崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
のんべえとへべれけと零れた真実
いきなり開催された酒飲み一番勝負。
ドレイクVSその他大勢。
誰かがドレイクより多く飲むことができればこちらの勝ち。
そしてその判定を下す審判は
「なんだこれ…知らない間になんでこんなことになってる」
船で待っている間に自分のサーヴァントがとんでもねぇこと始めててびっくりしているこの男こそドレイク船長のマスター、工藤 信太だ。
「いいじゃないか。今夜は楽しくなりそうだよ。」
「楽しくても後始末が困るんだよ。」
ちなみにこの人、後から聞いたのだが別にこんなことしなくてもちゃんと契約してくれたらしい。
あれだね、ドレイク船長に言っちゃったのが間違いだったね。
さて、
この勝負は誰か一人でもドレイクさんより飲めればいい。
つまりは仲間は多い方がいいということなので
「あの…仕事中なのですが…。」
「かまうもんか。折角誘われたんだからな。」
この町の警備を勤めている蘭陵王と燕青に来てもらった。
無論マスターも一緒だ。
さらに、
「ねぇまーちゃん。姫帰ってゲームしたい。」
おっきーも無理矢理連れてきた。
というこでこちらにはバーソロミューも加えてサーヴァントが四騎。まず負ける可能性はゼロに等しいだろう。
この契約はな、必ず成功させる必要があるんだよ。
俺が契約を持ち込んだ際、どことして欲しいといった?
ホテルと、この『蜘蛛の糸』だ。
そうすれば珍しいお酒や果物なども安定して手に入るだろう。
といっても狙いはそこじゃない。
「まぁそうすれば?わざわざ並ばなくとも定期的にケーキが手に入るわけですよ。んー、モンブランとか?」
「同志…それは私の特権だぞ!!」
ケーキがお前だけのものだと思うなよ!
そう!いわばこれが俺のマキさんへのプレゼント!
バーソロミューの持ってくるものとは比べ物にならない、とんでもなく美味いモンブランを持ってきてもらうんだよ!!
するとどうなると思う?マキさんは俺に感謝する。もっと仲良くなる!幸せになる!!HAPPY ENDだろうがよ!!
「へー、あの人がマキさんなんだ。」
と、なんだかんだで初めてbarにやってきたおっきーはあのマキさんをじぃっと見つめる。
「なんだよ。」
「ふぅん。あれがね。まーちゃんが夢中になってる…へぇ。」
「怒ってんの?」
「んーん別にー。サーヴァントはサーヴァント。人間は人間でしょ?ただホントの事知ったまーちゃんの反応が楽しみだなーって。」
ホントの事ってなんだよ。
お前がマキさんの何を知ってんだよ。
「それじゃあ、始めようか。」
と、ドレイク船長のマスターが勝負開始を宣言する。
「酒飲み一番勝負!始め!!」
そうして、今後の献立とマキさんへのプレゼントを賭けた戦いの幕が切って落とされた。
⚫
それから二時間…いや、どのくらい経っただろうか。
酒飲み一番勝負。
ハッキリ言おう。
「ヴォエエエエエエ…うっ…ぶえぇ!!」
無謀だった。
あれだね、お酒ってつらいわ。俺あれ苦手だわ。
もう俺一生ファン◯グレープとウェ◯チしか飲まない。
酒なんてぜってー飲まねぇ。
ぶどうワインとか好物のぶどう入ってるんだし平気だろって思ってイッキ飲みしたのがダメだった。
なんだよあれ酸っぱいじゃん。
そして、
「ひ、ひめ…もうむり…。」
サーヴァントの中で一番早く脱落したのはおっきーでした。
「ま、まーちゃん…!早くトイレ開けて…!」
「無理…まだゲロ出る…うっ!」
「た、堪えるのよ刑部姫…!!ヒロインがゲロするなんて…そんな暴挙絶対にしちゃだ」
おっきーの声が、途中で消えた。
大丈夫だよおっきー。
ヒロインがゲロするアニメは名作ってジンクスがあるんだからよ。
つまりはそのジンクスに則ればこの小説、名作になるぜ。
「…。」
「うっ…な、なんだよアイツ…蟒蛇のサーヴァントか?」
場所を試合会場もとい店内に戻そう。
机に突っ伏し、ぴくりとも動かない蘭陵王くん。
サーヴァントの中では一番健闘するも、ドレイク船長には敵わない燕青。
そしてバーソロミューも
「はは…メ…メカクレがたくさんいる…マキさんも五人いる…そうか…ここが宝島か…。」
酔いすぎて幻覚症状に陥っていた。
「ハッ!どいつもこいつも根性ないねぇ!このままじゃ契約破棄だよ!」
なんとサーヴァントは全滅。
なのにも関わらずドレイク船長はピンピンしている。
多少顔が紅潮しているくらいだ。
「…けど、アンタは多少やるみたいだねぇ。」
サーヴァントが勝てないのならば当然人間も敵わない。
多くの者がドレイク船長の飲みっぷりに倒れ伏す中、その屍の山の中で唯一、お酒を飲み続ける者がいた。
「…っぷはぁ。」
サーヴァントはもういない。つまり人間だ。
ありえないことに人間がサーヴァントと互角に酒を飲んでいるのだ。
その正体は…
「"マキ"とか言ったかい?」
マキさんだ。
トイレから出てきて見てみればマキさんは何食わぬ顔でグラスに注がれた焼酎のロックをなんなく飲み干している。
何この人…。
「はい、僕、お酒には多少自信があるんですよ。」
多少どころじゃない。
マキさんの周囲の床には何本もの空の瓶がある。
それなのにマキさんは顔色一つ変えず日本酒に手を付け始める。
「面白いじゃないか。いいね、どこまでついてこれるか試してやるよ!」
本気を出すらしい。
というかこの人、まだ本気じゃなかったのか。
「ほらどんどん持ってきな!!」
運ばれてくる酒。
ちなみに『蜘蛛の糸』にある酒はとうに尽きている。在庫はない。
なのでハインド商会の船からありったけ持ってきたのだ。
つまりここで勝たなきゃならない。
負ければ虚無感と空の瓶、そしてすっからかんになったbarしか残らないからだ。
つまりbarの明日は、マキさんにかかっている。
「おいしい…やっぱり甘酒はいいですね。あ、大福とかあります?」
お酒を飲みながらもさらに甘味を要求しはじめるマキさん。
がんばれマキさん。負けるなマキさん!
飲むときの仕草がエロいぞマキさん!
「ま、まー…ちゃん…。」
「お、おっきー。」
と、人が頑張って応援してる中ゾンビのごとく足首を掴んできたおっきー。
「ひめ…がんばったよ…」
「ああ、お前はよくやったと思うよ…。」
顔が真っ青だ。
こんなになるまで頑張りやがって…と労ってやりたいところだがお前サーヴァントの中で最初にギブアップしたんだからな?
「あ、ダメ吐く」
「オイコラ待て人の足にゲロ吐くなやめろバカおいマジで勘弁し」
⚫
数十分後。
戦いは更に激化していた。
「中々…やるじゃないか…!!」
「えへ…えへへへーぼくよってないれすよぉ♡」
一升瓶をかかえ、ふらふらのドレイク船長、
ゆらゆらと揺れ、どこか分かんないところを見て笑ってるマキさん。
二人とも、かろうじて飲んでいる状態だった。
そしてついに、決着がつく。
「もーいっぱいくーださーい♡」
ふらふらと立ち上がるが、その足元はやはり覚束ない。
危なっかしい歩きを止めたかと思えば今度はゆらゆらと揺れ…
「マキさん!!!」
揺れる幅が大きくなり、マキさんが仰向けに倒れそうになる。
このままでは無防備な後頭部が床にぶつかってしまう。
酔いすぎて言うことを聞かない身体を動かそうとするが、ダメだ、身体が重すぎる。
バーソロミューは…
「キミ、いいメカクレだね。私の船員にならないかい?」
だめだ。アテにならない!ハゲのおっさん口説いてやがる!!
このままではマキさんが…!
そう思ったときだ、
「その根性…気に入ったよ。」
マキさんは倒れずに済んだ。
ドレイク船長が抱えてくれたのだ。
敵だというのに、いや、敵だからこそかもしれない。
ここまで自分を追い込んだ敵に対する、一種の敬意なのかもしれない。
しかし勝負には負けた。
これから俺達はどうす
「契約成立だ。この女の根性に乾杯だよ。」
…まじで?
「このbarとホテルに食料の定期配達だね。いいよ。利用客が増えるのは大歓迎さ。」
勝負には負けた。
だが、ドレイク船長はマキさんのあまりの飲みっぷりに折れたのだ。
なんてことだろう。
「さーておひらきだ!」
「いや、後片付けをだね…。」
と、アラフィフの言葉を気にすることなく出ていったドレイク船長。
後片付けは俺とドレイク船長のマスターがやりました。
ちなみに呼び戻しにいったそうだが時すでに遅し。豪快にベッドで大の字になって寝てたとさ。
起こしても起きないって。
そんで彼はアラフィフに謝り、お詫びの品としてあるだけのお酒をプレゼントしたのだった。
「本当に申し訳ない…後であいつにはキッツいお仕置きをしておくんで!!」
と言ってたな。
ふーんそう…もしかして夜の営みはそういうやつですか?
「まーちゃん。」
「うん?」
「お仕置きイコールえっちなことに繋げるの、思春期の子だけだよ。」
うるせーよ。
じゃあ今夜はお前をお仕置きしてやろうか?
「ごめんまーちゃん。今日だけは無理かも。今回はヤッてる最中にリバースする自信ある。」
「うん…俺もやべーから今日はやめとくわ…。」
ゲロしながらセックスとかどこのニッチなAVだよ。
それより後片付けも大変だしな。
そして俺達はドレイク船長のマスターと契約を済ませ、無事『蜘蛛の糸』の明日とホテルのこれからの献立を守ることが出来た。
とはいってもこれはマキさんのおかげだ。
ということもあり、
「この辺か…?」
アラフィフに頼まれ、俺はマキさんを抱えて家まで送り届けることになったのだ。
しかしここは町の外で時刻は深夜。いつモンスターが出てもおかしくはない。
なので
「まーちゃん早く帰りたい。」
「うっせーなお前は黙ってついてこい!」
護衛としておっきーを連れてきた。
頭痛いとか早く寝たいとかうるせーけどな!
そしてそんな文句を聞きながら歩くこと10分。
「ここが…」
「マキさんの家。」
町から少しだけ離れたところ、
そこには一軒家があった。
運良く残っていた家をそのまま再利用したんだろう。
玄関には鍵はかかっていなかった。
まったく不用心だなぁ。下着とか盗られちゃったらどうすんのさ。
「マキさーん。着きましたよー。」
「…。」
家の中に入り、俺の背中ですぅすっと寝息を立てているマキさんに声をかける。
しかし起きない。
軽くゆすったりしてみるも、全く起きる気配がない。
「起きないな…。」
「部屋まで運んであげれば?」
女性の部屋に上がり込むのは少々あれだが仕方がない。
おっきーのいう通り部屋まで連れていってあげることにした。
「すごい綺麗だね。」
「ああ、きちんと整理されてるしな。」
一人で住むにしては大きすぎるこの家。
だが、掃除は行き届いている。
台所、リビング、そして
「ここは…?」
一番広い部屋に辿り着いた。
「なんだろう?アトリエかな?」
「アトリエ?」
「ほら、見てよまーちゃん。」
机に置いてあるスケッチブックを開いて見せるおっきー。
なんだこれは…
「なにこれ…絵うますぎだろ…。」
「だよね。マキさんもしかして神絵師?」
あまりにもハイクオリティな絵の数々、
風景画や抽象画、似顔絵やアニメ絵など描いてあるものはジャンルを問わず、そしてどれも上手い。
もっと他の絵も見てみたいところだがそれはいけない。
女性の家に勝手にあがり込んだ上物を漁るとかそれは泥棒と同じだ。
というわけで俺達はその部屋を後にし、他の部屋を探す。
すると寝室はすぐに見つかった。
大きめのベッドと姿見が置いてあるだけのシンプルな寝室。
「よっこらせと。」
起きないマキさんをベッドにおろし、寝かせる。
「マキさーん」
「…ん…んっ。」
やはり起きない。
「ぼく…さみ……しいよ」
「え?」
何か寝言のようなものを呟いている。
だが、声が小さすぎて何を言ってるのかまでは分からない。
「何か言ってるね。」
「いい夢でも見てんじゃねーの?」
きっと幸せな夢を見ているに違いない。
そう思っていたが、それはすぐに間違いだと気付く。
何故なら
「…涙?」
目から頬を伝って何かが落ちる
月明かりに反射した、一筋の涙だった。
「マキさん…何か嫌な夢でも…」
「あいたいよ……おえい、ちゃん」
確かに彼女は何かを言った。
誰かに会いたいと。
「…。」
「まーちゃん。」
「帰ろうぜ。女性には触れちゃいけないデリケートなところってのがあるのさ…。」
触れない方が彼女の為だろう。
うん、この寝言は聞かなかったことにしよう。
というか最後の方は聞こえなかった。
誰に会いたいと言った?マキさんの思い人だろうか?
サーヴァント?それはありえない。何せマキさんには令呪なんてないからだ。
「触れちゃいけないところ、ね。まーちゃん姫以外に女の子と付き合いないのによく知ってるね?あ、シ◯ィーハン◯ーでも見た?」
「るっせーなとっとと帰って寝んぞ!明日は早いからな!!」
玄関を閉め、アラフィフから借りた合鍵できちんと施錠しておく。
そういやマキさん、言ってたな。
いつぞやのことだ。
ある日俺はbarなのにも関わらず、ウェイトレスの衣装を着ないで何故花魁を着ているのか聞いたことがある。
「どうして僕がいつも花魁を着てるかって?大事な人にこの服を褒められたからですよ。僕には花魁姿がとっても似合うって。だから着てるんです。それに…」
「それに?」
「ずっと着てれば…見つけてもらうための"目印"にもなりますから…。」
「目印…ですか?」
「おっと、これ以上はだめですよ探偵さん。これから先はお得意の推理で解いてみてください。」
まぁ話を誤魔化されて、最後まで聞くことは出来なかったんだけどな。
⚫
翌朝。
カーテンの隙間から朝陽が差し込む中、寝静まっているマキの元へ何かが這い寄ってきた。
黒く、丸い物体。
やがてそれは彼の顔まで接近すると、一本の触手でぺちぺちと頬を叩き始めた。
「う…うん?」
薄目を開けるマキ。
目の前にいる黒い物体…もといタコのような生き物を見て驚きの表情はしなかった。
何故なら、このタコらしき生物は元からマキと一緒に暮らしているからだ。
「お、おはようとと様…いった。」
起き上がり、二日酔いから来る頭痛に頭をおさえて顔をしかめる。
するととと様と呼ばれたタコの生物は身ぶり手振りをし、彼に何か伝えようとしている。
「意地悪そうな男とメガネをかけた女の人が?あ、もしかして探偵さんかな?」
「…。」
「うん…そうなんだ。運んできてくれたんだ。」
タコは言葉を発さない。
だがマキはまるでそのタコと意思の疎通が出来ているようだった。
「後でお礼言わなきゃね。」
ずれた花魁を着直し、カーテンをあける。
「ねぇ、とと様。」
「…。」
「やっぱり見つからなかったよ。」
「…。」
「うん、分かってる…。」
見つからなかった。
その言葉に、タコは心配そうな視線を向けた。
「ここにはいない。だからそろそろこの町から出ていこうと思うんだ。」
「…。」
「大丈夫だよ。例え見つからなくても、僕一人でもやるつもりだから。」
「…。」
「それじゃあシャワー浴びてくるね。朝御飯はそれから作るから。」
何かを言いたそうなタコ。
だがマキはそれから逃げるように浴室へと向かってしまった。
「そうだ…決めたんだ。例え見つからなかったとしても…。」
マキの心には、何かの固い意志があった。
「お栄ちゃんがいなくったって…"葛城財団"は僕が必ず潰すんだ…!」
後書き
謎が謎を呼ぶ最後でしたね。
マキさんとは何物なのか。
一緒に住んでるとと様と呼んでいるタコはなんなのか
彼が探している"お栄ちゃん"とは?さらに葛城財団とはなんなのか?
知らないものだらけで謎が謎を呼びますねぇ(すっとぼけ)
さて次回は東京に行きます。
みんな大好きあのお姉ちゃんとのコラボ回です。
どうぞお楽しみに。
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