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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
始まりの章-世界は終わった、しかし物語はここから始まる-
  その日少年(ぼっち)は、運命(ひきこもり)と出会う

 
前書き
どうもこんにちは。
アメイジング天海といいます。
元はハーメルンにて小説を書いていましたが、わけあってこちらで書くことになりました。 

 
薄暗い部屋。
そこら辺に脱ぎっぱなしの服があったり、読んだ本がそのまま置いてあったりしてある、どこにでもありそうなTHE男子高校生の部屋だ。

そこで俺は、

「お、おい…やめろ…っ!」

襲われてた。
いや、襲われてるって言うのはその…アレだよ。性的な意味で。マジマジ。

「別にいいでしょー?昨日だって姫をオカズにして抜いたんだから。だったら姫とえっちしても変わんないよ?」
「お、オナニーとセックスはちげーんだぞ!?」

と、俺の上でとっても恍惚とした表情を浮かべ、自分を姫とか呼んでるこの女性。
彼女は、人間じゃない。

「ねーマーちゃん。これから姫ともっとキモチイイこと、しよっか♡」

彼女の名前は刑部姫。
そう、あの刑部姫だ。

そして何故一般男子高校生である俺がその刑部姫に逆レイプされているかといえば、
それは数時間前…世界が滅びるほんのちょっと前に遡る…。




千葉県のどっかにある高校。
そこにこの俺、一 誠(にのまえ まこと)はいた。

「…。」

授業の間のちょっとした休み時間。
男子生徒がふざけあったり、女子生徒がゲラゲラ笑いながら会話をしている中、俺はこうして机に突っ伏して寝たフリをしている。
友達がいないわけじゃないぞ。
ただこうして周りの話を聞いて情報収集をだな…。
って誰に言ってんだ俺。

「うおおすげぇ!!」
「ジュナオ二枚抜きじゃん!!やべーよマジで!」

と、そんな大声が俺の耳に入る。
顔を上げてみれば普段は隅っこでコソコソ話してるだけの俗に言う陰キャ集団が何やら騒いでいた。

あーあれだな。FGOか。
FGOっていうのはだな。今人気のアプリゲームで…ってこれを読んでる奴等には説明不要のゲームだったな。

たかがアルジュナオルタごときでぎゃーぎゃー騒ぎやがって。
男引けて喜ぶとかホモかよ。

「な、なぁ…。」

とそんな事を思いつつも、俺はそいつらのところに言って無意識のうちに話しかけていた。
かくいう俺もFGOユーザーだ。
別に友達が欲しいわけじゃない。ただ同じ話題を共有したくなっただけだぞ。

「え、なに?」
「アルジュナ…出たんだって?は、はは…すげーな…。」

いかん。
高校デビューで派手に失敗し、今までにロクに話してこなかったことがたたって明らかに怪しい奴のように見られている。
だめだ。会話を続けなければ会話を。

「と、ところでさ。」

「?」

「一番強いサーヴァントって、誰だと思う?」

俺がそう言うとどうだろう?
陰キャ共は皆自分が強いと思うサーヴァントを言い始めた。

「やっぱスカディじゃない?」
「いや、じいじでしょ。」
「俺はランスロットだと思うなぁ。」
「ブラダマンテは?ほら、宝具すごい(意味深)じゃん。」

なんか最後の一人明らかに性能抜きで話してるよね。
待て待て、なんか置いてかれてるぞ。
話題を提供した俺が置いてかれるなんてそれはおかしい。
俺も強いと思うサーヴァントを言わなければ…!

「な、なぁ?」
「?」
「刑部姫とか、どうよ?」





数分後…

「いくらなんでも全員で否定するこたぁねーだろうがよぉ!!!!!!!」

俺はトイレの個室で泣いていた。
さっきまで陰キャ共と楽しく話してたじゃない?なんでってか?
あいつら俺が刑部姫はどうって言ったらさ、

「は?刑部姫?雑魚じゃん。」
「刑部姫使うんだったらぐっちゃん使うわw」
「なんだそれ?お前FGOやったことねぇだろ?」
「所詮はスカディに負けた敗北者じゃけぇ。」

ふざけんなよ。
誰一人として味方いねーじゃん。
それどころか皆して刑部姫バカにしやがってよぉ!!

と、怒ることもできず泣き叫びながらこうしてトイレに駆け込んだのである。
なんだよ。どいつもこいつも性能性能。
そんなんばっか気にしながらやるゲームは楽しいか?
推しを愛でながら楽しくやるのがゲームだろーがよ。
性能?使いやすさ?そんなん二の次。
一番は見た目だよ見た目。
誰も分からねーのかおっきーのかわいさが。
マイルーム性能の高さ、そしてバレンタイン人権鯖と呼ばれたかわいさがよ。

とまぁ、ここまで話せばもうお分かりかもしれないがこの俺はFGOにて、刑部姫が大好きなのである。

だってかわいいじゃん。
始めて見てから好きになったもん俺。
それを皆してやれ弱いだのやれ産廃だのほざきやがって。

「…。」

あーもうダメだ。こんな時はおっきーの声聞いて癒されましょうね。
そう思いポケットからスマホを取り出し、イヤホンを差してFGOを起動する。
あーやっぱいいわ。可愛いわ。

色んなサーヴァントがマイルームボイスにて『クエストに行こう』と言う中おっきーだけはクエスト催促しないし、こっちも一緒にダラダラしたくなるわ。
いいよなぁ、引きこもり。
俺も将来引きこもろうか。
まず我武者羅に働きまくって死ぬほどお金稼いで、
それから誰も知らないとこに引きこもって誰の迷惑もかけず、ひっそりと死んでいく。
友達?いらねーよそんなもん。
俺は1人で引きこもってただずーっと悠々自適かつ贅沢に暮らせればそれでいいの。

「あぁ…早く引きこもりてぇ。」

学校とかいうこんな所にいたくねーもん。

『だよねー。姫もそう思う。』

だろだろ?おっきーだってそう思…

…え?

「今…なんつった?」

今まで聞いたことの無いボイスを喋った気がする。
それから何度タッチしても同じ言葉は喋らなかった。
一体どういう事だ…?

「うおっ!?」

さっきの不思議な現象はなんなんだと思っているのも束の間、いきなり大きな揺れが学校を襲った。

「めっちゃ揺れなかったか…?」

地震…にしてはクソ短い。
なんなんだろうと不思議に思い、トイレから出て窓から外を覗いてみると

「…は?」

まず自分の目を疑った。
夢でも見てんじゃねーの?とも思った。
何故なら外は、有り得ないことになっていたからだ。

まず空にはここは日本だと言うのにオーロラがかかってたり、向こうの方では虹が見えたりと摩訶不思議状態。
そして下の地上は、見たことも無いモンスターか暴れ回っていた。

いや見たことも無いと言えば嘘になるな。
ラミアだのスケルトンだのウェアウルフだの…
空想上の生き物というか…そう、FGOに出てきたエネミーそっくりな奴が人間達を襲っている。

あるものは貪られ、またあるものはおもちゃのように弄ばれ、そして苦しみながら死んでいく。
平和だった街並みは今、さっきまで命だったモノが辺り一面に転がる阿鼻叫喚の地獄と化していた。

「なんだよ…なんなんだよこれ!?」

頭の理解が追い付かないが、夢でないことは確かだ。
頬つねっても痛かったし。
とりあえず、学校が確実に安全とは限らない。
今外で闊歩しているやべーモンスターがいつ校内に侵入しても何ら不思議じゃないだろう。
嫌だな…どうすっかな…と思っていたその時だ

『皆さん!聞こえますか!!生徒全員は屋上に集まってください!!繰り返します!生徒全員は屋上に集まってください!!!』

放送から聞こえてきたのはリーダーシップをとりたがる陽キャの声。
皆で行動とか死ぬほどしたくはないけど、死にたくないから行こう。




屋上に急ぐとそこは人でごった返していた。
なんでも、屋上に集まり軍のヘリとかの救助を待とうという作戦だった。
出入口はもしもの為、モンスターが入ってこられないよう椅子やら机やらのバリケードで完全封鎖。
さらに取っ手もロープでぐるぐる巻きにして完璧だ。

「にしてもやっべーなぁ…。」

屋上から街を見下ろし、改めて事の酷さに気付く。
建物は倒壊し、街のあちこちから火の手が上がっている。
どこからも聞こえる悲鳴。助けてという叫び。
抵抗も虚しく、モンスターに狩られる無謀な人
どうやら今この瞬間から、人間はいちばん弱い生き物となった


さて、こうなった世の中ならもう常識は通用しない。
つまり屋上に逃げれば安心。ということではない。
何故ならば

「おい…あれなんだ?」
「鳥?いや違うぞ!?」

モブ生徒が遠くから飛来してくる何かに気付く。
鳥にしては大きい。
巨大な翼、がっしりとした足。
牙を並べたその口から放たれる咆哮は、明らかに鳥ではなく

「ワイバーンだ!!」

モブ生徒の1人が叫んだ。
そう、ご存知ワイバーン。
FGOに登場するエネミーの一つ。
それらが今、群れをなして飛んでいる。

「てかあれ…」
「こっちに来てね?」

というか明らかにこちらに近づいている。
こんな見つけやすい場所にご飯がギュウギュウ詰めになってるんだもんな。そりゃ来るわ!

「うわぁ!来たぁ!!」

ワイバーンが迫り、まず1匹が数人の生徒をその爪で捕らえながら屋上に着地。
捕らえられた生徒は残念ながら重さで圧死し、帰らぬ人となった。
さらに首を伸ばし、周囲の生徒を噛みちぎっていく。
辺りは一瞬にして安全地帯からワイバーンの狩り場となった。

さらに続けて他のワイバーンも空から奇襲をかける。
足の爪に捕らえら、そのまま空中に連れ去られた者。
中には暴れて抵抗した挙句、そのまま地面に落とされた者もいる。

「うわぁあ!!誰か助けてくれぇ!!!」

あ、今連れてかれた奴さっきアルジュナオルタ2枚抜きしたやつじゃん。
可哀想に…多分さっきのガチャで運を使い切ってしまったんだろうな…。

「早くしろ!!」
「誰だよ雁字搦めにしたやつ!! 」

さて、出入口には食われたくないと逃げてきた生徒が殺到している。
数人係でバリケードをどかそうとするも中々うまくいかず、さらに取っ手部分は鎖やらロープやらで超念入りに固定されていた。
モンスターが来ないようにとやったことだけど、それが完全に裏目に出ちゃったわけだ。
そして、モタモタしているうちに食われる生徒達。
あー可哀想に。運が無いのはいやだねぇ…。

「…!」

なんて思っていたらワイバーンと目が合ってしまった。
どうやら次に運が無いのは俺みたいだ。

「Gyaoooooo!!!」
「うわぁ来んなぁ!!」

ワイバーンの噛みつき攻撃をすんでのところでかわす俺。
慌てて逃げようとするも、振り向いた先にはまた新たなワイバーン。
足の爪の引っ掻き攻撃も咄嗟にしゃがんで回避して、俺は逃げ道を探す。

「…ねーや。」

なかった。
逃げ道全部回り込まれてるわ。

「早く!今のうちに!」
「あの人が引き付けているうちに逃げるんだ!!」

と、出入口の奴らはなんか俺がいつの間にか『ここは俺に任せてみんなは早く逃げろ!』的なことをしていると勘違いし始めている。
あと今俺の事あの人っつったやつ。
同じクラスだからな。名前くらい覚えろやボケ。
ってそんなことどうでもいい。
俺はここから窮地を脱し、生存ルートを探さなきゃならない。
普通の人間がワイバーン5、6匹の猛攻から逃げつつ無傷で助かるルートってありますかね?
ない?そっかぁ!!(諦め)

「ちっくしょう!どっか行け!!あっちのデブの方がうまそうだろーがよぉ!!!」

逃げ惑うモブ生徒のデブにターゲットを移させようとしたがやはり無駄。
こいつらは、中々捕まらない俺に興味を示している。

「くっそ…俺ここで死にたくはねーんだけどなぁ!」

ここでワイバーンのご飯になって胃袋におさまる?
そんなのゴメンだ。
俺には夢があったじゃないか。
引きこもって、悠々自適に暮らす夢が。
それをここで諦めていいのか?いや、そんなわけない。
夢というのは叶えるためにある。
だからその為には死んじゃいけないし、生きなきゃいけない。
しかし、目の前に迫るのは残酷な現実。
大口を開け、俺の頭を思い切り齧りつこうとするワイバーン。
あ、やっぱだめだこれ。
そう思った時だった。

「…え」

目の前を、何かがスっと通り過ぎた。
小さな物体が、恐ろしく速いスピードで通り過ぎワイバーンの間をくぐり抜けていく。
それと同時に、

「Gyaoooo!!!」

その小さな何かに翼を切り裂かれ、俺を囲んでいたワイバーン達は無様に落ちる。

「…何が起きた?おい。」

もがくワイバーン。広がりゆく血溜まり。
そしてその中にヒラヒラと落ちる、折り紙。

「なんだよ…これ。」

思わずそれを拾い上げてしまう。
紫色の折り紙。
折った事はないが、見たことはあるその折り方。
まさかこの”蝙蝠の折り紙”が、俺を助けてくれたのか…?

「…。」

夢の見すぎか、はたまたねぼけているのか、
そう思ったがこれはれっきとした現実。
そしてこれが現実ということは…

「いる…いるってことか?」

今ここで起きていること、そしてこの折り紙蝙蝠の持ち主、
かつて幼少時探偵に憧れていた俺は持ち前の推理力を駆使し、一瞬で全てを超速理解した。

そう、

「そこにいるんだな…”おっきー”!!!」

おっきーが、刑部姫がそこに”いる”ってことに!!!

「いるんだろ?なぁおい!!」

しかしなんということだろう。
呼んでも呼んでも彼女は来ない。
俺の推理が外れた?いや違う。きっと恥ずかしがり屋さんなんだろうな。

「Gyaooooooo!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!」

と、登場を待っていたら手負いのワイバーン達が噛み付こうとしてくる。
どうやらさっきの攻撃は俺がしたものと思い込んでるらしく、俺に対して食欲よりも殺意が湧いてるみたいだ。

だめじゃん。
誰だよ攻撃したやつ。誰だよワイバーン煽ったの。
なんか急に馬鹿らしくなってきたわ。何が刑部姫がいるだよ。妄想と現実の区別くらいつけよバカ。

周りの生徒は冷ややかな視線で俺を見てるし、あわよくばワイバーン全てを俺に任せて逃げようとしているし、
あーだめだ。イライラしてきた。

「こんなものぉ!!!」

全部悪いのはこの折り紙のせいだ。
いやきっとそうだ。そうに違いない。
と思い、死ぬ前の八つ当たりとしてその折り紙をビリビリに引き裂いて破り捨てようとしたその時だ。

「…?」

折り紙に、何かが書いてあることに気が付いた。

「これって…うわあぶね!!」

ワイバーンの攻撃をかわし、折り紙を普通の状態へと戻す。
そこに書かれていたのは…

【そこから飛び降りて。】

ははーん。
分かっちゃった。分かっちゃったぞ俺。
刑部姫はいる。これはもう確信した。
そして飛び降りろなんて言われたらふざけんな、こんな所から飛び降りたら死んじゃうだろ!なんて思うかもしれないがFateを知っているのならそれは違ってくる。
つまり、

「そういうことなんだな…おっきー!!」

ワイバーンの間を走り抜け、飛び降り防止のフェンスをよじ登り、俺は迷うことなく、

「パロディがしたいんだな!!!」

飛び降りた。
校舎から飛び降りからの着地は任せた!!をしたいのだと俺は推測した。
おっきーだもんな!アニメのパロディしたいもんな!
じゃあ言うよ!俺言うよ!!

「アサシン!!着地は任せたァ!!」

そう言いながら生徒達の目の前から消えた俺。
あちら側から見れば、訳分からんこと言い出しながらとち狂って自殺しに行ったおかしな陰キャにしか見えないだろうが…。

しかし残念だったな!!
死ぬのはお前!生きるのは俺だ!!
きっとこの後刑部姫が来て俺を折り紙とかなんかそんなんで受け止めてかっこよく助けに来てくれ…

「…?」

あれおかしいな。
四階、三階と通り過ぎていく校舎。
いつまで経っても着地を任されてくれない刑部姫。
もしかして気のせい?俺の思い込みだった?
あーやばい。頭ん中走馬灯流れてきたぞ。
ロクでもねー思い出が駆け巡ってきたぞ。

どんどん迫る地面。
このままでは全身打撲で死んでしまうだろう。
いや、ワイバーンに食われるくらいなら自殺の方がマシかな…?
待て待て、俺は生きたいんだ。叶える夢あるっつっただろ。
死にたくはないが…

「あ、死ぬわ俺。」

もうすぐそこに地面は迫っていた。




「いってぇ…。」

結果から言わせてもらおう。
運が悪いのか良いのか俺は生きている。

木が緩衝材になってくれたこと。
おまけに地面が落ち葉の敷き詰められたフカフカの腐葉土だったこともあり、ケツを痛めるだけで済んだ。

「いやホントに痛い。ケツ8つくらいに割れてそう。」

痛むケツを擦り、辺りを見回す。
すると、

「大丈夫?」
「は?」

目の前に、誰かがいる。
こちらに手を差し伸べ、心配そうな表情で俺を見ている。

「お前…。」

生憎、俺はモテない。
女友達もいないし、大丈夫だなんて声をかけられたことも無い。
しかし、目の前にいる子は…そのメガネの奥の目は本気で心配そうな眼差しで俺を見つめている。

あと、女友達はいないといったが、その子は見覚えがあった。
何度も何度も見た。飽きるほど見た。
けど、こうして会うのは初めて。
初対面だ。
その子とは

「おっきー?」

倒れた俺に手を差し伸べたのは、
紛うことなき刑部姫。
そう、ここで俺は…

『運命』と出会った。 
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