IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第668話】
前書き
ほぼ一年ぶりのメイン更新ヽ(●´ε`●)ノ
多数の死傷者を出した事件から一夜、IS学園でもそのニュースでもちきりだった。
「昨日のニュース、凄かったよねー」
「うんうん、ニュース速報で直ぐ様テロップ流れてびっくりしちゃった」
「今朝のニュースでは死傷者の他にも何かドッグパークの動物達も何匹か行方不明だとか出てたけど―」
当事者ではない女子生徒達はその話で盛り上がる中、当事者であった専用機持ちやその場に居たソフィー・ヴォルナートやセラ・アーカニアン等の表情は暗い。
特にセシリアは自身のメイド、チェルシー・ブランケットが関わって居るのだから益々暗くなっていく。
ヒルトも例外ではなかった、教室の天井を見上げたまま、何か思い耽っていた。
「大丈夫かい、ヒルト?」
様子の違うヒルトを危惧したのは笹川成樹だった、そんな成樹を見てヒルトは僅かに笑みを見せて一言言った。
「大丈夫さ」
だが付き合いの長い成樹にはそれが嘘だと直ぐに見抜いた。
昨日の事件に関与してるのは知っていたものの、被害者が出たのも事実、とはいえ気休めとも言える慰めも出来ない成樹は言った。
「僕で良かったから何時でも話を聞くからね」
それだけを告げると成樹は自分の机へと戻っていった。
そんな成樹にヒルトは再度笑みを溢す。
それと同時に学園に鳴り響くチャイムと、教室のスライドドアが開き、織斑先生及び山田先生の二人が入ってきた。
「おはよう諸君、知ってるものも多いかと思うが昨日の事件でIS委員会及びイギリス──欧州連合から正式に派遣要請が出た。今から告げる者は本日一八◯◯までに出国準備を終えるように、それ以外の者は自習だ。では山田先生、お願いします」
「はい。まずは各専用機持ちである有坂ヒルト君、有坂美春さん、有坂美冬さん。飯山さん、織斑君、笹川君、更識さん、篠ノ之さん、鳳さん、エメラルドさん、オルコットさん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさん、それと上級生からは更識楯無さん」
更に続けてメモ用紙を取り出した山田先生。
「他にはイギリス代表候補生である二年のサラ・ウェルキンさん、それと──ヴォルナートさん、スカーレットさんの両名も今回の作戦に参加願います」
二人の名前が上がり、教室内はざわつく、当のソフィーは驚きの表情を見せているものの、エミリアは分かっていたのかただただ真っ直ぐ見つめていた。
「諸君、静粛に願う。ヴォルナート及びスカーレット両名は以前からフランス代表候補生枠に上がっていた。スカーレットには既に通知も届いている、それと既に彼女専用IS【スカーレット・シュヴァリエ】をフランスで受領する事が決まっている。ヴォルナートも同様だ。ヴォルナート、プラフタという女性から連絡があった。お前用のIS【ブリズ・プランタニエール】が完成したようだ」
「プラフタから………!?」
驚いたままのソフィーが洩らしたプラフタという名前に、ヒルトは少し反応した。
「両名の機体はフランス、デュノア社で受領予定だ。イギリスでの作戦前にこれらを受領する」
デュノア社という名前が出て反応したのはもちろんシャルだった、それにも教室内でざわめきが起きるが直ぐに静まる。
「デュノア、お前にも新型受領の為にフランスへの帰国が通達された。では今呼ばれた者は速やかに出国準備を行うのだ。随伴する教師は私と山田先生、及び有坂先生だ。以上」
そう告げた織斑先生は教室を後にすると、それを追うように山田先生も後に続いた。
静寂の後に起きる喧騒、色々思うところがある生徒も居る中で呼ばれた専用機持ち達は教室を出て出国準備するために部屋へと戻っていった。
ヒルトも教室に居ても何も解決しないと思い、一度寮へと戻っていく。
その道中──。
「あら、有坂君ね。噂はセシリアから聞いているわ」
「え?」
振り向くと金髪碧眼の女性が立っていた。
髪は箒の様にポニーテールで纏められていた、翠のシュシュが印象付ける。
何処かで見たような──ヒルトはそう思っているとクスッと笑みを溢す女性。
「噂は聞くけど話すのは初めてね。初めまして、サラ・ウェルキンよ」
「あ!」
名前を聞いて思い出したヒルト、キャノンボール・ファストで上位を走っていた人だった。
「フフッ、知っていてくれたのなら光栄だわ。今回の作戦、私も参加するから。とはいえ私は直接イギリスへ向かうから現地で会うことになるのかしら?」
「直接現地でって、俺達と一緒じゃ無いんですか?」
「ええ、私はいち早く出立して本国へ、そこで私が乗る機体を調整して作戦参加って訳。君達が参加するサードフェイズ迄にはエクスカリバーの奪還を試みる予定よ。まだ貴方達に概要は伝えられてないかもしれないけど、作戦は四段階に分かれて開始するの。ファーストフェイズで接触、斥候として情報収集を行ってからセカンドフェイズから本格的な作戦開始、サードフェイズで貴方達が加わって、最終フェイズで地上からの狙撃でエクスカリバーの破壊。でもイギリス政府は自分達だけで攻略し、尚且つエクスカリバーにあまり被害を与えないようにする狙いがあるの。各国への抑止力の為にね」
まだ詳しい内容すら知らされてないヒルトに対して説明をするサラ。
「抑止力って………。あんなのがあったら余計な問題が増えるだけじゃ? 現に昨日の事件だってエクスカリバーが無ければ──」
「君の言うこともわかるわ。だけどね、ISが開発されてアメリカ合衆国が大国じゃなくなった現在。各国で世界を牛耳る動きがあるのよ。イギリスだってそう。グレートブリテン王国として世界に立ちたいと思う貴族もいるのよ」
「………」
ヒルトは黙った、こんな状況でもそんな考えを持つ人が居ることに絶句していたのだ。
「とはいえ、私自身はそんなことは興味ないわ。分かってるのは我がイギリスの衛星が今なおその砲口を地表へと向けていること。そして私は二度と悲劇を起こさないこと──よ」
そう言ってサラ・ウェルキンはその場を去っていく。
冬の風が吹き抜ける中、ヒルト自身思うところはあるがその考えを今は頭の片隅に追いやり、寮へと戻った。
時間はあっという間に過ぎていく。
準備を終えた専用機持ち達に持たぬ者達、様々思いを巡らせる中でセシリアが用意したプライベートジェットへと乗り込み、ヒルト達は日本を後にした。
──上空一万メートル機内──
日本を出立して数時間、現在カザフスタン上空一万メートル付近。
「ちょっとセシリア、喉渇いたわよ。あ、これ冷蔵庫? ラッキー♪ コーラ飲んでいい?」
最初の緊張感は何処へやら、セシリアのプライベートジェットは賑わいを見せていた。
「ええ、構いませんわよ」
「へへっ、サンキューセシリア♪」
鈴音はそう言ってコーラを飲み干していく。
「しかし、ISで飛行するのとはまた違った感覚だな」
箒は窓の外を眺めながらゆっくり寛いでいた。
「自家用ジェットかぁ。セシリアって本当にお嬢様なんだね」
「うふふ、一応オルコット家当主にして総帥ですもの。これぐらいは当然ですわよ」
シャルの言葉にそう返すセシリア。
「この飛行機は対赤外線センサーは積んでいるのか?」
「勿論ですわ。念のためチャフも積んでいますのよ。基本ありませんが、万が一ミサイルを撃たれても大丈夫な様に」
「なら良いのだが」
ラウラは何を心配してるのか、ジェット機の装備を仕切りに聞いていた。
「お姉ちゃん、ぽてち、食べる………?」
「簪ちゃん、機内で食べるって勇気あるわねぇ」
更識姉妹のやり取りを見て未来は──。
「お菓子かぁ。日本時間的には夜中だから太っちゃいそう………」
「でもみぃちゃんは栄養はお胸に行くでしょ? 美冬も胸に行っちゃうし」
「美春は太らないよー! おっぱいだってヒルト好みのベストな形だし!」
胸を突き出す美春に負けじと美冬も──。
「み、美冬の方がお兄ちゃん好みのおっぱいだもん!」
何故か張り合う二人に、エレンは──。
「ふむ、私としてはあまり大きすぎても肩が凝るのだが………」
腕組みしながら告げるエレンの両胸は強調するかの様に主張していた。
「エミリアはおっきすぎない美乳だから♪ そういえばソフィーは四月より成長してるよね?」
「い、いきなり振らないでよエミリアぁ!」
恥ずかしそうに胸を隠すソフィー。
そんなやり取りを見て成樹は──。
「皆楽しそうだね、ヒルト」
「ん? そうだな、下手に気負うよりかはいいかもな」
「わわんっ」
同意する様にいぬきちも鳴いた。
「てかさ、なんでいぬきちやシャイニィを連れてきたんだよ、ヒルト?」
怪訝そうな表情の一夏に、ヒルトは応える。
「せっかくだしな。特ににゃん次郎はアーリィさんに会えるかもしれないしさ」
「ふーん、まあ世話はヒルトがするんだぜ? 何か俺は動物には昔から好かれない体質みたいだし」
そう言って窓の方へと向いた一夏に、ヒルトは膝で眠るにゃん次郎を優しく撫でていた。
一方で同伴していた教師達はというと───。
「向こうが通達したファーストフェイズの時間はそろそろだな」
「ええ、あくまでも情報収集がメインだと聞いてはいますが………」
「少しでも現状が分かると良いわねぇ。そういえば、先にフランスへと寄るのよねぇ~?」
「いや、その前にドイツへと寄ろうと思っている。ラウラの黒ウサギ隊も欧州連合として今回の作戦に参加するとラウラから連絡を受けたのでな」
教師達のやり取りの中で、有坂陽人は副操縦席に座っていた。
「ありがとうございます、副操縦士が急に体調崩したものですから………」
「いやいや、別に構わないぜ? ってもまあジェットは初めてだがな! ワハハハッ」
オルコット家お抱えの女性機長と話ながら寛いでいた。
女尊男非の昨今、あらゆる職業で女性は優遇されている。
とはいえ機長になる難しさは昔も今も変わらないのだが──。
場所は変わって地球衛星軌道上、重力アンカーによって大気圏突破した三つの機影。
一機はマチルダ・フェネットが駆るレゾナンス・ティアーズだ。
随伴する機体は空間仕様のラファール・リヴァイブ、装備も偵察用の大きなレドームを装備していた。
眼下に広がる青い地球に見とれることなく、宙域を進む三機。
「大尉、エクスカリバーを確認。映像をリンクさせます」
ハイパーセンサーに映し出されたエクスカリバーを見たマチルダ。
「特に変わった様子は無さそうだが………」
昨日あんなことがあったばかりなのに、エクスカリバーはただそこに鎮座するように軌道上に居た。
──その時だった、エクスカリバーに動きがあったのは。
エクスカリバーの刀身が四つに分かれ、それ自体がISよりも大きく、接近するマチルダ達に向かって迎撃してきた。
更にそこから子機が分離、無数の小型砲台が列をなして強襲仕掛けてきた。
「各機散開! 迎撃しつつポイントαまで撤退する!」
「「了解!」」
三機は散開すると子機の迎撃に入る。
偵察仕様のラファール・リヴァイブは身軽なものの、武装に関しては最低限しかインストールされていない。
一方のマチルダが駆るレゾナンス・ティアーズは戦闘用に武装をインストールされていて、BT粒子を必要としない有線式のティアーズユニットによって疑似オールレンジ攻撃が可能となっている。
「その程度の子機で! 私を止められると思うなッ!!」
宇宙に煌めく尾を引く粒子、撃ち落とされていく子機、宇宙での戦いは地球上とは全く違うものの、マチルダにはそれを感じさせない機動で次々と子機を無力化、或いは破壊していく。
「あぐっ!?」
「無理はするな! ファーストフェイズはあくまでも偵察だ! 殿は私が努める! 先に離脱するんだ!」
「は、はいっ!」
子機の追撃を振り切る三機、外敵が居なくなったエクスカリバーは元の剣へと戻っていく。
破壊された子機は宙域を漂い、まるで引き寄せられる様にエクスカリバーの元へと集っていく。
ファーストフェイズが終了し、大気圏へ突入する三機──宇宙にまた静寂が訪れた。
東ヨーロッパ境界線上、有坂陽人は気づく。
「なあ機長さん。この計器おかしくないか? ヨーロッパ境界線だがロシア境界線上にも位置してるが?」
「そんな筈は──!! ま、まずいわ! 計器の不備で気付かなかったけど僅かにロシア領内に──」
その時だった、コクピット内にアラームが鳴り響いたのは、それと同時刻、機内ではラウラが窓の外を見て叫ぶ。
「直撃コース!? ミサイルだ! 衝撃に備えろ!」
突然のラウラの叫びに、反応できた人間もいれば出来ない人間や何処か動物も──。
ミサイルが翼のエンジンに被弾、激しい振動が機体を揺らし、爆音が轟く。
黒煙を上げるジェット機、それを遠方で眺めるのはロシア代表の座を奪われた女性──ログナー・カリーニチェだった。
「領空侵犯はダメネー! もういっちょいくヨー!」
ミサイルランチャーから更に二発のミサイルが放たれる。
迫るミサイル──ジェット機から飛び出した一つの機影。
「あらあら、いきなり撃墜だなんて。──それに、面倒なのが来たわねぇ」
ふぅっと息を吐く楯無は、チャネル通信を開いた。
「先に行ってください。今回の件はロシア代表である私が対処しないといけないから。織斑先生、引率お願いしますね!」
『了解だ。更識、作戦までには戻ってこいよ』
機体制御を行うも、ダメージが深刻なのか機首が上がらず、墜ちていくジェット機。
コクピット内では必死に機首を上げようと二人がかりでレバーを引いていた。
「チィッ! このままじゃ墜落だな! 機長、機体を着陸させられる場所を探すんだ!」
「ぜ、前方に広い場所があるわ! 其処に着陸します!」
黒煙上げるジェット機、何とか水平に保ちつつ、被害が及ばない広い土地へと着陸した。
その際の衝撃は凄まじく、機内にあった調度品は散乱、被害に合いそうになるものだけIS展開して守る力の無いものを守った。
未来はソフィーを、エレンはエミリアを、山田先生は織斑先生を、そしてヒルトは──。
「ふぅっ、いぬきちににゃん次郎、無事か?」
「わわわんっ(めちゃくちゃ揺れたわんっ)」
「にゃう(気持ちよく寝てたのに、何で揺れたのよ)」
特に怪我もなく、安心したヒルトは機内で声を掛けた。
「皆、怪我は無いか?」
「な、何とか大丈夫だ」
「いたたっ………。あ、アタシは頭打った、衝撃緩和されたけど流石に打ったら痛い………」
「わたくしは大丈夫てすわ」
箒、鈴音、セシリアと五体満足で鈴音が頭を打った以外は大丈夫そうだった。
「僕も何とか大丈夫。怪我もしてないよ」
「私もだ。危ない物などはAICで慣性停止すれば問題ないからな」
「私も、大丈夫………。お姉ちゃんが心配………」
シャル、ラウラ、簪の三人も無事だ。
楯無──刀奈は領空侵犯したことに対しての処理の為に飛び出したのだろう。
「私も怪我はないよ」
「美冬だって。怪我したらお兄ちゃんに心配かけちゃうし」
「美春も平気だよっ!」
「それよりも君は大丈夫なのかい? ヒルト?」
未来、美冬、美春、エレンと大丈夫だとアピールしていた。
「え、エミリアも何とか大丈夫だよー」
「あ、あたしも大丈夫! 未来が庇ってくれたし!」
エミリア、ソフィーと無事な様で笑顔を見せていた。
「僕も大丈夫だよ。しかし驚いたね、いきなりのミサイルだなんて」
成樹も問題ないらしく、着ていた制服の折り目を正していた。
「イテテッ………、いきなりだったからしこたまぶつけたぜ………」
一夏は何処かぶつけたようだが外傷等は見えないから平気だろう。
母さんを含めた教師陣も怪我は無いらしく、二次被害を避ける為、全員機内から脱出した。
それから皆で話し合い、ISによる空路での飛行で一路ドイツへと向かうことになった。
パイロットの女性は機体の処理と事の経緯説明のため、現地に残ることになり、俺達全員改めてドイツへと移動を開始した。
後書き
お待たせしましたm(_ _)m
細かい所は色々変えてますが概ね原作通りにドイツへと向かいまするε=(ノ・∀・)ツ
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