向に客は来ないのだった。



そしてこの宴会には勿論、子供達もいる。

「や、やめてください!アポロン様が死んでしまいます!!」

子供達のお守りを任されたパリスくんだが、あまりうまくいっていない様子。
彼は自分で考えた末、この三笠に残ることを決めた。
そして三笠の地下に存在する霊脈とつながり、こうして無事にアポロン様を呼び出すことに成功したのだが、
引っ張られたり蹴飛ばされたりバスケットボールのごとくドリブルされたり、
増えたらもっと子供達に遊ばれたりといいおもちゃであった。

「パリスくん助けて!!痛い!毛が抜ける毛が!!やめて!!ほら!あっちにタコいるよ!!羊なんかよりもタコで遊ぼう!?ね!?だからやめて!!私いじめないでなんもわるいことしてない!!」
「ボールは友達!ですって!」
「じゃあ友達はボールってやつですか!?なにその因果逆転!!いたっ!蹴らないで!!」

アポロン様自身も必死にやめてくれと抗議するが子供達は一切聞く耳もたず。
さらには日に焼けて小麦色の肌をした白い髪の女の子に蹴られ、どこかへと転がされていった。
しかしまだまだ分身体はいる。もう一回遊べるドン!

ちなみにアポロン様の言ったタコの事だが、

「"ますこっときゃらくたあ"だったか?とと様もなってみるかい?」
「…!」

葛飾北斎のタコ、すなわち北斎本人である。
自分はあの羊みてぇになりたかねぇと必死に頭…というか身体全体を横に振った。
そして子供達がいるのは浜辺。
イベントがあるとのことでこうして呼び集められたのだ。
少年少女らは何が始まるんだろうねーと話し合い、今か今かと待ちわびている。

「だからぁ!やめて!!!!」

アポロン様で遊びながら。

「見て!」

そうしていると子供の一人が異変に気付く。
海から何かが飛び上がったのだ。
月をバックに水飛沫を上げ、その身を捻らせ着水するその生き物は

「イルカさんだ!」

子供の人気者、イルカである。
ただの偶然ではない。
これは、ショーの為にわざわざ"東京から来てもらった"イルカさん達だ。

「こんばんは。シルク・ドゥ・ルカンの出張ショーにようこそ。」

と、子供達に優しく話し掛けるのはシルク・ドゥ・ルカンのオーナー、通称『弟くん』であった。
そして彼がいるならば、彼女もいる。

「皆さんこんばんは!弟くんのお姉ちゃんです!!!」
「いや、その自己紹介はどうかと思う。」

変な自己紹介をされ子供達の頭にははてなマークが浮かぶ。
ショーの常連客なら誰もがご存知、オーナーの姉ジャンヌだ。

「今回は皆さんを笑顔にするため、イルカさんと共にやってきました!どうぞ楽しんでいってくださいね!」

そういうと子供達から一斉に拍手を浴びる。
そしてこのイルカショーの二人も探偵が呼んだものだ。
不安になっているであろう子供達のため、やはり弟くんとお姉さんの協力が必要なのだと説得したのだ。

「そして今回は特別ゲストが来ています!葛飾北斎さんです!はい拍手ー!」
「なんでただの絵描きが"いるかしょう"に出なきゃいけないんだい?」

と、ジャンヌの隣にいた北斎がぼやく。

「というわけで北斎さん。お願いしますね。」
「んまぁしょうがねぇ。マイにも子供達を喜ばせてって頼まれちまったしナ。」

大筆を手に取り、くるりと回して担ぐ。
が、

「とその前に、ちょいとそこの、」
「え、僕?」
「そう、じゃんぬの弟。」

弟じゃないです。
そう言おうともしたがここに来た時点でもう何十回と言われてきたのでなんかもう言い返す気力もなかった。

「中々のカオだ。こいつァ磨けば光る。マイと同じたいぷサ…!」
「え、あの…。」
「まずは女装だ!」
「やめてください!!!」

と、どうやら弟くんは描いてみたい顔をしていたらしい。
このままではダメだと姉としてジャンヌが止めに入った。

「北斎さん!!」
「悪かったヨ…。」

ホッと胸を撫で下ろす弟くん。
さすがにジャンヌも女装させられるのはどうかと思ったのだろう。

「やるなら後にしてください!!あとお姉ちゃん同伴で!それと何着せるんですか!?」
「え」

思ってなかった

この後とんでもねぇ事が起きてしまうとしてイルカショーは無事開幕。
繰り広げられたのはイルカとその調教師であるジャンヌの息のあったアクロバティックなショー。
それに加えて北斎が豪快な波を起こし、ショーをより迫力のあるダイナミックなものに変えていく。
ヒロインショーはないにしろ、それは大いに盛り上がった。
ただ、

「北斎さんは水着にならないんですか?」
「水着ィ?絶ッッッ対に嫌だね!それだけはゴメンだ!そいつを着るなら裸でいる方がずっとマシだってんだ!!」

水着になることは絶対に拒否したのだ。
何か水着になることに対して嫌な思い出でもあるのだろうかと聞いたがそれも話してはくれなかった。
結局、謎は謎のままである。

そして別の場所では

「それで!?その次は何が!!」
「その続きはこの酒を飲んでからだ。アタシの旅の話を聞きたきゃその分対価を払いな!」

酒の席で大騒ぎする中、源葵はフランシス・ドレイクの全国を巡った冒険話を取材していた。

「…っはぁ!!飲みました!!」
「へぇ!やるじゃないか。んじゃあ褒美に一番危なかったあの時の話でもしようかい!」
「いいんですか!?」

酒で顔を真っ赤にしながら、葵は夢中にドレイクの冒険話をメモ帳に記していく。
サーヴァントという第二の人生を歩むことになった英霊達は何をしているのか、
それを取材し、本にするのが彼女の仕事だ。

「どれ、ここで一つ私の冒険話でもしてみせようか。ただし一つだけ条件があるのだが…」
「いや、いい。」
「何故!?」

そこにバーソロミューが乱入し、自分の冒険話も披露しようとしたのだが即刻断られた。

「ど、どうしてだ!?海賊の冒険話だぞ!?ロマン溢れ誰もが胸踊る冒険譚じゃないか!!」
「どうせメカクレにしろとか言うんでしょ。ならいい。」
「」←何故バレたんだという驚愕の表情

こうしてバーソロミューはあちこち歩き回り、まだ見ぬメカクレを探し回っている。
先程噂のアナスタシアを発見したのだが彼女は自分のマスターにかまいっぱなしで全く相手にされなかったのだ。
なので多少スネている。

で、

「あ、あおいひゃま…もうらめれす…。」
「頑張ってよ香子!まだまだこれからだよ!」
「そ、そんにゃあ…!」

彼女らの話に付き合わされ、自分も何故かお酒を飲まされそろそろ限界で呂律の回らなくなってきた紫式部なのであった。

それと、

「恋バナしましょう!!」
「え?」

また別の場所では、唐突にマリー主催の恋バナが始まっていた。

「まずはマスターのいいところを自慢しあうの!最初は武蔵さんから!」
「え、あ、いや…ちょっと。」

宮本武蔵を巻き込んで。

「その…カッコいい…とか?」
「それじゃいけないわ!もっといいところを言わなきゃ!」
「あー…じゃあ何て言えばいいのか…その…言葉で言い表せないくらいすごい…とかは?」
「それもダメ!」

マリーに詰め寄られる武蔵。
戦い、そして剣の道においては強者である武蔵でも恋愛に関することとなればまるで手も足も出ない。
要はクソザコなのだ。

「しゅ、修行に熱心なとこ!」
「一途で私の事を一番に考えてくれてる、最高のマスター。」
「え、早…。」
なんとか恥ずかしくない程度のワードを絞り出したものの、すぐにマリーに返されまた自分の番が回ってきた。
そして、

「あらおっきー!もしかして一人?」
「マ、マリーちゃん!?」

一人でブラついているおっきーを見つけ、巻き込む。

「ひ、姫はちょっとまーちゃんを探してて…。」
(たすけなさい、刑部姫。)
「…!」

何かめんどくさそうなことが始まりそうなのでテキトーに理由をつけて逃げようとしたが、マリーと対面している武蔵の視線が彼女に突き刺さる。
それと同時に、頭に響く言葉。

「じゃ、じゃあちょっとだけ付き合おっかな…んでなにしてるの?」
「恋バナよ!おっきーもしましょ!」
(あーこれ武蔵ちゃんダメなやつだ…)

武蔵の心中を察して付き合うことに。
とはいっても恋バナというかマスターとののろけ話ならたくさんある。

「おうちデート?何かしらそれ!」
「うーん。家の中で一緒にゲームしたりごはん食べたりお風呂入ったり…かな?」
「一緒に過ごすことね!だったら私もマスターと毎日おうちデートしているわ!」

とか

「おっきーはマスターのどんなところが好きなの?」
「普段はああやってつんけんしてて口も悪いけど、二人きりになると素直な甘えん坊になるところかな?」
「あの人…そういうところがあるのね。」
「そうそう。あと前にまーちゃんを子供にしたことがあったんだけどその時がもうほんと想像通りというか生意気でかわいくて!!」
「まぁ!奇遇ね!私もしたことがあるの!!」

変なとこでプレイの内容が一致したりとか

「そ、それじゃあ私はこれで…」
「ど こ に い く の か し ら 武 蔵 さ ん ?」
「次 は 武 蔵 ち ゃ ん の 番 だ よ ?」

刑部姫に助けを求めたが結局味方になるどころか敵を増やすことになってしまった武蔵とか。

とにかくもう大変だった(武蔵ちゃんが)

「武蔵…たじたじだな。あんなカオ見たことない。」
「その…マリーが色々…申し訳ないです…。」

そんなかしましいサーヴァント達を見ているのはそれぞれのマスター。

「謝らなくていいよ。武蔵も武蔵で、どことなく楽しそうだから。」
(楽しそう…?)

ああやってサーヴァント同士で笑いながら話すことなんてあまりなかっからさと付け足し、大和はそんな様子を穏やかな顔で見ている。

「そういえば大和さん。」
「ん?」
「探偵さんが…見当たらないな。」

マリー、武蔵、そして刑部姫がいるがマスターの一 誠を見ていないのだ
どこかうろついてるんじゃないかと思うが、さっきまでマリーと散策していた広海は一度も彼と会っていないからだ。

「確かに…。俺も一度も見てないな。」

探偵はどこにもいない。
何故ならば、





同時刻
三笠の甲板。

そこに俺はいた。

「…。」

みんな宴会で楽しんでいるんだろう。
だから三笠に人の気配はない
ひねくれ者で一人でいるほうが好きだからここにいるわけじゃない。
俺はここで、ある人と待ち合わせをしている。

「どうしたんです?こんなところに呼ぶなんて。」
「ああ、来てくれたんすね。」

ぼうっとしていると、ここに来るよう約束していた舞さんが来た。

「隣、いいですか?」
「どうぞ。」

俺の隣に座る舞さん。

「で、話ってなんです?」
「それはですね…あの。」

俺が舞さんをここに呼んだ理由。
二人きりになるためじゃないし、果ては告白するためでもない。

「単刀直入に言います、舞さん。」

誰かに聞かれたらマズイ話をするからだ。

「あなたは葛城財団代表、葛城恋の関係者ですね?」
「…。」

俺がそういうと舞さんは驚いたような表情をするが、それはすぐにいつもの柔和な笑顔に戻る。

「どうして、そう言えるんです?」
「ヒントはいろんなところにありました。それと敬語はいいですよ。」

そう、これは根拠なしに言ったことではない。
きちんと推理した上で、そして確かな証拠を見つけて導きだした結論だ。

「まず財団達のリアクション。偽装船のとき、彼らはあなたが"葛城 舞"だと分かると目の色を変えてあなたに襲いかかってきた。」

そう、あの時舞さんが助けに来た際、葛城 舞と名乗ると彼らはおっきーを無視し、舞さんと北斎のみを狙った。
そして

「二つ目に偽名。あなたはbarで働いている際自らを"クズシロ マキ"と名乗った。これは本名がバレては他人を巻き込みかねないと思ったからだ。」

葛城財団の情報網は侮れない。
例えばどんなサーヴァントがどこにいるかなど、彼らにとってかかればすぐに分かる。
つまり葛城舞を財団が探しているならば、あっという間にバレるだろう。
だから彼女は名前を偽り、身を隠した。

「違いますか?」
「うん、そうだよ。」

舞さん本人の口から真実が語られる。

「僕は葛城財団の代表、あいつを一人でも殺そうと思ってた。でも、それと同時にはぐれたお栄ちゃんも探してた。」
「…。」
「探してるときに葛城財団から妨害されるのもまずいからね。だから"クズシロ マキ"と名乗りながら各地を回り、この崩壊世界で"僕のお栄ちゃん"を探してた。」
「…。」

舞さんは、代表を殺そうと計画してた。
何かやはり因縁めいたものがあるのだろう。

「それと探偵さん。」
「はい?」
「僕が吉原でそういう仕事してたって噂、ホントだよ。」
「!?」

ある意味ここまで来てはそんなに気にしていない真実を打ち明けられ思わずズッコケそうになる。

「生きるために必死だったからさ。出来ることはなんだってやったよ。失望した?」
「い、今はそういうのいいですから!!」

ともかく話を元に戻す。

「それとですね…」
「名字…かな?」
「…。」

言いたいことを先に言われてしまった。

「ええ、だけど葛城なんて名字、この日本に腐るほどいる。名字が同じだからって舞さんが財団代表と身内の関係と決めつけるのは証拠に欠けると思いまして。でも…。」
「でも…?」
「だったら…わざわざ名字まで偽らないかなと。」

クズシロ。
それは葛城のそれぞれの読みを変えたものだろう。
そんな単純なものだが、彼女が名字を偽るのにはちゃんとした理由があった。

「うん。だって"葛城"って名字、大嫌いだから。」
「…。」
「それと探偵さん。」
「はい?」
「僕が財団代表と身内かもしれないって言いましたよね?」
「まぁ…はい。」
「…大当たり。」

ニッと舞さんが微笑み、立ち上がる。

「僕には兄弟がいた。僕とは似ても似つかない。性格もまるで正反対の兄弟が。」
「きょ、きょうだいって…まさか…!」
「そう、もう一秒たりともあいつのことを"兄"だなんて思いたくもないけど…言うね。」

月を背に舞さんは振り向き、言った。

「葛城財団代表の葛城 恋、そいつは僕と血の繋がった正真正銘の兄弟だよ。」

そのときの舞さんはいつにもましてきれいで、
そして、悲しくも見えた。





 
 

 
後書き
次回、『崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか』は!(CV立木文彦)

「血の繋がった兄妹…!?いやいくらなんでも似てなさすぎだろ!?」

「それと僕とあいつ…この世界の人間じゃないんです。」

「ところで一くん、あなたに一つ頼みたいことがあるの。」

「まずは第一歩だ。俺達は必ず葛城財団を倒す!」

「ア、アポロン様ーっ!!」

「悪人の手も借りたい、といったところかナ?」

「んじゃ、マイのもう一つの秘密…バラしてやろうかい?」

「やめて!あやっぱ面白いからやめないで!でもだめ!それはきっとまーちゃんの心がもたないの!!!」

「素直になって、ありのままの思いを伝えて。そうしないとあなたはこれから先ずっと後悔すると思うの。」

「嘘だ…俺を…俺を騙そうとしてる。」

次回
『すごい秘密が暴露された件』

これで決まりだ。 
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