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崩壊した世界で刑部姫とこの先生きのこるにはどうしたらいいですか?

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ほんへ
コラボ章-様々なサーヴァントとマスター…そして性癖。-
  逆転と代表と四人四騎が揃った瞬間

 
前書き
予想外の出来事、代表の介入により一気に劣勢に立たされた三笠メンバー。
無敵の要塞、スチームオブ三笠姫路城も令呪を十画も消費しブーストされた宝具の前では紙切れ同然であった。
万策つきた。しかし諦めない彼らの元に二つの刃が煌めく。
そして、その裏で動く影。
しかしそれは一つではなく、いくつもの影が三笠を救わんと動き出していた…。 

 
数日前…
探偵と刑部姫がまだ三笠についたばかりの頃

「ただいま戻りました。」

横浜にあるホテルタウン、オーシャン・ビヨンド。
東京にてデートの真っ最中であった武田 広海とそのサーヴァント、マリー・アントワネットは緊急召集を受け、こうして戻ってきた。
社長室に入ると既にそこには自分達と同じようなマスターやサーヴァントが勢揃いしており、デスクにはここの社長である真壁 樹理が座っていた。

「いきなり…どうしたんですか?」

物々しい雰囲気の中、広海がこうして集められた理由を尋ねる。

「先日横須賀の"三笠"が、子供達をあずけてくれないかって話が来たの。」
「三笠から?」

三笠と言えば、記念艦を改造して作られたあの三笠孤児院のことだろう。
そこが子供をこちらにあずかってくれないかと話が来た。
孤児院が何故?
だがそういった疑問は聞く間もなく社長のサーヴァント、孔明が答えた。

「近々横須賀にて葛城財団と戦うとのことだ、子供をあずかるのはその為。そして三笠からの要求は介入の拒否。」
「介入の…拒否?」
「ああ、こちらはこちらの都合だから、戦いには参加もとい協力する必要はないということだ。」
「…!?」

孔明はそれから三笠の近況を話していくがまとめて簡単にいうと、
三笠は近々葛城財団と戦うということ。
そしてこの付近は戦場となる。
そのため子供達はオーシャン・ビヨンドであずかっていてくれないかということ、
さらに要求として、これは完全に三笠の問題であるためそちらからの介入は拒否するとのこと。
もしこれを破って来た場合、最悪同盟は破棄するとのこと。

「協力するなって…無謀すぎます!」
「おそらくだけど…他の人達を巻き込みたくないのかもしれないわね。」

席から立ち上がり、真壁社長は窓の外を見る。

「社長のお考えは…?」
「そうねぇ…じゃあ聞くけど、私が大人しくしてろって言われて、目の前でドンパチ始められたらじっとしてられる人間だと思う?」
「ということは…。」

ドン、と両手を机に置き社長は言い放つ。

「ええ、そうよ。介入すれば同盟破棄?こちらの問題だから関係ない?こっちはあのワケわかんない財団から色々迷惑被ってんのよ。ここでぶん殴らないでいつ殴るの?」

このホテルタウン、オーシャンビヨンドもまた過去に何度か葛城財団からのサーヴァント譲渡の交渉、その決裂の後嫌がらせや妨害を受けている。
さらに財団は間接的な要因ではあるものの、人神教という宗教組織に惜しみ無い資金援助をしている。
つまり迷惑な宗教が消えないのは、全部葛城財団のせいである。

「だろうと、思いましたよ。」

うちの社長が大人しくしているハズがない。
そう改めて確信し広海はある意味安心した。

「でも今すぐに三笠に行くとは言わないわ。誰にもバレず。私達は私達で作戦を進めていく、いいわね孔明?」
「ああ、その作戦も既に出来ている。あの悪しき財団を陥れるための計略もな。」

三笠に協力すれば葛城財団側にもこちらが何かを企てている事がバレてしまうだろう。
敵を欺くには味方から。
という言葉があるように、ここは三笠の言うことに従うフリをする。
バレぬよう慎重に、隠密に、そしてここでも葛城財団に吠え面をかかせるため、何よりもムカつくのでぶっ飛ばすための作戦が始まった。



また別の場所では

「近いうち、三笠に葛城財団が攻めこむそうだ。」

運び屋をしているバーソロミューもまた、その噂は耳に入っていた。

「ええ、なので危ないから近付かないようにと…。」
「うん。それはできない相談だね、マスター。」

彼のマスターである小林も三笠には近づかないでほしいという事は聞いていた。
こちらはこちらの問題。なので巻き込みたくないので商談の話は戦いが終わるまでは不要だと。

しかしバーソロミューはそうはいかなかった。

「私は助けに行こうと思う。いや、三笠に関わった者の多くがそうしているだろう。」
「でも…約束破ったら今後ウチと取引や乗客の受け入れも一切しないって…」
「マスター、君はあの三笠にいるアナスタシア皇女をご存知かな?」

三笠からは厳しくそう言われている。
だがバーソロミューいきなり三笠にいるアナスタシアの名を上げた。

「いや、話題変えないでよ。」
「変えてなどいないとも。彼女は素晴らしい。うん。実に素晴らしいメカクレだ…。そんな彼女が戦っているというのに、私達は何もせず指を咥えてぼうっと見ているだけでいいのか?いやいいわけがない!!!!」

さっきまで落ち着いていたのにいきなりアツく語り出すバーソロミュー。
メカクレが絡むといつもこうだ、とマスターは呆れながらも話を聞いてあげることにした。
それに

「行くに決まってるでしょ。」
「マスター…!」
「けど助ける訳じゃない。あくまで私達は葛城財団がムカつくからぶっ飛ばしにいくだけ?いい?」

助けるもとい、介入することが規約違反になるのなら"助けなければいい"
自分達はただ葛城財団がいたからぶっ飛ばしただけだ。そう言えばなんの問題もないのである。

「ハインド商会にも連絡済みだよ。あっちも喜んで協力してくれるってさ!」
「そうか!ならば行こうマスター。手を伸ばせば救えるメカクレがいるのなら…私は助けてあげたい…!」

こうして三笠に集結しようとしている各勢力だが、三笠を助けたいという思いは全員にはないのかもしれない。
ただ葛城財団の悪事は誰もが知り、サーヴァントを持つ全マスターの敵である。
そう、
葛城財団を倒す。
それが全員の心を一つにしているものだった。



「英霊兵を使え!数で押すんだ!!」
「ゾンビ兵の六割が損傷!使い物になりません!!」

場所は移り、現在の三笠。
ボロボロの甲板の上では三笠メンバーの最後の足掻きが始まっていた。

「ムカつく…ムカつくムカつくムカつく!!」

顔に三本の傷を刻まれた鈴鹿御前は滅茶苦茶に大通連を振り回し、その分身対を投げつけていく。
しかし怒りのせいで精度は落ちているのか、狙い通りに当たらない。

「どうした?全く当たっていないが?」
「うるさい!!さっさと死ねェ!!」

煽るようにキャットは投げられる刀の間をするりと掻い潜る。
それはまさに猫。狐だけど。

「うあああッ!!」

アタランテも足掻く。
ここを失うわけにはいかないからだ。
繰り出される爪の攻撃はキャット程の鋭さは持たないものの、本気になった彼女が英霊兵の腕を使用不能に陥らせるのには充分だった。

「貴様らにこの艦を…踏み荒らさせるものかァッ!」

手負いの獣ほど手強いものはないという。
今の彼女がまさにそうだ。
背水の陣、ともいうべきだろうか?
とにかく彼女には守るべき場所があるし、負けられない理由もあった。

「やめろ!来るな…来るなああぁぁぁーッ!!」

飛び交う弾丸をものともせず、アタランテは駆け、一人また一人と無慈悲に殺していく。
容赦などしない。
完膚なきまでに息の根を止めてやるのだ。

「捕らえろ!!五体満足でなくてもかまわん!とにかくあいつをとらえるのだ!!!」

そして、大半の隊員が相手しているのがあの乱入してきた武蔵だ。
数多のゾンビ兵をぶつけ、英霊兵を突撃させる。
何故そこまでして捕まえたいのかは分からないが、それでも武蔵は強かった。

「っ!」

斬る。
人を殺すことに一切の躊躇がない。
おそらく彼女もまたいくつもの修羅場を潜り抜けてきたんだろう。
だが、共にその修羅場を潜り抜けてきたであろう肝心のマスターが見当たらない。
そう思ったときだ。

「あぶない!!」

武蔵の背後に大破したはずの英霊兵が迫る。
どうやら壊しきれなかったようだ。
それを見ていたおっきーが叫び、彼女に伝えようとしたが、

「っらぁ!!」

英霊兵のさらに後ろから、何者かが飛び込んできた。
その手に持った得物を振り上げ、英霊兵の頭に叩きつける。
ハンマーのような質量兵器をまともに受けた英霊兵は、今度こそ機能を停止した。

「…。」

武器を持ち上げ、肩にかつぎなおすいきなり現れた謎の男。
その手の甲には令呪。ということは

「お、大和くんナイス!」
「見えたからって先に一人で行かないでくれ。」

この男、
黒コートに白髪という、最近の中二くせぇFFから来ましたみたいな男が武蔵のマスターなのだろう。

「…!」

と、白髪のマスターが俺達が見ていることに気付く。

「あ、あんた誰…?」
竜胆 大和(りんどう やまと)。武蔵のマスターだ。細かいことは後で話す!」

そういい、彼は腰に携えていたショットガンを抜き、並みいる隊員を撃ち抜いていく。
え…なんなのこの人。
さっきも英霊兵倒してたし…
マスターの癖にやたら強くない?

「安心しろ。ここにやって来たのは俺達だけじゃない。」

その時、海から波が押し寄せる。
飲み込まれる隊員とゾンビ兵達。
こんな波を起こせる者といえば、俺は一人しか知らない。

「よう、また会ったねぇ探偵殿!」
「北斎!?そして舞さんも!?」

甲板に降り立ったのはあの葛飾北斎、そして舞さんだ。

「さて、絵になるくらい派手に暴れてやろうか。マイ!」
「うん!」

舞さんはあのときのようにカリゴランテの剣を振るい、敵を圧倒する。
右手にはそれ、さらに左手には馬上槍の『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』を持ち、名前のごとく舞うように戦場を駆ける。

それだけじゃない。

「英霊兵が…!」
「どうした!?動かないぞ!!」

英霊兵が突然機能停止。
したこと思いきやそれらは突然

「!!」

不思議に思い確かめようと接近した隊員達を巻き込み爆発したのだ。

「まじで何が起こったんだ?」
『あーあー、探偵さん、院長先生、聞こえるかー?』

何が起こったか分からないまま呆然としていると、突然無線から子安さんの声が。

「も、もしもし?」
『一時はどうなるかと思ったが、突然知らんサーヴァントが来てくれてね。抑制装置にまじないかけたらすごいことになった。』
「すごいこと…?」

抑制装置が復活したらしいがパワーアップしたと、
一体どんな効果があるのかと気になり訪ねてみれば

『魔性特効が付いた。どうやら英霊兵やゾンビ兵の類いはそれに含まれるらしくてな。効果範囲内にいると致命傷を受ける。』
「「なんだそれェ!?」」

あまりのチート効果に、無線を聞いていた俺と院長先生は思わず同時に叫んでしまった。
そして、魔性特効を付与すると言えば…

『ありがとうございます、紫式部さん…このままでは死んでしまうところでした…。』

無線内で助けに来てくれた彼女に礼を言うシェヘラザードさんの声が聞こえる。
そう、あの紫式部が来てくれたのだ。
それに彼女が来たということは

「そらっ!」

院長先生を飛び越え、綺麗なフォームから華麗な飛び蹴りをかます女性。
以前会った紫式部のマスター、源 葵だ。

『う…いやあぁぁぉぁあ_ッ!!!』

ライダーキックばりの飛び蹴りを食らったゾンビ兵はもがき苦しみ、倒れる。
ただちょっと運動ができるだけの人間のキックをくらい、あそこまで苦しむだろうか?
いやない。

『"魔性絶対殺すブーツ"です。』
「え、なんすかそれ…。」

紫式部からの解説が入る。

『葵様のブーツ、グローブに魔性特効のまじないを付与したものです。弱い妖怪程度なら殴られただけで爆発四散します。』

なにとんでもねぇもん作ってんのこの人…。

『さらに"魔性絶対殺すチェーンソー"なるものもありまして…』
「ソレ魔性じゃなくてもフツーに死ぬやつですよね?紫式部さん?」

エグい武器の解説はさておき、今の戦況を見る。
状況は有利に、そしてゾンビ兵と英霊兵を封印され隊員のみになった葛城財団側は一気に不利となった。
さらに

「くそ…くそ!なんで身体が…全然言うこときかないし…!!」

霊基で汚染されたものは魔性特効の範囲内と見なされる。
それはゾンビ兵だけでなく、鈴鹿御前も例外ではなかった。
機能不全とまではいかないものの、どうやら満足に力が出せない様子。
キャットとアタランテの二騎を相手にしているも、防戦一方だった。

「お前らなんか…!お前らなんてダーリンがいればすぐに…!!」
「どうした?負けそうだからと言い訳か?」

アタランテが矢を放つ。
本来なら避けられるものだが、鈴鹿御前はいつも通りに身体を動かせない。
防御することも間に合わず、放たれた矢は方に突き刺さった。

「うぐぅっ!!」

痛みのあまり刀を取り落とし、膝をつく。

「ふむ、お前のダーリンとやらに対する忠誠心もその程度らしい。」
「うるさいっ!!」

キャットに煽られ、落ちた刀に手を伸ばすがアタランテはそれを許さない。

「が…っ!?」

手の甲に矢が突き刺さる。
痛みのあまり伸ばしかけた手を慌てて引っ込める。
彼女にはもう、ただ悔し顔をして相手を睨み付けることしか出来なかった。

「諦めろ。キャット達に舐めてかかったのか運の尽きよ。」
「うるさい…うるさいうるさいうるさい!!私は負けてなんか…まだ負けてなんか…!!」




「お前もまた…財団のせいでそうなってしまったサーヴァントなんだな…。 」
「っ!?」

突然の背後からの声に鈴鹿御前は振り向く。
そこにはあの武蔵のマスター、竜胆 大和と名乗った男の姿が。

「な、なんなんだし…!?」
「これが救いになるとは限らない…でも…。」

彼が、手に持っていたメイスの柄を握り締める。
それを捻ると、柄が分離した。
いや、あれは違う。
さっきまで振り回していたものはあくまで"鞘"だったんだ。

「甘いかもしれないが…これが俺の出した"救い"だ。」

メイスから抜きだしたのは刃。
日の光に反射して赤く煌めく、彼の持つ武器の本当の正体は一振りの刀だったのだ。

「何するつもりだあいつ…。」
「ふふん。だったらそこで見てなさい。」

何をするんだろうと思えば武蔵が自慢気にそう言ってくる。

「斬るんすか?」
「斬る…確かにそうね。でもあの刀は…私の大和くんはただモノを"斬る"だけじゃないのよ。」

真っ赤な刀がさらに赤く光り、稲妻のようなものが迸る。
そして

「ッ!!」

躊躇なく、鈴鹿御前を脳天から切り裂いた。
切り裂いたのだが

「これで…いい。」
「…あ、あれ…?」

鞘に刀をおさめる大和とかいうやつ。
しかし斬られたはずの鈴鹿御前は無傷だ。
刀を鞘にしまった瞬間ズバァって斬れるやつでもない。

「あの刀はね…"何でも斬れる刀"なの。」
「何でも…?」
「どんなに硬い金属でも、果ては"概念"までも。大和くんは鈴鹿御前のの中にある"とある概念"を斬り捨てたのよ。」
「概念を…斬るだって?」

ありえない説明に思考が追い付かない。

「そうだ…代表との契約を断ち切った。」

だがそれは事実なんだろう。
だって

「私…何をして…」

彼女の洗脳が、解けているのだから。

「ここ…どこ?将は?」
「なにやら様子が変わったようだが…ご主人、どうする?」

周りを見渡す鈴鹿御前に何かを感じとり、キャットはマスターからの指示を待つ。

「ああ…さっきの人がやったことが本当なら、彼女はもう"敵じゃない"…。」
「保護するか?」

これが救いになるかどうか分からない。
と、大和は最初にそういっていた。
確かにそうだろう。
洗脳が解けたとしても、もう彼女のマスターはどこにもいないのだから。

「あ、あれ?探偵さんと刑部姫じゃん。ねぇなにこれ…どうなってんの?将は?」
「あのな…鈴鹿御前。」

アンタのマスター、田村 将はアンタ自身が殺した。
そんなこと、ハッキリと言えるわけない。
だから俺は嘘をつくことにする。
彼女が以前したような、優しい嘘を。

「あいつは…その…。」

だが、その優しい嘘も無駄に終わることになる。

「『縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』!!」
「!?」

突然、光が差した。
何者かが鈴鹿ごぜんに斬りかかり、剣は青く目映い光を放ちながら彼女を両断していく。
そして、

「ーーーーーッ!!!!」

彼女は何が起きたかわからぬまま、声にならない声を上げ、たったの一撃で塵へと帰った。

「な…。」
「赤い刀のマスター…やはりあの武蔵ですね。」

すると甲板に一人の男が上がってくる。
この戦場には似合わない、純白のスーツを着こなしたオールバックの男性。
こいつは…双眼鏡で見えたこの作戦の指揮官だ。

「たかが一撃で消え去るとは…やはりセイバーといえど産廃は産廃…。結局は代表の性しか満たせなかったわけですか。」

と、いきなり現れ何やら言い始めるこの男。
そしてさっきの光の正体、剣の持ち主であるランスロットは彼のサーヴァントであることは明らかだ。

「さて、産廃のみであるにも関わらずここまでよく頑張りました。拍手を送りますよ。」

ランスロットは彼の後ろに控え、そいつは半ばにやけながら俺達によく分からない理由で拍手をする。

「お前が…指揮官か?」
「ええ、いかにも。あなたがここの責任者ですね?」

院長先生が指揮官に問う。
何の疑問もなく答えると、彼はまた話を続けた。

「しかしあなたも大変だ。多数のサーヴァントと契約しているようですがどれも産廃…。余程運が無かったのか、それとも余程の物好きか…まぁこの場合圧倒的後者でしょうが。」
「お前…!!」

自分のサーヴァントを"産廃"と呼ばれ院長先生は噛み締める。
一発ぶん殴ろうとしたのだろうが、何かを察したキャットに止められてしまった。

「やめろご主人。バカにされる気持ちも分かるが奴の挑発に乗ってはいけない。」
「挑発?いえ失礼。そのように聞こえてしまいましたか。私自身にはそういった意図はなくただありのままを話しただけでして。」

敬語で丁寧に話してはいるが、かなり口は悪い。
しかもこいつ、あれだ。

「あなたは確か…探偵の…ふふっ!」
「何がおかしーんだよてめぇ。」
「いえ、産廃中の産廃を従えていると聞いたもので。確か…」

周回の効率を最優先するマスターがいるように、
高難易度でどれだけ活躍できるかを優先するマスターがいるように、

「刑部…なんでしたっけ?産廃の名前はいかんせん覚えられなくて…。何せ皆似たような名前、似たような性能、私のランスロットとは違い全く使い物にならないサーヴァントばかりですからね。」

こいつは自分のサーヴァントを最強だと信じ、そしてその他を使えないと見なすタイプのマスターだ。

「おっきーが産廃だとォ…!?」
「そうだよねまーちゃん!姫は使えるもんね!」
「悔しいが何も言い返せねぇなぁ!!!!!」
「」

まさかこんな奴がマジでいるなんてな。
Twitterと某攻略サイトのコメント欄でしか見たことねーよ。

「この世に蔓延る産廃達に比べ、ランスロットは完璧。マーリンやスカディのように誰かに頼らずとも、たった一騎で全てを切り伏せる完成されたサーヴァント。と、なるべく優しく教えましたがご理解頂けましたか?」
「ああ…充分理解したよ。」

院長先生が、何かを押し殺したような声で話す。

「お前が…想定以上のクズ野郎ってことがな!!」

そこにいた全てのマスター、及び全てのサーヴァントが動き出す。
自分の持つサーヴァントをバカにされる。
そんな安い見え見えの挑発に乗っかるのはとんでもねぇバカくらいだろう。
だが乗ってやろうじゃないか。
安い挑発だろうが関係ない。売られた喧嘩は買ってやる。
一斉に動き出し、狙うはこの作戦の指揮官。
ランスロットが最強だと信じ、それ以外のサーヴァントは"その他"と一緒くたにし産廃と決めつけたこの男。

隊員はごく少数、英霊兵は皆停止、ゾンビ兵は倒れた。
もはや戦力は、ランスロットのみ。
こいつだけは許してはおけない。
そう思った全員がかかろうとしたその時だった。

「令呪を以て全てのサーヴァントに命ずる
『ひざまづけ』。」

誰かの声が、戦場に響いた。
するとどうだろうか
ここにいるサーヴァント全員が動かなくなり、即座に膝をついたのだ。

「キャット!アタランテ!どうしたんだ!?」
「分からない…か、身体が勝手に…ッ!」
「間違いない…これは…令呪だ!」
「令呪だって!?」

アタランテが導きだした答えに院長先生は驚愕する。
当たり前だ。
一度に大量のサーヴァントを令呪で動けなくさせることなどマスターには不可能だ。

「おっきーやめろ!立て!!」
「無理だから!!やめて引っ張んないで!!」

「お栄ちゃん…これって…!」
「ああ…大将自らのご登場ってワケらしい…。」

無理矢理立とうとしている北斎。
何やらこの現象に覚えがあるらしいがなんだと言うのだろうか。

「大将ってなんだよ!」
「葛城財団代表のお出ましサ。あいつはこうやって…人のサーヴァントに令呪を使える。」
「!?」

その時だ。
また甲板に、新たに一人の男が現れた。

「よう、三笠のマンコ共。」

ひどく肥えた身体にぼさぼさの髪。
清潔さの一欠片も感じられねぇこのおっさんが、まさか

「代表…葛城恋…!!」

葛城財団のトップに君臨し、サーヴァントを集めている男。
そして、今一番倒すべき敵。この崩壊世界に存在しちゃならない最悪の人間。

「そういや置鮎、鈴鹿はどうした?」

葛城恋が、やってきたのだ。

「洗脳が解けたので殺害しました。」
「そっか。あのマンコにはいい加減飽きてきてたしな。うざってぇしちょうどいいや。」

と、鈴鹿御前の事は軽く受け流し、ひざまづくサーヴァント達を見渡す。

「感謝しろよマンコ共。なにせこの俺様が直々に、てめぇらの品定めに来てやったんだからな。」

彼は笑う。
にんまりと汚い笑みを浮かべて。

 
 

 
後書き
登場人物紹介

⚫小林 千尋(こばやし ちひろ)
バーソロミューのマスター。
メカクレあれば即口説きにいく彼に呆れながら運び屋の会計をしている。
前髪は長いのだが、彼女はこれをヘアバンドで上げているためメカクレではない。
バーソロミューからそのヘアバンドをとってくれないだろうかと何度か懇願されてはいるが自分にはこちらが似合うからとそのたび断っている。
潮風で痛むので近いうちバッサリ切る予定とのこと。
それを聞いたバーソロミューはその夜涙で枕をびっしょびしょにした。

⚫竜胆 大和(りんどう やまと)
宮本武蔵のマスター
元社畜の25歳。
世界崩壊直後に死亡したがひょんなことから復活。
髪が白くなり、衰えていた体力や運動神経がズバ抜けて高くなりさらに武蔵ちゃんのマスターになった。
世界崩壊後によく見られる若者の人間離れ、いわゆる逸般人化である。
ちなみに彼の外伝の物語は近いうち投稿する予定なのでお楽しみに。

⚫四人と四騎
アメイジング天海がお送りする、崩壊世界を舞台にした『四人と四騎が織り成す崩壊世界シリーズ』のこと。
その名の通り四人のマスターと四騎のサーヴァントを主軸に置いたストーリーとなります。
それぞれ色で表現されており
桃:刑部姫
紫:紫式部
青:葛飾北斎
赤:宮本武蔵
となっておりそれぞれの物語が展開されます。
現在この小説の他に連載しているのは"紫"のみですがそのうち"赤"と"青"も投稿していきます。
崩壊世界で生きていく彼らの様々な物語、
どうぞご期待ください。

 
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