pinkdevilと鰐、彼女
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迷い混んでしまった
目の前には海が見える、何故、一体どうして、それはここが、異界、ワンピースという世界だからと言われても納得できるモノではない。
ゲームを続けましょう、マダム、新世界にたどり着かなければ貴方は元の世界に戻る事はできません、バッドエンドです、ゲームの解説者はにっこりと笑った。
「バッドエンドって」
これです、解説者はクビに手を当てて、すっと引いた。
「脂肪、いや、死亡です」
今のはギャグ、なのだろうか、ゲームなら幾つかのルートもあるのではと尋ねるとバッドエンドは一つですと言われて彼女は無言になった。
「とりあえずサービスとして、一つ、特別に」
解説者の言葉に彼女の顔色、いや、目が輝いた、もしかして特別な力、チート、無双、無敵という言葉が頭の中に浮かんだのだが、解説者は何を考えているんです、そんな都合のいい設定、ライトノベルやゲームの世界と間違えていませんかと言われて、がっくりと項垂れた。
「おい、あんた」
突然、声をかけられて振り向くと、うっっ、眩しい、pink、いや、派手なピンク、ふわふわのコートが目に飛び込んできた、ハデハデなんてものじゃない。
「昼間だろうと、一人で、うろついていると危ねえぜ」
治安が良くない、悪いということだろうか、もしかして犯罪者みたいな悪党が昼間でも歩き回っているということだろうか、にっこりと笑いながら、あなた悪党でしょと男に尋ねた。
すると、男はじっと女の顔を見ていたが、突然、笑い出した。
「いいねえっ、あんた」
派手なサングラスをかけていたから、正直、わからなかったけど、おかしくなって吊られて笑ってしまったのが不思議だった。
「この街は平和に見えるが、そりゃあ、見せかけだ、気をつけな」
これは忠告だろうか、だとしたら、派手な見かけとは別として、この人は。
「ありがとう、貴方、いい人ね」
突然、相手はぐいっと腰を屈めて、覗きこむ様にして顔を近づけてきた、近くで見ると迫力に負けそうだと思いつつ、女はすっと顔を近づけた。
頬にキスするだけでも緊張する、挨拶とお礼を兼ねただけでも今の自分には精一杯なのだ、ここが現実でないワンピースの世界だとしてもだ。
ありがとう、女は手を振った。
「なあ、あんた」
男は自分の唇に指を当てた、投げキスのつもりだろう、気障すぎるけど似合っていると思いながら女は笑った。
はあーっ、お腹が空いた。
ゲームが始まる前に気づいたのだが、ズボンのポケットの中に一枚の金貨が入っていた、これで何が買えるのかわからないが、とりあえず店の人に聞いて見ようと思ったのだが。
道端の屋台に行き、パンがあるので買おうと思ったら二つで金貨一枚と言われて驚いた、えっ、 本当に、パンは、それほど大きくない、コンビニのメロンパンの半分もない大きさ、正直、二つ、食べたくらいでお腹が満たされるとは思えない。
屋台の親父は、じろじろとぶしつけなまでの視線で、サービスしてやってもいいんだねと言ってきた。
(サービスって)
その言葉と視線に女は内心、むむっとなった、子供ではないのだ、駄目だ大事な金貨、所持金はこれだけなのだ、無駄遣いはできない、諦めようと思ったとき。
「オヤジ、いい商売してるじゃねえか」
横から声がした。
「代わりに俺がしてやってもいいんだぜ、サービスというやつをな」
店主の顔色が真っ白になった。
「あ、あのいいんですか」
袋一杯に入ったパンをくれたのは、顔に傷のある、手にはかぎ爪のある男だ。
「代金を払います、足りないかもしれませんが」
取り出した金貨を渡そうとするけど、男は首を降って、受け取ろうとはしない。
「気にするな、サービスだ、なあ、オヤジ」
こくこくと店主は頷くが、その顔に表情というものはない、一瞬、気の毒と思ったが、サービスなんて事を言い出して足元を見る商売人なんて、成敗されても仕方ない、というか今は自分のお腹が大切だ、別世界だけど、空腹を感じるのだ。
「ありがとうございます」
本当は怖い人だろうと思うけど、お礼は言わなくてはいけない、人として。
「あんた、一人か」
「はあ」
一瞬、意味が分からず、曖昧な返事をしたときだ。
「おい、鰐野郎」
男の声が背後から聞こえてきた。
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