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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
  聖女Mが来る/新興宗教『人間同盟』

 
前書き
どうも、クソ作者です。
この挨拶も随分と久し振りな気がします。
さて、ここからはコラボ章となります。
ハーメルンで連載していたときコラボしてくださった皆様、そしてこれからコラボする予定だったはずの皆様に捧げるお話となります。
人様のキャラを動かすのは難しいですね!!
それでは本編どうぞ。 

 
早朝。

荒野に建つ真っ白な建物を見る二つの人影があった。

「あれか…ったく性懲りもなくまた支部なんか建てて…。」

一人は男性。ガタイはそこそこ良く、若干強面のやや近寄りがたい雰囲気を持った若者だった。

「ホント。良からぬ噂も広めるし、きっと近くのあの街も容赦なく布教させられるわよ。」

もう一人、男性に寄り添っている女性。
大胆にスリットの入った服装は明らかにこの世界でやっていくには厳しい格好をしていた。
この崩壊世界において、こんな変わった格好をしている者は二通りある。
頭のおかしくなった人間か、
あるいはサーヴァントだ。

「ともかくあの街に行こう。確か"姫路町"だったか…。」

男の右手の甲には赤い紋章。即ち"令呪"が刻まれていた。
従って、隣にいる女性は後者。
サーヴァントであり、この男性はそのマスターだ。

「そうね。奴等が余計なことする前に向かいましょう。」

そういい、二人は歩く。
歩くのだが

「な、なぁ…あの。」
「なによ?」
「近い。近すぎて歩きにくいんだ…。」

マスターとの距離が妙に近いサーヴァント。
そのせいで歩きにくいと伝えるも、サーヴァントは一ミリも離れる気配はない。

「いいじゃない。この距離が一番イイの。」

すんすんとにおいを嗅ぐような仕草をし、サーヴァントはそのままマスターと無理矢理腕を組んで歩き出した。




『あくまをー!おいだせー!!』
「「「あくまをー!!おいだせー!!!」」」

『ここは人間の場所だー!出て行けー!!』
「「「ここはにんげんのばしょだー!!でていけー!!」」」


「るっせぇなぁ…。」

朝8時。
なんか外から聞こえるクッソうるせぇ騒音のせいで熟睡中の俺は嫌でも目覚めさせられた。
ちなみに隣にいるおっきーはヨダレ垂らして幸せそうに寝てやがる。
よくこんなうるせーのに眠れんなお前。

「なんだアレ…?」

窓から外を見下ろしてみれば何やらこのホテルに人だかりが出来ている。
先頭に立ってる一人が拡声器を使って爆音で怒鳴り、続けてその後ろにいる60人くらいの人達がそいつが言ったことを繰り返す。
なんか看板とか持ってるけどなにあれ?デモ隊みたいな?
それとよく聞こえなかったが悪魔とか言ってなかった?なに?このホテル悪魔潜んでんの?こっわ。



「ですから!お客様の迷惑になりますので!!」
「お客様!?いいですか!?このホテルには悪魔が巣食っているのです!!今すぐにでも追い出しませんと!! 」


なんやかんや心配になり、様子見にロビーに降りてみればそこには、このホテルのオーナーさんと何やら言い争ってるおばさんがいた。

こんなご時世に似合わない、妙に着飾って派手なおばさんだ。

「あのー、ちょっといいですか。」

さて、オーナーさんには普段からお世話になっている。
というわけで困り顔になっているオーナーさんを助けるために俺は話に割って入る事にした。

「あら?なんですかあなた!?」

こっちを見て甲高い声で話すおばさん…いや、マダム。
にしても香水のニオイきっついな…。

「んん。実は俺、こういう者でしてね…。」

探偵は第一印象が大事。
香水のニオイにやや顔をしかめながらも俺は頑張って笑顔で名刺を渡す。
ちなみに名刺はおっきーの手作りだ。
二人で徹夜して考えて作ったんだぜ。

「まぁ、」

と、おばさんは差し出された名刺を受け取ろうとしたその時、

「…!!」

俺の手の甲にある令呪を見るなり

「い、いやああああああああああああああああああああああああああああーーーーーッ!!!!!」

「は?」

いきなり叫び出し、思い切り後ずさったのだ。
なんだこのヒステリックババア。

「どうした!?」
「何があった!? 」

ババアの叫びを聞きつけ、外でデモ隊みたいなことをしていたやつらの一部がロビーに入り込んでくる。

「さ…触られたわ!!こいつ"契約者"よ!!」

「な…なんだって!?」

俺を指差し、契約者だと叫ぶババア。
そしてハンドバッグからウェットティッシュを取り出したかと思えば、火がつくくらいの勢いで名刺を受け取ろうとしたその手をこすり始めた。

「どうしよう…どうしようどうしようどうしよう…!!」

「落ち着いて!!ともかく撤退だ!!一刻も早く本部で"浄化"しなければ…!!」
「ああ…大変だ!このままでは彼女も悪魔と契約させられる…!!」

そういい、男性二人はおばさんを支えながらホテルを去っていった。
なにあれ、完璧置いてかれてんだけど俺。

「ありがとう探偵さん。助かったよ。」

呆然としていると後ろから声をかけられる。
オーナーさんだ。

「いや、なによりっす。ところであいつらは?」
「ああ、知らないかい?『人間同盟』だよ。」

人間同盟?

「君達が連れているサーヴァントを悪魔とし、この世界から追い出すために活動してる宗教団体さ。」

「へぇ…。」

以前barで似たような話をマキさんから聞いたことがあるな。

「世界がこんなことになっちゃって、それで一部の人達にサーヴァントがやってきたでしょ?でも人間同盟の人達はそんな都合のイイ話なんて有り得ないって。それはきっと人間の魂を狙う悪魔の仕業なんだってさ。」

「なるほど…。」

自分にサーヴァントが来てくれた。
それは確かにものすごくありがたい話だ。
けど、それは第三者からの目から見れば話は違ってくる。
嫉妬だったり畏怖だったり、そういったマイナスの感情も向けられるだろう。

きっと人間同盟とかいう奴等も、そういったマイナス感情がこじれて出来たものだ。
だってサーヴァントが悪魔なワケあるかよ。
いやむしろサキュバスじゃね?おっきーとか無茶苦茶えっちだし。

「で、君達サーヴァントのマスターはあっち側からだと"契約者"って呼ばれてる。その…令呪、だっけ?」
「大丈夫、あってます。」
「よかった。んでその令呪は悪魔との契約の印。そして契約者に触れた者はまた別の悪魔に目をつけられて契約させられる…らしいよ。」
「詳しいっすね。」
「さっき熱心に説明されたからね。」

オーナーさんいわく、朝の七時前からやってきて一方的に説明を受けたのだという。
断っても話はやめず、さらにこのホテルには多くのサーヴァントとマスターが泊まっていると知るや否や、力ずくで押し入って追い出すつもりだったのだとか。

やめろよ…まだ魔力供給してるやつとかいるかもしんないじゃんか。
さらにおまけに、

「その段ボール、なんすか?」
「ああ、これかい?魔除けグッズだって。」

ガムテープを剥がし、オーナーさんが中から取り出した怪しそうなグッズの数々を見せる。

なんか不思議な置物やら、悪魔を遠ざけるとかいう君の悪い人形。さらには、

「なんだこれ?」
「人の像…かな?」

とても精巧に作られた、胸像が出てきた。
胸元にはプレートが貼り付けられており『邪気退散、教祖ご尊顔』と書かれていた。

「これを飾れば悪魔がいなくなるってこと?」
「飾ります?」
「やだよ、気持ち悪いしバカバカしい。」

と笑顔で答えるオーナーさん。

「サーヴァントだって立派なお客さんだよ。それを悪魔だって決めつけて追い払うなんてとんでもない。」

それにこんなに繁盛してるのも、君とそのサーヴァントのおかげだからねと付け足して言った。
嬉しい。嬉しいが、

「にしてもこれ…どっかで見たことあるような…。」

教祖らしき人の胸像。
こいつの顔、確かどこかで見たことあるような気がする。

「にしてもこの教祖?随分と若そうだね。探偵さんと同じ元学生とかかな?」
「いやいやありえないっしょ。宗教やる人なんてもっとやべー人でしょ。学生なんかがなれるもんじゃありませんって。」

中々思い出せずモヤモヤするので忘れることにする。
さて、ちょいと早いが折角起きたし朝飯でも作るかな。

「じゃあオーナーさん。ちょいと厨房借りますよ。」
「お、探偵さんのクッキングの時間かい?毎日大変だねぇ…。」
「別に苦じゃないんで。」





「へー。そんなことがあったんだ。」
「お前がヨダレ垂らしてグースカ寝てる間にな。」

早めの朝食をとり、今朝あったことをおっきーに伝える。

「でもサーヴァントが悪魔かぁ…。別にみんな大切にしてくれたマスターの為に何かしてあげたいだけだと思うんだけどね…。」
「そう説明しても、奴等にゃ無駄だろ。」

この崩壊世界にサーヴァントがやってきた理由。
それは大半が自分を大事にしてくれたマスターに会いたいから、もしくは一緒にいたいからだとおっきーは言う。
確かに、今まで出会ってきたサーヴァントは皆マスターを大切にしていた。
魂を取ろうとか、そんなまさに悪魔じみた考えの奴なんか見たことない。
まぁ精は搾り取られそうだけど。

「もうこの話やめよーぜ。なんか依頼来てないの?」
「んーとね、実はたくさん来てて…」

話題を変えるべく、俺はおっきーに何か依頼は来ていないのかと聞いてみる。
iPadを起動し、ホームページに投稿された依頼を見ていくが、

「ほら、ちょうどその人間同盟絡みのが。」

話題変わってねーわ。

iPadをこちらに寄越してくれたがそこには『最近変な宗教の人達が商売の邪魔をしてきて困ってる』だの『人間同盟とか名乗る人達がここ最近サーヴァントを追い出せと毎日騒いでてうるさい、なんとかして』とか、他にもたくさんあるがそのどれもが人間同盟関係のものばかりだった。

「やだよ俺、宗教に関わったらぜってーロクなことねーもん。」

とんでもない事に巻き込まれるのとかはごめんだぞ俺。
俺は別に物語の主人公とかにはなりたくねーから。
ただ平穏で自分勝手で好き放題できて嫌なこと何一つない悠々自適な生活したいだけだからな。

「あーやめだやめ!今日は休み!臨時休業!!」

もうどこを見ても人間同盟ばっかりなのでうんざりだ。
そんなわけでもう探偵業は今日はお休み。
扉には『本日休業』の張り紙をし、思い切り伸びをする。

「お仕事休むの?」

「今日は休むわ。ほら、明日から本気出せばイイっていうだろ?」

「そうだね!!」

今日は休んで明日からやる。
その意見にはおっきーも大賛成だ。

「さーてなにすっかなー。」

そんなわけで今日一日ヒマになった俺はどう時間を潰すか考える。
そうだな…確かこの前の依頼の報酬でもらったゲームがあったな。
それともおっきーと一狩り行くか?
それとも思いきってYouTube界に進出してみるか!
でもバレるのやだし…そうだ、Vtuberになろう。
おっきーにバ美肉のデザイン描いてもらお。

「まーちゃん♡」
「あ?」

と、何しようかアレコレ考えていたら後ろからおっきーが抱き付いてくる。
猫撫で声で後ろから抱きついてきて当ててんのよしてくる時はアレだ。うん。

「今日は一日、休みなんだよねー?」
「ああ、そうなったよ。」
「じゃあえっちしよっか♡」

魔力供給の合図だ。

「今日は何にする?あまあまえっちかな?それともお風呂でローションプレイかな?あ、おっぱい飲む?」

「うっせーなお前はよぉ!!ヒマさえありゃえっちしろだのセックスしろだの魔力供給しろだのとよぉ!!!あーもうあったま来た!!!犯すわ!!!!!」

頭に来たし腹もたつしちんちんもイライラしてきた。
そういうわけでおっきーを背負い投げの要領でベッドに投げ、そのまま押し倒す。

「ほら、まーちゃんも充分ヤル気じゃん♡」
「お前に渋々付きあってんだよ。いいか?今日はわからセックスからの無理矢理セックスだ!覚悟しろよこの野郎!!」
「わー姫まーちゃんにわからされちゃうよぉ♡」

わざとらしく言うおっきー。
ひっぱたきたくなる表情だが本当にひっぱたくのは流石に可愛そうなのでやめとく。
さて、まずはその唇を奪ってやるぜ!!











『サーヴァントは我々の敵だー!!』
「「「サーヴァントはわれわれのてきだー!!」」」

『偉人の名を語る不届き者を許すなー!!』
「「「いじんのなをかたるふとどきものを、ゆるすなー!!!!!!」」」


「ああああああああああああうるせえええええええ!!!!!!!!!」
「なにこれうるさ…。」

また人間同盟だ!また人間同盟だ!!(ピネガキ感)
追い払ったのにまたデモ始めやがった!!

まだ九時だぞてめぇ!!
俺とおっきーからしたらまだ早朝なんだよ!!
しかもムードブチ壊しにしやがってよぉ!!
こんな騒音の中ヤッてられっかばーか!!

「まーちゃん。姫キレそう…。」

「キレそう?俺はもうキレちまったよ…!」

おっきーは心底嫌そうな顔してるが俺はもう阿修羅みたいな顔してるのが自分でも分かる。
脱ぎかけたワイシャツを着直し、俺はおっきーを連れて一気に下まで駆け降りてった。
そして、

「ギャーギャーギャーギャーうるせーんだよクソ野郎共がよぉ!!他所でやれボケが!!!!!」

外に出て、奴等に向けてそう叫んだ。

「…。」

静かになる人間同盟一同。

「悪魔だのなんだのうるせーんじゃクソボケ!!根拠もねぇことグダグダ述べやがって!!いいか!?ここにてめぇらの居場所はねぇ!!分かったらとっとと帰れ!!殺すぞ!!」

よくもまぁこんなこと言えたなぁと後で思った。
まぁその分怒りも溜まってたんだろう。
そしておっきーも続けて「そーだそーだ!カエレ!」と俺の後ろに隠れるようにして叫んだ。

だが、

「可哀想に…きっと悪魔に脳まで侵食されてしまったんだ。」
「あれが契約者の末路だ…哀れで仕方がないよ。」

ヒソヒソ何か言い始める教徒達。
そして、

「我々人間の居場所はない?だったら作ればいい!!」
「そうだ!悪魔を追い出して俺達の世界を取り戻すんだ!!」


逆効果だった。
数人の発言を発端に彼らはまた騒ぎ出す。
悪魔に負けるか、これくらいじゃ自分達は引かないぞと。

「なんだよこの熱意…きもちわりーんだけど。」

「これは相当のめりこんじゃってるよね。ヤバいヤバい…。」

これはアレだな。分からせる必要がある。

「おっきーなんとかしろ、最悪死人が出てもかまわん。いや出せ。見せしめに殺せ。」
「りょーかーい。」

熱心な宗教家にはちょいと殉教してもらおうか。
なに、数人分血を見せればこいつらも逃げるだろうよ。

「やれ。」

おっきーに指示を出すと待ってましたと言わんばかりに折り紙の蝙蝠が奴等めがけて飛んでいく。
さぁやれ。血飛沫見せろ。さっきまで命だったものを辺り一面に転がせ。

サーヴァントなら人間が敵うハズがない。
と、
そう思ってる時期が、俺にもありました。

「あれ…?」

こちらが攻撃の意思を示した。
すると同時に彼らは鉄パイプやらスコップやら武器になりそうなものを取り出し、反抗を始めたのだ。

「こんなもの…!この程度じゃ俺達は止まらないぞ!!」

例え切り傷を負ったとしても、彼らは怯むことなく立ち向かう。
そして彼らは手に取った各々の武器で、群がる蝙蝠を次々と叩き落としていくではないか。

「おっきーマジでなんとかしろ。」

「む、無理かも。だってあれ見て。」

おっきーが指差した方を見てみれば、何人かが松明をつけ始めている。
それを振り回し、折り紙のしもべ達はいとも簡単に燃えて散っていく。

「"教祖様からの情報通り"だ!折り紙使いの悪魔にはこれが効く!!」

なにあれ。もしかして弱点見抜かれてた?
つかなに?教祖様おっきーのことお見通しなの?

「な、なぁおっきー。」
「ごめんまーちゃん。詰んだかも。」

あれ…俺のサーヴァント…弱すぎ…?
さらに、

「来た!本部からの救援だ!」

別方向からやってきたもうひとつのひとだかり。
俺とおっきーはそいつらに囲まれ、逃げることすらも出来なくなった。

「覚悟しろ悪魔!契約者もろとも火炙りにしてやる!!」

え、なにそれやば…。

「やべーわこれ。今から入れる保険ある?」
「ううん、ない。」

そっかぁ!!

たかが人間ってナメてたわ。
もしかして俺の人生ここで終わり?
やだよ、俺達には正しいと信じる夢があんだぞ。
こんなところで終わらせてたまるもんかよ。

考えろ、考えろ俺…!
何か突破口があるハズだ!

「お待ちなさい」

「…?」

なにかないかと考えていた時、こんな殺伐とした状況に透き通るような声が響いた。

「だ、誰だ!?」

自然と人の波が割れ、二人の人物がこちらに歩み寄ってくる。

「多数でよってたかって迫害する。そのような行為のどこに、正義があるのでしょう?」

やってきたのは男女二人。
語りながら先頭を歩く女性はその格好、見た目からは人間ではなくサーヴァントだと分かった。

「お分かりですか?このような行為は間違っています。サーヴァントを悪魔だと決めつ」
「うるせぇ!いきなり何様だてめぇは!!」

と、ありがたーいお説教に一人の人間同盟の教徒が割って入る。
持っていたスコップをふりかぶり、その女性の頭をかち割ろうとした次の瞬間

「アンタが何様よ!!」
「ぐはぁ!?」

手に持っていた十字架を模した杖をフルスイング。
男は吹っ飛び、やがて見えなくなった。

「よくもあいつを!!この悪魔め!!」

それに続けてもう一人の教徒が後ろから襲い掛かる。
だがしかし、

「私が、悪魔ですって?」

振り向き、叩きつけられようとした鉄パイプを掴んだ。

「上等じゃないの、ええ!?」

「ひ…ひぃ!?」

そのまま女性は、いとも簡単に鉄パイプをねじ曲げてみせた。
こわい。さっきの優しい雰囲気はどこにいったんですか?

「あ、あくまだ…あくまだあぁー!!!!!!」

鉄パイプをぐにゃぐにゃにされた男は完全に怯え、腰を抜かしながら逃げていった。
それを発端に、他の奴等も救援に来てくれた教徒達も恐怖に駆られ、叫びながら蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「ったく…一昨日来いっての。」

さて、ここで問題だ。
俺達二人のピンチを救った、この優しそうで全く優しくない姉御肌のライダークラスのCV早見沙織のサーヴァントと言えばだーれだ?

「…マルタ。」
「やだいけない!私ったらまた…!」

そうだね。マルタだね。

完全にキレていたマルタさんはマスターらしき男性に呼ばれ、ハッと我に返る。
そして俺たちの方を向き、穏やかな笑顔を浮かべてみせた。

「大丈夫?お怪我はありませんか。」
「ないです。」
「そう、それは良かった。たまたまこの街に立ち寄って人間同盟に囲まれるあなた方を偶然見かけたもので」

なるほど、つまりは助けてくれたというわけだ。

「いやーありがとうございます。生憎俺のサーヴァントはクソザコナメクジなので戦いには不向きでして!」

「クソザコナメクジ!?」
「いいからへりくだっとけ!」(小声。)

「そうですぅ♡クソザコナメクジ!星5の恥!でもマイルーム性能は人権鯖にも引けを取らない刑部姫ですぅ♡」

こいつ…自虐しながら自分をほめてやがる…!
否定はしねーけど!

「それと俺はこいつのマスターで、こういうもんです。」

俺もここで自己紹介しなきゃな。
というわけでマルタのマスターに名刺を手渡した。

「ニノマエ探偵事務所…もしかしてあの一 誠(にのまえ まこと)なのか!?」

「え?」

なにそのリアクション。
もしかして俺有名人?

「刑部姫を従えてるからまさかとは思ったがやっぱり…。噂には聞いていたよ。この辺りに『多少高くつくが、依頼は必ず成功させる』探偵がいるって。」

やべー。
噂めっちゃ広まっちゃってるようっはー。
いやー有名人はつれーわー。ほんとまじつれーわー。

「俺は野中 仁(のなか じん)。マルタと旅をしながら、こうして人間同盟を倒して回ってる。」

と、男は野中 仁と名乗り握手を求めてきた。
なのでこちらも手を握る。

「そう…依頼は必ず成功させる、ね。」

そうすると彼のサーヴァント、マルタさんが話し始めた。

「それじゃあ早速なのだけれど、私達の依頼、受けてくれるかしら?」




それから、
二人をホテル最上階の探偵事務所へ招き、依頼の内容を聞くことにした。

「さっきもマスターが言ったのだけれど、私達は人間同盟の間違った教えを正すため、こうして旅をしながら奴等をブッ潰…説得しているわ。」

ブッ潰すって言いかけなかった?
ねぇマルタさん、ブッ潰すって言いそうになったよね?

「けどマルタ…これは俺達の問題であって彼らを巻き込むわけには」
「いいえ、"今回ばかり"は数が多いほうがいいもの。だから鉄だってもらう。いいわね?」

マスターの仁がそう言うもマルタさんは話を続ける。

「ここ最近、この街の付近に"支部"が出来たことは知ってるかしら? 」

「ああ、あの真っ白な?」

「そう、それよ。」

窓からでも分かる。
ここから少し離れたところにいつのまにか建っている謎の白い建物。
なんなんだろうとは思ってたがまさかあれが人間同盟のモノだったなんてな。

「彼らはああして各所に支部を設けて、サーヴァントは悪魔と言う教えを広めているの。私達側からしたらたまったものじゃないわ。」

「なるほど…。」

「そんなわけで、マルタはタラスクを使って片っ端から支部を潰して回ってるんだ。」

あ、そうなんだ。

「ちょっと!それ大分話はしょってない!?説得してもあいつらが全ッ然聞く耳持たないから仕方なくタラスクぶつけてんのよ!?」

「あーはいはい、そうでした。」

マスターの言い方に語弊があったらしい。
ともかくまとめると、マルタさんは人間同盟の支部を回り、ありがたーいお説教(物理)を聞かせて旅をしていること。

で、今回の支部への説得(物理)には、俺達に参加してほしいこと。
というわけだ。

「相手もそれなりに対策をとってあるから厄介なの。一々ブッ潰すのに手間取るから仕方ないったらありゃしないっての!」

あーもうストレートにブッ潰すっていったよこの人。

「ともかく彼らの教えは間違ってる。あんなのただのエゴの押し付けよ!いい?一刻も早くあんな奴等はブッ潰さきゃならないの。作戦決行は今夜。いいわね?探偵さん!」

「アッハイ。」

別に明後日からでも良くない?
って言おうとしたけどその迫力に気圧されついうなずいてしまった。
だってこえーんだもん。
断ったら俺がブッ潰されそうだし。
ほら、おっきーも何度も頷いてる。

ということで、助けてくれたお礼も兼ね、俺とおっきーはマルタさんからの依頼を受けることにした。 
 

 
後書き
⚫登場人物紹介
マルタさん
聖女のマルタさん。普段は聖女っぽいムーブをこなすがキレると本性が現れる姉御。
話を聞かねぇヤツにはありがたい説法(拳)かタラスクをぶつけてやるぞ!!
それとマスター限定で匂いフェチ。
マスターの匂いが大好きで嗅ぐといてもたってもいられなくなってしまう。

野中 仁
マルタさんのマスター。21歳。
強面でがっしりした体型だが根は明るく誰とでも話せるフランクな人。
元々介護福祉士を目指していたが世界が崩壊し、召喚に成功したマルタと共に各地を巡る旅をすることになった。
なお、喧嘩はそこそこ強いらしく、さらにマルタからの鍛練もあって本当に拳で抵抗できる。
 
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