崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
鉄・拳・聖・裁
前書き
どうも、クソ作者です。
「いたっ!」
「大丈夫!?」
一方的に殴られ、最早満身創痍のおっきー。
そんな彼女を心配して、マルタさんは声をかけるもそんな隙はブラダマンテが許さない。
「余所見をしてる暇がっ!あるんですか!?」
「うるさいっての!!」
突かれた短槍を最低限の動きでかわし、カウンターを叩き込む。
しかしそれも光の盾で防がれる。
こういった一進一退の攻防が続いていた。
だが、
「マスター!!"あれ"を使うわ。」
マルタさんが打開策に出た。
「ああ、"あれ"を使うってことは…一気に決めるつもりだな…マルタ!」
「ええ…!!」
意気投合した二人が頷き、仁さんが懐からあるものを取り出した。
「あれは…!」
虹色に輝く小さな石。
その正体はウィークリーミッションでもらえて、七つ集めるとみんな大好きな聖晶石になるあの聖晶片だった。
この崩壊した世界に存在するんだな。
というかそれを使って、これからどうするつもりなんだあの人は。
「知らないって顔してるな。じゃあ今から見せてやる。」
キョトンとした俺の顔を見て仁さんが言う。
何をするのかと思えばなんと、握った聖晶片をそのまま砕いたのだ。
直後、手の甲に刻まれた令呪が眩く輝く。
それに呼応するように、マルタも光に包まれた。
「なにあれ…どういうこと?」
「こういうことだよ!!」
光が一層眩しく輝き、そして消える。
するとそこにいたのは
「さぁマルタ!存分にやってやれ!!」
腰を低くし、ボクシングスタイルで拳をかまえるマルタさん。
そこまではいい。注目すべきはその格好だ。
「み、水着…?」
両拳に装備されたナックルガード、そしてシンプルな白と赤のビキニ。
なんとマルタさんは、水着に着替えたのだ。
「たかが水着になったくらいで!!」
「そう?試してみる?」
とびかかるブラダマンテ。
うん、俺もブラダマンテと同じことを思った。
だが、
「ふんっ!!」
「!?」
さっきまでとは比べ物にならないパンチ。
スピードも早く、どうやら威力もケタ違いのようだ。
ブラダマンテはその一撃を盾で受け止めたものの、衝撃は和らげることはできず顔をしかめている。
そう、ただ水着に着替えただけではない。
あの聖晶片はマルタさんの霊基そのものに干渉し、クラスを変えたのだ。
元祖殴ルーラー、BB絶対殺すウーマンと名高い水着マルタ姉貴に!
「ハレルヤ!!」
マルタさんからの容赦ない一撃。
重く鋭い一撃はライダーそれ以上に、そして激しい連撃はブラダマンテに攻撃させる暇さえ与えない。
盾で防ぎ続けてはいるものの、時間の問題のようだ。
それはさておきいっぽうそのころ…。
「まー、ちゃん…帰ったらPCのデータ…消し…とい」
「死ぬなバカ!!勝手に座に還ろうとすんじゃねーよ!!」
どうしようこの子…。
もう満身創痍だよ。
おっきー弱かねぇとか言ったけどこりゃだめだわ。
「お?もう終わりかよ?」
「立ておっきー!俺達には正しいと信じる夢があんだろーがよォ!!」
「う…うぐ…っ!」
俺の声を聞き、倒れたおっきーはなんとか立ち上がろうとする。
服はボロボロで、顔も土で汚れていた。
「そう…だったね。ひめとまーちゃんには…正しいと信じる夢が…!」
片手を、懐に忍ばせ、
「あったもんね!!」
おっきーは隠し持っていた折り紙蝙蝠を燕青目掛け飛ばす。
完全に意表を突いた攻撃、
だが…
「おっと。」
その攻撃はまたもや燕青にかわされてしまう。
標的を失い、そのまままっすぐとんでいく蝙蝠。
無駄玉に終わった。そう思うだろ。
だがこれが、勝利への鍵となった。
「!!」
飛んでいく蝙蝠。その先には教祖の付き人である森永がいた。
ブラダマンテとマルタの試合を不安そうな面持ちで見守っており、やってくる蝙蝠には全く気付いていない。
そのときだ。
「!!マスター!!危ない!!」
ブラダマンテが、そう叫んだ。
そして防戦一方だった彼女がマルタさんを盾で弾き、彼のもとへと一目散に飛んでいく。
「やぁっ!!」
彼の前に立ち、折り紙蝙蝠を両断した。
「お、お怪我はありませんか?も…森永さん…?」
「あ、ああ…大丈夫、です…。」
「良かった…。」
ホッと胸を撫で下ろすブラダマンテ。
そうか、俺分かっちゃったぞ。
さっきまでの仮説は今確信へと変わった。
あのわざと距離を置いたような話し方。しかもブラダマンテはうっかり口を滑らせたみたいだが誰をマスターと言った?
そして何故、ブラダマンテはわざわざ付き人の彼を身を呈してまで守ったのか?
聖騎士だから?いいや違うね!
もっと大事な理由だ!!
「おっきー!!」
「?」
彼女の名を呼びアイコンタクトを取る。
「俺も援護するぜ!!」
内ポケットからあるものを取り出す。
「そうら食らえ!」
それはカラフルな折り紙の手裏剣。
探偵七つ道具、おっきーの手作り手裏剣だ。
魔力がこめられていて投げた者の当てたい場所に必ず当たるもの。
しかも折り紙とて侮ることなかれ。
その切れ味、殺傷力は本物と変わらない。いやむしろそれ以上。文字通り折り紙つきの性能なのだ!
「はっ!そんなもんが俺に当たるわけ」
「てめぇに当てるつもりはねーよ。」
燕青めがけ投げた複数の手裏剣は直前に方向を急転換。明後日の方向へと飛んでいった。
「狙いは"あっち"だ。」
その途端、燕青の表情が曇る。
手裏剣は明後日の方向に飛んでいったのではない。
狙いは付き人の一人、岡本だ。
「あぶねぇ!伏せろ!!」
「!」
燕青が叫ぶも、あまりに急で彼女は咄嗟に動くことができない。
「くそっ!」
このままいけば手裏剣は岡本に当たる。
そう思ったときだ。
「!」
折り紙手裏剣は全て岡本の足元に刺さった。
そして
「なっ…!」
そのせいで気付けなかった。
燕青の懐に、折り紙蝙蝠が入り込んだことを。
「それっ、ぱちん!」
おっきーが指を鳴らす。
すると蝙蝠は輝き、爆発した。
「ぐう…ッ!」
「燕青!!」
爆発の煙にのまれる燕青。
しかし殺すほどの威力じゃない。最小限に抑えていたみたいだ。
「お前…まさか気付いたのか…!」
「ああとっくにな。何せ俺は探偵だぜ?」
あの折り紙手裏剣は、燕青に当てると見せかけ岡本に当てるものだった。
しかしそう見せかけただけだ。
本当はただ足元に刺さるようにしただけ。
仮説をより確かな証拠にするためにな。
「それとおっきー、俺のアイコンタクトでよく分かったな。」
「えへへ。だって姫はまーちゃんのサーヴァントだし?」
燕青を狙った攻撃。本来あれは必要なものではないが強いていうならば私怨だ。
だって岡本にはバカにされ燕青にはいいようにボコられたんだよ。
んでおっきーにアイコンタクトを送ったのさ。
"一杯食わせるなら今だぜ"ってな。
さーて証拠は出揃った。
まさかこんなところで俺の活躍の塲があるなんて思いもしなかったぜ。
「なぁ、お山の大将正義くんよ。」
ビシィ!と正義を指差す。
「お前、マスターじゃねーだろ。」
確信を突きつける。
しかし正義は図星のようなリアクションはとらない。
「そういったデタラメはあまりいうものじゃないよ。一誠くん。」
だからにのまえ まことだっつってんだろボケ。
「マスターじゃない?どういうことなんだ探偵さん!!」
「まぁ落ち着いて、仁さんも正義もそこの二人も、耳かっぽじってよぉーく聞いてくださいよ。」
疑問をぶつけてくる仁さん。
いいねぇ実にいいねぇ!まさに探偵の活躍の場だよ。
さぁはりきっていこうとネクタイを締め直し、キメ顔で俺は推理していたことを述べていく。
「さて、じゃあまず…本来のマスター差し置いて教祖様に従ってる気分はどうなんだよ?ブラダマンテに燕青さん。」
「…ッ!」
ブラダマンテは動揺している。
そう、彼女は正義のサーヴァントじゃない。
あくまでそのフリをしているに過ぎない。
「それともあれか?お前尻フェチの上寝取られ大好きとかいうニッチなやつか?森永くんよぉ!」
「そ、そんなこと…!!俺は寝取られなんて大嫌いだ!」
本来は森永のサーヴァントだ。
んで尻フェチは否定しねーのな。
「それにブラダマンテ、お前森永のこと"マスター"って言ったよな?」
「…そ、それは間違えて」
「間違えるワケあるかよ。忠義に厚い聖騎士ともあろうお方が、ついうっかり呼び間違えるか?」
「う…。」
「そしてあんたもだ燕青。お前も正義のサーヴァントじゃない。」
俺がそういうと、燕青は動揺することもなくアッサリと答えた。
「ご名答。さすが探偵。俺は教祖様のサーヴァントなんかじゃねぇ。俺のマスターはこっちだ。」
そういい、岡本の頭をポンと撫でた。
「ほー。随分アッサリと認めるんだな。」
「バレちまったんならもう隠しはしねぇよ。」
そう、
燕青の本来のマスターは岡本。
そしてブラダマンテの本来のマスターは
「お前もそうだろ?もう言い逃れはできないぞ森永くん。」
「くっ…!」
何故正義がこの二人を連れていたか。
それはこの二人がサーヴァントのマスターだったからだ。
「弱音を握ったのかどうしたのか知らねーがてめぇは何らかの手段で二人のサーヴァントをあたかも自分のモノであるかのように取り繕った。なーんだ、結局はてめーもただの欲しがりじゃねーかよ。」
「違う!!僕はただ悪魔と契約した二人の肩代わりを…!!」
「うそつけクソ野郎。」
出たよそれっぽいクソみたいな言い訳。
「燕青!」
「…。」
「君は中国の英霊の中でも忠義に厚い男だと聞く…だとしたら」
「いや、今日で降りるわ。」
「な…!?」
正義は燕青にサーヴァントでい続けるよう命令しようとしたのだろう。
だが、アッサリと断られた。
「確かにマスターはアンタに一宿一飯の恩がある。けどな、恩着せがましいんだよ。あんな賛成せざるを得ないような状況作っといてよく言えるな。」
だから今日でアンタのサーヴァントはやめだ。と最後にそう突き放した。
そしてとどめに。
「私も降りるよ。」
「お、岡本さん!?」
「嫌だった…私の燕青が大して知りもしないあなたに使われるのがすごく嫌だった!!寝取られたみたいで嫌だった!!」
マスター本人からも拒絶。
こうして正義から燕青は失われた。
さて、
「お前はどうすんだよ、森永。」
「森永くん!君は分かっていると信じているよ!!」
残りはこいつだ。
「そう…そういうことだったのね。」
「?」
そんなとき、今まで黙っていたマルタさんが口を開いた。
「マルタ…?」
「こうして幾度とあなたと戦った際、拳を通してある思いが伝わってきました。ブラダマンテ、あなた…"迷っていますね"?」
え、なにそれ
「ようやくスッキリしました。あなたの迷いとはすなわち、このままでいいのかという葛藤。そして自分はどちらに従うべきなのかというもの。そうですね?」
「…。」
マルタの問いに対して、ブラダマンテはゆっくりと頷く。
てかなんだよ、拳を通して思いが伝わってくるって。
それは拳法家の強いやつが言う台詞でしょ…。
「聖女が言っても、なんの問題もないのですよ探偵さん。」
拳通さなくても思い読んでるんですがそれは…。
「マルタさん…わ、私は…ブラダマンテは…。」
「悪魔の言葉に惑わされるな!!ブラダマンテ!!君は聖騎士なんだろう!?」
「うっさいわね!今一対一で話してんの!邪魔すんなシャバ僧!!!」
揺らぐブラダマンテ、
しかしそうはさせまいと説得しようとする正義。
それにキレるマルタさん。
「答えはとっくに出ているハズ、さぁ、あなたが本当に忠義を尽くすべき相手は…誰?」
「…。」
ブラダマンテはゆっくりと後ろを向く。
「ブラダマンテ…!」
後ろにいるのは正義。
顔が綻ぶ正義だが、
「申し訳ありませんが、お断りします。」
「なっ…なに…!?」
その淡い希望は、いとも簡単に消えた。
「私が命をかけてお守りし、忠義を尽くすのはマスターだけです!!」
踵を返し、ブラダマンテは本来のマスターである森永のところへと駆け寄った。
「マスター!申し訳ありません…!ブラダマンテは…!」
「いや、いいんだ…ちゃんと断れなかった俺が悪いんだ…!!」
互いに涙を流し、抱き合う。
どうやら無事になんとかなったみたいだ。
「所詮は…悪魔か…ッ!!」
さて、最後の仕上げにとりかかろう。
味方を失った正義はそう悪態をついた。
ほらな。結局はそうなるんだ。
「この…悪魔共めェェーッ!!」
やけくそなのか効くと思っているのか、正義は最後の抵抗にホルスターから拳銃を抜き、トリガーに指をかけた。
狙いは無論、裏切ったサーヴァント達。
だがそんなことは
「本性表したわね!!観念なさい!!」
このマルタさんが許さない。
「鉄・拳ッ!!」
踏み込み、一気に正義の懐に飛び込む。
「聖・裁!!」
力を込めると、地面がへこんだ。
マルタさんの怒りを込めた鉄拳は正義が発砲するよりも速く、奴の顔面に届いた。
「一昨日来やがれっての!!」
めり込む拳。みちみちという明らかに人体から聞こえちゃいけない音。
思い切り拳を振り抜き、正義はとんでもない速さで吹き飛んだ。
ご丁寧にも人間同盟の支部があったそこまで、マルタさんは吹っ飛ばしたのだ。
奴は消え、静かになる。
「お、終わった…?」
「ええ、一件落着ってトコかしら」
そう、終わったんだ。
人間同盟の教祖をぶっ飛ばし、そして全ては解決した。
「探偵さん。」
「なんすかマルタさん。」
ボロボロのおっきーを抱えている最中、マルタさんが優しく言った。
「あなたに依頼して正解だったわ。あなたがいなければ、なんの事情も知らず私はあのサーヴァント二人をシバいてたと思うもの。」
シバくとかヤクザみたいなこと言わないでください。
「あなたのおかげで全て丸く収まったの。ありがとう。」
「さすがというか当たり前だよね。まーちゃんは探偵だし!」
「当たり前だろ。けどなおっきー。お前にも感謝してるぜ。あの誤射がなければ俺も分からなかったんだからな。」
それに言ったはずだぜ。
『多少高くつくが、依頼は必ず成功させる』ってな。
ともかく事件は終わった。
朝からクソうるさかった人間同盟だが、ここまで徹底的にやられればさすがにこの町からは手を引くだろう。
今夜からは、ゆっくり寝られそうだ。
まぁ普段からおっきーが寝かしてくんねーけどな!!
後書き
用語解説
⚫聖晶片
7つ集めると聖晶石になるアレ。
魔力の濃い場所に落ちてることがある。
普通の人からすればただの綺麗な石ころなのだが、マスターやサーヴァントにとってはとても大事なもの。
欠片といっても侮ることなかれ、一欠片だけでも魔力を回復できる程の膨大な量の魔力がつまっている。
そして何よりも特筆すべきなのは可能性のあるサーヴァントの霊基を変化させること。
簡単に言えば別クラスへのチェンジ、水着などの転身である。
マルタはこれを使い、クラスをライダーから水着のルーラーへとチェンジしたのだ。
ちなみに霊基の変化には制限があるため、一定時間たてば元に戻るようになっている。
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