IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第670話】
前書き
ちょい長いかもだけど、原作だと三頁行くかいかないか位の進み具合です( ゚ 3゚)
ドイツ特殊空軍基地、滑走路に併設されているされている格納庫には戦闘機や爆撃機、偵察機等が格納されており、その隣の格納庫はIS専用装備類等が納められている。
滑走路では連絡を受けていた黒ウサギ隊【シュヴァルツェ・ハーゼ】の面々が揃っていた。
基地内部の人間も航空管制や補給の準備、今回のエクスカリバーへの作戦の為の物資確認等で忙しいらしく、基地司令であるアルフレド・フォン・クラウゼも出迎えには来られなかった。
「ラウラ隊長、遅いですね」
そう話したのはネーナだ、隣のマチルダも頷くと言葉を続けた。
「既に予定時刻を三十分も過ぎてるのに……」
様々な要因が一同の頭を過る中、黒ウサギ隊副隊長であるクラリッサは動じる事なく真っ直ぐと空を見つめていた、
「クラリッサ副隊長は心配じゃないんですか?」
聞いたのはファルケだ、黒ウサギ隊全員に云えることだが全員黒の制服にミニスカート、左目には眼帯という出で立ちだ。
クラリッサだけはタイトなスカートを穿いている。
そのクラリッサはファルケを一瞥してから真っ直ぐと空を見つめて口を開く。
「ファルケ、日本の風習にはこうある。『待っている間もデートだよ』……と」
無論この言葉には誤りしかないのだが、日本文化に疎い彼女達黒ウサギ隊面々は瞳をキラキラと輝かせてーー。
「流石副隊長!」
「私達の知らないことを知っている!」
「そこにシビレます!」
「憧れます!」
キャアキャアと騒ぐ辺り、彼女達もうら若き乙女なのだろう、日本の漫画の影響を受けてるのかそんな言葉に気を良くしたのかクラリッサは笑みを漏らすとーー。
「この心、呼吸を止めること一秒なり」
クラリッサの真剣な眼差しに、メンバー全員姦しく騒ぐのだった。
丁度その頃、上空にISの機影が見える。
『管制官、此方は黒ウサギ隊隊長のラウラ・ボーデヴィッヒ大尉だ。予定時刻より遅れてすまない、これからランディングするので滑走路のガイドビーコンをーー』
『此方管制官、了解した。一番IS専用滑走路のガイドビーコンを出します』
滑走路から空へと伸びる光の道、先頭はヒルトでそのまま全機、着陸態勢に移行する。
空へと伸びるガイドビーコンを見た黒ウサギ隊のメンバーはーー。
「総員、整列!!」
クラリッサの掛け声で一同背筋を正して敬礼をする。
黒ウサギ隊隊長であるラウラの出迎えもあるのだが、元教官である織斑千冬を迎える為である。
久しぶりに教官と対面出来るからか、黒ウサギ隊全員表情が少し緩み、クラリッサはーー。
「あぁ、さぞかし威風堂々と現れるに違いない。あの織斑教官の事だ。小娘どもを引き連れて颯爽と降り立ち、私達に凛々しい姿を見せてくれるに違いない……」
少しうっとりとした表情で一人ごちるクラリッサーーだが現実は残酷だった。
『各機、俺に続いて着陸後ISを解除。殿はさっきも言ったけどラウラ、頼むよ』
『分かった』
チャネル通信でそう言うと、ガイドビーコンに従い着陸態勢に移行する。
「織斑先生、着陸します。揺れは大丈夫だと思いますが念のためしがみついててください」
「ああ、私なら大丈夫だ」
そう言うがやはり念のためだろうか首に回した手に力がこもった気がした。
そのまま全機着陸するのだが当のクラリッサは目が点になっていた。
尊敬する織斑教官がまさかお姫様抱っこされて降りてくるとは思わなかったからだ、それもラウラの【嫁】であるヒルトに抱かれてである。
「クラリッサ、出迎えご苦労」
ラウラの言葉にハッとするクラリッサは恐る恐る指差して。
「たいちょう……? あの、あれは、いったい……」
目の前の光景が信じられないといったクラリッサ、ラウラが応えようとしたその時だった。
「わははは、あれが俺の自慢の息子のヒルトだぜ、クラリッサ?」
「!?」
ドキッとしたーー随分長い間聞かなかった、だけど心地好い男性の声。
「え、えぇっ!? あ、有坂教官!?」
「嘘!? わあっ、教官だぁっ!!」
「教官、お久しぶりです! 私達を覚えてますか!?」
「き、教官~~、ずびびっ」
黒ウサギ隊全員が彼に近づくーー有坂ハルトに。
ハルトは何時もの様にニカッと笑顔を見せてーー。
「わははは、勿論覚えてるさ! ネーナにファルケ、マチルダにイヨだろ!」
昔と変わらないその笑顔とわしゃわしゃと頭を撫でる大きな手に、四人は懐かしさと久しぶりに会えた思いからか様々な表情を浮かべていた。
クラリッサもその手で撫でてもらいたかったがぐっと堪えて、隊長であるラウラに振り返り、再度確認した。
「た、隊長、宜しいのですか……? 教官は私達の教官ですが、彼はラウラ隊長のーー」
「む……あまり宜しくはないのだが……だが、私とヒルトの間には確かな繋がりがある。故に無闇に焼きもちなど妬かないのだ」
腕組みして少し誇らしげなラウラに、まだ理解が追い付いていないクラリッサは小さく首を傾げた。
一方でヒルトはというとーー。
「やっぱり基地だからか殺風景だな、滑走路に倉庫、灰色の建物ばかりだ」
「まあ軍事基地はこんな感じの所が多いからな。君としてはもっと色鮮やかな方が好みなのかぃ?」
エメラルドグリーンの髪が風に靡くエレンが顔を覗き込む様に見てきた。
ヒルトの目に映る彼女は年相応の少女にしか見えない、時折視界に入るいぬきちやにゃん次郎も気にしながらも織斑千冬の行方を見守っていた。
既に織斑千冬を下ろし、当の本人は山田真耶を伴って本作戦で受ける補給物資等の確認の為に倉庫へと向かった。
専用機持ち及び生徒は皆その場で現状待機という状態だ。
エレンの方へと振り向くとヒルトは口を開く。
「まあ色がある方が心は豊かになるだろ? 基地としては目立つだけだから利点はないかもだけどな」
「ふふ、君らしいな」
笑みを溢すエレンに、ヒルトも微笑み返すとその直後、背後からドーンっと誰かがぶつかってきた。
「むぅ! エレンばっかり構って狡いよヒルトくん! エミリアも話したいんだからね!?」
「いや、エレンばかり構ってた訳じゃないんだが!? てか未来、ソフィー、助けてくれよ……」
「たまには良いんじゃない、ヒルト?」
「あ、あはは……」
わざと意地悪な笑みを浮かべる未来と困ったような笑顔を見せたソフィー。
二人はそんなやり取りを見守り、エレンばかり靡く髪をかきあげながら僅かに微笑した。
遠巻きにその光景を見ているヒルトの母である有坂真理亜はクスッと微笑むとーー。
「あらあら、ヒルトはモテモテねぇ~♪ うふふ♪」
楽しそうに微笑む真理亜に、隣に居た美冬は頬を膨らませる。
「むぅ、お兄ちゃんは美冬のお兄ちゃんなのに……」
「あらあらぁ? 美冬ちゃんは焼きもち妬きねぇ~♪」
「べ、別に焼きもち妬いてないもんっ」
言葉とは裏腹に膨れっ面な美冬に、真理亜は楽しそうに笑顔を向けた。
「しかし、何だ。まさか笹川まで今回の作戦に呼ばれるとはな」
「そうですわね……。実戦経験は殆どありませんが、大丈夫ですか?」
箒、セシリアが成樹を見てそう言うと、不安な表情を浮かべて成樹は口を開いた。
「大丈夫と言えば嘘になるからね。……不安でいっぱいだよ。だけど……だからといって僕自身が何もしないわけにはいかないからね」
そう言って未だにエミリアに纏わりつかれてるヒルトを見る成樹、そんな成樹に一夏はーー。
「大丈夫だって、いざとなったら俺が守ってやるからよ」
「守ってやるからよってアンタ……この間笹川に負けてたじゃん」
「え? そうだっけ?」
一夏の言葉に、鈴音がそう返すと一夏は小さく傾げた。
そんな一夏に箒と鈴音はため息を溢す。
一同から少し離れた所で遠くを見ているのはシャルロットだった、国境を越えた先のフランス、早ければ明日にも自分の父親と会わなければならないという思いに憂鬱な気持ちになっていた。
「わんわんわんっ(走るの気持ちいいわんっ)」
「にゃぅ(ほんと子供なんだから、いぬきちは)」
「こらー、大人しくしてなきゃダメでしょいぬきちーっ! ……ってシャルロット、どうしたの?」
「えっ?」
いきなり美春に話しかけられ、動揺するシャル。
いぬきちも心配してるのかシャルの足元でくるくると周りを回る。
それに釣られてにゃん次郎も美春の肩から降りると同じようにぐるぐる周り始めた。
「あ……うん。もう国境を越えたらフランスなんだなぁって……ね」
その場で屈むと、シャルは二匹の頭を優しく撫でた。
「そっか、シャルは生まれがフランスだったね! 故郷って、美春にはよく分からないから」
「うん。フランスが僕の故郷だよ。といっても随分田舎の方だから見たらびっくりしちゃうかもね」
「そうなんだ! 見てみたいなぁ♪」
美春の無邪気さに、少し心が軽くなったシャルはいぬきちとにゃん次郎を優しく抱き締めた。
『ーーと言うわけで、私はロシアからのルートで行くから、作戦には間に合うとは思うけど一応織斑先生にそう伝えてくれるかしら、簪ちゃん?』
「分かった……。んと、お姉ちゃん……問題起こさなかったよ、ね?」
『んん? 問題は私自身起こしてはないけど、やっぱり領空侵犯が少しね、ロシア政府が正式に学園に抗議するって話が出てるのよねぇ』
携帯端末でやり取りをしてるのは簪だった、相手は自身の姉である更式楯無である。
『まあそっちの方は私が何とかするから。作戦の最終フェーズには間に合うように機体も整備しなきゃだしね』
「分かった……お姉ちゃん、無理はしないでね?」
『あら? 大丈夫よ、お姉ちゃんにお任せってね♪』
姉の言葉に僅かに笑みを溢す簪、やり取りを終えるとずれたメガネを直して皆と合流した。
場所は変わってイギリス、首都ロンドンから離れた山奥、その景観には似つかわしくない巨大な構造物があった。
今回の作戦で使われるかもしれない対空砲『アフタヌーン・ブルー』。
周囲には急ピッチで重力アンカーが建造されていて、IS用の整備施設も増設されている。
セカンドフェーズへ向けての準備が行われていた。
「セカンドフェーズは明日の午後からか、機体は私のレゾナンス一機にラファールが五機、メイルシュトロームが三機と凍結された試作機が一機……か」
ずらりと並ぶ量産タイプのISの中に一機だけ、白と金を基調とした機体が存在した。
ブルー・ティアーズとは別のプラン、円卓の騎士をモチーフにした機体である試作1号機、【アーサー】である。
専用武装は引き払われ、基本的なブレードと盾のみという機体だった。
「……流石にこの機体は使うことは出来ないな。調整もそうだが、武装が剣しかない。盾にグレネードを担架したとしてもエクスカリバーに対して接近しなければ意味がない」
マチルダはそう呟く……だがこれも貴重な戦力としてカウントされたのだろう。
「整備班! 各機体の調整を急げ! 試作機もパススロットに入れられる武装をインストールするのだ! 私はレゾナンスのチェックを行う!」
「分かりました!」
マチルダの指示で慌ただしく動く整備班、そのまま自身も機体と武装の調整を行い始めた。
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