崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?
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コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
黄金の鹿と嵐の夜と恩返し
前書き
どうも、クソ作者です。
ようやくここまで戻ってくることが出来ました。
エボルドライバーが戻ってきたエボルトと同じくらい嬉しいです。
そんなこんなで本編、参りましょう。
「くそっ…こんなに強いサーヴァントが来るなんて聞いてないぞ!!」
リーダーが北斎を見て、悔しそうな顔をする。
「おい!お前らァ!!」
このままではやられるのは確実に明らか。
そう思いリーダーは叫び、誰かを呼ぶ。
声をかけられたのは部下の職員達ではない。
「あのサーヴァントを倒せ!そうすりゃ"代表"からのとっておきのご褒美がもらえるぞ!!」
洗脳弾を撃ち込まれ、会ったこともない葛城財団の代表に犯してもらいたいと乞い願う女性サーヴァント達だ。
「れんさまが!?」
「ごほうび!!たくさんおかしてもらえるわ!!」
「はやくあいたい!れんさま!れんさまぁ!!」
少なくともサーヴァントは十騎以上はいる。
さすがにこれだけの相手は北斎も骨が折れるだろう。
「やっぱり"あいつ"のやり方は最低サ…怒り通り越して呆れたヨ。」
「はっ!なんとでも言え!いずれ貴様もこうなるのだからな!!」
舌打ちをする北斎。
だがその顔はすぐさま、不敵な笑みへと変わった。
「マイ。」
「わかった!!」
その名前を呼ぶと、北斎を飛び越えるようにしてマキさんが宙を舞う。
その手には、何本もの注射針が。
それよりマイというのはなんだろうか。
彼女の名前はマキさんだ。北斎が探していたマイというのは…まさか…。
「あいつの好きには…させない!!」
北斎のクイック攻撃のように、指の間に挟んでいた注射針を一斉に投げる。
それは見事に各サーヴァントに命中。
中の液体が自動で注入されると、洗脳されたサーヴァントはバタバタと糸の切れた人形のように倒れていった。
「これは…どういうことだ!おい!」
「大魔女様特性のワクチンだ!!もう洗脳弾は効かない!」
「なんだとおぉ!?」
着物の裾からまた新たに注射器を取り出し、投げる。
マキさんいわく大魔女が作ったワクチンとのことだが
「探偵さん、君もこれを。」
「あ、どうも…、」
そして俺もその注射器をマキさんから手渡される。
緑色の液体が入った注射器。
俺はそれを迷うことなく、おっきーの腕に突き刺した。
「う…っ!」
「痛いけど我慢しろよ…!」
中身の液体が注入され、おっきーが痛そうに苦悶の表情を浮かべる。
多少動いたが少しすると大人しくなり、やがて動かなくなった。
「マキさん…おっきーは?」
「大丈夫。今は薬の効果で寝てるだけ。これで刑部姫はちゃんと君のサーヴァントのままだよ。」
「そう…ですか。」
胸を撫で下ろし、俺の腕の中でぐっすり眠っているおっきーを見る。
「だけどマキさん…どうしてあなたがここに…?」
「どうしてって…お礼だよ。探偵さん。」
…お礼?
はたして俺はマキさんに何かしたことがあるだろうか。
「探偵さんのおかげで、僕はこうやってお栄ちゃんに会うことが出来た。感謝してもしきれないよ。」
北斎に会えた?
以前聞いたマキさんの会いたいよという寝言。
そして、"マイ"という人物を探していたという北斎。
「お栄…って、え、もしかしてマキさん…!」
何の共通点もないような点同士が、今線で繋がった。
「クズシロ マキっていうのはあくまで偽名。僕の本当の名前は…"葛城 舞"って言うんだ。」
葛城 舞。
それがマキさんの本名。
そして、彼女こそが葛飾北斎の探していたマスターだったのだ。
「葛城…舞だと?」
職員のリーダーらしき人が彼女の名前を聞き、驚いたような顔をする。
「そうだ。それが僕の名前。そしてサーヴァントのお栄ちゃんだ!!!」
「そうか…そうか!!ふは、ふはははは!!!!」
彼女の本名を知るやいなや、高笑いをするリーダー。
もしかして知り合い?という雰囲気でもなさそうだが…。
「聞いたかお前達!あの"葛城 舞"に葛飾北斎と来た!!!サーヴァントと共に代表の元へ連れていけば幹部クラスに昇進!!さらにおさがりももらえること間違いなしだ!!」
リーダーのその言葉で、職員達の視線が一斉に二人に集まった。
「捕まえろ…!なんとしてもだ…!!」
「俺達もサーヴァントをもらうんだ!」
「飽きられて捨てられたやつじゃない…新鮮なやつが欲しい…!!」
皆手にスタンロッドやらマシンガンを持っている。
数は軽く三十は越えている。
しかし、
「なぁマイ、どうやらおれ達は"あいつ"からかなり目をつけられてるらしい。」
「知ってる。あいつにとって僕らが幸せに暮らしてるのが、何よりムカつくコトだからね。」
互いに余裕そうな笑みを浮かべている。
「じゃあ、探偵さんは下がってて。」
「あ、はい。」
とりあえずおっきーを抱えて隅の方へと避難する。
「さぁ、かかって来ナ!」
「捕らえろ!!!」
葛飾北斎に財団職員が殺到する。
スタンロッドを振り上げ突撃するもの、マシンガンで狙いを定めて接近するもの。
共通することと言えば、どいつも皆きたない笑顔をうかべていることだ。
「手柄は俺のモノだァ!!」
「猪口才な!」
最初に襲い掛かった職員に大筆の一撃、
振るわれた大筆から起きた波は彼を飲み込み、さらに北斎は波を描く。
下から高く振り上げられた大筆。
その波は壁となり、放たれた洗脳弾を無効化した。
「やってやるゥ!サーヴァントを手にいれてやるゥ!!」
仲間に当たることもかまわず、マシンガンを乱射する財団職員の一人。
それに対し北斎は地を蹴り、宙へと躍り出た。
「うあああああ!!あああああーッ!!」
叫びながら乱射するも、それは一発も当たらない。
空中で身を捻り、北斎は全体重を乗せた一撃をそいつにくらわせ、彼は昏倒した。
「そこもだ!」
指の間に挟んだ二本の小筆。
それを後ろにいた財団職員に向けて投げる。
寸分違わずその小筆はマシンガンの銃口に突き刺さり、あっという間に弾詰まりを起こして使い物にならなくなった。
「何をしている!!相手は一騎だ!さっさと捕らえろ!!!」
「数だけ揃えりゃ勝てると思ったかい?そんならそれは大間違いサ!」
たった一騎に手間取っている部下達を見てリーダーが痺れを切らして怒鳴る。
だがそうしてどうなる問題ではない。
事実上このマキさんの…いや、舞さんの北斎はかなり強い。
これ以上の修羅場を何度も潜ってきたような、まさに一騎当千の強さだった。
「ダメです!葛飾北斎は強すぎます!!」
「ならマスターを狙え!」
リーダーの指示で全員がターゲットを北斎から舞さんへと変える。
対する舞さんは太股にあるホルスターから拳銃を抜くも。
「あげる。」
「は?」
なんと、振りかぶりそれを財団職員に投げつけたのだ。
銃の使い方を知らないのではない。
彼女には、それよりも強力な武器があった。
「僕には…これがあるから!」
そういって取り出したのは、一本のペン。
そう、何の変哲もないただのペンだ。
あまりにも予想外な道具を取り出し、リーダー含め財団職員達は思わず吹き出してしまう。
「ぶっ!おいおい貴様!本気で言ってるのか!?」
「ペンは剣より強しなんて言葉があるけど、まさかそのまんま信じてんのかこいつ!?」
「フォーリナーを持っているマスターがトチ狂ってるなんてな!こいつは楽そうだ!」
と、周りが笑うも本人は大真面目だった。
そしてこの後、財団職員達は笑ったことを死ぬほど後悔することになる。
「…ペンは何よりも強し!」
「は?なんだって?」
舞さんがその名称を呟くと、ペン先が光り出す。
すると目の前の空間に何かを描き始めた。
細かな彩飾やそういったものも全てものすごいスピードで描きこんでいく。
やがて完成したその絵は"剣"だった。
そして驚くのはまだ早い。
空中に描いた絵は、
「な…!」
「これが僕のあみだした唯一無二のスキル、描いたものを瞬時に実体化させる…その名もペンは何よりも強しだ。」
実体化し、舞さんの手に握られたのだ。
「さぁ!ガリガリやるぞ!!」
剣を振るうと、それは等間隔に分裂し、鞭のようにしなる。
「伸びた!?いや、分離したのか!?」
「ただの剣じゃないぞ!!」
「そうだ!この剣はシャルルマーニュ十二勇士が一人の武器!"カリゴランテの剣"だ!!」
舞さんが描いたのはあのアストルフォがセイバーのときに使用する武器、カリゴランテの剣。
蛇腹剣のようなロマン溢れる武器だが、なぜわざわざ舞さんはあんな三流英霊の武器を使うのだろうか。
「っ!」
振るい、鞭のようにしなり、刃の嵐はいとも簡単に財団職員達の防弾チョッキとマシンガンを使い物にならなくしていく。
さらに舞さんは空いている手でもう一つの武器を描き、手に取る。
実体化させたのは北斎が使っているあの大筆。
本物そっくりのそれもまた振るうと、波が飛沫をあげて現れる。
「お栄ちゃん!」
「分かった。たいみんぐを合わせナ!」
カリゴランテの剣を消し、その手が次に握るのは己のサーヴァント、葛飾北斎の手。
「教えてやる…!波は風を受け、より大きく激しくなるんだ!」
手を繋いだまま、二人で同時に飛び上がり筆を振るう。
現れたのは今までのものとは非にならないほど大きな津波。
容赦なく財団職員達を飲み込み、その激流は彼らを船の外、本物の波が飛沫をあげている海へと放り出した。
「っと、」
着地する二人。
そして北斎は
「よく出来たナ。よしよし。」
「…くぅん。」
舞さんの頭をわしゃわしゃと撫でた。
てかなに?舞さんもしゃがんで撫でやすいようにしたよね?嫌がるどころか自分から撫でられに言ったよね?
ていうか今「くぅん」って言ったよね舞さん。もしかして犬?
犬なの?
「貴様らぁ…!ふざけるなよォ…!!」
「おっといけねぇ。ご褒美はそこの髭面の悪党を倒してからだ。」
撫でるのをやめ、怒り心頭の職員のリーダーに目をやる。
舞さんもハッと我に返り、真面目なキリッとした顔でリーダーを睨み付けた。
「お前達二人程度で…なんとか出来ると思うなよ…!!」
「ああ、思っちゃいねぇヨ?」
その時だ。
轟音と共に船が大きく揺れた。
「な、なんだ!?」
「今ごろ他のさあばんとが甲板でドンパチやってる頃だろうナ。」
「なに!?」
リーダーは焦る。
今まで有利な状況であったはずなのに、短時間でこのザマとなってしまったからだ。
さらに運命は、彼をどんどん底へと落としていく。
「おっきー!!」
「!!」
聞き慣れた声が聞こえた。
すると割れた天窓から降り立ったのはガラスの馬。
そう、
「マリー!?それに広海さんも!?」
港で別れた、あの二人だった。
「遅れてごめん。あの時ちゃんと船がないことを伝えていられれば…!」
「いや、悪いのは俺っすよ。」
そうだこのミスは広海さんのせいなんかじゃない。
これは間違いなく…俺の責任なんだ。
「そういえば二人はどうしてここに?」
「あの海賊さんが、私達と北斎さんを連れてきてくれたの!」
「海賊って…!」
それと同時にまた天窓から誰かが下りてくる。
目の前に降り立った二つの影、それは
「久方ぶりだねぇ。あのbarでの酒飲み勝負以来かい?」
「大丈夫か同志…いや、相棒の方があまり大丈夫ではなさそうだね…。」
バーソロミュー、そしてあの時出会ったドレイク船長であった。
「財団の奴らはアタシ達があらかた片付けたよ、残るはアンタだけだ。」
「…なん、だと…?」
リーダーは耳を疑った。
この偽装船、中には百人あまりの財団職員がいた。
それを片付けられた、もとい始末されたのだ。
このサーヴァント達に。
さらに
「それとさっき二、三発撃ち込んだからね。じきに沈むよ、この船。」
「…!」
さっきの轟音、それは大砲がこの船に撃ち込まれた音だった。
よってこの偽装船には風穴が開き、そこから海水が流れ込んでいった。
つまりこの船は、ドレイク船長の言った通り確かに沈没する。
この財団職員のリーダーは、この短時間で何もかもを失ったのだった。
「くそ…くそ…くそおおおおお!!!!!」
部下は全員倒され、自分の目の前には4騎のサーヴァント。
ドン底もドン底に落とされ、リーダーは泣き叫びながら悔しさを噛み締めた。
だが、
「まだだ…!俺にはまだあいつがいる…!!」
「何をする気だ!!」
リーダーが背を向け、駆け出す。
階段を駆け上がり、どこへ行くのかと思えばそこにある扉をあけ、鎖をひっぱり始めた。
「ほら!来い!!とっとと戦え!」
「…!!」
その光景にマリーは思わず両手で口を抑え、絶句する。
リーダーが引っ張った鎖に繋がれていたのはサーヴァント。
奴隷同然のその扱いにはマリーだけでなく誰もが驚愕した。
「代表が処分しようとしていたところを運良く見つけてな!俺のサーヴァントにしてやったのさ!!」
「うぅ…。」
パリスだった。
「どうだ!見ろ!こいつがマスターの証なんだろう!?」
パリスを引きずり出し、そしてリーダーは手袋を外して手の甲を見せつける。
するとそこには確かに令呪が刻まれていた。
「ほらいけサーヴァントォ!!あいつらを蹴散らせ!そうすりゃマスターに会わせてやるぞ!!」
「でも…僕じゃあの人達には…」
「つべこべ文句を言うなァ!黙って戦え!!」
北斎にマリー、ドレイクにバーソロミューと、そうそうたるメンツを見て実力的にも数的にも勝てないことは明らかだと伝えようとするパリス。
だがリーダーはそんなことを一切聞かず、彼を蹴飛ばして階段から転がり落とした。
「さっきからひどいわあなた!サーヴァントをなんだと思ってるの!?」
「ボディーガード、都合のいい道具、性処理玩具、と思っているな。実際そうではないのかね?マスターの諸君?」
マリーの問いにさも当たり前のように答えるリーダー。
自分にもサーヴァントがいるという安心感からか、さっきとは違い得意げな顔でそう言い放った。
「…王妃さまの言う通りだ。最低だよアンタ。」
堂々と言ったリーダーの言葉に、今度はドレイク船長が静かにキレた。
「あん?なんだ貴様。」
「最低だよ。聞こえなかったかい?こちとら怒り通り越して呆れててね。くだらないこと何度も言わすんじゃないよ。」
「はん!ほざけ。」
リーダーは令呪の刻まれたその手を高らかに掲げ、宣言する。
「さぁいくぞ!令呪を以て命ずる!『サーヴァント!こいつらを全員始末し、代表の元へ献上す』」
勝利を確信した明るい笑顔で命令を下すが、
その令呪は、発動しなかった。
「…あれ?」
彼の声をかき消したのは一発の銃声。
「狙いやすい"的"だったよ。」
「え…え…?」
硝煙のたちのぼるクラシック銃をかまえるドレイク船長。
リーダーはそのドレイク船長と自分の手を戸惑いながら交互に見る。
いや、
「あれ?て、手は?手がない!令呪がない!!」
ドレイク船長と、かつて手のあった所を交互に見ながら混乱していた。
そう、令呪のあった手は見事にドレイク船長が撃ち抜いたのだ。
よってパリスに命令を下すことは出来ない、
部下もいない。そしてこの船もいずれ沈む。
今まで味わったことのない絶望。
「もう…おしまいだ…なにもかも。」
ついにリーダーは心が折れ、膝からガクリとその場に崩れ落ちた。
「大丈夫?」
そして自由になったパリスに、マリーが駆け寄る。
「僕は…どうしたら?」
「どうしたらも何も、あなたが決めることよ?だってもう自由なんだから。」
「じゆう…ぼくが?」
与えられた自由に戸惑うパリス。
そう、解らないのだ。
どうすればいいか、どうしたらいいのか。
「じゆうって…なんですか?僕…なにをしたら」
「なぁ坊や、どうすりゃいいのかわからないのかい?」
「えっ。」
戸惑うパリスに今度はドレイク船長が話しかける。
「はい…わからないです…僕にはもう…かつてのマスターもいない。どうしたらいいかなんて…。」
「じゃあこれから決めりゃいいじゃないか。」
と、パリスの手をとり、乱暴に立ち上がらせるドレイク船長。
「こ、これから…?」
「そうさ。死にたくなきゃまずはアタシらについてきな。そんで決めるのさ。」
と、半ば言いくるめられるようにしてパリスはドレイク船長に手を引っ張られる。
「ほら行くよアンタ達!早くしないとこの船は沈むよ!」
そういわれ、俺達は倒れているサーヴァント達を運んで甲板へと上がる。
そして取り残されたリーダーは
「はは…はは。わたしの夢…代表のように…性奴隷のサーヴァントに囲まれて暮らす夢が…ああ…!」
放心状態で、どこか分からない場所を見つめて不気味に笑っていた。
自分の船と運命を共にする度胸だけは認めてやる。
ドレイク船長はそれだけ言い、ホールを後にした。
「…。」
腕の中で眠る、おっきーに目をやる。
もしあのまま北斎と舞さんが助けに来なかったら、おっきーは代表とかいうやつに…。
いやだ、考えたくもない。
それでも考えようとすると、今まで痛むことのなかった心が、痛くてたまらなくなった。
後書き
ついに戻ってきたアァァァ!!!!(エボルト感)
はい、ここまでがハーメルンにて連載していたストーリーです。
長かったです。いや、短かった気もします。
というわけで次からはハーメルンでは書いていなかった新規のストーリーとなります。
色々あったが、なんとか三笠へと辿り着くことが出来たまーちゃん達。
しかし、三笠についても苦難は容赦なく降りかかる。
探偵の苦悩。葛城財団の陰謀。そして待たせ過ぎたコラボ!
そのうちこの話の序盤であるまーちゃんとおっきーの運命の出会いの話も書かないといけませんね。
それではまた!
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